アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

86 / 104
第19話B(4)激闘!Dブロック

「!」

 

 幸村はすぐさま鬼・極をその場から離れさせて、機体を隠せる場所に急ぐ。

 

(信じられないほどの遠距離からの狙撃! 正確に二体の頭部を射抜いてみせた! 戦闘継続の可不可はまだ下されていないが、それを待っちょる暇は無い! 呑気にしていたらこちらまで撃たれる!)

 

 なんとか機体を隠す場所を見つけ、そこに機体を移動させ、幸村は一息ついた。

 

「ふう……⁉」

 

 金属音が響く。陰からわずかに覗いていた鬼・極のトレードマークとも言える角の片方が狙撃によって打ち砕かれたのである。

 

(なっ……!)

 

 幸村は慌てて機体をさらに屈ませる。

 

(『お前の姿も見えているぞ』という余裕の表れか! くっ、それに比べてこちらは物陰に芸も無くただしゃがみ込んだだけに過ぎん! すっかり後手後手に回ってしまっている!)

 

 幸村は呼吸を落ち着かせつつ、考えをまとめる。

 

(思考というものがどうにも苦手だが、そうも言っておられん! 考えろ! 風神雷神ばかりに気をとられていたが、恐らく……いや、間違いなく、和歌山代表の奴の仕業! 関西地区の大会ではこういう戦い方はしていなかったはずだが、これが奴本来の戦い方!)

 

 幸村は再び呼吸を入れる。すぐさま思考を再開する。

 

(このまま隠れていても、当然ジリ貧……となれば動くしかない。動くということ=反撃するということ! しかし、反撃の手段は? 長距離のライフルなど持ってはいない。ならば距離を詰める必要がある。いや、待てよ、距離を詰める前に場所を特定せねばならん……! その為にはどうするか……? ……こうすっか!)

 

 幸村は機体を陰から出して、思い切りダッシュさせる。一瞬の間が空いた後、立て続けに二発の銃声が鳴り響き、鬼・極の頭部が外れる。しかし、鬼・極は走りを止めない。幸村は通信回線をオープンにして叫ぶ。

 

「かかったな、狙い通りじゃ!」

 

「⁉」

 

(規定上、コックピットは狙えない。ということはまず優先的に目を潰しに来るのが必定! その為にあらかじめモニターをサブモニターに切り替えて、視界を確保! 次に狙いに来るのが脚部、しかし、両脚を歩行不可能な状態までに破壊するには最低でも二発ずつが必要! そういう種類・破壊力の銃弾しか備えていないということは、頭部の損傷からも把握することが出来た! 四発撃たれるまでに距離を詰めてしまえば良いだけのこと!)

 

「たかが鬼の首を取ったくらいで良か気になるなよ‼」

 

 幸村はよりドスの効いた声を響かせる。大地が少し振動する。

 

「⁉ ア、アホかアイツ……」

 

「……確かにアホやな。ただ、一瞬でもビビッてしもうたあんさんの負けやで」

 

「なっ⁉ 雷神⁉」

 

 鬼・極から離れた木々の茂みに隠れていた迷彩色の機体を見下ろすように雷神が立つ。

 

「さっきは一発くれておおきに。寝ぼけた頭目覚めさすのにはちょうどええ塩梅やったわ」

 

 雷は雷神の頭部を指でトントンと叩く。

 

「紀ノ國機械工業の『ピストレイロ・マゴイチ』……関西大会では当たりませんでしたな」

 

「ふ、風神まで! いつの間に! 狙撃位置はその都度素早く移動していたのに……」

 

「ふふふっ……」

 

「レーダーには感知されないように気を配っていたはずや!」

 

 ピストレイロ・マゴイチのパイロットは困惑する。

 

「ふふっ……」

 

「ま、まさか、音か! 音を聞き分けたっちゅうんか⁉」

 

「ふっ、なんぼなんでもそこまで地獄耳ではあらしまへん」

 

