フロンティアへの幾星霜(短編集)   作:Z-LAEGA

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推奨前提知識:3巻特装版の特典小説


刃を持たず獣に立ちはだかったとして何ができる?そう、銃を撃ち放つことができる

キッカケなんてものは結局のところ、なんでもいいのだ。

 

「カレーに生卵はあり得ないでしょ」

 

配列演算挙動(ベクトライズ)天誅ァ~~~ッ!!」

 

「ぐは」

 

「……ふぅ、ドロップが美味いぜ」

 

「」

 

「まったく、誤思考天誅誘導天誅なんて高度な戦術を京極に使いこなせるわけないのにな」

 

(走ってくる人影)

 

「あいつは結局、平等な条件下で戦うのが一番―――」

 

「天誅ァーーーッ!!!」

 

「甘いッ!」

 

「キレたからね僕は、"五戦"、"五戦"だよサンラクゥッ!!」

 

「上等だこの野郎ォッ!!隙を見て天誅!受けて立ってやるるるるァッ!!隙を見て天誅!……ふぅ、ドロップが美味いぜ」

 

「」

 

刃を持たず獣に立ちはだかったとして何ができる?そう、銃を撃ち放つことができる

 

"五戦"においてプレイされるゲームは、ある程度の()()()を帯びて選定される。

例えばサンラクとカッツォについて考えてみよう。彼らが主なホームグラウンドとしていたのは『ベルセルク・オンライン・パッション』、バグだらけとは言え格闘ゲームだ。更に言えばカッツォは格闘ゲームを特に精力的にプレイするタイプのゲーマーであり、彼らの関係性は『格闘ゲーム』という軸を強く保持しているものであることがわかるだろう。

だからこそ、彼らが何回目かに行ったあの"五戦"では、すべての戦いが動き(アクション)に、(コリジョン)に満ちていた。

 

もちろん、選定されるゲームは格闘ゲームに限らない。

 

"五戦"で遊ぶゲームにおける条件は三つ―――双方が容易に準備できること、時間がかかりすぎないこと、そして先述の()に沿っていることだ。

京極とサンラクの関係性における()とは、即ち双方が握る鋭なる剣―――(カタナ)

その銀色の絆を目の前に、サンラクが選択した第一の舞台(ゲーム)とは―――

 

 

 

 

"五戦"第一

Nephil(ネフィリ)im Ho(ム・ホ)llow(ロウ)

 

 

 

 

 

「いやいやいやいや」

 

京極は不平を述べた。

 

「ア?どうした京極、ほらネフィリムに乗り込め、空を往け!」

 

「いやいやいやいやいや」

 

「"五戦"には始点()終点()も存在する……だがなァ、静止()は絶対に存在しないんだよォ~~~ッ!!!」

 

サンラクは反論を述べた。

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」

 

京極はもう一度不満を述べた。

 

「何?」

 

「露骨なメタやめてもらえますか」

 

「?」

 

「いやあの、普通にこう……(ブレード)で戦うゲームを、想像してたんだけど」

 

(ブレード)ならあるぞ」

 

「刀と産業廃棄物を一緒にしないでもらえますゥ!?」

 

「プロペラもある」

 

羽根(ブレード)でもない!」

 

「さらには最終手段として自爆を行うことも可能だ」

 

「いやそれは普通に自爆じゃん……」

 

「好きだろ?自爆」

 

「う……」

 

「オラやるぞやるぞ、ネフィリムに乗り込め、地を進め!」

 

「……ちょっとアセンしてくる」

 

 

数十分後に訪れたのは、カウントダウンの開始だった。

 

【5】

 

サンラクの機体組立(アセンブル)は典型的な翡翠(カワセミ)ビルド、と言うより翡翠(キングフィッシャー)そのものだ。かつて電撃的に登場した彼がこれでもかと猛威を振るって見せた、雷撃的速度の翡翠(ヒスイ)色。まさにその単純(シンプル)な流線形が、再び再臨(フォール)した瞬間だった。

前述の通り装備構成は基本的にキングフィッシャーそのままだが、唯一の相違点として()()が挙げられる。かつて左腕に装備されたスナイパーレールガンは今は亡く、代わりに空いた装備欄(スロット)2()()()超熱棒(オーバーヒートロッド)に埋められている。それは全体として見れば二刀流、渡り鳥(サンラク)の親しんだ戦闘スタイルのうち一つだった。

