アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第2話(3)苦戦の先に

 出撃した二人は、会社の敷地外で一旦止まり、モニター画面と外を交互に見て現状把握に努める。

 

「敵は⁉」

 

「山間部からこっちに下ってきとる!」

 

「あれか! ……巨大なイノシシか?」

 

 大洋のモニターにイノシシの様な怪獣の姿が映る。隼子がデータ照合を行う。

 

「……! また該当データ無し! 新種かいな!」

 

「体長は約14m。この光よりは小さいか」

 

「それにしても凄いスピードや! 一直線にこちらに向かってきとる! 市街地に向かわれるよりはマシやけどな!」

 

「ジュンジュン、大洋、聞こえる~?」

 

 二人のモニターに閃の姿が映る。

 

「オーセン、こんな時に何やねん⁉」

 

「悪いニュースともっと悪いニュースがあるんだけど~」

 

「最悪の二択やな!」

 

「悪いニュースから聞こう」

 

「冷静やな!」

 

「ほぼ同時刻に別の地域で怪獣が出現したってさ~」

 

「ええっ⁉ っていうことは……」

 

「そう、今日も防衛軍の援護は期待できない。あのイノシシさんは二人で何とかしてくれる~? それじゃあ良い戦闘データを……じゃなくて、健闘を祈るよ~」

 

 閃は呑気に右手を振って通信を切った。

 

「マイペースなやっちゃな!」

 

「来るぞ!」

 

 大洋は光の脚部から光宗を取り出そうとするが、隼子がそれを制する。

 

「まだや! まずはあのすばしっこい脚を止める!」

 

 隼子はFS改のチェーンライフルを構える。

 

「第一希望は見事命中やが……」

 

 一言呟いて、隼子はライフルを発射した。銃弾が飛んでくるのを銃声で察知した怪獣は、寸前でそれを躱す。隼子はその後、続けて二発撃つが、それも躱されてしまった。

 

「弾数には限りがあるだろう! 余り無駄弾は撃つな!」

 

「無駄ちゃうわ! よう見てみい!」

 

「……! なるほど、こちらの射線に誘導したのか!」

 

 隼子の撃った弾を躱した怪獣は、大洋から見てほぼ真直線の位置にその進行方向を移していた。隼子は胸を張る。

 

「これで光の頭部にあるバルカンの射程内やろ? 仕留めるのは任せたで!」

 

「流石、シミュレーションほぼ負けなしの女! 俺には負けっ放しだったが!」

 

「うおおい! 皮肉辞めろや!」

 

 隼子の叫びを余所に、大洋が頭部のバルカンを操作する。

 

「弾は補充して貰っているな、よく狙って……今だ!」

 

 バルカンが火を噴いた。大洋はその際、光の首を多少左右に動かした。

 

「上手い! 両脚を狙ったんやな、全速力で走っている最中に真横には飛べんはずや!」

 

「⁉」

 

「う、上⁉」

 

 左右には躱せないと本能的に察した怪獣は上に飛んで躱した。着地と同時に、勢いを失わぬまま大洋たちに向かって突っ込んできた。

 

「瞬発力と跳躍力があるな!」

 

「距離を詰められたで!」

 

「光宗を抜いては間に合わんか! ブレードで迎え撃つ!」

 

 大洋は光の右肘からブレードを出して身構えた。

 

「……くっ! 体勢が低いな!」

 

 四足歩行の相手は近づいてみると、思ったよりも低い場所からこちらに向かってきていた。大洋はすぐさま光の機体を屈め、怪獣の脚を狙ってブレードを振るった。しかし、怪獣は再び飛び上がって、頭から光に突っ込んだ。強烈な頭突きを喰らった光が後ろに吹っ飛び、会社の敷地内に転がった。

 

「大洋、大丈夫か!」

 

 隼子の声に大洋は機体を起こしながら答える。

 

「左手で咄嗟にガードした。なんとかコックピットへの直撃は避けられた……」

 

 怪獣がFS改の方に向き直る。隼子はライフルを構えようとするが、考えを改める。

 

「近接戦か、飛び込んできた所を斬る!」

 

 隼子はライフルを機体の腰部ホルスターへと戻し、肩部に収納されているソードを取り出して両手で構えた。怪獣は鼻を鳴らして、勢いよくFS改に向かって突っ込んできた。

 

