アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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※ここから合流ストーリーに戻ります。


第20話(1)対戦相手確認

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「次は準決勝か……」

 

 大洋が機体を格納庫に預けて宿舎に戻る。連絡があったように自分の部屋の前に隼子と閃が既に待っていた。

 

「遅いで」

 

「すまん、大松さんと久々に話し込んでしまってな」

 

 大松裕也(おおまつゆうや)、二辺工業のチーフメカニックを務めている中年男性である。

 

「出島を出港してから、バタバタしていたし、久々に話す相手も出てくるよね~」

 

 閃が廊下の壁にもたれかかりながら呟く。

 

「中に入ろう」

 

 大洋の後に続き、二人が部屋に入る。

 

「別に部屋でなくてもええんやなかったか?」

 

「確かに宿舎のラウンジとかでも良かったんだけど、どこで聴かれているかわかったものじゃないからね」

 

 隼子の問いに閃が頷く。大洋が尋ねる。

 

「盗聴の危険を考慮してか?」

 

「念には念をね。大した話をするわけじゃないんだけど」

 

「なんや、大した話はせんのかいな」

 

 隼子が肩をすくめる。

 

「どちらかと言えば確認の方が近いかな」

 

「確認?」

 

「そう。対戦相手についてね」

 

「組み合わせは今日と同様に明日の朝決まるんだろう?」

 

 大洋がベッドに腰掛けながら問う。

 

「ああ、ただチーム数が半分に絞られたわけだからね。組み合わせも予想しやすい」

 

「そうなのか?」

 

「考えられる組み合わせは全部で8通りだ」

 

「い、意外と少ないんやな」

 

 隼子が椅子に座って驚く。

 

「今日同じBブロックで当たった福井県代表、越前ガラス工房所属の『TPOグラッスィーズ』……彼らとは準決勝では当たらない」

 

「『播磨の黒い星』幽冥を落とした連中か……」

 

「どうやってやったんや?」

 

「それも気になるところだけど、少なくとも明日は当たらないわけだから」

 

「対策は後まわしでええっちゅうことか?」

 

「そういうこと♪」

 

 閃は大洋の部屋に備え付けられた大きめのモニターに映像を流す。

 

「これは……」

 

「ウチらより先に行われたAブロックの試合やな」

 

「復習がてら見ていくとしよう」

 

 Aブロックの試合がモニターに流れる。隼子が呟く。

 

「まず勝ち上がったのは沖縄県代表、琉球海洋大学の『シーサーウシュ』……」

 

「このターコイズブルーの機体が得意とするのはズバリ、接近戦だ!」

 

「言い切ってしまってええんか?」

 

「武装の特徴、そして今日の戦いぶり、さらに大洋から聞いた話を総合すると……このシーサーウシュという機体はほぼほぼ完全に近距離戦に特化した機体であるということがわかってくる。つまり……距離を取って戦えば問題ない相手だ。相手にとっては遠すぎる距離から射撃を集中させて、さっさと沈黙化させてしまえばいい」

 

「す、少しずるいような気もするな……」

 

「甘いよ! 大洋!」

 

 閃がいつの間にか大洋の至近距離まで顔を近づけている。大洋は驚く。

 

「うおっ! ち、近いな⁉」

 

「あの一瞬の加速力は侮れない。油断していたらあっという間に距離を詰められて、向こうの得意とする肉弾戦に持ち込まれ、ジ・エンドだよ。今日の鳴門重工業の『UZUSIO』みたいにね……女の子、泣いていたでしょ」

 

「あの純真な涙には心打たれたな」

 

「うん、正直もらい泣きしそうになっちゃったよ」

 

「心打たれたり、もらい泣きの前にもうちょい気にするところある気がするけどな……」

 

 隼子は泣き崩れる女の子に優しく寄り添う水色の生物が気になってしょうがなかったが二人は気にも留めない。

 

「話を戻すが、こちらにも名刀・光宗がある!」

 

「刀を鞘に抜く前に勝負がついてしまう恐れがあるね」

 

「ぐぬぬ……」

 

 渋い表情の大洋とは対照的に隼子が次の対戦相手候補を見つめつつ、呟く。

 

「大洋としたら、こっちの不良坊さんの方が相性ええかもな」

 

「何?」

 

 モニターに白い頭部に黒い胴体の機体が映る。その脇には短くボサっとした頭髪に、所々破れたボロボロの袈裟を身に纏った中年男性が映る。閃が口を開く。

 

「奈良県代表、鳳凰院の開発チーム製造の『機法師改(きほうしかい)』だね」

 

「改ってことは改良したんやな」

 

「そういうこと。奈良大会、関西大会ともに、この機体よりもひとまわり小さい『機法師』で、しかも複数、2~3体でのチーム戦で臨んでいた」

 

