フロンティアへの幾星霜(短編集)   作:Z-LAEGA

45 / 64
ネフィリム・ホロウ
猫じゃらし号、大地を浮く


「……クソがァーーッ!!」

 

10勝に対し6敗を数えたところで、俺はついにキレた。

猫耳が強すぎるからだ。

 

「ようサンラク~!勝っちゃってごめんな?GG(グッドゲーム!)

 

知らない人がめちゃくちゃ嬉しそうにサムズアップし、地団駄を踏む俺からそっと離れていく。

俺はこのゲームそのものからそっと離れたい衝動に駆られた。

 

「……クソ……何が索敵性能100倍だよマジで……これがあればキングフィッシャーの高速機動はレーダー見れば見切れる確率が上がるし、フィドラークラブの透明化も意味ないじゃね~~かよ……」

 

俺は猫耳を憎みつつあった。「憎む」という言葉から猫耳を付けたフェアカスの姿が脳内に連想される……引っ込んでろ!脳内跳び蹴り(ブレインドロップキック)を食らわせるが、そうしたところで10勝6敗と言う事実は変わらない。別に完全に負けてるわけでもないというのが逆に腹立たしい。

 

「……こうなったら……」

 

呟く。俺のアバターは表情とかそういう概念を持たないから、端からは真意を汲み取りにくいであろう呟きだ。だが……実際のところ、俺の目論見は余りにはっきりしていた。

システムメニューを開き、ロビーからフィールドに移動する準備をする。

新機体を作ろう。

 

 

ランキング二位プレイヤー、スーパー玉男は困惑していた。

彼は猫耳イベントにおいて最も得るアドバンテージが大きいプレイヤーの一人である。跳弾猟犬(バウンドドッグ)の持つ屈折(フレキシブル)レーザーは、「索敵性能が上がっても攻撃が届かない」と言った事態が極めて発生しづらい武装だ。猫耳の利用によって、彼はルストとの距離を相当縮めることができる……犬としてのアイデンティティを捨てる、代償として。

しかし、目の前で地面から数メートル上をホバリングする()()については、猫耳がどう働くかわからなかった。

 

「……サンラク、それは何だ?」

 

「見ればわかるだろ……()()()()()だよ」

 

サンラクの操る新機体らしきもの……機体名『尾狗(ヴィリディス=セタリア)』は、見たところ跳弾猟犬(バウンドドッグ)と同じ型の素体を基にした、小さな本体……そして、その後ろについた、妙にふさふさした()()()()()から成り立っている。

 

「……その尻尾は?」

 

「ああ、スロット拡張の棒を腰につけて、そこにいろいろくっつけたらこうなったんだ……狗尾草(ねこじゃらし)みたいだろ?」

 

どういう意図なんだ、考えても玉男にはわからない。ふと、尾狗(ヴィリディス=セタリア)の頭部を見る―――そこに、猫耳は無かった。

 

『跳弾猟犬 vs. 尾狗』

 

アナウンスが走る。インターフェースが変化する。そして……二匹の犬が、動き出す。

 

「オラァッ!」

 

スーパー玉男は初手でフレキシブルレーザーを放った。相手の機体は本体については軽量に見えるが、例の()()を考えると総重量は結構なもののはず……ブースターも多くは見えない。回避性能が低いはずなのだ。

 

空をつんざき、レーザーは尾狗目掛けて直線軌道を取る。サンラクは当然サイドブーストで回避を試みるが―――

 

「やっぱり、遅いな」

 

猫耳を装備した跳弾猟犬にとって、その行き先を予想するのは余りに容易い。極めて詳細に表示されたレーダーを見ながら、フレキシブルレーザーを軌道変更、確実に当たるよう調整して……

 

「……は?」

 

レーダーが、見えない。

いや……見えないのではない、()()()()()()()。マップ全域が、白いアイコンに埋め尽くされているのだ。

 

「……っ!」

 

玉男はメインモニターから前方を見る。そこには、こちらに向け突進する尾狗(ヴィリディス=セタリア)が映っていて―――

 

「聞こえすぎる耳も、考え物―――ってな」

 

―――いつの間にか消えていた尻尾の後ろには、射出された大量の針が。

猫耳を()()()()べく、浮遊していたのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。