 風は風神の首を左右に振らせる。

 

「ほ、ほんならどうして……?」

 

「なんと言えばええのやろ……あんさんの持つ気の流れを察知したっていうところかな」

 

「き、気の流れ?」

 

「そう、平静を装っているつもりでもわずかに生じた油断・慢心と言った気の緩みやさっき雷、妹が言うた恐れの気持ちの後を辿ってきたんどす……」

 

「な、何を言うているんや……?」

 

 ピストレイロ・マゴイチか恐れおののく様子が伝わってくる。雷が風に告げる。

 

「風姉さま、素人はんにはちょっとばかり難しい話やで」

 

「……せやな、時間の無駄やったわ……!」

 

「……ピストレイロ・マゴイチ、戦闘継続不可能と判断!」

 

 審判のアナウンスに幸村はハッとする。

 

「風神雷神が仕留めたか……向こうに行くとまた奴らと遭遇する……メインモニター無しでは厳しい相手じゃ……となると残された連中が取る方法は一つ……!」

 

「鬼退治の時間じゃい!」

 

「来たか! ……⁉」

 

 幸村が声のした方向を見ると、言葉を失った。桃色の球体が転がっていたからである。

 

「ふん、ビビッて声も出んかのう!」

 

「も、もしかして岡山代表、多喜多重工の『シン・モモタロウ』か……?」

 

「いかにも!」

 

「な、なぜ丸いのでごわすか? 中国地区大会ではそんな形状では無かったはず……」

 

 幸村は思わず丁寧な口調になってしまう。

 

「詳細は省くが、『なんだかんだで丸いのがええじゃろ』という結論に至ったんじゃ!」

 

「話短っ! ノリ軽っ! 結論雑っ!」

 

 幸村は正直過ぎる感想を口にした。シン・モモタロウからは不敵な声が聞こえる。

 

「ただの丸と侮るなよ! 『きび団子フォームチェンジ』を味わってからにしろ!」

 

「き、きび団子フォームチェンジ⁉」

 

「そうじゃ、行くぞ! まずは雉フォーム!」

 

「なっ!」

 

 球体から羽が生え、低空飛行で鬼・極との距離を詰める。

 

「よっしゃ、ついばめ!」

 

 球体からくちばしが出てきて、鬼・極の機体を突っつく。

 

「くっ!」

 

「お次は猿フォームじゃ!」

 

 羽とくちばしが引っ込むと球体から手足が伸び、鬼・極に飛び掛かり、爪で引っ掻く。

 

「うおっ!」

 

「効いとる、効いとる! 続いては犬フォームじゃ!」

 

 猿の手足が引っ込むと、犬の四本足と口が伸び、鬼・極は抑えこまれた状態になる。

 

「ぬっ!」

 

「噛み付け!」

 

 犬が鬼・極の肩部に噛み付く。

 

「離れろ!」

 

 鬼・極が相手を蹴り飛ばす。

 

「とどめはお待ちかねの桃太郎フォームじゃ!」

 

「誰も待っちょらん!」

 

「行くぞ! あ、あれ……? どうした? ……頭部腕部脚部の伸縮機構に異常発生⁉ ど、どうにかせい! え、どうにもならん? そ、そうか……」

 

 シン・モモタロウはただの桃色の球体としてコロコロと鬼・極の前に転がる。

 

「……」

 

 幸村は鬼・極の背部から長い棒を取り出す。シン・モモタロウから驚きの声が聞こえる。

 

「そ、それって金棒か?」

 

「チャー……シュー……」

 

「ま、待て!」

 

「メーン‼」

 

「うおおっ!」

 

 鬼・極はゴルフスイングの要領でシン・モモタロウを豪快に吹っ飛ばした。

 

「シン・モモタロウ、戦闘継続不可能と判断! よって、Dブロック、勝者、大京都鋳物堂と高島津製作所!」

 

「とりあえずは初戦突破か……」

 

 幸村は安堵のため息をついた。


▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。