キッカケなんてものは結局のところ、なんでもいいのだ。
「カレーに生卵はあり得ないでしょ」
「
「ぐは」
「……ふぅ、ドロップが美味いぜ」
「」
「まったく、誤思考天誅誘導天誅なんて高度な戦術を京極に使いこなせるわけないのにな」
(走ってくる人影)
「あいつは結局、平等な条件下で戦うのが一番―――」
「天誅ァーーーッ!!!」
「甘いッ!」
「キレたからね僕は、"五戦"、"五戦"だよサンラクゥッ!!」
「上等だこの野郎ォッ!!隙を見て天誅!受けて立ってやるるるるァッ!!隙を見て天誅!……ふぅ、ドロップが美味いぜ」
「」
"五戦"においてプレイされるゲームは、ある程度の
例えばサンラクとカッツォについて考えてみよう。彼らが主なホームグラウンドとしていたのは『ベルセルク・オンライン・パッション』、バグだらけとは言え格闘ゲームだ。更に言えばカッツォは格闘ゲームを特に精力的にプレイするタイプのゲーマーであり、彼らの関係性は『格闘ゲーム』という軸を強く保持しているものであることがわかるだろう。
だからこそ、彼らが何回目かに行ったあの"五戦"では、すべての戦いが
もちろん、選定されるゲームは格闘ゲームに限らない。
"五戦"で遊ぶゲームにおける条件は三つ―――双方が容易に準備できること、時間がかかりすぎないこと、そして先述の
京極とサンラクの関係性における
その銀色の絆を目の前に、サンラクが選択した第一の
「いやいやいやいや」
京極は不平を述べた。
「ア?どうした京極、ほらネフィリムに乗り込め、空を往け!」
「いやいやいやいやいや」
「"五戦"には
サンラクは反論を述べた。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
京極はもう一度不満を述べた。
「何?」
「露骨なメタやめてもらえますか」
「?」
「いやあの、普通にこう……
「
「刀と産業廃棄物を一緒にしないでもらえますゥ!?」
「プロペラもある」
「
「さらには最終手段として自爆を行うことも可能だ」
「いやそれは普通に自爆じゃん……」
「好きだろ?自爆」
「う……」
「オラやるぞやるぞ、ネフィリムに乗り込め、地を進め!」
「……ちょっとアセンしてくる」
◇
数十分後に訪れたのは、カウントダウンの開始だった。
【5】
サンラクの
前述の通り装備構成は基本的にキングフィッシャーそのままだが、唯一の相違点として
【4】
相対する京極の期待を一言で言い表すなら―――
脚部は高速機動の可能性を捨て切り、重量級機体向けのタンク脚を採用。武装が
【3】
両者の共通点を探すのは難しい。超軽量級と重量級であり、
(―――ぶった斬ってやる!)
(―――斬り刻んでやる!)
【2】
―――どちらも、
【1】
エフェクトが散り、世界が次の段階に、
【0】
突入する。
剣戟が発生した。
(ッ!)
仕掛けたのはキングフィッシャー、
だからこそ、棒は
(……いける)
京極は確信した。
トライアイの選択に間違いはなかった。サンラクの事だからどうせバカみたいなスピードの機体を使ってくるに決まっている、そうだとすれば己が注力すべきは
(
再び、視界の中の翡翠色がその面積を増して、残像すら捉えきれない勢いで迫って来る―――構える準備は十分だ、角度、タイミング、装備。すべてを頭の中に入れたうえで、かつてあの狂想曲の中で会得した迎撃技
キングフィッシャーが変形した。
(は?)
鋭角方向転換変形……両足の爪先に力を入れながら人差し指でコンソール操作して他の指の動きで武装起動。かつて京極が挑戦し、ダメだったのでもういいやとなって今のような
そんなはずはない、京極は困惑した。キングフィッシャーのコンセプトは
(……そうか、
超熱棒二刀流は排熱効率を二倍にし、その分強化に必要な時間も二倍にする。それはつまり、その分エネルギー回復速度をケチっていいということでもある。
本来、
「……土下座トランスフォーム式……抜刀、天誅」
そう呟いたのは、果たしてどちらのプレイヤーだったのだろう?
"五戦"第一『
勝者……サンラク
「いやいやいやいや」
サンラクは不平を述べた。
「ん?どうしたんだいサンラク」
「露骨なメタァーーーッ!!!露骨なメタァーーーッ!!」
「おやおや何の話さ……君の苦手なゲームジャンルがノベルゲーなうえに恋愛シミュレーションと言うカテゴリには若干のトラウマを抱えてすらいることは知ってるけど、特にこの選定に意図は無いよ」
「そうなんだ!刀は?」
「ヘアスタイルプリセットには入ってるね」
「そうだね、
「先にやってきたのそっちだからね」
「開き直りやがった……」
「さあ行こうサンラク、
「
◇
『メルトダウン・ロマンス!オンライン
このゲームの特徴はやはり
基本的構造はノベルゲーム……現在主流と化したフルダイブVRというプラットフォームにおいては、NPCを相手に延々と台本を読み上げ、演劇めいたことを行うジャンル。京極の言う通り、サンラクが珍しく苦手とする分野だ。だが、その本質は―――
行動値40
選択肢:
◆挨拶(5)
◆挨拶2(5)
◆走り去る(10)
◆脈絡もなく殴り飛ばす(20)
◆告白(100)
◇続きを読む◇
―――お互いが、NPCを
◇
(……『挨拶2』だな)
持ち前の思考入力技術で瞬時に選択を行うと、宙に一瞬瞬いた-5の表示を傍に、
(うーん……ここは『挨拶8』かな?)
