フロンティアへの幾星霜(短編集)   作:Z-LAEGA

58 / 64
マジアカ中間フォームお披露目回二次大会参加作品


電脳魔法少女マジカル☆アカネVS迫撃魔法少女フィジカル☆シルヴィアANOTHER第8話「切り開く/CLEAR」

【前回までのあらすじ】

キマシの塔に巣食うブルーウォール四天王のうち1人を打倒し、残り3人が自滅したことで勝利を収めたマジカル☆アカネだけど……大変!自滅の中でも特に自滅ポイントの高い自滅をキメたと思われていた揺籃のエタニティゼロが突然襲い掛かってきた!あまりに突然で対処できず闇の宝珠を奪われてしまい、放たれた漆黒のオーラに包まれて……気付いたら立っていたそこは、マジカル☆アカネ第1話の時代!?基本フォームしか使えなくなったアカネ、一体どうなるの!?

 

 

「ノワル―――ッッッ!」

 

アカネは息を吸い込む。今も昔も―――いや、今は過去なので、()()()()()と表現するべきかもしれないが―――故郷の夕焼けは燃え盛る炎のように豪快で、極めて見慣れた()()といえる。一方、目の前で困惑するキメラヘッド・サンラク基本形態(シュービル)は、その妙にぬるぬると動く巨大化形態も含め、最近はほとんど見かけない……いわば、懐かしい()()だ。

そんな思いを胸に抱いて、アカネは精一杯吸い込んだ橙色の空気を、標的めがけ―――

 

「ストリィィィィィムッッッ!!!!」

 

これでもかと、撃ち放った。

 

「ぐべ」

 

「さ、サンラクーっ!」

 

また別の声が響く……外道衆が一人、カッツォの物だ。フィジカル☆シルヴィアに挽き肉にされて以降なので、結構久しぶりに見ることになる。

 

「……撤収するよカッツォ君、バカみたいにデカいイレギュラーがいる」

 

言い放ったのはこれまた外道衆が一人、鉛筆である。渾身の自爆を決めて以来なので、久し振りというほどでもない。

 

「オーケー……デコイにとかしないよね?」

 

「……」

 

「しないよね?」

 

「……まだね」

 

「デコイとかに()()()()しないよね?」

 

する。(無印第38話参照)

 

「…………」

 

「否定して!?ねえ否定してよ!!」

 

無言を貫く鉛筆と、未だ己の運命を知らぬカッツォは、開かれた謎ゲートへと去っていった。

 

「……ふぅ」

 

ゲートが閉じると同時に変身を解除すると、アカネは思わず溜息をついた。

 

「……何がどうなっているのだ」

 

ポケットからひょこりと首を出したノワリンも、同じく溜息をついた。

 

 

「…………タイムトラベル、ですか?」

 

「うむ」

 

アカネの問いに、湯舟をぷかぷかするノワリンが答えた。2()()()というアドバンテージをもってなお第1話の戦闘シーンで服が汚れるイベント、及びそれに起因した第2話冒頭での入浴シーンは避けられないものだったようで、画面の大部分を謎の光が占拠している。

 

「えっと、それは……」

 

ざばん、と妙に透明度の低い湯に浸かりつつ、

 

「どういう……ことでしょう?」

 

アカネは聞いた。

 

()いか?まず、この世界には2つの()()が存在するのだ……即ち、光と闇だ」

 

「そうなんですね!」

 

相槌が打たれ、水面を波紋が駆ける。

ノワリンは水面から飛び立つと、妙に透明度の高い水が汲まれた桶のふもとに立つ、どうやら、例え話に使うらしい……アカネはそれを見るために湯船から乗り出し、謎の光の面積を増やした。

 

「光と闇は……言うなれば、()()のようなものだ」

 

「ふむふむ」

 

「器の対極にそれぞれ位置し、波及し合う波紋である」

 

「なるほど」

 

「例えば……お前と我の関係で例えよう。お前は光、我は闇の……」

 

「ノワリンさんはどちらかというと光だと思います!」

 

「口を慎むのだ!我が闇と決めたからには闇である!」

 

「はい!」

 

「……とにかく、このように」

 

ノワリンは桶に前足を伸ばすと、直径上の互いに向かい合う二つの点を示す。

 

「光の波紋と闇の波紋が存在し……」

 

そして軽く水面に触れさせた前足で、両点を中心に波紋を生み出す。

 

