アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第17話(4)格の違い

「トライスレイヤーや! ホンマモンのトライスレイヤーや!」

 

 隼子が興奮気味に叫ぶ。

 

「「誰?」」

 

 大洋と閃が不思議そうに尋ねる。

 

「いや、なんでトライスレイヤーを知らんねん!」

 

「記憶喪失中なもんで……」

 

「幼少のみぎりから研究一筋だったもんで……」

 

「だから大洋はともかくとして、なんでオーセンまで知らんねん! ウチらが子供のころから第一線で活躍しているロボットチームやぞ!」

 

「ロボットチーム?」

 

「せや! その名も『フリートゥモロークラブ』や!」

 

「相当な実力者なのか」

 

「そうやで」

 

「そうか……だがそれに甘えているわけにもいかん!」

 

 大洋が叫び、フンドシ一丁になる。

 

「な、なんで脱ぐねん!」

 

「閃!」

 

「はいよ~」

 

 電光石火が近接戦闘モードにチェンジし、カバとの距離を詰める。

 

「接近するとより大きく感じるな、だがそれだけ攻撃が当てやすいというもの!」

 

 大洋は電光石火に刀を構えさせ、カバに斬りかかる。

 

「!」

 

「くっ⁉」

 

 電光石火は鋭く刀を振るうが、カバは左前脚の爪を使って、簡単に受け止めてみせる。

 

「!」

 

「どわぁ⁉」

 

 カバの繰り出した右前脚での蹴りを横っ腹に喰らって、電光石火は吹っ飛ぶ。

 

「……大丈夫~? ってか、なんでフンドシ一丁……?」

 

 倒れ込んだ電光石火のモニターに全身紅色の派手なパイロットスーツに身を包み、これまた派手な紅色のヘルメットを被った女性が映り、いまいちやる気のない口調で大洋たちに話しかけてくる。隼子が叫ぶ。

 

「あ、貴女は、大毛利三姉妹の長女で、フリートゥモロークラブのリーダー、大毛利明日香(たもうりあすか)さん! 脱力感たっぷりの大人の女性!」

 

「あ、知ってんの、アタシらのこと?」

 

「そ、そりゃあ勿論!」

 

「ふ~ん。 !」

 

 カバが巨大な口を広げて、倒れ込む電光石火に迫る。隼子が悲鳴を上げる。

 

「ぎゃあああ! く、食われる!」

 

「あらよっと!」

 

 明日香がトライスレイヤーをすぐさま両者の間に割り込ませ、持っていた薙刀をカバの口の中に突き立てて、噛み合わせるのを防ぐ。隼子が胸を撫で下ろす。

 

「た、助かった……ん?」

 

「これくらいでもいいかな? いいか」

 

 女性はぶつぶつ独り言を言いながら、カバの口の中に突っ込ませたトライスレイヤーの右手を引っ込める。手には大きなスポイトのようなものがあった。

 

「な、何をしてはるんですか?」

 

「これちょっと持っといてー」

 

「うおっ⁉」

 

 トライスレイヤーがスポイトを無造作に投げ、大洋が慌てて電光石火に受け取らせる。

 

「……唾液を採取した?」

 

 閃の言葉に明日香が頷く。

 

「そう、新種の怪獣っぽいし、DNA検査に使えれば良いかなって……おっと!」

 

 明日香は薙刀を取り、すぐさまカバと距離を取る。

 

「!」

 

 カバの口がガチン!と大きな音を立てて閉じる。

 

「凄い噛む力だね~大事な薙刀が危うく折れるところだったよ。あ、えっと……フンドシ君たちさ~」

 

「フンドシ君⁉ 誰のことだ⁉」

 

「アンタしかおらんやろ!」

 

「君らの機体とアタシらの機体のコンセプトがどうやら似ているみたいだね」

 

「そのようですね」

 

 閃が冷静に答える。

 

「似たような機体がこうして出逢ったのも何かの縁……先輩として戦い方を見せてあげるから、良かったら参考にして~」

 