京極の戦闘スタイルは本質的に
1つの
(ふむ……ここはパスにしておくか)
「休む」を選択した
(サンラク、そう来るか……だったら!)
ここで京
(……なるほど、背景を移動することで特殊ギミックを狙うって寸法か……だが甘いッ!)
「脈絡もなく殴り飛ばす」の効果で京
(そして、さらに―――)
行動値が全損した状態で行動が行えるわけがない、京
(……「膝蹴り」!)
行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!
(……勝ったな)
◇
「負けた……??」
リザルト画面を前に愕然とするサンラクの肩を、勝利の誇りを顔に浮かべた京極が叩く。
「残念だったねサンラク」
「……なぜ?」
「え、いやこれそういうゲームじゃないでしょ」
「?」
「"恋愛"を演じたうえで
「?????ラブクロックではこれでよかったんだけど」
「ごめん、僕には君が危険な領域にいることしかわからないよ」
「おかしくない?採点基準を公表すべき」
「後日じっくりレクチャーしてあげるよ……」
"五戦"第二『メルトダウン・ロマンス!オンライン
勝者……京極
「いや、何?」
京極は疑問を述べた。
「?何って、空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲームだけど」
「正式名称は?」
「……」
「急に黙らないで?」
「…………世の中には、時として」
「いやわかったじゃあ百歩譲って名前については良いよ!刀は?????????????」
「まあ安心しろ、このゲーム存在しないものの方が
「で、刀は
「…………」
「おい」
◇
諸事情により正式名称を避け「空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲーム」と通称されるそのゲームは、一言で言うと
このゲームにおける弾丸は、とんでもなく素直な挙動を取る……落ちない、遅れない、曲がらない。恐ろしいほど単純に設計された物理エンジンはシューティングゲームというジャンルにおける各種の煩雑な要素……つまるところ
そう、だからこそ―――再び言うならば、このゲームはクイックドローなのだ。ただ
―――このゲームの対戦における、勝者となる。
◇
サンラクは勝利を確信した。
このゲームにおけるクイックドローについて、彼はもはや知り尽くしていると言っても過言ではなかった。そしてこのゲームにクイックドロー以上の要素は無いので、実質的にこのゲーム全てを知り尽くしていると言い換えることができた。いかに単純なゲームとは言え、京極のようについさっきダウンロードを終えたプレイヤーと、彼のようにかつて貴重な人生を十数時間にわたり費やしたプレイヤーの間には、歴然とした
【GAME START】
地獄のように安っぽい音声が、地獄のように安っぽいテロップと共に、
特に加速したりも減速したりもしない銃弾が、そこそこの速度で京極に吸い込まれる―――勝った。サンラクは確信し、
―――ドン―――
驚愕した。
状況は理解している、
「……あいつ、弾斬りはできなかったはずだが―――」
対戦相手の、成長。
呟きながら……もう1発を、続けざまに撃つ。本来ライフルとしては設計されていないらしいこのゲームにおける銃は、普通に連射することが可能だ……京極も同じく連射を行ったようで、若干の
そこまで考えて、サンラクは目を見張った。
―――ギュン―――
京極が
サンラクは知らなかった……彼女の大きな強みは単純精度……即ち、スペック統一時のアドバンテージにある、という事を。その瞬間に成し遂げられたのは、例え
「迎撃、天誅……」
【YOU LOSE】
地獄のように安っぽいラベルと、地獄のように安っぽい効果音が、彼の敗北を告げていた。
"五戦"第三『空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲーム』
勝者……京極
「い……」
「突発天誅先回り天誅先回り天誅先回り天誅ゥ!」
"五戦"第四『辻斬・
勝者……サンラク
「……なあ」
「何だい?」
「本当に
「いいんだよ……というかそれって今聞くことではなくない?」
「いやだって、幕末ではとりあえず天誅してからでも遅くないし……」
「結構遅いと思うけど……」
「まあアレだ……」
「ああ」
「
◇
"五戦"における五本目のゲームは、双方の話し合いによって決定される。だからこそ、関係性の織り成す
かれらの軸とはすなわち接点、関係性の重心を持つゲーム、つまるところ―――
◇
銃弾が飛んだ。
空を切るそれは尽く回避され、両者の判断材料の一つとして戦闘における役目を終える……当の発砲者であるサンラクは遠距離を捨てることを決意したらしく、頭上にハンドガンを投げ飛ばし……瞬迷の末に選択されたのは
「刀舞々【轟地進】ッ!」
「っ……
スキルエフェクトがサンラクへの攻撃を示し、また別のスキルエフェクトがサンラクによる防御を示す。光が融け合い、第三の色が共通部分に発生する。効果音が遅れて響き始める頃には、両者はそれを避けるように後退している。
瞬刻の先、再び激突が起こる……京極の装備に変化はないが、サンラクは盾を逆手持ちの直剣に変更している。より多くのステップに渡る攻防戦を想定した装備だ。このゲームにおいて武器はデフォルトで順手持ちになるよう出現するため、それをあえて修正したのには何かしら理由があるはずだ―――今のところは本人にしかわからない、理由が。
スキルエフェクトが、先ほどよりはまばらにせよやはり散る。なぜまばらになっているかというと、両者ともに攻撃系よりもバフ系のスキルを重点的に使用しているからだ。武器の変更に伴いエフェクトの形状が若干変化するから、それが全体の
「
それは
「
刹那の、出来事だった。
"五戦"第五―――
『シャングリラ・フロンティア』
勝利は、どちらの手に。