フロンティアへの幾星霜(短編集)   作:Z-LAEGA

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分岐上直撃するマーケティング

◆A

 

【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】

 

高難易度VRロボットアクションゲーム『Nephilim Hollow(ネフィリム・ホロウ)』が、初代発売から数年を隔て再注目されつつある。『2』の電撃発表も記憶に新しい中、今回の注目はそれに上乗せされる形で生み出された。

台風の目たる人物は、やはり電撃的に現れたスーパースター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。

 

GH:Cは当然として……『Nephilim Hollow』ですかね。ほら、来秋発売の続編はGH:Cと同じでシャンフロシステム搭載世代ですから、自由度は保証されたようなものでしょうし。

 

この言葉が、前後文脈として『貴方の好きなゲームはなんですか』という質問に対する回答として発せられたものである事―――さらに遡れば、この発言の直前に彼が成し遂げた"神話再現"が筆者を含む視聴者たちの眼球にこびり付き続けていたことを考えれば、それが如何に大きなムーブメントを生み出すかご理解いただけるだろう。

その後行われたライオットブラッド・リボルブランタンに対するダイレクト・マーケティングがガトリングドラム社の株価に与えた影響が多大であるように、『Nephilim Hollow』に与えられた"期待"もまた多大なそれである。『2』発表の影響も相まって、再注目はしばらく止まるところを知らなさそうだ。

 

 

 

【人気のコメント】

 

・ネフホロはいいぞ

・顔隠しってハイスピードアクションもできるのな

・影響されて買ったけど操作が複雑すぎて死んでる

・ネフホロはいいぞ

・人類には早すぎるゲーム

・2はかなり操作簡単になるらしいからそっち待つわ

・顔隠しはむしろハイスピードアクションが本業だろアレ

・顔隠しにありがとう ブラックドールにありがとう 世界に すべてにありがとう

・言いぶりからしてシャンフロ本編もやってそう

 

 

 

◆B

 

【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】

 

協力型剣闘MMO『辻斬・狂想曲(カプリッチォ):オンライン』は、"知る人ぞ知る"タイトルとしての2年間を終え、1夜にして世界中のゲーム・コミュニティにおける最頻トレンドへと成り代わった。

台風の目たる人物は、やはり1夜にして極めて多くのな支持を得ることとなったトランジェントスター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。

 

[微笑]……そうですね、色々なゲームが挙げられますが……ここはやはり『辻斬・狂想曲:オンライン』ですね。みんなで協力して遊ぶのがとても楽しいゲームで、よくログインするんですよ。

 

この言葉は、彼に投げかけられた『貴方の好きなゲームはなんですか』という視聴者による問いに対する答えとして発せられた。直前まで手に汗握るPvPを繰り広げていた人物が、突然"協力"ゲームが好きだと言い出したのだから、これはどういうことだと筆者を含む視聴者が興味を引かれたのも、極めて当然の出来事と言えよう。結果として発生したのが今回のムーブメントであり、直後に行われたライオットブラッド・アンデッドに対するダイレクト・マーケティングの如く、世界中を席巻する話題性を生み出している。

"顔隠し"のプレイ・レパートリーは、何も対戦ゲームに限られないようだ。

 

 

 

【人気のコメント】

 

・エアプ丸出しでワロタ

・露骨なコタツ記事やめろ

・流石にもう3日も経ったのに辻斬を協力ゲームとか書いちゃうのはダメだろ

・顔隠しはこんなログインしたかと思ったら一瞬でリスキルループ入るクソゲーの何を楽しんでるんだ

・記念カキコ

・エアプか?10回も死ねばリスキルループ抜けてリスキルする側に回れるだろ

・いや俺はクソゲーだと思うなこれ

・もしかして公式サイトから丸コピした?

