アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第23話(1)様々な思惑

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「志渡布雨暗……平安時代に暗躍したとされる、知る人ぞ知る陰陽師と同名ですね」

 

 ビバ!オレンジ号の作戦室で端末を見ながら、土友が話す。

 

「まさか同一人物と言うのではあるまいな?」

 

 小金谷が苦笑交じりに尋ねる。

 

「あの人智を超えた不可思議な術を目の当たりにすると、それは無いとも言い切れません」

 

「合体解除の術か……」

 

「まあ、現実的に考えてみれば、その血統に連なる子孫あたりとみるのが妥当かと」

 

 土友が眼鏡を直しながら考えを述べる。殿水が問う。

 

「その悪陰陽師の子孫は何が目的なのかしら?」

 

「現状ではなんとも……」

 

 土友が首を左右に振る。火東が重ねて問う。

 

「あの大富岳はどこに消えたの?」

 

「かなり精度の高いステルス機能を有しているようだが、あれほどのスケールの戦艦だ、どこかのレーダーで捕捉してもおかしくはないのだが、現在何の報告も無い……」

 

「それは参ったわね……あんなのが急に都市部の上空に現れたらパニック必至よ」

 

「どうにか居場所を突き止められないかしらね?」

 

「出来るよ」

 

「「どわあ⁉」」

 

 火東と殿水の間にカナメがにゅっと顔を出す。突如リスの頭をした人型の物体が現れた為、二人は腰を抜かさんばかりに驚く。カナメは悲しそうに呟く。

 

「そんなに驚かれると傷付くな~」

 

「ご、ごめんなさい……でも、いきなり現れないでよ、お願いだから」

 

「というか、なんで貴方がここに?」

 

「わたくしが呼んだのよ。カナメ、どうやって居場所を突き止められるの?」

 

 アレクサンドラがカナメに尋ねる。

 

「あの……陰陽師だっけ? 興味深い存在だから関心の度合いを強めたんだ」

 

「……どういうことかしら?」

 

「分かりやすく言い換えればマーキングしたとでも言えば良いのかな? それで彼の居場所をある程度追いかけることが出来るよ」

 

「では現在、志渡布雨暗は……大富岳はどこに?」

 

「えっと……地図を表示出来る? ……そう、奈良盆地の南端辺りから、橿原市に移動して、その上空にしばらく留まっていたけど、また動き出したみたいだね」

 

 カナメは作戦室のテーブルに表示された日本地図を指し示す。土友が尋ねる。

 

「どこに向かっている?」

 

「ちょっと待って……このマーキングはそんなに長続きしないんだ、本人に聞いてみよう」

 

「は? 本人?」

 

「もしもし~?」

 

「「⁉」」

 

 その場にいた皆が驚く。カナメの目が光ったかと思うと、作戦室の壁に志渡布と銀一郎、金花子の姿が映し出されたからである。

 

「なっ⁉」

 

 志渡布たちも驚いたようで視線を向け、小金谷たちと目が合う形になる。

 

「向こうにもこちらが見えているのか?」

 

「リモート通話みたいなものだと考えてもらえばいいよ、ただ繰り返しになるけどそんなに長くは持たないから、お話は手短に頼むよ」

 

 小金谷の問いにカナメが答える。志渡布がズレた烏帽子を直して笑う。

 

「妙な気を感じてはおりましたが……まさかこのような形で皆さんのお顔を拝見するとは」

 

「単刀直入に訊こうか、貴様らの目的はなんだ?」

 

「これは小金谷和久さん、またストレートな……まあ、はぐらかしてもしゃあないし、素直に答えましょうか……“真なる国”を築こうと思うております」

 

「真なる国だと?」

 

「そう、真の国……『真大和国(しんやまとこく)』をね」

 

「……つまり国家転覆を図るということか?」

 

「どのように受け取って頂いても構しまへん」

 

「そんなことを許すと思うか?」

 

「別にそちらに許可は求めてまへんから……こちらは勝手にやるさかい、止められるものなら止めてみなはれ」

 

 志渡布はクスクスと笑う。

 

「そのような暴挙を働く為の尖兵として奴らを……ロボチャン出場者を洗脳したのか?」

 

「洗脳とはまた人聞きの悪い……少しばかり突っついただけです。僕らに同行しているのはあくまでも彼ら自身の意志です」

 

「奴ら自身の意志だと? 奴らも国家転覆を願っているのか?」

 

「さあ、それはどうでっしゃろ? こちらは各々のプライバシーを尊重しておりますので」

 

「ふざけたことを……」

 

 小金谷が苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

「付け加えさせてもらいますと、こちらは別に民間人に対してテロリズム行為をするつもりなどは毛頭ありまへん」

 

「だから見逃せというのか? 混乱を生み出す恐れのある連中を野放しにすると思うか⁉」

 

 小金谷が叫ぶ。志渡布が笏を取り出し、口元を抑える。

 

「お~怖……そうですか、邪魔をするというのなら……叩き潰すだけです」

 

「なにを!」

 

「わ、悪いけど、もう限界! 質問は後一つくらいにして!」

 

