アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第15話(4)ごっつい扇子

 飛来する四機のプロッテによる正確な射撃に大洋たちは戸惑う。

 

「くっ、狙いが正確だな!」

 

「練度から察するにさっきのは先遣隊で、こっちの部隊が本命かな?」

 

「ちっ!」

 

 隼子が舌打ちをして、石火を向かわせようとする。

 

「待て、隼子! 一人で空中戦は危険だ!」

 

「ほんなら、どうするんや!」

 

「合体だ!」

 

「了解!」

 

 大洋の号令の下、三機は合体し、電光石火となって浮上する。プロッテの部隊にとっては予期せぬ状況変化だったのか、空中でその動きを停止させ、様子を窺う。

 

「なんや、あちらさんの動きが止まったで?」

 

「合体機能を持った機体は珍しいのかもしれないね」

 

「戸惑っているっちゅうことか?」

 

 隼子の言葉に大洋が頷く。

 

「それならば好都合だ、一気に畳みかけるぞ! 隼子!」

 

「よっしゃ!」

 

 電光石火の飛行形態時のメインパイロットである隼子が操縦桿を倒し、機体を勢い良く前進させる。プロッテの部隊の反応が遅れる。

 

「もろた!」

 

 隼子は電光石火の肩部のキャノンを発射する。四機の内、一機に命中し、コントロールを失った機体は落下していく。残りの三機は散開する。モニターで戦況を見つめていた閃がすぐさま指示を出す。

 

「長引けばその分こちらが不利だよ! 少ない手数で一気に決めよう!」

 

「どうする⁉」

 

「10時の方向に飛んだ二機を狙って!」

 

「よし来た!」

 

 電光石火の背部に付いている右翼部分を外して、投げつける。ブーメランと化した翼は鋭い弧を描いて、二機のプロッテの内、一機の背部バーニアと、もう一機の左脚部を破損させて、推進力を奪うことに成功する。

 

「二機とも制御バランスを崩したよ!」

 

「追い討ちをかけたる!」

 

 隼子はすぐさまキャノン砲を撃つ。砲撃を喰らい中波した二機のプロッテは落下する。大洋が声を掛ける。

 

「良いぞ! その調子だ!」

 

「残すは一機やな!」

 

 隼子は機体を反転させて、右脚部からライフル『アサルトマゴイチ』を取りだして構え、残った一機のプロッテを照準に捉える。プロッテはこちらに銃撃を放ちながら、激しく上下左右に忙しく動き回っている。

 

「容易に的をしぼらせないつもりだ!」

 

「くっ、猪口才な真似を……」

 

 隼子は唇を噛む。閃が小声で話す。

 

「ジュンジュン、提案なんだけどさ……」

 

「……成程、それで行ってみようか!」

 

 隼子は再び機体を反転させて、相手の航空戦艦ラワイスタ攻撃に向かう。それを見たプロッテは焦って、母艦防衛の為に引き返してきた。

 

「来たよ!」

 

「そこを待っていた!」

 

 三度反転した電光石火がライフルを二発放ち、そのいずれもが命中。頭部と右脚部を破損したプロッテはそれでもなお、電光石火に向かってくる。

 

「おおぃ! そこは素直に退いてくれや!」

 

 閃は苦々し気な表情で二門の内、一門のキャノン砲を発射する。放たれたキャノン砲はプロッテの胸部を貫く。プロッテは大破一歩手前状態となり、落下していく。

 

「胸部がコックピットやったってことはないやろな……」

 

 モニターをしばらく眺めていると、プロッテの腹部が外れ、そこがそのまま脱出ポッドとなり、上空へ舞う。ポッドはラワイスタの方へ向かっていった。

 

「良かったな、隼子!」

 

「そうやな……」

 

「まあ、次の攻撃目標はあの航空戦艦なんだけどね~」

 

「ええい、分かっとるわ!」

 

 隼子は機体の体勢を整えて、戦艦と空中で相対する。

 

「どうする、突っ込むか⁉」

 

「対空砲火の恰好の餌食になるね」

 

「閃がメインパイロットの砲撃戦特化モードなら互角に渡りあえるんじゃないか?」

 

「ざっと見た感じ単純な撃ち合いなら結構良い線は行くと思うんだけど……」

 

「だけど……?」

 

「飛行機能がないから、数発撃っただけで勝手にリングアウト状態になっちゃうよ」

 

「そうか、俺と閃のモードでは空中戦が満足に戦えないのか……」

 

 大洋が頭を抱える。そうこうしている内に、ラワイスタの方から砲撃が飛んでくる。

 

「くっ、一旦距離を取るで!」

 

 隼子は電光石火を後退させる。大洋がコントロールパネルを叩く。

 

「くそっ、どうすれば……」

 

「お困りのようですわね、ご主人さま♡」

 

 モニターにアレクサンドラが映る。

 

「アレクサンドラ! 無事だったか! 今どこにいる⁉」

 

「『第二十四新出島』の中央管制ビルですわ」

 

「何っ⁉」

 

「せっかく脱出したのにまた戻ったんかいな!」

 

「そのビルは目立つ! 狙い撃ちにされるぞ!」

 

「まあ、見ていて下さいな」

 

 アレクサンドラがウィンクすると同時にモニターの向こう側が揺れる。

 

「言わんこっちゃない! 砲撃を受けているんだ!」

 

「いや……待って!」

 

 慌てる大洋を閃が落ち着かせつつ、状況を冷静に確認する。

 

「これは……ビルや建物が……地中に沈んでいく?」

 

「この『第二十四新出島』の真の姿を……とくとご覧あれ!」

 

 モニターを通じてアレクサンドラの声が良く響く。

 

「真の姿?」

 

「『ビバ!オレンジ号』、浮上せよ!」

 

「はっ?」

 

「何?」

 

「えええっ⁉」

 

 閃と大洋と隼子が三者三様に驚く。小さな扇状の人工島だと思っていた『第二十四新出島』が空中に浮上したからである。

 

「こ、これもあの桜島ほどではないが、大きい艦だな」

 

「大きさよりも注目すべきはその形状だよ!」

 

「せやな、ごっつい扇子が空中に浮かんでいるみたいになっているで」

 

「ご主人様、もっとラワイスタから離れて。エネルギーを前面に集中! 砲撃準備!」

 

「距離・方向OK!」

 

「角度調整完了!」

 

 モニターを通じて、ユエとタイヤンの声も聞こえてくる。どうやら即席のブリッジクルーを任されているようである。セバスティアンが冷静に告げる。

 

「エネルギー充填完了でございます」

 

「よし! 撃てえぇぇぇ‼」

 

 ビバ!オレンジ号の放ったビーム砲がラワイスタに直撃し、見事大破せしめる。

 

「敵艦、沈黙いたしました」

 

「……まずまずの初陣ですわね」

 

 艦長席に腰掛けるアレクサンドラは肘かけに頬杖を突きながら満足気に頷く。


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