アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第21話(3)真の姿

「まずは電光石火だ!」

 

「合わせる!」

 

 TPOグラッスィーズの二機が放つライフル射撃が電光石火に当たる。隼子が驚く。

 

「うおっ⁉ 当ててきよった⁉」

 

「精度が急激に上がった……?」

 

 閃が目を丸くする。電光石火が機体のバランスを崩す。大洋が声を上げる。

 

「くっ! こ、これは……?」

 

「足首の関節部分を正確に狙ってきたんだ! ライフル自体の威力は大したことないけど、バランスを崩すことくらいは出来る!」

 

 閃が説明する、TPOグラッスィーズが今度は鬼・極にライフルを向ける。

 

「次は鬼・極!」

 

「了解!」

 

「今更、本性を現してん遅か!」

 

「ふん!」

 

「な、なにっ⁉」

 

 幸村が驚愕する。渾身の力を込めて振り下ろした刀がTPOグラッスィーズの内の一機が左腕に掲げるシールドによって受け止められたのである。男の声が鬼・極のコックピットにも聞こえてくる。

 

「ま、まさに鬼のようなパワーだな! ただ耐えられないほどではない、金!」

 

「ああ! それ!」

 

「どわっ!」

 

 TPOグラッスィーズのもう一機が脇から強烈な体当たりをかまし、それを喰らった鬼・極は堪らず倒れ込む。いつきの戸惑う声が響く。

 

「そ、そんな! テクニックもパワーも先程までとは段違い⁉」

 

「嫌な予感が当たったさ~でも、スピードはどうかな⁉」

 

 修羅がシーサーウシュを動かす。

 

「!」

 

「む!」

 

 基本マイペースの修羅も流石に驚く。シーサーウシュの素早い動きに対しTPOグラッスィーズの二機ともが揃って鋭い反応を見せ、逆にシーサーウシュを挟み込むような体勢を取ったのである。

 

「仕留める!」

 

 TPOグラッスィーズの二機がそれぞれの左腕部の肘の辺りからブレードを出して、シーサーウシュに二方向から同時に斬り掛かる。

 

「ぬおっ!」

 

 シーサーウシュは防御を取りつつ、側転でそこからなんとか逃れる。

 

「至近距離、しかも二方向同時の攻撃だったのに、防御と回避を同時に行うとは……」

 

 女の感心するような声が聞こえてくる。男がそれを諌める。

 

「呑気に感心している場合ではないぞ!」

 

「ああ、分かっている!」

 

「大洋さんとツインテールちゃん……これはあくまで俺の勘なんだけどさ……」

 

 修羅が大洋と幸村に呼びかける。

 

「なんだ?」

 

「ツインテールちゃんって!」

 

「まずこの二機をなんとかしないとヤバいような気がするんだよね~」

 

 修羅がTPOグラッスィーズを指し示す。

 

「それについては!」

 

「同感でごわす!」

 

「それじゃあ、臨時の共同戦線ってことで……行くさ~!」

 

「おおっ!」

 

「うおおおっ!」

 

 シーサーウシュ、電光石火、鬼・極がほぼ同じタイミングでTPOグラッスィーズの二機に向かって襲いかかる。二機もそれに反応する。

 

「金、同時に照射するぞ!」

 

「了解!」

 

「「「⁉」」」

 

 TPOグラッスィーズの二機がそれぞれ頭部に付いている眼鏡のような形状のパーツを上にずらして、隠れていたバイザーをあらわにさせる。バイザーから黒い光が三機に向かって照射される。

 

「どうだ⁉ む⁉」

 

「シーサーナックル!」

 

「袈裟切り!」

 

「チェストー!」

 

「どわあっ!」

 

「ぐううっ!」

 

 三機の攻撃を喰らい、二機は後方に吹き飛ぶ。大洋が様子を伺う。

 

「……やったか⁉」

 

「いや、手応えが十分じゃ無かったさ~」

 

 修羅がシーサーウシュの右手を握って開く動作を繰り返す。

 

「耐久力も跳ね上がっておっとか……」

 

 幸村が舌打ちしながら二機を睨む。隼子が閃に問う。

 

「オーセン、どうなんや?」

 

「……スペックデータが短期間に劇的に向上したわけではないようだ。むしろ、パイロットが隠していた技量を披露していると考えた方が良い……」

 

 閃が二機に回線を繋ぎ、自身の考えを述べる。修羅が頷く。

 

「『ノーヘルのバカは後を絶たず』ってやつだね~」

 