・君素質あるよ

・流石にエアプで発売3年目のゲームの紹介記事書くのはちょっと……

 

 

 

◆C

 

【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】

 

アニマル・アクション・コンバット・ゲーム(公式サイトより)『アニマルファイト・オンライン』で突然発生したプレイヤー人口の爆発は、同時接続者数を一気に増やし過ぎたことが原因で、そのサーバーが3度のダウンに見舞われる事態にまで発展した。

台風の目たる人物は、やはり爆発的な支持を集めているフィクスドスター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。

 

『アニマルファイト・オンライン』ですね。マッチングのシステムが『GH:C』に似ていて、今回の試合の前練習として結構プレイしました。色んなキャラで色んなプレイスタイルを楽しめるのが好きです。

 

この言葉の直前に『貴方の好きなゲームはなんですか』という質問が存在したことが、視聴者たちの興味をより一層引き立てた。何せ『チャンネル8』にて行われた生放送でプレイされていたのはまさに『GH:C』、「『GH:C』のようなゲーム」が好きなゲーマーが筆者を含む視聴者の大半を占めているであろうその配信で、突然「システムが『GH:C』に似ている」という見たことも聞いたことも無いようなマイナーゲームが提示されたのである。これはもはや、食いつかない方がおかしいと言っていいだろう。

その後行われたライオットブラッド・バックドラフトに対するダイレクト・マーケティングが世界中を暴血赤で埋め尽くしたように、この回答もまた『アニマルファイト・オンライン』のサーバーを莫大な新規プレイヤー達で埋め尽くしている。ゲームバランスは少々トムソンガゼルが強すぎるきらいがあり大味だが、それでもこの熱狂に水を差すことは叶わなさそうだ。

 

 

 

【人気のコメント】

 

・おい最後ォ!

・SNSのトムソンガゼルネタ真に受けてて草

・このライター基本的にエアプで記事書くからな 信用しない方がいい

・ちなみにお前ら最強のキャラは何だと思う?

・トムソンガゼル

・ライオン

・トムソンガゼル

・マジな話トムソンガゼルって対ゴリラ性能だけは最強だよな

だから事実上ゴリラ→ライオン→トムソンガゼル→ゴリラ……でバランス取れるって言う

・ゴリラ

・なんか人口が増えたせいで強引にメタが回され始めてて草

 

 

 

◆D

 

【〈VRフルダイバーNET〉、20XZ+1年11月5日の記事より引用】

 

謎のゲーマー"顔隠し"氏は、生放送中の『貴方の好きなゲームはなんですか』という質問に対し極めて聞き取りづらい、しかし大きな感情が込められていることは確実にわかるような声色で答えた。

直後に行われたライオットブラッド・トゥナイトに対するダイレクト・マーケティングが極めて明瞭な声によって行われたものであったことから、恐らく何かしらの症状などではなく、単純に本人の感情がそうさせたのだと思われる。

録音データに残されたその怨嗟を、一部抜粋してみよう。

 

……桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか桃まだか……

 

この内容の意味するところは不明だが、ライオットブラッド経験脳科学分野における第一人者であるB教授にインタビューを行ったところ、

 

カフェインレベルが高くなりすぎており、且つトゥナイトやリボルブランタンを用いてジョイントを行うなどの極めて効果的な摂取法を行った場合、あまりの"適合"により過去に同じようなライオットブラッドの飲み方をした際の記憶が暴血集合識からダウンロードされてフラッシュバックすることがある。"顔隠し"はトゥナイトを経由して何か過去の記憶―――それも、トラウマに分類されるそれ―――を蘇らせてしまったのではないか。

 

とのことである。

顔隠し氏が顔を隠す理由は、本当にただの身バレ防止なのだろうか。

 

 

 

【コメント欄は設置されていません】

 

 

 

◆E

 

【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】

 

格闘ゲーム『ベルセルク・オンライン・パッション』の総プレイヤー数は、その日だけで一桁増えたと言われる。誇張ではなく、元々マイナーで、しかも巨大な過疎に曝されているゲームであったが故、その程度のことは時に起こり得るのだ―――巨大な衝撃を、携えて。

台風の目たる人物は、まさに震源地という言葉が似合うニュークリアスター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。

 

『ベルセルク・オンライン・パッション』ですね『ベルセルク・オンライン・パッション』!ちょっと過疎ってるけど楽しいですよ『ベルセルク・オンライン・パッション』!はい!