「見よ……二つの波紋は外側に影響を与えつつ、内側で打ち消し合っている……これが、光と闇の()()()()というものだ」

 

「なるほど!」

 

「ほとんどの場合、このバランスが極端に偏ることは無い……ほとんどの場合偏りと言えるほど属性の()()が多くないからだ……例えばあの刀が粉砕されたと嘆いていた奴(京極)のように、そもそもの火力が不足しているわけだ」

 

ノワリンは水面に軽く触れ、さざ波にも満たないような波紋を作り出した。

 

「総数が多かったとしても、例えばお前の『リミットオーバー』のように……」

 

ノワリンは桶に飛び込み、水柱と共に巨大な波紋を作り出した。

 

「……()()()()()()()()()()()ことで、打ち消してバランスを取っているわけだ」

 

そして桶から飛び出し、再び作り出した波紋によって両者を相殺させた。

 

「だが」

 

「だが?」

 

「あのエタニティゼロとかいう輩は……極端なほどに()()()()()()()。元々闇の側に天秤が傾いていたのを、更にお前から奪った闇の宝珠で強化した」

 

「闇に偏ると何が起こるんですか?」

 

「うむ、簡単に言うとだな……」

 

ノワリンは電脳魔法も交えた全力の加速で桶にこれでもかと突っ込み、()()()()()()

 

「こうなる」

 

そして、そう言った。

 

「なるほど、タイムトラベルくらい起こっても不思議じゃないって事ですね!ありがとうございます!ところでこの桶どうしましょう!?」

 

「……む?何か不都合があるか」

 

「結構ありますね!」

 

その時。

 

「何だ、と―――!?」

 

突如として……()()()()()()

 

驚いて湯船から飛び出してノワリンの傍に駆け寄り、謎の光をさらに増やしたアカネが見たものは―――

 

「……これ、は」

 

湯舟を走る、巨大な波紋だった。

 

 

服を着て、何かを両親に謂われる前に外へと飛び出したアカネの前には……彼女の大方の予想通り、揺籃のエタニティゼロが立ちふさがっていた。

 

「え、えっと……こんにちは!」

 

確実に自身をタイムトラベルに巻き込んだ相手に行うものではないアカネの挨拶を、ある種当然、ある種意外にもエタニティゼロはスルーし……代わりに、

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ……!」

 

そう呟いた。

 

「え、えっと」

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ…………!」

 

「エタニティゼロさーん!」

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」

 

「ノワリンさん、エタニティゼロさんがヤバいです!どうしましょう!」

 

「闇に呑まれているな」

 

「呑まれるとかあるんですね!」

 

「時間遡行を起こすほどの強大な闇であるからな……我が全力状態ならばともかく、一介の人間にはとても耐えきれんだろう」

 

「ノワリンさんはどちらかというと光だと思います!」

 

「口を慎むのだ!我が闇と決めたからには闇である!」

 

「はい!……ちなみに、どうして時間遡行なんてしようと思ったんでしょう?」

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」

 

「……分からないならば、それでいい」

 

「……?」

 

「ええい、とにかくエタニティゼロを討伐するのだ!奴を倒せれば、時間遡行も無効化されてすべてが元通りになるはずだ!」

 

「なるほど、わかりました―――じゃあ、行きますよ!」

 

「うむ!」

 

アカネはポーズを決めると、魔法の言葉(マジカルワード)を口にする。

 

「ドラゴン―――インストールッッッッッ!!!」

 

 

「つ……強くないですか!?」

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」

 

マジカル☆アカネ、端的に言ってピンチであった。

アカネの力は、現在かなりの制限を受けた状態にある。()()最強の形態であるリミットオーバーは宝珠が揃っていないため使えないし、リミテッドは宝珠の入手時に選択肢として塞がれてしまったし、ブラッキー★スターは()()()()()が原因で使えない……当事者には、そんなことは知る由も無いが。

とにかく、現在の彼女には()()()()()()()()()()()()……それは本来の1話や2話では何の問題も無いが、目の前に続編の中ボスの黒幕四天王の一人がいる場合その限りではない……端的に言って、スペックが足りていないのだ。

 

「くっ……えいやっ!」

 

かなりの力を込めたはずのパンチを、

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」

 

弾かれる。

 

「……それならっ……!!」

 

魔術強化(マジカルバフ)を踏まえたキックを、

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」

 

受け流される。

 

