ウマ娘 彼の生きた証   作:ぽんきちたぬきまる

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第2章 9話

「ウララちゃん、がんばれー!!」 

 少年の声だ。学校の徒競走で彼女を応援していた。ウララは、必死に走っていた。が、途中で転倒し、他の男子や女子に追い抜かれていく。彼女は、立ち上がり、走り出した。だが、ゴール目前で彼女が躓き、また転倒した。

「ウララちゃん!」

 少年が叫ぶ。心配している様だった。彼女は、転倒により、たくさん怪我をしていた。

 それでも彼女は立ち上がり、前に進んだ。彼女は一生懸命に走っていた。

 

 マックイーンは、目を覚ました。夢の続きを何度も見るなんて、不思議だと思った。

「本当に…夢なのでしょうか?」

彼女は、カモミールの栞を手に持ち、呟いた。

 

 トレセン学園最強のチームは2つある。リギルとアルタイルだ。今回のトリニティオレースに、それぞれ、2グループずつ出走する。

リギル・アンファングには、

シンボリルドルフ、エアグルーヴ、サイレンススズカ、タイキシャトル。

 

リギル・ツヴァイト、

ビワハヤヒデ、エルコンドルパサー、グラスワンダー、フジキセキ

 

アルタイル・1号店、

タマモクロス、スーパークリーク、オグリキャップ、イナリワン

 

アルタイル・2号店、

ヒシアマゾン、メジロライアン、メジロドーベル、テイエムオペラオー

 

 どのグループも強豪ぞろいだった。

URAファイナルズで、優勝したメジロパーマーだが、出場を見送った。彼女は、チーム無所属で、人員の確保が困難と言っていた。

 URAチャンピオンの不在、これは、リギルとアルタイルの決戦と噂されていた。

 

 そして、トーナメント表を確認した際に発覚した事実は、予選を突破した際…

 スピカノープスは、リギル・アンファングと、アンタレス・2号店。

 脳筋ボンバーズは、リギル・ツヴァイトと、アンタレス・1号店に当たることが分かった。

「予選を突破しても、準決勝で強豪2グループと争うことになるか…」

 姫倉は、トーナメント表を眺めながら、ため息をついた。次の決勝へ行く条件は、グループ総合点数上位2位までだ。

「ま、強いウマ娘と戦うって機会は、大事だもんなぁ」

 彼は、カップに残っていたコーヒーを飲み干した。

 

 トリニティオレース予選、スピカノープスからは、スカーレット、ウオッカ、スペが出場した。

『トリニティオレースAブロック第1予選まもなく開始します』

『全ウマ娘、ゲートイン完了』

 

 ランプが点灯、ゲートが開く

『全ウマ娘、好スタートをきりました』

『位置取りが大事になってきますよ』

 スカーレットたちは、他グループに遅れないように集中していた。

 

「くっそ~、なんでスカーレットに負けるんだよ~」

 ウオッカは悔しそうに体を震わせる。4着だった。

「これで、あたしの3勝2敗ね」

 スカーレットは、3着だった。

「すごく緊張した…」

 全身全霊で走ったスぺは、1着だった。

「あいつら、大丈夫かな…」

 ウオッカは、脳筋ボンバーズの心配をした。

 

 夏の暑さは、まだまだ衰えてはいなかった。芝に強烈な日差しが照りつき、青々しさを強調させる。ついに、脳筋ボンバーズの予選当日だ。全員、イベントレースは初めてだ。控室では、緊張が走っていた。いや、1名呑気なウマ娘がいた。

「よーし!勝って弾みをつけるぞぉ!」

 ターボだった。

 相変わらず元気だと3人は、思っていた。

 マックイーンは、レース用の勝負服のポケットから、押し花の栞を出した。テイオーは、その栞に気づいた。

「あ、その花って…カモミール?」

 マックイーンは、テイオーの質問に、そうですわと、返答した。

「確か…カモミールの花言葉って…」

 テイオーは、彼女に花言葉を伝えた。

 そして、出走する3人は、右腕に赤いスカーフを巻いていた。テイオーの勝負服に付けられているマントと同じ色だ。

 

『今年初開催のトリニティオレースBブロック第1予選まもなく始まります』

 マックイーン、イクノ、ターボは各々ゲート内でスタートを待っていた。

『各ウマ娘、ゲートイン完了、出走準備整いました』

 マックイーンとイクノは、互いの目を見て頷く。2人はターボがいる方を向いたが、彼女が見えなかった。ターボの身長は146cmと小柄だが、ゲートから隠れるほどではない。とにかく2人は集中しようと前を向いた。

 ランプが点灯し、ゲートが開いた。

 

 轟音が鳴り響き、衝撃が走った。

 

「きゃ!なんですの!?」

「マックイーンさん、兎に角スタートしましょう!」

 2人は怯んだが、スタートした。横をみた、ターボはいなかった。前をみた、ターボがいた。およそ9バ身先にいた。

「え…」

 マックイーンは驚いていた。

 

『最初にカーブを抜けたのは、ツインターボ!』

『すぐ後方に、メジロマックイーンとイクノディクタス!』

『メジロマックイーン、追いすがる!』

『イクノディクタス粘る粘る!』

『メジロマックイーン、抜け出した!』

『イクノディクタスすごい末脚だ!』

『残り200』

『メジロマックイーン今、1着でゴール!』

『2着にイクノディクタス』

『3着にツインターボ』

 Bブロック第1予選、脳筋ボンバーズは総合1位を取った。

 

「夏合宿で聞いた轟音は、ターボのスタートダッシュだったのか…」

 テイオーは、観客席からスタートを見ていた。彼女の眼前、ゲート後ろの芝が大きくえぐれていた。彼女は上から見ていたため、ゲート内のターボが見えた。クラウチングスタートの体制を取っていた。その後、ゲートが開いたと同時に、ターボがとんでもない速度で飛び出した。気づけば、スタートダッシュで、2番手とは、9バ身のリードをつけていた。

 

「あのダッシュは驚異だな」

 テイオーの、更に上の観客席から見ていたシンボリルドルフは、そう呟く。隣にいるビワハヤヒデは頷いた。

 

 マックイーンとイクノは、芝で倒れているターボの元へかけ寄った。

「ターボ!先ほどのは、一体なんですの!?」

 大の字で倒れ、肩で息をしている彼女は、マックイーンの質問に答えた。

「ターボの…必殺技…」

「必殺技?」

 イクノは、ターボの傍で腰を下ろして、スタート、並びにゴール地点の芝を見た。ターボのスタート位置のみ、芝がえぐれていた。

「その名も…ターボダッシュ…」

 

 ターボダッシュ、5月から練習していた技だ。反発力を最大限生かし、スタートダッシュで多くのリードを得る技。しかし、成功までに、体制が安定せず、芝へ激突し、負傷、打撲と、痛い思いをたくさんした。それでも、彼女は、止めなかった。いつも我儘を聞いてくれる友人達の役に立ちたかった。3人の足を引っ張りたくなかった。

 その一心で彼女は、ようやく習得した。彼女だけの技を。

 

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