「『能ある鷹は爪を隠す』ですよ、ほとんどあっていませんよ」

 

 いつきが冷めた声で訂正する。すると、乱戦の影響か、回線が混線したようでTPOグラッスィーズの機体からも話し声が聞こえてくる。

 

「くっ、まさかどちらの光も効果が無いとはな……」

 

「どうする、銀?」

 

「予定の前倒しになるが、致し方あるまい。奴を呼び出す!」

 

「奴だと?」

 

 大洋が首を傾げると、銀が叫ぶ。

 

「貴様の出番だ!」

 

「⁉」

 

 銀の叫びに呼応し、対峙する五体の機体のちょうど中間地点の地面に黒く大きな穴が出来て、そこから漆黒の奇怪かつ巨大なロボットが姿を現す。隼子と大洋が唖然とする。

 

「な、なんやこいつは……機体のいたるところが不気味に膨れ上がっとる……」

 

「かろうじて人型を保ってはいるが……」

 

「百鬼夜行! 暴れ尽くせ!」

 

「「百鬼夜行⁉」」

 

 いつきと幸村が揃って驚く。修羅が尋ねる。

 

「山田ちゃん、知っているの?」

 

「鳥取県代表として、ロボチャン中国大会に参加した機体と同名です。まさか……」

 

「そう言われると……面影はごくわずかだけど残っているね」

 

 閃が口を挟む。幸村が信じられないといった様子で声を上げる。

 

「そげん馬鹿な! うちは先日、鳥取砂丘で轡を並べて戦った! あげんバケモノじみた機体ではなかったでごわす!」

 

「ふふふ……」

 

 金の笑い声が聞こえる。幸村が声を荒げる。

 

「ないがおかしか!」

 

「人というものは変わるものだ……」

 

「なにを⁉」

 

「それは冗談だが……我々の計画にもっとも都合の良い機体がこの百鬼夜行だったのだ」

 

「計画?」

 

「金、喋り過ぎだ。百鬼夜行、目の前にいる三機はどうやら我々の手には余るようだ、つまり邪魔者ということになる。叩き潰せ」

 

「……」

 

 百鬼夜行がその巨大な機体を一歩踏み出す。シーサーウシュが果敢に飛びかかる。

 

「先手必勝さ!」

 

「!」

 

「ぐおっ⁉」

 

「きゃっ⁉」

 

 百鬼夜行のかろうじて普通のロボットとしての名残を残していた左手が急に膨れ上がり、シーサーウシュの機体をはたき落とす。修羅といつきが声を上げる。

 

「大星! 山田さん!」

 

「大洋!」

 

「前や!」

 

「むっ! どおっ⁉」

 

 百鬼夜行が右脚を振り上げ、地面を踏み付ける。激しい地割れが起こり、黒い衝撃波が電光石火の機体に直撃する。鬼・極は空中にジャンプして、それを躱す。

 

「な、なんとか……うおっ⁉」

 

 百鬼夜行の右腕が伸び、鋭い爪が鬼・極の機体の腰部辺りを貫く。鬼・極は力なく、地面に落下する。それを見て銀がほくそ笑む。

 

「ふん、所詮はこんなものか……さっさととどめを刺してしまえ」

 

「そうはさせないわよ!」

 

 戦場に凛とした女性の声が響き渡る。

 

「なんだ⁉」

 

「誰だ⁉」

 

 銀たちが視線をやると、戦場周辺の海上から桃色の派手なカラーリングの戦艦、地上から青色の戦車、ミサイルを積んだ黄色の大型トラック、空中から赤色の戦闘機、海中から緑色の潜水艦が、百鬼夜行に向かって一斉に攻撃を加える。思わぬ攻撃を立て続けに喰らって百鬼夜行はたまらずその巨体のバランスを崩す。それを見て、戦闘機のパイロットがすかさずダミ声で指示を飛ばす。

 

「チャンスだよ! 全員フュージョン‼」

 

「ま、まさか……?」

 

「接近に気が付かないとは……」

 

 銀たちが戸惑っていると、あっという間に戦闘機と戦車、大型トラック、小型戦艦、潜水艦が一つの機体に合わさり、頭部と首回りの部分は赤色、右腕と右半身が青色、左腕と左半身が黄色、右脚が桃色、左脚が緑色という、やや、いや、かなり奇妙奇天烈なカラーリングの巨大ロボットの姿になったのである。

 

「フュージョントゥヴィクトリー、見参‼」

 

 空中に浮かぶ巨大ロボットが五人の揃った叫び声に合わせてド派手にポーズを決める。

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