「筏を作ろう!」
そう発言した4秒後、プレイヤーの首は走る鮮血と共に落ちた。
暗殺されたのだ。
「ああ、そうだな!」
そう発言した3秒後、プレイヤーの首は走る鮮血と共に落ちた。
暗殺されたのだ。
先ほどのプレイヤーの発言から2秒後に発言したので、この空間に
「……いかだ、ね」
刃から滴る血液すらもどこか静かに感じさせる、そんな騒音の対極のような幼女は、横たわるふたつの死体を眺めながら呟いた。
それは本当に小さな……ともすれば、
そんな、三日月ののぼる夜の事だったのだ。
◇
μ-skYは筏作りを開始した。
材料は、先ほどキルしたプレイヤーたちが用意してくれた。
一つの筏が作れるほどの大量の木材を用意するためには、相当の手間がかかっただろう……それをこの
「よっ」
またしても、呟きなのか思索なのかを本人にしか断定できないような、恐ろしく小さな呟きをふと発する。そしてその勢いで、7本目の丸太を紐の上に移動させる。幼女というキャラメイクは何かと便利だが、こういう
「ふう」
サバイバル・ガンマンは他のゲームと比べてもとんでもなくリアルだ。それは
そして、そのリアルさの一例こそが……汗、である。
単純に実装が難しいのもあるだろうが(実際、このレベルの技術が当然になるのは
でも、
服をべとりと湿らせ、透かして背中に貼り付けるその感覚は、まるで自分自身が溶け出すような……現実ではなく、この
汚れた(汚れる、というのもこのゲーム以外では早々見られない表現だ)服をより一層汚さんとする、滴る液体たちを拭いながら、μ-skYは8本目の丸太を移動させた。
◇
「筏を作ろう!」
そう発言した2秒後、プレイヤーの脳天は飛ぶ鮮血と共に開いた。
暗殺されたのだ。
「ああ、そ……えっ?」
そう発言した1秒後、プレイヤーの脳天は飛ぶ鮮血と共に開いた。
暗殺されたのだ。
先ほどのプレイヤーの発言から1.5秒後に発言したので、この空間に
これは奇しくも、先日のものと比較し、今回の暗殺はちょうど2倍の効率で行われた、という事を物語っていた。
「……まだ懲りずにやってたのか」
幼女は呟いた。呟きか思索かわからないなんてことは無い、明確にはっきりと、口から声を出した。
……ただし、
「……筏……イイな。
携えた
「……声が、出せる」
そう呟くと、μ-skYは空になった弾倉を海に放り投げ、
オールに、手汗と海水とを混ぜ滲ませながら。