フロンティアへの幾星霜(短編集)   作:Z-LAEGA

41 / 64
キグルミ・ファイトについにキャンペーンモードが実装された

キグルミ・ファイトについにキャンペーンモードが実装された。

ヒャッホォゥ!

俺はそのニュースを携帯端末で見た時点で爆速で朝ご飯の鯖味噌をカッ食らうとライオットブラッドを飲んでVRシステムに座ってダイブするとライブラリの奥の方に埋まっているはずのそのゲームめがけてスクロールを開始し……あーそういえばこんなゲームあったな~~ハイハイハイ、久しぶりに遊……誘惑に負けるなッ!よし!キグルミ・ファイト発見!緑色の表示……確かにアップデートが存在する証拠だ!ヨッシャ!アップデート開始!ちょっとダウンロードに時間がかかるかももう終わった!速ッ!までをババッと進めると一瞬という言葉すら惜しいほど早く終わったダウンロードに対する心配とそれでもなお湧き上がってくる期待を抱きつつログインした。

待ち遠しいローディングアニメーションも一瞬で終わる!それはそれで不安……だが、喜びも伴っている!メニューカーソルを動かせば……確かにあるぞ、「キャンペーンモード」の文字!ヨッシャ遊ぶぜ!

イェェェイ!!!!!

俺はテンションがおかしくなっていた。

つい1時間前までは寝ていたし、4時間前までは起きていたからだ。差し引き3時間睡眠である。

起きた直後にライオットブラッドをキメたのも影響しているかもしれない。

 

『キグルミをぉ、選択せよぉ!』

 

まあそんなことはどうでもいいッ!

いつも通りの鬱陶しいナレーションが、そういうことを考える手間を放棄させてくれた。

えーっと……とりあえずそうだな、ニワトリで行こうニワトリで!うん!さっき見た夢もニワトリだったし!いやヤンバルクイナだっけ!?まあどっちでもいいや!!!

イヨッシャァ!

なんか聞き覚えのあるフリーBGMの中で、奇声を上げながら「このキグルミで挑戦」ボタンを押す。

俺は眠かった。

つい4時間前までは起きていたし、8時間前まではシャンフロでレイさん(と、途中で乱入してきた京極)に銃の扱い方を教えていたしからだ。差し引き4時間プレイである。

 

『ラウンドぉ、ワンぅ!』

 

ヒャッハァァァ!!!

むさ苦しいナレーションとともに目の前に現れたラブリードギーに対し、暴走するテンションの捌け口を求めるように飛び掛かる……死ねェ~~ッ!!

 

「ワンッ」

 

しかしラブリードギーが妙に音質の悪い鳴き声を発しつつ何もない所に噛み付いたので、俺は死んだ。

 

 

クソゲー。

俺は溜息を吐いた。

厳密に言うとこのゲームのキグルミに口は存在せず、声を出すときも天の声(ボイスチャット)式なので、溜息を吐いた()()()()()()()、に過ぎない。

 

『ゲームオーバぁ……』

 

先ほどからねちっこく定期的に繰り返されるナレーションが、また聞こえる。

わかってるさ……俺はやろうと思えば、いつだってこのメイリオかMSゴシックかなんかで表示された「コンティニュー」ボタンをタップすることができる。

しかし……やる気が出ない。別にコンティニューに限った話ではないのだ。もはや何もかもがめんどくさい。

さっきニュースサイトでこのゲームの情報を目にした時点で気付くべきだったのだ。いくらクラファンをやってるとは言え、キグルミ・ファイトは典型的な暗黒個人開発ゲー……普通なら、ニュースサイトに取り上げられるようなネタじゃない。

じゃあなぜ取り上げられたのか……答えは一つ、()()()()、だ。大方このキャンペーンモードのキャプチャかなんかがバズったか、それとも金を払ってこれを出されたクラファン登録者たちが石を投げ始めたか……いや後者に関しては存在するとは思えないが……そんなところだったんだろう。

大体、何も無い所を噛まれて死ぬって何?って話なんだよな。俺も何も無い所を噛んでお前を殺してやろうか?って話だもん。酷いよ、本当にひどい。

俺は燃え尽きていた。

つい30分前までは最高潮にあった感情が、つい5分前に弾けたからだ。差し引き25分天下である。

……25分?

 

『ゲームオーバぁ……』

 

その時……俺の中で、何かが脈打った。

ゲームオーバー?……何がゲームオーバーだよ。俺は断じて終わって(オーバー)なんかいない。クソゲーハンターを……舐めるな。

テンションが上がってきた。

そうだ……目が覚めて来た。思い出してきた。俺は起きた直後にライオットブラッドを飲んだ。しかし同時に……()()()()()()()()()()()()()()()んだ……!

つまり!俺はライオットブラッドを!この早朝にして既に2本飲んでいる!!!それも時間差摂取、それが意味するところは―――!!!

―――()()()()()……!!!

やってやろうじゃねぇかァ~~~ッ!!ヒャッッホォィァ!!!!!!

盛り返したテンションに任せて、俺はコンティニューした。

 

 

『ラウンドぉ、ワンぅ!』

 

行くぜェェェェェェェッ!!!

襲い掛かると死ぬのは把握している……恐らく当たり判定がズレている、それも相当。とにかく理屈は置いておいて、今回は襲い掛からないのが定石だ……だがッ!

敢えて!!!今回も突進する!!!

俺の鶏大突進(コケコッコー・チャージ)に相手のラブリードギーはさして怯む様子を見せない。なぜかというと簡単な話で、「怯む」と言う概念がそもそも未実装だからだ……だからこそッ!

 

「ワ―――」

 

先ほどと同じ鳴き声、同じモーション、同じタイミングで、ラブリードギーは攻撃を試みて……

 

「ン―――」

 

今だッ!

俺は書き割りの羽毛を湾曲させ……()()()

 

「ッ!」

 

ラブリードギーの一撃が空振りに終わる!もともと空振りだがそれはどうでもいい……とにかく、重要なのはこれからだ!

 

「ワンッ」

 

特に感情とかそういう物を感じさせない鳴き声を漏らすラブリードギーに、俺は……()()()ッ!!

 

「ワンッ」

 

そう……被攻撃判定がズレているというなら、接地判定も一緒でもおかしくない……!違ったとしてもコンテすればいい話だ!どうやらその必要はないようだがなァ~~~ッハッハァ~!!!

 

「ワンッ」

 

ラブリードギーが吠える……しかし、()()()()()()。こりゃAIがバグったか?だが、それはそれで好都合だ。

 

「ワワンッ」

 

とりあえず……どうするかな。俺は今グラフィック的には空中に浮いていることになっている。別に下に向けて攻撃を放っても良いが……設置判定と被攻撃判定がズレているのは分かったが、こちらからの攻撃判定についてはどうなんだろう?とりあえず攻撃してみても、遅くは……

 

「ワワワワワワワワワワワワワンッ」

 

その時、ラブリードギーが()()()!!

俺も飛んだ!!!!!

無限上昇バグだ!!!!!!

ヒャッホォォォォォォィ!!!!!!

ラブリードギーがなぜか爆発四散した!!!!!!!!!!!!

俺は勝利した!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

最高の気分だ……最高ッ!攻略してやったぞキグルミ・ファイト!ザマぁ見やがれッ!!!!!!!!!

 

『ラウンドぉ、ツウぅ!』

 

「ミャーウ」

 

その時ナレーションが響いてキューティーキャットが出現して何もない所を引っ掻いたので、俺は死んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。