ウマ娘 彼の生きた証   作:ぽんきちたぬきまる

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2021.7.2 一部誤字を訂正


第2話

 マックイーンは夢を見ていた。幼い時の記憶だ。彼女は母の足元に抱き着く。

 どうしたの?と母が尋ねながら、膝を床に付き、目線を幼いマックイーンに合わせた。

「おばけさんがいた…」

 プルプルと震えながらマックイーンは母に伝えた。

 それを聞いた母は彼女を優しく抱き上げた。

 

 マックイーンは今もお化けや幽霊の類が苦手だ。

 それらは、〈影が無く、ガラスなどに姿が反射しない〉と本で知ったときは、やはりこの世の者ではないのだと納得していた。

 

 清々しい朝だ。

 マックイーンと、ルームメイトであるイクノディクタスは目を覚ました。食堂で朝食を取り、学園へ向かう。

 2人で向かっている最中、マックイーンはテイオーを見つけた。彼女も2人で登校している。

 青い髪を2つにまとめたツインテールのウマ娘で、小柄なテイオーより更に小柄だった。

 やはり彼女は、社交的なのだとマックイーンは感じた。

「あ、マックイーン!おはよう!」

 テイオーが、手を振り挨拶する。彼女も挨拶を返した。

「あ、隣の人は?」

「イクノディクタスさんですわ」

 僕はトウカイテイオー、宜しくね!とイクノディクタスに挨拶する。

「ええ、よろしくお願いします」

 イクノも笑顔で返す。

「あら、ツインターボ…テイオーさんのルームメイトだったのですか?」

 どうやら、ツインターボと呼ばれる青い髪のウマ娘と、イクノは知り合いらしい。

「いんや、ターボは違うよ、なんなら寮も違うし、何か気が合いそうだから話しかけて一緒に登校してただけ」

 にっと歯を見えるほどの笑顔で、ツインターボは答えた。元気が一杯という印象だった。

「ここで話すのもなんですわ、学園まで皆さんで行きましょう」

 マックイーンの掛け声で4人は寮から道路を挟んだ学園へ歩き出した。

 

 学園生活2日目、まだ授業は無く、午前中のオリエンテーションで終わった。

 マックイーンとテイオーは悩んでいる。自分たちが所属するチームを何にするかである。入学前にチームのことは聞いていた。

 学園で最強角と謳われるリギル、アルタイルの2つはある程度のレース実績がないと入れない。かといって、どこかのチームに入り、その後、その2つのどちらかに移籍しようと思ってはいなかった。

「どこに所属しようか?マックイーン決めた?」

 テイオーはマックイーンに尋ねる。

「いいえ、まだどこにも」

 ちなみにだが、必ずチームに所属するという義務はない。中にはチームに所属せずGⅠレースに勝ち続けているウマ娘がいる。

「あ」

 テイオーは、立ち止まる。何かを発見した様子だ。マックイーンは、彼女が見ている方向を見た。

 看板だ。写真が張り付けられており、3人のウマ娘がダートに頭から上半身ごと突っ込んでいる内容だった。

 更に、看板には、〈チームスピカ 入部しない奴はダートに埋めるぞ〉と記載されていた。

「センスが独特な…勧誘文句ですわね。」

 マックイーンは引いていた。

「こんなチームやばいよ…」

 テイオーはもっと引いていた。

 その2人に近づく影が3つ。マックイーンとテイオーの肩に手を置いた。2人は驚き、振り返る。

 そこに居たのは、栗毛を2つにまとめたウマ娘、短い黒髪のウマ娘、最後は、最も長身の芦毛のウマ娘だった。

 全員マックイーンとテイオーより身長が高く、サングラスとマスクを装着していた。

 2人は状況を呑み込めていなかったが、逃げた方が良いと本能が警鐘を鳴らしていた。

「スカーレット、ウオッカ、やぁっておしまい!」

 芦毛のウマ娘が指示を出す。

 名前を呼ばれた2人のウマ娘は2つのズタ袋を出し、マックイーンとテイオーに被せ、担いだ。あまりの手際の良さに2人は、抵抗すらできなかった。

 その様子を木の陰からターボは目撃していた。イクノーーッ!!と叫びながら、彼女たちが連れていかれた方向と逆に全速力で走り出す。

 途中ターボは、黒鹿毛のウマ娘とすれ違った。そのウマ娘は、驚いた様子で見ていた。

「あの全力疾走…スズカさんと似ている…」

 黒鹿毛のウマ娘は、小さく呟いた。

 

 マックイーンとテイオーは、どこかの建物まで連行されていた。座らせられ、ズタ袋を外される。2人は大きく息を吸った。ズタ袋の中は呼吸できたとは言え、息苦しかったからである。

