アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第10話(3)悲しくなるからフォロワー数の話はやめよう

「よし、防衛が比較的手薄い南東から島に近づくぞ!」

 

 小金谷が指示を飛ばす。北と西から攻めた艦隊としては回り込むような形となるが、機動力の高さとヴァ―ルアの迎撃が予想を下回るものであったため、艦隊は島の南東の海域にたどり着くことが出来た。

 

「わりと簡単に回り込めたな……」

 

「要塞化は十分ではないという話やったけど、どう思う、オーセン?」

 

「……」

 

「閃?」

 

「あ、ああ、ゴメン、なんだって?」

 

 作戦中に何やら別のことに気を取られていた様子だった閃に隼子が呆れる。

 

「相手の反撃の鈍さについてや」

 

「ざっと考えてみて三点ほど理由の候補が考えられるね」

 

「三点?」

 

 大洋の問いに閃が頷き、立てた三本の指を折りながら答える。

 

「まず一点目、単純に相手の指揮官が無能故に部隊全体の迎撃行動が鈍いということ」

 

「そらこっちとしては大歓迎やな」

 

「二点目はこちらの進撃が予想以上の速さだったため、撤退の準備を進めているか」

 

「島を捨てるということか。もう一点は?」

 

「三点目は……おっと!」

 

 海中から触手が鋭く伸びてきた。電光石火はすんでの所でそれを躱す。

 

「またあの大ダコか!」

 

「量産しとるのかいな! 勘弁してほしいわ!」

 

「……敢えてこちらを引き付ける作戦をとっているということ……」

 

 残った三本目の指を折りながら閃が呟いた。

 

「全軍うろたえるな! 予想の範囲内だ!」

 

小金谷が回線を通して味方を落ち着かせる。

 

「勝負所だよ! 全員フュージョン‼」

 

 小金谷たちの機体が一つの機体に合体する。

 

「フュージョントゥヴィクトリー、見参‼」

 

 ザ・トルーパーズ五人が声を揃え、FtoVが空中でポーズを取る。

 

「カッコええ!」

 

「あれ毎回やるんだ……」

 

「分かっとらんな、オーセン! 様式美ってやつや!」

 

「様式美ねえ……」

 

 目を輝かせる隼子に対して、閃が醒めた声で呟く。

 

「一度対峙した相手に構ってはいられん! とっとケリをつけるぞ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「五人の意志を一つに! 喰らえ! ビッグソード‼」

 

FtoVが大剣を思い切り振りかざした。放たれた斬撃は海を割らんばかりの勢いで巨大タコ型ロボットに当たり、タコは成す術なく縦に真っ二つに割れ、爆発を起こした。

 

「よし! 次行ってみよう!」

 

 島からの砲撃もようやっと激しさを増してきた。

 

「くっ! これでは近づけん!」

 

 隼子が回避行動を取りながら叫ぶ。

 

「これは射程外に一旦退くべきかな~」

 

「下がるな! 電光石火!」

 

 閃の言葉を受け、隼子が機体を後退させようとした所、隣を飛ぶFtoVから小金谷の怒鳴り声が飛び込んできた。隼子が片耳を抑えながら返事する。

 

「しかし、このまま飛び込んではそれこそ良い的になります!」

 

「今から活路を開く……」

 

「活路?」

 

 土友の冷静な声に大洋が問い返す。殿水の顔が電光石火のモニターに映り、フッと微笑む。

 

「まあ見てなさい」

 

FtoVは両膝に収納されていたキャノン砲を取り出して構える。閃が驚く。

 

「これは……! 物凄いエネルギー量だ!」

 

 閃の言葉通り、大量のエネルギーの粒子がキャノン砲の砲口に充填されていく。

 

「ツインメガビームバスターキャノン、発射‼」

 

 次の瞬間、凄まじい威力のビームが放たれて、島の山間部に激突した。ビームがぶつかった場所は大爆発を起こした。

 

「二発とも目標に命中……敵基地、沈黙」

 

 土友が戦況を伝えると、小金谷が叫ぶ。

 

「よし! 島に上陸するぞ! 電光石火、続け!」

 

「凄い破壊力だが……武器の名前長いな!」

 

「大洋も分かっとらんな! ああいうのも様式美やねん!」

 

「そ、そうなのか……」

 

 隼子の弾んだ声に大洋が戸惑う。

 

「上陸、完了」

 

「残った敵はもういないか!」

 

 島の海岸にFtoVを着陸させ、小金谷が周囲を見渡す。すると、火東が叫ぶ。

 

「地下から反応あり!」

 

「何⁉」

 

 地中から大きな人型ロボットが飛び出して攻撃を仕掛けてきた。FtoVは何とかその攻撃を躱した。殿水が叫ぶ。

 

「まだ機体を残していたの⁉」

 

「ん? うわあああっ⁉」

 

「どうした、木片⁉」

 

「ひ、左腕が、溶けている!」

 

 攻撃をわずかに掠めたFtoVの左腕の一部が溶けていた。火東が土友に問う。

 

「あの機体は⁉」

 

「該当データ無し……ただ、推測するにあの先端部分に強力な溶解液を備えている模様」

 

 土友の言うように、その人型の機体はいわゆる顔面の口の辺りの一部分が長く尖っていて、その先端に紫色の液体を滴らせていた。殿水が思わず苦笑する。

 

「まるで出っ歯ロボットね! 人型なんてヴァ―ルアにしては珍しいじゃない⁉」

 

「……恐らく〝ニフォロア“を模したものだと思われます」

 

 閃が通信回線を開いて、殿水たちに話しかける。

 

「2フォロワー⁉ 隼子のSNSでももっとフォロワーいるぞ!」

 

「な、なんで人のアカウント知ってんねん⁉」

 

「二人とも、ちょっと黙っててくれる?」

 

 閃の言葉を聞いて、土友がパネルを操作する。

 

「確認した、“ニフォロア”……長い歯が特徴的なサモア全域に伝わる妖怪とのことだ」

 

「また一つ豆知識が増えたわ……」

 

「隼子のフォロワー数は伸び悩んでいるようだが」

 

「放っとけ! マイペースでやっとんねん!」

 

 するとFtoVが突然膝を突いた。

 

「ど、どないしたんですか⁉」

 

「なあに! エネルギー切れだ!」

 

 小金谷が豪快に叫ぶ。

 

「ええっ⁉またですか⁉」

 

「ツインメガビームバスターキャノンを発射したんだぞ! あれは相当のエネルギーを食う! シングルメガビームバスターキャノンならまだもう少し持ったが!」

 

「そ、そんな!」

 

「という訳で電光石火! あの“きくらげ”はお前らに任せる!」

 

「ニフォロアです! もはや一文字も合うてません!」

 

「時間を稼いで頂戴! 美味しいところは私たちがキッチリ持っていくから!」

 

「殿水さんまで何を言うてるんですか⁉」

 

「閃、これも様式美か?」

 

「かもね」

 

 閃は首を竦めた。


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