プッチ in 亜総義市   作:男漢

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#12 ヒトカリ衣装を作ろう!

 

「そういえば、()()()()()()を作らないとな」

 

 プッチがアジト内の大部屋で何もすることがなく、ただ椅子に座りながら聖書を読んでいた時。

 ハルウリのジンザイ管理のデータまとめをしていたクマが、突然そんなことを言い出した。

 彼の言葉に、プッチが疑問を返す。

 

「……ヒトカリ衣装?」

「ヒトカリの時に着る身を隠すための服のことだ。抗亜の活動をする時にはこれを着ていないと、街中を歩けなくなる。ザッパが着ているような赤いレザー服と腕の鎖や、ポルノのベルト衣装みたいな奴を想像してくれ」

 

 仕山医院とやらでの二人の姿を思い出す。

 たしか、ザッパの方は赤いレザー服に何メートルかの鎖を前腕に巻き付けるというストロングスタイルだった。ポルノの方は、アレは……衣装なのか? 白いベルトで胸と陰部を隠しただけの恰好を衣装と呼ぶのかは不明だが……。

 確かに、七~八割裸の恰好は人目を惹きつけはするが、身分が特定されないためという目的上であれば、まあ……。胴体の方に目が行って、顔の方に目がいかない気が、なくもない。多少の正しさを含んだただの暴論でしかない気はするが。

 そこまで考えたところで、プッチはクマに言葉を返した。

 

「服ぐらいは自分で見繕う。身分が特定されないくらいに体を隠せばいいのだろう?」

 

 プッチは自分でそのヒトカリ衣装とやらを用意することを提案した。

 自分より一回り以上年下の子たちに服を用意させるというのも忍びなかったし、何より、適当に任せてとんでもない恰好の服を着せられるのが嫌だったのだ。

 クマは彼の言葉を受けて、困ったように頬をかく。

 

「……まあ、確かにそっちで用意してくれた方が合理的なんだが。多分もう無理だ」

「何?」

 

 プッチが疑惑の表情で問いかける。そしてその問いに対する答えは、クマが言葉を発するよりも先に分かった。

 

「ヒトカリ衣装を作るって!?」

 

 そんな叫び声と共に、アジトの玄関が勢いよく蹴破られた。差し込む逆光の中、ずかずかと股を開いて大足で踏み込んでくるザッパ。

 私とクマを除いた全員でどこかに行っていたようで、彼の背後にはポルノ、キラキラ、虎太郎、大相寺皆子の姿も見えた。

 おまけにポルノは目をキラキラと輝かせ、明らかに私のヒトカリ衣装作りとやらに乗り気である。

 

 プッチはそんな彼らの様子を見て、もう逃げられないことを悟り。

 顔を少しだけ俯かせ、心の中で無難な衣装になるよう神に祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザッパの登場から三十分ほど経った頃。

 冷蔵庫からジュースやハムとチーズがたっぷりのLサイズピザが取り出され、半ば宴会のように一階の大部屋にてプッチを取り囲むように全員が集合していた。それぞれがパイプ椅子に座り、手に持ったスケッチブックにさらさらとマジックペンで何かを書き込んでいる。なおプッチは彼らの真ん中で立たされていた。

 そうしてさらに十分ほど時間が流れ、全員のペンが止まったころ。ザッパが大口を開け、全員の方を見回しながら号令を上げた。

 

「よーッし! 全員、プッチのヒトカリ衣装の案は書いたな!?」

「おーー!」

「……うわポルノ、その衣装マジやべーな……。絶対おもしれーじゃん」

「うーん、化粧とかもしたらもっと面白……良くなると思うんだけどなー。ま、これでいっか!」

「…………同情する」

「スタイルがいいのでなんでも似合いそうですね……」

 

 それぞれが口々に個々の思いを吐き出すのを聞きながら、プッチは「なぜ大相寺皆子まで参加しているんだ」などと考えていた。しかも結構乗り気な様子であるのにさらに困惑していた。

 そんなプッチの思考を遮るように、ザッパが大声を出す。

 

「俺が一番乗りで行くぞッ! プッチに一番似合うヒトカリ衣装は……これだああああああッッ!!」

 

 そんな風に叫びながら、ザッパが手元に持っているスケッチブックを膝の上で裏返した。彼が必死に書き込んでいた内容が全員の目に行き渡る。

 近くにいた虎太郎が彼のスケッチブックを覗き込み、すっとんきょうな声を出す。

 

「……なんだこりゃ?」

「あふれ出る超常現象のサイコパワーを全力で表した服だぞ!! この辺りが炎で、この辺りが氷、この辺りがサイコパワーで浮く瓦礫だッ!!」

「ええと……ザッパってもしかして絵、下手なの? グチャグチャすぎて何書いてるか全くわかんないって……」

「何ぃぃいいイイイイイイイッッッッっ!!??!?」

 