 カナメが苦しそうに声を上げる。土友が口を開く。

 

「聞いても無駄かもしれんが……貴様らはどこに向かっている?」

 

「土友考智さん……そんなん教えるわけあらへんやん……と言いたいところやけど、特別にヒントを差し上げます。今は、奈良市と大和郡山市に向かっています。()()()()()()()()()()……京阪、滋賀辺りを巡るかもしれまへんな……?」

 

「なんだと……?」

 

 土友が顎に手をやって考え込む。カナメが叫ぶ。

 

「あ~ごめん! もう限界!」

 

 壁に映し出された志渡布たちの顔が消える。

 

                  ☆

 

「まさか、向こうからコンタクトを取ってくるとはな……」

 

「ふふっ、まるでこちらが正義の味方みたいやな?」

 

 銀の言葉に志渡布が笑う。金が不安そうに呟く。

 

「こちらのブリッジを見られてしまったな……映像も記録しているだろう」

 

「この大富岳は現代の科学技術とは異なった系統の技術で作られています。例え映像記録を見返したところで、分析は無駄なことです」

 

「そうは言ってもだな……」

 

「金さん、もっと余裕を持って下さい。不安な気持ちは周囲に伝播するものや」

 

「なにも予定航路を馬鹿正直に教えることは無かっただろう」

 

「銀さん、どうせいずれまたぶつかる相手です、早いか遅いかの問題ですよ」

 

「しかし……先の戦闘でも分かっただろう? 奴らの戦力は強力だ」

 

「僕も()()()()()目覚めてきたところや……こちらの戦力のポテンシャルを更に引き出すことが出来ます。何も問題はあらしまへん」

 

 志渡布は不敵な笑みを浮かべる。

 

「同席して構わへんか? 愛賀重頼(あいかしげより)さん」

 

 大富岳の食堂で、僧服を纏った鳳凰院胤翔が短髪で無精ひげを生やした男に声を掛ける。

 

「……どうぞ」

 

「失礼するで」

 

 愛賀と呼ばれた男は無愛想に答え、鳳凰院は向かいの席に座る。

 

「……」

 

「しかし、不思議やな、古墳が空を飛ぶなんて」

 

「……用件はなんや?」

 

「せっかちなお人やな、雑談もアカンのか? 坊主の話は案外タメになるで?」

 

「不良坊主の話は別やろ」

 

「ははっ、ピストレイロ・マゴイチの調子はどうや?」

 

「……悪くない」

 

「それは頼もしいな、アンタの狙撃、頼みにしているで」

 

「……まさかあんさんと共に戦うことになるとはな、『播磨の黒い星』、明石屋浪漫はん」

 

 通路で声をかけられた浪漫が振り返ると、おかっぱ頭の双子の姉妹が立っている。

 

「誰かと思えば、『おかっぱ頭の風神雷神』、千歳姉妹か」

 

 おかっぱ頭の前髪に一部緑色のメッシュを入れた、千歳姉妹の姉、千歳風が重ねて尋ねる。

 

「あんさんは何故こちらに? 志渡布家と明石屋家は犬猿の仲と聞いていましたが?」

 

「大昔の話やろ、うちには関係のないことや。大した用が無いなら呼び止めんといてや」

 

 浪漫が足早に去る。千歳姉妹の妹、千歳雷が苦笑する。

 

「なんや苛立ち気味でしたなあ、風姉さま?」

 

「闘志が漲っていると考えましょう……良い傾向どす」

 

「良い傾向?」

 

「あの人の機体、幽冥の主武装である電磁護符の性能の高低は操縦者のメンタル面が深く影響するようですから。ピリピリしているのは、むしろこちらにとってプラスどす」

 

「流石、姉さまは物知りやなあ」

 

「褒めても何も出えへんで……」

 

 千歳姉妹はクスクスと笑いながら通路を進む。

 

「シャイカ=ハーン、貴女がここにいるとは珍しいね」

 

「……」

 

 格納庫でアルカヌムのコックピットに座り機体チェックを行うシャイカに対し、エテルネル・インフィニ一号機のコックピットからモニター越しに海江田が声をかける。

 

「警戒しなくても大丈夫、盗聴防止はしてある。このやり取りが聞かれることはない」

 

「……やり取りするつもりは無い」

 

 シャイカがにべもなく答える。インフィニ二号機のコックピットから水狩田が尋ねる。

 

「鹿児島湾の時と同様にまた電光石火に対して何らかのメッセージを送っただろう?」

 

「!」

 

「……何が狙いだ? お前はどちらの味方だ? 信用していいのか?」

 

「……その言葉、そっくりそのまま貴様らに返す」

 

「……私たちは傭兵だ、より良い条件の方に付くだけのこと」

 

「そうか、私はただ、己の目的を果たすだけだ」

 

「目的?」

 

「これ以上は話すつもりはない……」

 

「……分かった、作業の邪魔をして悪かったね。水狩田、食堂にでも行こう」

 

 海江田たちは機体を降りる。様々な思惑を乗せて大富岳は航行を続ける。

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