 そう言って、明日香が機体を空に上昇させる。

 

「飛んだ⁉」

 

「そうや! トライスレイヤーの紅色は正式名称『スレイヤー・カエルム』! 空中戦を得意とする機体や!」

 

 隼子が大洋に説明する。明日香は薙刀を勢いよく振り下ろす。

 

「『鎌鼬(かまいたち)‼』」

 

 スレイヤー・カエルムの薙刀から斬撃が飛び、カバの巨体を切り裂く。閃が呟く。

 

「薙刀を超高速で振ることによって、衝撃波を発生させた……」

 

「……このように見るからに空中戦が苦手そうな相手にはまず、上から攻めるのが一番」

 

 明日香は淡々と説明しながら、何度か斬撃を飛ばし、カバにダメージを与える。

 

「……!」

 

 カバが苦しそうにもがく。明日香は機体を着地させる。

 

「相手を弱らせたら、攻撃力に高い形態にバトンタッチ……よろしく~」

 

 トライスレイヤーが橙色のカラーリングが主体の形態に変形する。橙色のパイロットスーツとヘルメットを着けた女性がモニターに映る。

 

「今後の戦い方の一助になれば幸いでござる……」

 

「大毛利三姉妹の次女! 大毛利次代(たもうりつぐよ)さん! クールなサムライレディ!」

 

「……別に恨みなどはないが、希望とあらば確かに仕留める、成敗アワーの時間がやって参りました……」

 

 よく分からない謎の口上を述べると、次代は機体の腰を屈ませ、侍が居合い切りをするかのような姿勢を取らせる。首を傾げる大洋に隼子は声をひそめて説明する。

 

「……あれは正式名称、『スレイヤー・テッラ』、近接戦闘や地上戦に長けた機体や……」

 

「光と似ているな……」

 

「……『空蝉(うつせみ)』‼」

 

 次代がスレイヤー・テッラの腰に備えた刀を抜き放ち、カバの巨体を左下から右上に向かって、一瞬の間に二度斬り付け、最後に間髪入れず、右から左に水平に斬る。カバの右後脚と左前脚を切断し、腹部にも深い切り傷を付ける。

 

「ムウ……!」

 

 カバは踵を返し、海に逃げ込む。やや間があってから、明日香が呑気に口を開く。

 

「……しぶとい相手は仕留め損なうことがあるから、追い打ちを忘れずにね~」

 

「情けなし……バトンタッチでござる」

 

 トライスレイヤーが水色のカラーリングが主体の形態に変形する。水色のパイロットスーツを着て、同じく水色のヘルメットを被った女性がモニターに映る。

 

「のんびりし過ぎなのよね、姉さんたちは……今のはあまり良くない例だから」

 

「大毛利三姉妹の三女! 大毛利未来(たもうりみらい)さん! テキパキ働くバリキャリガール!」

 

「ガ、ガールって年齢でもないのだけど……まあ、いいわ!」

 

 未来は機体の下半身を海に浸からせる。両腕を折り曲げ、腰部にピッタリと付ける。

 

「……あれは正式名称、『スレイヤー・マーレ』、海中戦に長けた機体や……」

 

 隼子が再び声をひそめて説明する。

 

「『海割(うみわり)』‼」

 

 未来はスレイヤー・マーレの右腕を思い切り海面に叩き付ける。すると、海がまるで割れたようになり、逃げようと海中を泳いでいたカバの背中を貫いた。カバはぐったりとして海面に浮かぶ。大洋が感嘆する。

 

「す、凄いな、拳の圧でまさに海ごと割ってしまった……海中戦では無かったが……」

 

「押忍‼ ……まあ、ざっとこんなもんよ」

 

「え~と……悪はアタシたちトライスレイヤーが無事倒しました……それじゃあ、平和な明日、また来てくれるかな~?」

 

「きっと来るー! って、なんでアンタら言わんねん! お約束やろ!」

 

 隼子が大洋たちを叱る。閃がぼやく。

 