 キラキラの言葉にザッパが再び叫び声をあげる。

 彼がスケッチブックに指を這わせながら必死に解説をしているが、グチャグチャの黒い線の塊にしか見えない。というかそもそも私のスタンドは炎も水も出せない。瓦礫は浮かせられるだろうが。……そもそも、我がスタンドの最大の武器である「見えないし知られていない」ということを、衣装の時点で解説して潰していくのか。いや、威嚇という意味で使えるかもしれないが。

 ザッパがプッチの方を向き、スケッチブックを見せながら聞いてくる。

 

「プッチ?! どうだ!! お前ならわかってくれるだろ!?」

「どうだもクソもないだろう……。そもそも何が書いてあるのか分からないから判断しようもない、却下だ」

「ごああああっ……クソっ! こんなことなら、お絵描き教室に真面目に通っとくんだったッ……!!」

 

 ……こんなのが後五人も続くのか……。

 全力で悔しがるザッパを横目に、時計回りの順番で進めるという規約の元、次の人物へと全員の視線が移る。

 不敵な笑みを口に浮かばせた、怪しい雰囲気を放つポルノだった。

 ……まずい。何故かわからんが非常にまずい気がする。

 

「私の案はこれ」

 

 ポルノがぱっとスケッチブックを裏返した。

 妙に上手い筋肉質の男の絵に、白い蛇がぐるぐると巻き付いている。白蛇の尾っぽが男の尻穴のあたりから始まり、肌の上を這いながら陰部・乳首と重要な部分を巻き付くように隠し。乳首を隠した蛇の体が背中の方に回り、首へと巻き付く。そして首に巻き付いていたところから蛇の頭がネクタイの様にだらんと、股の間辺りまで垂れさがっていた。

 私はその絵を見て、数秒固まり。そして叫んだ。

 

「いやッ……どう考えても駄目だろうッ!!」

「なんで?」

「なんでもクソもあるかッ! 白蛇は神の使いだ、それをモチーフした服なら百歩譲ってともかく……これは白蛇そのままだぞ! しかもこんな、とんでもなく卑猥な陰部の隠し方をしたものを着れるかッッ!!」

 

 私が息継ぎもせず捲し立てるようにポルノにそう言うと、彼女はうんうんとわざとらしくうなずいている。

 まずい。この頷き方、まさか私のこの怒り方を予測されていて――

 

「おっけーおっけー。たしかに、白蛇は世界中で神様の使いとして認識されてる。だから、プッチにはこっちの方がいいかも」

 

 ポルノがスケッチブックに書いた絵の端辺りを、手でカリカリとかき始める。糊付けされていた紙が爪に引っかかり、ペリリッと先ほどの白蛇の絵が捲られ、新しい絵が出現した。

 

 それは先ほどの白蛇の絵とは一見大差なかった。尾っぽが尻穴のあたりから陰部、乳首、首の方に回り……ネクタイのように垂れ下がる蛇の頭のあたりで、絵に変化があるのに気付いた。

 途中まで白かった蛇の体が、頭に近づくにつれ急激に黒色へと変化している。だらんと力なく垂れ下がっていたはずの蛇の頭はググっと力を籠めて持ち上がり、陰部の少し上のあたりで意気揚々と口を開け、ビキビキと浮き上がった血管のようなものを頭に何筋も走らせていた。

 そしてその謎の黒蛇の頭の横に、

 

(ヘビ)()魔羅(マラ)

 

 と太く濃い文字で書かれていた。

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

「ホワイトスネイクッッッ!!」

「あっ!」

 

 ホワイトスネイクでポルノからスケッチブックを強奪する。奪い取ったそれに手を伸ばすポルノを無視し、スタンドの腕力に任せてそれをビリビリに破り去った。

 紙吹雪のように散るスケッチブックの亡骸をわざとらしくかき集め、うえーんうえーんと子供のように泣く演技をする彼女。

 駄目だ、私では彼女の相手をするのは力不足過ぎる、不可能だ。もうだめだ。

 一刻も早くこれを終わらせないと、ポルノからどんな追撃を食らうかわからない。早く進めなければ。

 

 次の順番の人物へと目を向ける。虎太郎だった。

 私が急かすように声を上げる。

 

「虎太郎ッ!」

「はいはいっと……苦労すんなぁ、プッチ。けどポルノ相手に下関連で勝つのはぜってー無理だぜ。童〇にゃあ尚更な」

「そんなことは聞いていないぞ……!」

 

 虎太郎がクルっとスケッチブックを裏返す。

 意外にも、機械や家屋の設計図のように差しで引かれた直線と長さの数字がずらっと並んでいた。ざっと見た辺りこれは……機械と歯車をモチーフにした衣装か?

