刹那に願いを込めて
「お」
1
俺は覚悟した。2週間にわたるピザ修行ゲー(ピザ修行シーンは一切存在しない)の果てで研ぎ澄まされた集中力が、およそあり得ないほどの
さて……メイド喫茶イベントでギャルだから……予想される選択肢は「ま」「き」「ー」「い」の4種類か。最高の選択肢は「ま」、これを引ければ確実に抜けられる……次に「き」、メイド喫茶イベントはハイリスクハイリターンな代物だが、その中で
「い」
2
「い」か……俺は心中で舌打ちをした。もちろん体には出さないし、VRノベルゲー特有の行動矯正が出させてくれない。40%の確率で発生する、アタリにもハズレにも転ぶルート……このゲームの物欲センサーはそこそこ標準的な出来なので、実際のところは「アタリにもハズレにもハズレにも転ぶルート」くらいの比率だと考えるべきだ。マズいな……とはいえ、「ー」を引いてそのまま「そういえばあたしってO型なんだよね!……あれ、O型のOってピザに見えね?」からの飛行機雲エンドよりはよっぽどマシであることもまた事実。そう悲観するべきでもない……悲観するべきでもなくあってくれ…………!!!俺は自分に言い聞かせた。実際「ま」を引いて「お前がどうしてここに!?」を発生させるのが一番良かったんだが……まああれは2回目以降だとなんとなく体感で確率下がってるような気もしなくも無いし仕方ない。うん、仕方ない。俺はまたしても自分に言い聞かせた。現実でもゲームの中でも、人生とは「諦め」の集合体である。
「し」
3
更に「おいお前→声かけイベント(ピザ:ノットピザが6:4)」「オイスターソースはいかが→ピザ」の2つの選択肢が潰れる。一応確率的には50-50よりマシになっているが……まあどんぐりの背比べだ。ちなみにピースというのは12分の1秒、つまり60FPSで言う5フレームの事だ。ラブクロックのUI右下にこっそり表示されているアナログ時計が、長針と長針の間で区切って12個の範囲に色分けされているのが由来である。アナログ時計に当然のように搭載されている
「く」
4
むっ。俺は眉をしかめた。正確には、眉をしかめたつもりになった。「おいし」ルートは基本的に「い」に派生するのが定石だが、そこであえて「く」か……これは分からなくなってきたぞ。「おいしいチーズケーキをどうぞ→ピザ」「おいしいですか?あっ、おいしいといえば→ピザ」などの確殺ルートを潰せたのは良いが、一方で「おい」ルート最強の選択肢である「おいしい?そりゃおいしいだろうな(好感度上昇&体力回復&内部ピザ値減少)」を逃したのは痛い……まあいい。この感じだとたぶん次は「で」で「おいしくできただろ(体力回復)」あたりを引くことに……
「な」
5
俺は困った。
「な」か……「な」かぁ…………。ヤバいな、最悪だ。「い」を引いて「おいしくない」ルートに移動できれば生存は可能だが好感度が下がる。「け」の「おいしくなけ」ルートはちょっと扱いが難しいし、「あ」に至っては入ったら確定で死ぬ。うーん、「な」かぁ……いや待てよ、俺は閃いた。「け」を引けば確定で「おいしくなければ」まで誘導できるわけだから、そこから0.4ピースくらいのところで割り込みをかければ内部ピザ値の大幅減少が見込めるんじゃないか?よしこのプランで行こう、予定が立った以上後は祈るのみ、祈ればピザの神、じゃなかったえっと恋愛の神は振り向いてくれるはずだ!!!俺の脳裏に慈愛を表情に湛え手を組むなんかいい感じに恋愛を司ってそうな神のイメージが浮かび上がる。来い、「け」!!!!!!
「あ」
6
はいクソ~~~。
脳裏の恋愛の神が組んだ手から、ポロリとサイコロが落ちた。
「れ」
7
集中力を失った脳は、
「萌」
8
これまでの加速感とはうって変わって、
「え」
9
考える時間も与えずに、
「萌」
10
仮想の現実を
「え」
11
俺に
「キ」
12
突き
「ュ」
13
つけ
「ン」
14
てきた。
「(暗転)」
15