 

『貴方の好きなゲームはなんですか』という問いが生み出したこの回答は、筆者を含む視聴者たちを大いに沸かせた―――何せこの言葉は、直後にダイレクト・マーケティングを受けるライオットブラッド・クァンタムの効果で若干現実とは違う場所を見ているようにも感じられる眼球を、それでも見開いて力強く発せられたそれだったからだ。

日ごとの同時接続者数が三桁を割る事すらあったという『ベルセルク・オンライン・パッション』に齎された、いわば希望の光である今回のムーブメント。果たして、このゲームは今後どうなっていくのだろうか。

 

 

 

【人気のコメント】

 

・キャンペーンやってるけど難しすぎない?まだ第一話クリアすらできてないんだが

・顔隠しはこれをまともにプレイできるのか……

・バグでしょ明らかに

・顔隠し、何者?

・キャンペーンが難しすぎるからオンラインに潜ったと思ったらなんかいつの間にか負けてたんだけど何あれ

・なんかオンライン上位の奴らって動きがおかしくね?

・ボスがやってくるバグみたいな挙動をこっちも取れればなあ……

・なんか上級者と俺達で"壁"がある気がするんだよなぁ

・さっき当たったプレイヤーが腕伸ばしてパンチしてきて負けたんだが?????挙動がアブノーマルすぎだろふざけんな

・幻覚だろ

 

 

 

◆F

 

【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】

 

"クソゲー界のトライアングルピラミッド"という俗称で知られる低評価ゲーム『フェアリア・クロニクル・オンライン』。様々な理由をもってそのレーティングを極めて下方まで突き落としているこのゲームに、今日、思わぬ理由でスポットライトが当たっている。

台風の目たる人物は、まさに頭から爪先までが"思わぬ"存在として構成されたマレフィクススター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。

 

『フェアリア・クロニクル・オンライン』ですね、アレは最悪でした。ほんとクソ。

 

直後に意気揚々とライオットブラッド(無印)のダイレクト・マーケティングを開始する彼の姿は、筆者を含む視聴者たちから畏怖をもって観測された―――ある種当然と言えよう、この発言は『貴方の好きなゲームはなんですか』という問いに対する答えとして行われたものなのだから。

好きなゲームを聞かれて歴史的な低評価を受けているタイトルを挙げた上、更に「最悪でした」と明らかに"嫌っている"一面も見せる―――筆者にはその時、顔隠しが凶星(マレフィクス)とされる原因の一端を垣間見たような気さえしたのだ。

この奇妙なインタビュー結果は連鎖的に奇妙な流行を生み出し、各ゲーム・コミュニティは『フェアリア・クロニクル・オンライン』の話題で賑わっている。顔隠しの"隠し"ている物は、何も顔だけに留まらないのかもしれない。

 

 

 

【人気のコメント】

 

・別の人格にチェンジしてそう

・この記事書いた奴絶対エアプだろ……

・世間の評価だけでクソかどうか判断するのはやめろ

・俺はちゃんとやったけどフェアクロは糞だと思う

・前から思ってたけどここのコメント欄にはなんか特有の思想を感じるな

・エアプ フェアクソの面白さは15周目突入当たりでようやくわかってくるものなので

・エアかエアじゃないかの問題を逸脱してるだろ

・カースドプリズンがフェアリアを延々と殴ってる絵好き

・あいつRPGも好きなんだな

・俺はカスプリが最高級デラックスパフェ作ってる絵が好き

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