 

「デウス・エクス・マキナっつー言葉があんだろ? 機械仕掛けの神様って奴。プッチが宗教者だってんなら、こんな感じが最適だろーと思ってな」

 

 ……たしかに虎太郎の言う通り、デウス・エクス・マキナという言葉はある。機械仕掛けの神とも呼ばれている。

 が、しかしこれは、なんというか……。

 

「虎太郎ぉ~、流石にちょっと安直すぎなんじゃないの~?」

「安直ってなんだよ安直って! プッチの特徴を生かした立派なデザインだろ!!」

 

 キラキラが虎太郎をからかい、彼が少し声を荒げて返す。

 まあ確かに先の二人……というより、ポルノに比べれば安直すぎるデザインだ。しかし安直というのは決して悪いことではない。リラックスして簡単に答えを出すことにより、考えすぎによって起こる間違いや雑味をなるべく減らすことができるのだ。そう、それだけならばよかったのだ。

 プッチが虎太郎に話しかける。

 

「デウス・エクス・マキナの由来を知っているか?」

「え?」

 

 私の問いに、虎太郎がスケッチブックを膝の上に置き、右手で顎を押さえて考える。左手が折れて動かせないためスケッチブックが膝からずり落ちそうになるのをホワイトスネイクで軽く支えながら、彼の答えを待った。

 

「そりゃー、機械仕掛けの神なんて大層な名前を持つぐらいなんだから……神話とかの神様なんじゃねーの?」

「…………デウス・エクス・マキナとはな。神話の神様の名前ではないのだよ」

「え”っ」

 

 だみ声のようなものを漏らす虎太郎。

 そう、安直に考えるだけならばまだよかったのだ。だが流石にこの間違いは……いささか酷すぎるというか……。

 

「この言葉はな。演劇や物語の舞台を締める際に、強大な力を持った者によって無理やりオチを作る行為のことを指す言葉なのだ。主人公が解決できなかった問題を、神様が一瞬で解決したりとか、そんな感じの……」

「……な、なら……」

「知ったかぶりをしたかった訳ではないのは分かる。が、よく理解していない言葉を振り回すのはあまり良くないことだぞ。特に、私のような宗教者に神についての話をするような時はな」

 

 私の言葉に虎太郎が、落ち込んだように肩をガックリと落とした。

 まあ大方、テレビか何かで知った言葉なのだとは思うが……。聖書や神話にいない神様が捏造され、さも実在するかの様に話しかけられるのは慣れているのだ。刑務所では薬でラリった連中が、よく自分だけの神を作って私に熱心に説明していたからな。そういった存在を作り出して頼りにすることは悪いことではないと私は考えているため、そこまで怒りはしない。自身が信じられる確固たる物を、自身で決めることは立派な行為だからだ。

 

 ただこれは私の持論である。

 他人から見れば虎太郎は半端な知識で調子に乗り散らかし、その末に自身の知識不足を暴かれた……いわゆる痛い奴だった。

 その隙をナユタのからかい好きが見逃すわけもなく。

 

「虎太郎さん、いたい、いたい、やめてくださいっ」

「オラッ! オラッ! どうだ、痛いかーっ!」

「ああ、いたい、いたいっ! 本職の前で半端な知識を晒しているさまがいたいんですっ!」

 

 キラキラとポルノにしっかりと煽り散らされ、プルプルと震える虎太郎。

 彼もなかなかに可哀そうな男だなと思いながら、次の人物に目を向ける。

 

 

「おっ、次は私?」

 

 キラキラだった。

 見た目はストリートでチンピラと一緒に居るようなギャル、と言ったところだが……。私は彼女の性格を推し量れるほどの時をまだ共に過ごしていないため、彼女がどのようなデザインを描くのかが全く読み取れない。さすがにポルノを超えるようなものはないだろうが……。

 彼女がクルっとスケッチブックを裏返す。

 

「じゃじゃーん! こんなんってどうかな?」

 

 カラフルな色ペンを使って、かわいく書かれたその絵。

 頭が白い蛇、体には赤青緑とカラフルな服を纏い、両手足には紫色のぶにっとしただぼだぼの手袋をはめている。……いや、本当に何だこれは。

 

「プッチってさー、ホワイトスネイクッ! ホワイトスネイクッ! ってよく言うけど、私たちはそれ全然見えない訳じゃん? だから、人型と白蛇って言う情報だけを頼りに、私のイメージでかわいくデコってみたの」

「……ああ、そ、そうか」

 

 反応に困る。

 なぜ私のスタンドをイメージで描いた? そして、なぜ私のスタンドをイメージで描いた上に可愛くデコった?