 

【4】

 

相対する京極の期待を一言で言い表すなら―――()()だ。移動速度(AGI)を代償に増しに増した防御装甲(VIT)が全身を包み込み、()()()として、腰に収納された一振りの九光刃(カラザノマ=ブレード)()()効果も有している……尤も、相対する機翠が持つ(アイカメラ)の鋭利さを考えれば、それは無意味な要素とも言えたのだが。

脚部は高速機動の可能性を捨て切り、重量級機体向けのタンク脚を採用。武装が九光刃(カラザノマ=ブレード)僅か1本にも拘らずそこまでしなければならないという事は、それだけ多く、重い装甲とリアクターを積んでいるという事でもある。『テンチュウロボMkII』という機体名については、相手をモルドと間違えている可能性があった。紫に光る三眼(トライアイ)は動体視力に特化したものだが、重量機でどれほどの効果があるのかは未知数だ。

 

【3】

 

両者の共通点を探すのは難しい。超軽量級と重量級であり、常時空中浮遊(ミグラント)飛行性能皆無(フライトレス)であり、双眼(ボスアイ)三眼(トライアイ)である。両者が唯一共通していることは―――

 

(―――ぶった斬ってやる!)

 

(―――斬り刻んでやる!)

 

【2】

 

―――どちらも、(ブレード)のみを武装としていることだった。

 

【1】

 

エフェクトが散り、世界が次の段階に、

 

【0】

 

突入する。

 

 

 

剣戟が発生した。

 

(ッ!)

 

仕掛けたのはキングフィッシャー、()()()()()のはMkIIだ。

 

超熱棒(オーバーヒートロッド)は比較的優秀な近接武器だが、一つ弱点を持っている―――()()()()()()使()()()()ことだ。キングフィッシャーはその性質上常時排熱を行う機体だが、とは言え戦闘開始直後、それも二刀流排熱効率が二倍(一本あたりの熱は半減)では十分な攻撃力を有せない。たとえどんなに速く空を駆けようが、相手を破らない限り勝利は掴めない。

 

だからこそ、棒は反動(カウンターダメージ)を伴って弾かれた。

 

(……いける)

 

京極は確信した。

トライアイの選択に間違いはなかった。サンラクの事だからどうせバカみたいなスピードの機体を使ってくるに決まっている、そうだとすれば己が注力すべきは()()だと考えて行った、その選択には。もしも、この調子で上手くメタが嵌っていたとすれば―――

 

()()()

 

再び、視界の中の翡翠色がその面積を増して、残像すら捉えきれない勢いで迫って来る―――構える準備は十分だ、角度、タイミング、装備。すべてを頭の中に入れたうえで、かつてあの狂想曲の中で会得した迎撃技対「盾・台・跳」式天誅専用台視点迎撃後袋叩き天誅を振るうのみ―――

 

キングフィッシャーが変形した。

 

(は?)

 

鋭角方向転換変形……両足の爪先に力を入れながら人差し指でコンソール操作して他の指の動きで武装起動。かつて京極が挑戦し、ダメだったのでもういいやとなって今のようなカウンタータイプ(棒立ち案山子)スタイルに逃げることとなった高等テクニック。あるいは、()()()()()()()

 

そんなはずはない、京極は困惑した。キングフィッシャーのコンセプトは()()()()()、3本目の武器……己の機体を貫き、今まさに装甲値と耐久値をレッドゾーンに叩き落しつつあるエネルギーブレードなんて、積み込む余裕があるはずが無い……いや。

 

(……そうか、()()()……!)

 

超熱棒二刀流は排熱効率を二倍にし、その分強化に必要な時間も二倍にする。それはつまり、その分エネルギー回復速度をケチっていいということでもある。

本来、翡翠(カワセミ)ビルドの機体は比較的重いジェネレータを積み込むものだ。だが、排熱速度がそれを不要とするほどに高速化したならば……

 

「……土下座トランスフォーム式……抜刀、天誅」

 

そう呟いたのは、果たしてどちらのプレイヤーだったのだろう?