「いや、約束した覚えないし……」

 

「と、とにかく流石はGofE所属、日本防衛の要の一角なだけあるわ……」

 

「フンドシ君たち~参考になったかな~?」

 

「ええ、脱帽です……生憎帽子の持ち合わせがないので、代わりにフンドシを脱ぎます」

 

「これ以上脱がんでええねん! ってか、服着ろや!」

 

「なんでフンドシ一丁なのか興味あるけど、時間が無いのよね~この辺で失礼するわ」

 

 トライスレイヤーはスポイトを回収すると、三機の戦闘機に分離し、その場から颯爽と飛び去っていった。大洋が考え込む。

 

「大洋? どうかした?」

 

「いや、すっかり格の違いを見せられてしまったと思ってな……」

 

「そうだね~ ! この反応は⁉」

 

 閃がモニターを確認すると、そこには桜色の航空戦艦の姿があった。花が開花したような独特な形状をした戦艦である。

 

「あれは高島津製作所の桜島やんけ⁉ なんでこんな所に⁉」

 

「事後報告になって申し訳ないけど……弊社は高島津製作所と業務提携を結んだわ」

 

 アレクサンドラからの通信が入る。

 

「え? そんなんいつ結んだんですか⁉」

 

「ついさっきよ」

 

「ついさっき⁉」

 

 隼子が唖然とする。

 

「お久しぶりです、電光石火の御三方」

 

 モニターに長い黒髪を背中で束ね、桜色の軍服を着た眼鏡の若く美しい女性が映る。

 

「貴女は……」

 

「戦艦桜島艦長、高島津伊織(たかしまづいおり)です」

 

 伊織は敬礼をして、にっこりと微笑む。約十数分後、ビバ!オレンジ号のブリッジで、アレクサンドラと伊織が対面し、握手を交わす。大洋たちはその様子をラウンジのモニターで見つめる。アレクサンドラが珍しく緊張気味に口を開く。

 

「えっと、高島津艦長? それとも社長代行?」

 

「伊織で構いませんよ、正規の軍人ではありませんし、堅苦しいのは抜きにしましょう」

 

「あら、そう? じゃあ、私のこともサーニャでいいわ」

 

「分かりました、サーニャ」

 

 伊織が微笑を浮かべる。アレクサンドラも相好を崩す。

 

「早速なのだけど伊織、詳細はまだ明かせないのだけど、私たちの艦は狙われているの。主に……っていうか、ほぼ全面的に私のせいなのだけどね」

 

「そ、そうなのですか……」

 

 アレクサンドラの正直な告白に伊織は戸惑う。

 

「お互い、ロボチャンに出場する為に淡路島に向かっているでしょう? 良かったら一緒に行動しない? その方が何かと心強いわ」

 

「ふむ……」

 

 伊織が顎に手をやって考え込む。

 

「駄目かしら……?」

 

「提携パートナーのお力になりたいのは山々なのですが、こちらも色々と寄る場所がありまして……極力航行スケジュールを崩したくはないのです。それに……」

 

「それに……?」

 

「むしろ戦力が欲しいのはこちらというか……」

 

「そう、無理を言ってごめんなさい……」

 

「先程広島に向かわれると伺いました。それならば当てはあります。手配しましょう」

 

「本当? 悪いわね、助かるわ」

 

「困ったときはお互い様です」

 

「! 素敵な考えね……よし! じゃあ、むしろこちらから先に戦力を貸し出すわ!」

 

「ええっ⁉ い、良いのですか?」

 

「良いってことよ。誰か希望者いるかしら?」

 

 アレクサンドラはモニターに向かい問いかける。少しの沈黙の後、大洋が名乗り出る。

 

「俺が行きます、一人で」

 

「ええっ⁉」

 

「大洋⁉ どういうこと?」

 

 突然のことに驚く隼子と閃に大洋が説明する。

 

「先の戦闘で痛感した……俺自身がもっと強くなる必要がある……!」

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