フロンティアへの幾星霜(短編集)   作:Z-LAEGA

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漫画最新話で開示されたパススルーモニターの設定が、本当にアツいね、という回


侵入者たちⅡ

 チャイムの音が呼んでいる。

「……聞いてます? サバさーん?」

「! ……おう大丈夫だぜ、続けてくれ」

 口でそう返しておきながら、サバイバアルは自分の言葉の(うわ)(そら)ぶりに気づいてもいた。気づいていたからこそそれを意識させないように――あるいは意識してもそれが()()()()()()()()()()させるように、ちょっと過剰気味なジェスチャーを返した。残像を伴いながら勢いよく突き上げられた(ガッツポーズ)はついでにその辺にいた着せ替え隊員Bの頭部にクリーンヒットし、「グエーッ」などとアホっぽい叫び声が続けて上がる。

「了解っス。つまり検証の結果としては……」

 着せ替え隊員Aはそれを気にも留めず、手にしたスケッチブックを

 チャイムの音が呼んでいる。

 見せる。そのざらざらした質感を完璧に表現された紙面には、上手いとも下手とも言い難い、微妙な出来ばえの図解が描かれている。

 その一点が指さされる。

「いいスか、ここまで述べた通り、俺たちが作った装備を賞金狩人たちが着てくれないことがある問題は……喫緊のモンです、何とかしなきゃな

 チャイムの音が呼んでいる。

らない。検証を重ねたところによれば――」スケッチブックが捲られる。「まず、今まで信じられていた『装備の性能が足りてないから鹵獲してくれない』説については……間違ってるってことが分かりました」

「マジかよ」

「はい。そもそもティーアスたんが……いや賞金狩人なら誰でもいいんスけど仮にティーアスたんとしますね。ティーアスたんが『今着ている装備より強いものを求める』ロジックで動いているとするなら、

 チャイムの音が呼んでいる。

彼女の装備の強さはどんどん()()()()していかなきゃおかしいわけです。でも思い出してみてください……着せ替え隊の()()()の時のことを。当時の俺たちは技術力がなかったから……ただカワイイだけで、性能的には初期装備とどっこい程度のやつしか作れなかったはずです」

 チャイムの音が呼んでいる。

「確かにな」

 チャイムの音が呼んでいる。

「具体的なバランスは不明ですけど、賞金狩人ってのは

 チャイムの音が呼んでいる。

公式チートの類なわけで……ティーアスたんが

 チャイムの音が呼んでいる。

初期状態で着てる装備が、あの見た目全振り防具より……」

 チャイムの音が呼んでいる。

 チャイムの音が呼んでいる。

 チャイムの音が呼んでいる。

 サバイバアルはここにきて、先ほどから視界の片隅に展開している小さなフロートウィンドウをようやくまともに直視した。真下に『Pass-through monitor』の表示をぶら下げた、16:9の長方形。表示されているものは……なんだか、よくわからない。高くもないフレームレートで明るくなったり暗くなったりを繰り返す、()()()()拡大写(ドアップ)のようだ。

 チャイムの音が呼んでいる。

 しかしなんだかよくわからないというのは文脈を無視した見方であって、サバイバアル本人としてはとっくに見当がついていた。以前も似たようなことがあったのだ。

「――つまり、凝視の鳥面を頭に装備すれば――」

「……あのデブ」

「なんスか?」

 猫だ。

「何でもねえよ、続けろや」 口走ると、サバイバアルは握っていた拳でそのままサムズアップを作り、胸の前に勢いよく掲げて見せた。それに伴って急速に動いた肘が、その辺にいた着せ替え隊員Cの鳩尾を抉る。「ギャ

 チャイムの音が呼んでいる。

バーッ」とまたしてもバカらしい叫び声。着せ替え隊員Aは疑わしげに目を細めつつ、粛々とスケッチブックを捲る。

「それで――」

 チャイムの音が呼んでいる。

 ピンポン、という電子音。

 世間に流通している標準的なフルダイブVR機器にはいくつかのユーティリティ・ボタンが備わっていて、OSのアップデートにより物理的なボタンを必要とする機能が追加された際に割り当てられると、第一刷の仕様書には記されていた。いま現実(リアル)で美澄真澄の頭部にもたれかかっているデブ猫が押しているのは――おそらく第一のボタン。ゲームをプレイ中のユーザーへと、一方的なビデオ・メッセージを送るためのボタンだ。

 チャイムの音が呼んでいる。

 サバイバアルが使っているヘッドギアはかなりの型落ち品で、外部情報取り込み用のカメラも、小さく、粗く、乏しいものでしかない。猫いっぴきがすこし覆いかぶさるだけで、映像は簡単に遮られてしまう。

 チャイムの音が呼んでいる。

 ビデオ・メッセージの一要素として、この世界(シャングリラ・フロンティア)でサバイバアルだけが唯一聞こえる物事(ユニークアイテム)として。世界観を壊し、いや別の世界観で侵して――。

「……あ?」

 そのとき、消えた。

 フロートウィンドウごと、チャイムの音がいっさい聞こえなくなった。

 モニターを埋める毛の波が、最後の一瞬だけ大きく縦方向に流れていくのをサバイバアルは見逃さなかった。おそらく……猫が、ヘッドギアからずり落ちたのだ。あの鈍重でぶにょぶにょした体躯がなめらかな曲面を滑り落ちていく様など、目の前にあるかのように想像できる。ついでに、第一ボタンにかけられていた体重が別のどこかへ転嫁されるのも。

 こうして、サバイバアルはシャングリラ・フロンティアに舞い戻った。

 すがすがしい気分だ。

「サバさんちょっと変じゃないスか?」

「いやァ問題ないぜ、見ての通りな!」

 サバイバアルは両腕を大振りで広げ、左右に立っていた着せ替え隊員Dと着せ替え隊員Eを薙ぎ倒した。「「ビャゴェーッ」」捻りすぎてよくわからなくなってきた断末魔すら――どこか、心地良い。彼の浮ついた態度は既に、今までのような意図して誇張されたものではなくなっていた。

 その表情に現れた微細な変化を、あるいは感じ取ったのか。着せ替え隊員Aは満面の笑みを浮かべると、スケッチブックを捲った。

「よし……それじゃあ結論イきますよッ! ティーアスたんはプレイヤーが着ている各装備の『奪いたさ』を判定して閾値を上回ったら鹵獲するんです。そしてこの『奪いたさ』の計算式には、一部()()()な指標が使われるッ! つまり……奪いたさ100を四つ装備するより、奪いたさマイナス100を三つと奪いたさ100を一つのほうが鹵獲の可能性は向上する!」

 邪魔するものなど何もない。サバイバアルは単なるサバイバアルとして、スケッチブックの上手くもない絵を見つめる。

「だから――結論は簡単です。着せたい部位の防具だけ気合の入ったヤツにして、残りを全部変態ファッションで固める! そうすればティーアスたんは()()()に目をやって、ほぼ確実に狙った装備を奪ってく

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

れるはずなんです!」

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

「……クソ」

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

「え?」

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 サバイバルは展開した()()()()()()()()をちらりと見て悪態をついた。ひとつはさっきと同じ毛並みで、もう一つは

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 『外部操作による強制ログアウトの実行』。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 猫にリセットボタンを

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 押されるなんて、一昔前の

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 ゲーマーなら

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 いくらでも

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。

 そんなこんなで、サバイバアルは美澄真澄になってしまった。

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