 

 

 

"五戦"第一『Nephil(ネフィリ)im Ho(ム・ホ)llow(ロウ)

勝者……サンラク

 

 

 

 

"五戦"第二

『メルトダウン・ロマンス!オンラインZZ(ツヴァイゼータ)~恋心溶解注意報~BEST PRICE Edition』

 

 

 

 

 

「いやいやいやいや」

 

サンラクは不平を述べた。

 

「ん?どうしたんだいサンラク」

 

「露骨なメタァーーーッ!!!露骨なメタァーーーッ!!」

 

「おやおや何の話さ……君の苦手なゲームジャンルがノベルゲーなうえに恋愛シミュレーションと言うカテゴリには若干のトラウマを抱えてすらいることは知ってるけど、特にこの選定に意図は無いよ」

 

「そうなんだ!刀は?」

 

「ヘアスタイルプリセットには入ってるね」

 

「そうだね、三つ編み(ブレード)だね!刀は?」

 

「先にやってきたのそっちだからね」

 

「開き直りやがった……」

 

「さあ行こうサンラク、動き出せ(ムーブ)!」

 

動画(ムービー)ゲー嫌いなんだけど……」

 

 

『メルトダウン・ロマンス!オンラインZZ(ツヴァイゼータ)~恋心溶解注意報~BEST PRICE Edition』はオフライン恋愛シミュレーションゲーム『メルトダウン・ロマンス!~オモイを貫く警報音~』の()()()()()()()()である『メルトダウン・ロマンス!オンライン~恋心溶解注意報~』のDC(ディレクターズカット)版である『メルトダウン・ロマンス!オンラインZ(ゼータ)~恋心溶解注意報~』のDLC同梱版である『メルトダウン・ロマンス!オンラインZZ(ツヴァイゼータ)~恋心溶解注意報~』の廉価(ベストプライス)版だ。三回のマイナーチェンジに伴い幾つかの修正が加えられているが、あまり大きなものではなく微調整の類……少なくとも、パッチでクソゲーが良ゲーくらいまで来たり、或いは神ゲーがクソゲーと化したりするようなものではない。

 

このゲームの特徴はやはり()()()()()()()()にあると言える。そう、即ち『オンライン恋愛シミュレーションゲーム』……サンラクに聞かせれば「え、あれ実在したの?」などといった意味不明な返答を行うこと請け合いのそれだ。

基本的構造はノベルゲーム……現在主流と化したフルダイブVRというプラットフォームにおいては、NPCを相手に延々と台本を読み上げ、演劇めいたことを行うジャンル。京極の言う通り、サンラクが珍しく苦手とする分野だ。だが、その本質は―――

 

焙鮭(あぶりざけ)サンラク

行動値40

選択肢:

◆挨拶(5)

◆挨拶2(5)

◆走り去る(10)

◆脈絡もなく殴り飛ばす(20)

◆告白(100)

◇続きを読む◇

 

―――お互いが、NPCを()()()()ことにある。

 

 

(……『挨拶2』だな)

 

持ち前の思考入力技術で瞬時に選択を行うと、宙に一瞬瞬いた-5の表示を傍に、焙鮭(あぶりざけ)サンラクは「よう、京(アルティメット)」とまるで意思を感じさせない表情の中発言した。

 

(うーん……ここは『挨拶8』かな?)

 

京極の戦闘スタイルは本質的に情報(データ)の収集により己の勝率を上げるタイプだ。そして、それは恋愛シミュレーションゲームにおいても変わらない。だからこそ彼女は相手と自己の関係性を分析し、-8の表示を浴びながら「焙鮭(あぶりざけ)サンラクじゃないか、奇遇だね」と発言した。

 

1つの往復(ターン)が終了したことで、両者の頭上を+6の表示が掠める。

 

(ふむ……ここはパスにしておくか)

 

「休む」を選択した焙鮭(あぶりざけ)サンラクは、+10の表示と共に棒立ち状態を続ける。

 

(サンラク、そう来るか……だったら!)

 

ここで京(アルティメット)が大きな行動に出る!-30の表示を突き破り、焙鮭(あぶりざけ)サンラクを()()()()―――()()した!

 

省略(スキップ)された移動イベントの果て、再びの+6を受けつつも、二人は京(アルティメット)の家にいた。

 

(……なるほど、背景を移動することで特殊ギミックを狙うって寸法か……だが甘いッ!)

 

「脈絡もなく殴り飛ばす」の効果で京(アルティメット)が吹っ飛び、更に行動値を()()させる―――「脈絡もなく殴り飛ばす」は対象者の行動値を20減らす効果があるのだ。

 

(そして、さらに―――)

 

行動値が全損した状態で行動が行えるわけがない、京(アルティメット)の手番は自動的にスキップされ、+6がもう一度瞬く……そこへ、焙鮭(あぶりざけ)サンラクの追撃が加えられる。

 

(……「膝蹴り」!)