「気分は侍やが……! 生憎ウチはパイロットやねん!」

 

 隼子はそう言って、FS改の右脚を動かして、地面を思いっ切り蹴り上げた。大きな土塊がいくつも怪獣目掛けて飛んで行く。それを躱すため、怪獣は宙に舞った。狙い通りの展開に隼子は思わず笑ってしまった。

 

「ははっ! そうや、やっぱり上に飛ぶよな!」

 

 隼子はソードを怪獣の顔に向けて斬りつけた。手ごたえありかと思ったが……。

 

「な、なんやて⁉」

 

 怪獣は隼子の繰り出したソードを、口を開いて牙で受け止めていた。そして再びその口を開いたかと思うと、豪快に噛み付いた。その牙は強靭で、ソードごとFS改の両手を噛みちぎった。さらにその勢いのまま、FS改の頭部に強烈な頭突きを見舞った。

 

「どおわっ!」

 

 FS改がたまらず倒れ込む。怪獣がその上に馬乗りになる。大洋が光を操作して、バルカンを放ち注意を自らに向ける。

 

「隼子、大丈夫か⁉」

 

「両手ごとゴッツい牙に持ってかれて、頭部のメインカメラもやられた! 状況が掴めん! 今サブのカメラに切り替える!」

 

 映像を切り替えると、口を大きく開いた怪獣の姿が隼子の目に飛び込んできた!

 

「でえええっ⁉」

 

「離れろ!」

 

 光が機体ごとタックルを喰らわして、怪獣は横に転がった。

 

「後退しろ、隼子! ここは俺がなんとかする!」

 

「ス、スマン!」

 

 光に向き直った怪獣が二、三度後ろ脚で地面を蹴る。大洋もあらかじめ光の体勢を低くして、相手の突進に備える。

 

「隼子の狙いは決して悪くは無かった……」

 

 怪獣が突っ込んできた。光はブレードを大きく振りかぶってみせた。怪獣が警戒した様子を見せる。しかし、大洋が選択した攻撃は頭部のバルカンだった。怪獣はやや面食らったようだったが瞬時に上に飛んで銃撃を避ける。

 

「飛んだ所を……斬る!」

 

 右肘のブレードで怪獣の顔を狙う。怪獣は口を開いて、牙でそれを受け止める。だがここまで大洋の想定内であった。

 

「ブレードはもう一つある!」

 

 光が左肘のブレードで斬りつけた。怪獣は右のブレードを受け止めているため、身動きは取れない。

 

「もらった! ……な、何⁉」

 

 大洋は驚いた。怪獣が両の前脚を使って、左のブレードを受け止めたのだ。そして、一旦口と脚を離し、光の両肘を蹴飛ばして、真横に飛んだ。着地すると間髪入れずに光の横っ腹に突っ込んできた。

 

「しまっ、ぐおっ!」

 

がら空きの脇腹に頭突きを喰らい、光はバランスを崩して転がった。怪獣はすぐさま光の上に飛び乗る。

 

「ぐ、マウントを取られた……」

 

 前脚で光の両腕をしっかりと抑えこんだ怪獣がその口を大きく広げる。戦況を見つめていた隼子が叫ぶ。

 

「大洋!」

 

「くっ……」

 

「こっちや、イノシシ!」

 

 隼子がFS改の手の甲に付いている機銃を放つ。だが、怪獣は微動だにしない。

 

「ち……アカン! 大洋、脱出や!」

 

「むう……」

 

 怪獣の鋭い牙が今まさに光に噛み付こうとしたまさにその時、この日一番の砲声が轟いた。砲撃を喰らった怪獣の牙が片方砕け散った。怪獣はのけ反った。

 

「な、なんだ……⁉」

 

 砲声のした方向に目をやると、そこには銀色の機体が立っていた。光とよく似たフォルムをしている。構えた右手の手首が折れ曲がって、そこからキャノン砲が覗いていた。

 

「見ていられないな~こんな所でやられてもらっちゃ困るよ~」

 

「そ、その声は⁉」

 

「閃か⁉」

 

「まあ、コイツのデータも取れると思えばいっか♪」

 

 銀色の機体は右手を元の状態に戻した。

 

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