アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(3)VSピンクフット

 殿水の機体は右脚一本といういささか奇妙な状態ではあるものの、全長55メートルの巨大ロボットFtoVの一部であるため、大洋たちの機体よりもひとまわりほど大きい。

 

「右脚一本で十分……それはそれは……」

 

 閃が静かに呟いて、電の左腕のガトリングガンを構える。

 

「随分と舐められたもんだね!」

 

 閃がガトリングガンを殿水の乗るピンクフットに向けて発射させる。

 

「!」

 

 ピンクフットは機敏な動きを見せて、まるでダンスのステップを踏むかのように銃弾の雨霰を華麗に躱してみせる。

 

「そんな⁉」

 

「カスりもせえへん⁉」

 

「ただ闇雲に撃てば良いってもんじゃないのよ! 弾数やエネルギー量には限りがあるんだから! もっと考えて撃たないと!」

 

 ピンクフットはあっという間に電の目の前に現れた。

 

「!」

 

「隙だらけよ!」

 

 ピンクフットの蹴りを喰らい、電は勢いよく後方にふっ飛ばされた。

 

「閃!」

 

「さあ、お次はどっちかな?」

 

 殿水が弾んだ声色で大洋たちに問いかける。

 

「ウチが行くで!」

 

 隼子は石火を操作し、機体を上空に舞い上がらせた。

 

「大きさに似合わず、スピードはあるようやけど、制空権を獲れば……!」

 

「なるほど、狙いは悪くないわ……ねっと!」

 

 殿水はピンクフットの機体をくの字に曲げて、反動をつけて思い切りよく飛び上がり、一瞬の間に石火と同程度の高度まで達した。隼子が驚きに目を丸くする。

 

「はあっ⁉ そんなアホな⁉」

 

 ピンクフットは機体を空中で一回転させて、強烈なかかと落としを石火に見舞った。石火は地面に豪快に叩きつけられた。

 

「ぐはっ!」

 

「隼子!」

 

「戦況とは絶えず変化するもの! 一時的に優位に立ったからといって、気を抜いちゃダメよ! 一瞬の油断が命取りになるわ!」

 

 ピンクフットは着地すると、大洋の乗る光の方に向き直った。

 

「さあてラストはアンタね、フンドシ坊や」

 

「くっ……」

 

 大洋は光に刀を構えさせると、真正面から斬りかかった。

 

「迷ったら正攻法! 案外悪くはない判断だわ! でも!」

 

 殿水はピンクフットに地面を力一杯蹴っ飛ばさせた。地面をえぐって出来た土の塊がいくつも光に向かって飛んで行き、その頭部にぶつかる。視界を遮られたかたちとなった大洋は機体を思わず停止させてしまった。

 

「ちっ! 何っ⁉」

 

 土塊を弾くことに気を取られた大洋はすぐさま視線を正面に戻すが、そこにはピンクフットの姿が無かった。

 

「居ない⁉」

 

「足元がお留守よ!」

 

「⁉」

 

 屈み込んだピンクフットが機体を激しく横に振り切る。光は見事な足払いを喰らってしまい、半回転して地面に派手に叩き付けられた。モニター越しに殿水の声が光のコックピットに大きく響く。

 

「相手が馬鹿正直に正攻法に付き合ってくれる訳ないでしょ! 無闇矢鱈な突撃はお姉さん感心しないわね!」

 

「ぐぬぬ……」

 

 殿水はモニターに表示された時間を確認する。

 

「訓練開始から48秒⁉ はあ……ちょっと待ってよ、3機でたったの1分も保たないの? これはとんだ期待外れだったかしらね……」

 

「く、くそ……」

 

「歴戦のパイロットとここまで差があるやなんて……」

 

「こりゃ参ったね……」

 

 大洋たち三人は悔しがる。そんな様子を眺めつつ、殿水はコックピットのシートにもたれかかりながら尋ねる。

 

「どうする? 訓練止めにする?」

 

「いいえ!」

 

「ウチらはまだまだやれます!」

 

「このままじゃ終われないでしょ……」

 

 殿水はモニター画面に映った三人の瞳を見て満足そうに頷く。

 

「ふ~ん、まだやる気と闘志は残っているみたいね。結構結構、ただ……」

 

「ただ?」

 

「このまま続けてもどうせさっきの二の舞よ……そこで一つ提案があるわ」

 

「提案?」

 

「そう、貴方たち、合体しなさい」

 

「「!」」

 

「……合体となると、流石にスペックの差がはっきりと出てしまいますが……?」

 

 閃の答えを殿水は鼻で笑う。

 

「なかなか面白いこと言うわね。明確な力量差がそれでようやくトントンになるかどうかってところでしょ? 三人寄らばなんとやらって言うし……さっさと合体なさいよ」

 

 殿水は面倒臭そうに手を振り、大洋たちを促す。

 

「! 言わせておけば! 隼子! 閃! 合体だ!」

 

「分かったで!」

 

「了解~!」

 

 大洋たちの機体は合体して電光石火となった。頬杖をついていた殿水はそれを確認すると、低い声色で話し出した。

 

「さてと、お手並みを拝見させて頂くわ。だけど……文字通り私の足元にも及ばないようだったら……容赦なく踏み潰すわよ」

 

「「「!」」」

 

 殿水の迫力に大洋たちはわずかに怯んだが、すぐさま言い返した。

 

「そちらこそ足元掬われないように注意してください!」

 

「足元に火が点いても知りませんよ~?」

 

「え、えっと……ウチらに足を向けて寝られんくなっても知りませんよ~?」

 

「……別に足絡みで上手いこと言えってターンじゃないからね、ここ」

 

「あ、そ、そうなんですか……?」

 

 殿水は軽く片手で頭を抑える。そして大洋たちに聞こえないように呟く。

 

「電光石火。切り札になるか、足手まといになるか……見極めさせてもらうわよ……」

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