 

行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6

 

(……勝ったな)

 

焙鮭(あぶりざけ)サンラクがそう確信するころには、リザルトの表示は目前まで迫っていた。

 

 

「負けた……??」

 

リザルト画面を前に愕然とするサンラクの肩を、勝利の誇りを顔に浮かべた京極が叩く。

 

「残念だったねサンラク」

 

「……なぜ?」

 

「え、いやこれそういうゲームじゃないでしょ」

 

「?」

 

「"恋愛"を演じたうえで()()()を競うゲーム……だよね?」

 

「?????ラブクロックではこれでよかったんだけど」

 

「ごめん、僕には君が危険な領域にいることしかわからないよ」

 

「おかしくない?採点基準を公表すべき」

 

「後日じっくりレクチャーしてあげるよ……」

 

 

 

"五戦"第二『メルトダウン・ロマンス!オンラインZZ(ツヴァイゼータ)~恋心溶解注意報~BEST PRICE Edition』

勝者……京極

 

 

 

 

"五戦"第三

『空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲーム』

 

 

 

 

 

「いや、何?」

 

京極は疑問を述べた。

 

「?何って、空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲームだけど」

 

「正式名称は?」

 

「……」

 

「急に黙らないで?」

 

「…………世の中には、時として」

 

「いやわかったじゃあ百歩譲って名前については良いよ!刀は?????????????」

 

「まあ安心しろ、このゲーム存在しないものの方が多い(マジョリティだ)から」

 

「で、刀は少ない(マイノリティ)側に入ってるの?」

 

「…………」

 

「おい」

 

 

諸事情により正式名称を避け「空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲーム」と通称されるそのゲームは、一言で言うと()()()()()()()()()である。なお、一言ですべてを表せるので、二言以上で言うことは基本的に無いと考えていい。

このゲームにおける弾丸は、とんでもなく素直な挙動を取る……落ちない、遅れない、曲がらない。恐ろしいほど単純に設計された物理エンジンはシューティングゲームというジャンルにおける各種の煩雑な要素……つまるところ落ちる(ゼロイン)遅れる(偏差撃ち)曲がる(リコイルコントロール)などの完全な排除に成功し、極めて純粋な心持ちで弾丸を撃ち放つことを可能にしている。なお、あまりに要素を削りすぎたため、プレイヤーに移動のコマンドは無い。重力も無い。

そう、だからこそ―――再び言うならば、このゲームはクイックドローなのだ。ただ()()()()()というだけのプログラムを施された銃弾は、本体の移動が存在しない以上単純な()()()()によってのみ差を発生させる。銃弾を取り出し、リロードを行い、撃つ―――そのステップを相手よりも速く踏めたものが―――

 

―――このゲームの対戦における、勝者となる。

 

 

サンラクは勝利を確信した。

 

このゲームにおけるクイックドローについて、彼はもはや知り尽くしていると言っても過言ではなかった。そしてこのゲームにクイックドロー以上の要素は無いので、実質的にこのゲーム全てを知り尽くしていると言い換えることができた。いかに単純なゲームとは言え、京極のようについさっきダウンロードを終えたプレイヤーと、彼のようにかつて貴重な人生を十数時間にわたり費やしたプレイヤーの間には、歴然とした()が生まれざるを得ないのだ―――この単純なゲームでは、なおさらに。

 

【GAME START】

 

地獄のように安っぽい音声が、地獄のように安っぽいテロップと共に、争い(ゲーム)のはじまりを宣言する。サンラクはUIを操作してよくわからない形状の銃(通称:対物ライフル)を取り出し、よくわからないマガジンを装填し()()()()()()した。取り出し時点での銃の向きは手の方向に依存する……ある意味で、シャンフロに似た仕様だ。

特に加速したりも減速したりもしない銃弾が、そこそこの速度で京極に吸い込まれる―――勝った。サンラクは確信し、

 

―――ドン―――

 

驚愕した。

状況は理解している、()()()()()()……このゲームの最高等テクニックにして、唯一速度対抗ゲー以外の側面として存在するテクニック……それこそが、撃ち落し。しかし、サンラクの驚愕の対象は()()()()()()ではなく―――