「今回は1機やな」

 

「途中投入する様子もないみたいだし、この『機法師改』単機で臨んでくるみたいだよ」

 

「武装は巨大な錫杖……これを用いた戦い方をしてくるんだな」

 

 大洋の言葉に閃は頷く。

 

「距離を取って削るのがベターだと思うけど、いざとなれば接近戦はお任せするよ」

 

「任された」

 

「この不良坊さんに関する情報は?」

 

 隼子がモニターの顔写真を指差す。

 

鳳凰院胤翔(ほうおういんいんしょう)……お坊さんとしての記録しかないよ」

 

「ロボットパイロットとしては?」

 

「若い頃に工業用ロボットのライセンスは取得しているみたいだけど……それ以外は特に見当たらないね」

 

「まさか素人ってことかいな」

 

「これは未確認情報だけど、若い頃に鳳凰院から飛び出しているみたいだね」

 

「なんでまた?」

 

「さあ? そこまでは……諸国を回って修行を積んでいたとか、放蕩の限りを尽くしていたとか、仏門からは離れて一般人として社会生活を送っていたとか、フリースタイルラッパーとしてラップバトルに明け暮れていたとか諸説あるね……」

 

「最後のはホンマに要らん説やと思うけどな」

 

「とにかく大事なのは鳳凰院がこのタイミングで彼を呼び戻したということなんだよ」

 

「ああ、大阪代表の『ごんたくれ』を叩きのめした、この錫杖を用いた杖術も侮れんな」

 

 大洋が腕を組んで頷く。閃が話を続ける。

 

「次はCブロックだね、既に戦ったことのある『エテルネル=インフィニ』についての詳しい説明はここでは省こう」

 

「省いてええんか?」

 

「油断の出来ない相手ということだけ頭に入れておけばいい。どうやら彼女らはベスト4以上に入ることを優先しているようだからね」

 

「うん? ということは?」

 

 隼子が首を捻る。

 

「もしも同じブロックに入ったら、互いに手の内を知っている相手の私たちに対しては向かってこないんじゃないかな、同程度の労力を使うなら、他の2チーム撃破に動くはず」

 

「成程、彼女たちならそのように考えそうだな」

 

 大洋が納得したように頷く。閃が説明を続ける。

 

「三重県代表の慈英賀(じえいが)流忍術保存会だけど、そんなに警戒しなくてもいいかなと思うよ」

 

「ホ、ホンマか?」

 

「うん、映像を見ての通り、今日の滋賀と島根の2チームを倒したのはエテルネル=インフィニだからね。正直棚ボタ的なベスト4入りだよ……スピードはあるし、武装も手裏剣とか、色々と多彩みたいだけど、その点だけに注意すれば問題ないんじゃないかな」

 

「せ、せやけど、忍者やで、とんでもない忍術を使ってくるかもしれんやろ?」

 

 閃は隼子のことを呆れ気味に見つめながら呟く。

 

「21世紀も終盤に入って、まだ忍者に憧憬に近いような気持ちを抱くとは……」

 

「だ、だって忍者やぞ⁉」

 

「仮にとんでもない忍術というものを駆使してきたとしても、彼らの機体と電光石火にはカタログスペック的にかなりの差がある。落ち着いて対処すれば問題ないよ」

 

「さ、さよか……」

 

「心配するな、隼子、後で一緒にサインをもらいに行こう」

 

「あ、ああ!」

 

 大洋の力強い言葉に隼子が頷く。

 

「サインとかあるのかな……? まあ、いいや、最後はDブロックだけど、鬼・極に関しては省略するよ。少し冷静な戦いぶりも出来るようになったみたいだから、その点は頭に入れておくとして、油断の出来ない相手ということには変わりないからね。問題は……」

 

大京都鋳物堂(だいきょうといものどう)の『風神雷神』か」

 

「そう、優勝候補筆頭だよ」

 

「戦いぶりとしては、今日当たった、幽冥をイメージしたらええんやろか?」

 

「ビーム兵器の類は使わないようだ。もっと荒々しいというか、強風や落雷を人為的に発生させることが出来る機体なんだ」

 

「そ、それはまた……神を冠するだけはあるな」

 

 隼子が感心したように呟く。

 

「強風で身動きが取れなくなったところに落雷がドーン! ってパターンは分かっていてもそうそう防げるものじゃないね。もちろん、その他にも様々な戦い方を持っている」

 

「厄介極まりないな……」

 

「……あらゆる状況のシミュレーションは出来る限りしておくよ。今日のところは二人ともしっかり体を休めて英気を養って。結局それが一番だよ」

 

「分かった」

 

「それじゃあ、お休み、大洋」

 

「邪魔したな」

 

 閃と隼子が部屋を出ていき、大洋はベッドに寝転がった。


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