「こ、困りました……!」

 

このままだとダメだ……アカネは、そう確信しつつあった。

 

「ええと、何か弱点を狙うとか……」

 

これがもし第2話時点でのアカネならば、そのような考えは一切抱かず、目の前のエタニティゼロに突進し続けたかもしれない。

 

「いや、単純に火力が足りないんじゃダメですよね……」

 

だが……2回のスピンオフ、1回の劇場版、1回の続編、そして0.5回(放送中)の()()()()()()()()()()を経て。

 

「他の魔法少女に頼る、とか……?」

 

アカネは、ノワリンに、サンラクに、サイガ―ゼロに、ルストに、モルドに、京極に、シルヴィアに……少なからざる、影響を受けていた。

 

「あ、でも……この時代だと、魔法少女はまだ私しかいませんよね……」

 

だからこそ彼女は、ここで『一度作戦(チャート)を練ってみる』という選択肢に辿り着けたのだ。

 

「…………()()()()()()()()?」

 

そして、その作戦は成功する。

 

 

「ええと……この角を右!」

 

アカネは街を駆けていた。

 

エタニティゼロのステータスは、確かに続編の四天王がさらに最強アイテムの片割れで強化されただけあって高いものだ……だが、敏捷性(AGI)に関してはそこまででもない。何せ電脳魔法少女マジカル☆アカネは、電脳世界を掻き乱す外道衆を懲らしめるべく、マスコットのノワリンと共に電脳世界を駆け抜ける()()()()()()()の物語である―――その謳い文句は、やすやすと覆せるものではない。

 

「よし、ここを直進して……この公園!」

 

影すら置いていくような、或いは自分自身が影になるかのような速度で駆け込んだその空間で、アカネはある一点を、マジカルパワーで強化された視力により探索する。

 

「―――あった」

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」

 

背後から迫る声にも構わず、アカネは()()を引っこ抜く―――同時に取り出した光の宝珠をもう片方の手に携え、振り向いた先のエタニティゼロを……()()()()()。いや、()()()()と表現した方が正しいかもしれない。

それは本来決して活躍しない刃。破壊を運命として持ち、抗わせても抗いはせず、呑み込んだ光と共に砕け散った―――いや、今は過去なので、()()()()と表現するべきだろう。

 

「ドラゴン、()()()()()()!!」

 

その妖刀、名をバクマツムラマサという。

 

 

最初に発生したのは呪いだった。

 

妖刀だのなんだの言っているが、結局のところバクマツムラマサは呪いの装備に他ならない。持つものの精神を狂わせ、血に飢えさせる……アカネにとってもそれは例外ではなく、闇のオーラを放つバクマツムラマサから闇の感情が流れ込むのを、アカネは確かに感じていた。

 

だが―――()()()()()()()()()()

 

アカネには光の宝珠がある。本竜は光属性を認めないがノワリンもいる。何より―――()()()()()もいる。呪い(エンチャント)の装備を携えているにもかかわらず、あっという間に闇のオーラは粒子となって消えていき……アカネの体を包み込むのは、それとは真逆のまばゆい光だった。

 

衣装の細部が変化する。

光を踏まえ、カラーリングが白を基調としたものに変更される。

バクマツムラマサそのものが、溢れ出る輝き(ブライト)に耐え切れず、その形状をどこか清廉なものに変化させる。

 

「電脳少女マジカル☆アカネ―――ブライト✩☆✩エンチャント!」

 

変身を終えた光属性の戦士は、そう名乗った。

 

 

「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」

 

突進、バクマツムラマサを投擲する。エタニティゼロの高い防御力はしかし、本質的に()()であるバクマツムラマサを防ぐには十分ではない。高速で発光しながら刀が飛翔する様子は、端から見れば()()()のように見えただろう―――アカネはふとそんな思い付きをしたが、走ることに集中したかったので無視した。

光に包まれて吹かれる夜風の快感に浸りながらパンチを入れる。それは端から見れば確実に()()()()()()()だったのだが、アカネは既にそれを思いつくステップすら飛ばしていた。回収した刃で今度は斬り付け、相手が纏う闇色さえも、(エフェクト)で強引に照らし出す。

 

再び太陽を拝むのに、夜明けを待つ必要は無さそうだった。




「これくらいのボリューム少なめで30分くらいで書ける奴で問題ないよ」みたいな例を示すつもりが普通に5000文字書いてしまった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。