 

「……あいつ、弾斬りはできなかったはずだが―――」

 

対戦相手の、成長。

呟きながら……もう1発を、続けざまに撃つ。本来ライフルとしては設計されていないらしいこのゲームにおける銃は、普通に連射することが可能だ……京極も同じく連射を行ったようで、若干の遅延(ラグ)の後に銃声が響く。しかし遅い、このゲームは先に死んだ方がそのまま敗者となる……若干遅れこそしたが―――

そこまで考えて、サンラクは目を見張った。

 

―――ギュン―――

 

京極が()()()()()()()()のを見たからだ。

サンラクは知らなかった……彼女の大きな強みは単純精度……即ち、スペック統一時のアドバンテージにある、という事を。その瞬間に成し遂げられたのは、例え世界(ゲーム)が変わろうとも、他ならぬ―――

 

「迎撃、天誅……」

 

【YOU LOSE】

 

地獄のように安っぽいラベルと、地獄のように安っぽい効果音が、彼の敗北を告げていた。

 

 

 

"五戦"第三『空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲーム』

勝者……京極

 

 

 

 

"五戦"第四

『辻斬・狂想曲(カプリッチォ):オンライン』

 

 

 

 

「い……」

 

「突発天誅先回り天誅先回り天誅先回り天誅ゥ!」

 

 

 

"五戦"第四『辻斬・狂想曲(カプリッチォ):オンライン』

勝者……サンラク

 

 

 

 

"五戦"第五―――

 

 

 

 

「……なあ」

 

「何だい?」

 

「本当に()()()でいいのか?」

 

「いいんだよ……というかそれって今聞くことではなくない?」

 

「いやだって、幕末ではとりあえず天誅してからでも遅くないし……」

 

「結構遅いと思うけど……」

 

「まあアレだ……」

 

「ああ」

 

()()で、行くからな」

 

 

"五戦"における五本目のゲームは、双方の話し合いによって決定される。だからこそ、関係性の織り成す()の集大成とでも言うべきタイトルが選択されることが常だ。であれば、京極とサンラクの()―――それは、いったいどこに存在するだろう。『VR剣道教室・極 』?違う、あのゲームはあくまで補強材に過ぎない。『辻斬・狂想曲:オンライン』?違う、あのゲームは軸から伸びる極めて太いだけのただの枝だ。

かれらの軸とはすなわち接点、関係性の重心を持つゲーム、つまるところ―――

 

 

銃弾が飛んだ。

 

空を切るそれは尽く回避され、両者の判断材料の一つとして戦闘における役目を終える……当の発砲者であるサンラクは遠距離を捨てることを決意したらしく、頭上にハンドガンを投げ飛ばし……瞬迷の末に選択されたのは小盾(バックラー)、対する京極は―――()()()()。猪突猛進、という四字熟語がサンラクの脳裏に瞬いた。

 

「刀舞々【轟地進】ッ!」

 

「っ……盾士の憤撃(レイジングシールド)!」

 

スキルエフェクトがサンラクへの攻撃を示し、また別のスキルエフェクトがサンラクによる防御を示す。光が融け合い、第三の色が共通部分に発生する。効果音が遅れて響き始める頃には、両者はそれを避けるように後退している。

瞬刻の先、再び激突が起こる……京極の装備に変化はないが、サンラクは盾を逆手持ちの直剣に変更している。より多くのステップに渡る攻防戦を想定した装備だ。このゲームにおいて武器はデフォルトで順手持ちになるよう出現するため、それをあえて修正したのには何かしら理由があるはずだ―――今のところは本人にしかわからない、理由が。

 

スキルエフェクトが、先ほどよりはまばらにせよやはり散る。なぜまばらになっているかというと、両者ともに攻撃系よりもバフ系のスキルを重点的に使用しているからだ。武器の変更に伴いエフェクトの形状が若干変化するから、それが全体の()()()雰囲気に若干の変化を加え続ける。

 

擬術陣装方換(トランザクト=スライド)ッ!」「星海飛脚(アステ・ランナー)!」

 

それは()()()()()()()であり、あるいは速さ比べであり、

 

瞬刻視界(モーメントサイト)!」「永劫の眼(クロノスタキサイア)ッ!」

 

刹那の、出来事だった。

 

 

 

"五戦"第五―――

『シャングリラ・フロンティア』

勝利は、どちらの手に。

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