 視界が開いた2人の前には、ウマ娘が3人いた。彼女たちは、サングラスとマスクを外していた。そしてその後ろに男性が立っていた。

 男性が口を開く。

「ようこそ、チームスピカへ!俺はトレーナーの姫倉だ」

 側頭部を刈り上げた長身の伊達男だった。

「私はダイワスカーレット」

 栗毛を二つ結びしたウマ娘。

「俺はウオッカ」

 パンクロックのような耳飾りをつけた黒髪のウマ娘。

「あたしは、リーダーのゴールドシップ」

 芦毛の長身のウマ娘。

「あの…僕たち、帰りたいんだけど」

 テイオーは、げんなりした顔で言う。

 マックイーンは、連行された事で動転しており、頭がフリーズしていた。

「今回、君たちを連れてきたのは訳がある」

 姫倉は、人差し指を天井に向けて立てた。

「チーム結成には、君らが不可欠でな。最低条件が4人以上のウマ娘。残り1人必要な時に、丁度2人いたからこれは運命だと思って連行した」

「ウマ攫いだよ…」

 テイオーは、ジト目で姫倉を見ていた。

「というわけで、これチーム名簿表。名前書いてくれ」

 ゴールドシップは右手に持っていた板を2人の前に出した。

「い…嫌ですわ!こんな無理矢理…」

 状況を飲み込め、フリーズから復活したマックイーンが拒否する。

 ゴールドシップは震えだす。

 え?何事?とマックイーンは思った。

「で…でも、あたしは、お前らと一緒に走りたくて…、チームが規定人数下回っちまったから、存続するには…2人が必要なんだよ…」

 ゴールドシップは泣いていた。

 その様子を見ているスカーレット、ウオッカ、姫倉は互いに顔を合わせ、同じことを思った。絶対嘘泣きやん、と。

 テイオーは、めっちゃ棒読みやん、と思っていた。

 マックイーンは…

「ちょ…ちょっとお待ちくださいませ!何も泣くことはないじゃないですか!?」

 単純でだまされやすかった。

「わ…わかりましたわ。私入部しますわ!メジロ家たる私には、お安い御用ですわ!」

 彼女は、動転してまともな思考ができていなかった。

 ゴールドシップ、スカーレット、ウオッカ、姫倉はよっしゃと声を揃えていった。

「仕方ない、僕も入るよ」

 テイオーの入部理由は、マックイーンが単純に心配なためだった。

 コンテナ小屋の外から声が聞こえる。

「ここだ!2人が連れられたのは!」

「突撃ッ!!!!」

 ドアを蹴破り、入ってきたのはターボとイクノだった。なぜか2人はバケツを被り、箒を右手に持ち、塵取りを左手に持ち武装していた。

「お前たちか!テイオーとマックイーンを攫ったのは!!」

 ターボが、ゴールドシップに近づき…彼女の鳩尾めがけて頭突きした。彼女は痛みに悶絶して床に伸びる。ターボは相手の腹筋の硬さに反射ダメージの受け、脳震盪を起こし、床に伸びた。

 マックイーンとテイオーは、突撃してきた2人に状況を説明した。

 

 ターボのゴールドシップの鳩尾頭突き事件から、1週間が経過した。

 授業は既に始まっており、チームスピカにて、テイオーが6月上旬、マックイーンが6月下旬のメイクデビュー戦に向けて練習をしていた。まず走り込みである。その後実際のレースを想定したスタートの練習。ウイニングライブ用のダンスの基礎レッスン。中々にハードであったが、意外にも姫倉トレーナーの指導は的確だった。

 

 マックイーンは追加で自主練を行っていた。

「よ!頑張ってるな、マックイーン!」

 夕凪光だ。

「光、お久しぶりですわ」

「追加で自主練か…気合入ってるな」

 もちろんですわと、マックイーンは返す。

「だがな、水を差すようで悪いが、根を詰めるのはよくないぜ」

 その時、マックイーン!とテイオーが彼女の名前を呼びながら、走ってきた。

「テイオー?どうしたのですか?」

 彼女は手に持っていた。飲料水を渡した。どうやらスポーツドリンクみたいだ。

「頑張りすぎると脱水症状になるよ。」

 ありがとうとマックイーンはお礼を言って、ペットボトルのキャップを開け、中の液体を飲んだ。

「ところでさ、マックイーン」

「なんですの?」

「さっき誰かと話していたの?」

 マックイーンは周りを見渡した。光はいつの間にかいなくなっていた。

 

 6月になり、テイオーはメイクデビュー戦で1着を飾る。

 そしてマックイーンも、メイクデビュー戦を1着でゴールした。2位とは15バ身差をつけていた。全力で走ったためか、緊張のためか、胸のドキドキが治まらない。そんな自分を落ち着け、応援に来ていたチームのもとへ向かった。

 

 マックイーンが出場する次のレースは、ホープフルステークスだ。メイクデビュー戦であれだけ差をつけたことがメディアに取り上げられ、トレセンの学園長より出場権をいただいた。

 マックイーンは、トレーナーから言い渡されたトレーニングを実施していた。

 その時、チームとは別のウマ娘がマックイーンに話しかけてきた。

 トレセン高等部1年のメジロパーマーだ。

「こんにちは、私はメジロパーマー。君はたしか、メジロマックイーンだったね?」

「はい!そうですわ。メジロパーマーさん」

 2人はメジロ家関係者だ。ただ、そこまでの接点は無かった。

「それと、さん付けはいいよ、なんかむず痒い」

「わ…わかりましたわ」

 コホンとマックイーンは咳ばらいをする。

「パーマー、貴女は出場レースの調整ですか?」

「まあね、マックイーンは次どのレースに出場するの?」

 パーマーは彼女に尋ねる。

「ホープフルステークスですわ。」

 GⅠレースか、とパーマーは返した。

「それじゃあ、私と走ってみる?」

「えっ、よいのですか?」

 学園に来てパーマーのことは、ウマ伝に聞いていた。様々なGⅠレースで勝ち続けている常勝ウマ娘だと。URAファイナルズ優勝候補だと。

「手加減は無しだよ、本気で行く!」

 なんだ、なんだとマックイーンと同じチームであるテイオーとゴールドシップが来る。

 マックイーンは事情を彼女達に説明した。

 説明を聞いたテイオーはストップウォッチをゴールドシップは手持ちサイズの旗を持ってきた。

 

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