 しかも全然違う。ホワイトスネイクという名前ではあるが、蛇の頭が頭部にあるわけではない。

 

「でさプッチ。そのホワイトスネイクって奴の見た目、これで合ってる?」

「いや、全然違うが……」

「うーん、そっかー。私も見てみたいけどなー、そのスタンドって奴」

 

 ……まさか、こいつ。

 私のホワイトスネイクの見た目を知りたいがために、適当に描いたな。見た目から手足の寸法に当たりを付けられると、私のスタンドの攻撃範囲や関節可動域にもある程度の予測が付いてしまう。

 中々侮れない、危ない奴だ…………。

 

 なおキラキラは一切そんなことは考えていなかった。パッといい案が思い浮かばなかったので、頭から何とか捻出したのがこれだったのだ。

 なぜプッチはそんな間違った推測をしてしまったのか?

 単純にこの衣装決めとやらに疲れてしまっていたからだ。彼の精神は今までに感じたことのないストレスにより、既に限りなく疲弊していた。そしてその疲弊の原因の大部分はポルノであった。

 もちろん、よくわからないキラキラの案は没だった。

 

 

 キラキラの次の人物に目を向ける。クマだった。

 彼がプッチに優しい言葉をかける。

 

「……同情はする。だが、後二人でもう終わりだ」

「ああ……」

 

 息も絶え絶えにクマへと返事をする。

 互いに互いを警戒している同士なのだが、クマもナユタでは苦労人の立場にある。プッチも今回ナユタの面々によって恐ろしく苦労し、疲弊している。だからかだろうか、二人の間に一種のシンパシーが芽生えていた。

 クマがスケッチブックを裏返す。

 

「おお…………」

 

 思わずプッチの口から、感嘆の声が漏れた。他のナユタのメンバーもクマのスケッチブックを覗き込む。

 けして抜群に絵がうまいわけではないが、ザッパの様に壊滅的な絵の下手さというわけでもなかった。プッチが感動したのはそこではなく、そのデザインの()()()だったのだ。

 白い手袋に白いローブに黄色の十字架、そして頭に白い仮面を被るという、白白白の白づくめの恰好だ。

 クマが全員が見終わったあたりで、言葉を発する。

 

「プッチの一番の特徴はその肌の色だ。この街ではプッチほど肌が黒い奴はそうそういない、だからその特徴を徹底的に消すために足から頭まで全て白にするというデザインにした」

 

 自分の手の甲を見る。

 確かに私は肌の色が黒い。実は私は黒人ではなく白人家庭の生まれで、この肌の色はただただ生まれつき黒かったというだけなのだが……。それでも常人よりは肌の色が濃く、人の中で目立ってしまうことは自分でも重々承知している。

 そのため全身を白で埋め尽くし、ヒトカリ時の私の印象から黒を捨て去るという案は悪いものではなかった。というか、今まで出てきた物の中で理由・デザイン含めて一番マトモだった。

 

「適材適所、やっぱこういうのは最後にクマ!って感じだな」

「安定感がある。上司としても鼻が高い」

「俺の奴だって言葉の意味さえ間違えてなけりゃあな……」

「いやいや、そこ一番間違えちゃダメなところでしょ」

 

 ナユタのメンバーが思い思いに口を出す。

 手袋と仮面という付属品が付くものの、白のローブに関しては私が普段着用してるものの色が変わっただけだ。有事の時に動く際も服のせいで行動が阻害されるようなことはなく、普段と同じような動きができるだろう。

 そんな風に考え、すっかり全員の間に解散のムードが流れ始めた。

 ザッパとポルノが立ち上がる。二人して何かを話しながら、どこかを目指してアジトを出て行った。ろくでもないことを企んでいる気がする。

 キラキラはアジトの二階に登り、自分の個室へと戻っていく。小さくあくびを漏らしていたことから、これから睡眠でも取るのだろう。

 クマがスケッチブックの、自らが書いた絵のページを破り取る。それを小さく折りたたみ、ポケットの中に入れた。

 

「これをミストレスの店に持っていき、そこで仕立てる」

 

 ミストレスの店というと確か……以前、抗亜だけが利用する店だとか言っていた場所だ。一度も行ったことがないため、どのような物を取り扱っているのかは私にも定かではない。

 

「そんなスケッチ程度のもので大丈夫なのか? デザインは……」

「問題ない。ミストレスはザッパのあの絵から、ザッパ自身のヒトカリ衣装を作るくらいだ」

 

 ザッパの絵を思い出す。あんな黒いミミズが何十にも重なったような絵を読み取って服を……? にわかには信じがたい。そのミストレスという人物は恐ろしいほど優秀な人物なのだろう。なぜそこまで優秀で、この街の抗亜相手に店をやっているのかはわからないが。

 私とクマが件の店に出発しようとしたところで、椅子に座ったままの虎太郎が声を出した。

 

「おいおいおい。二人でミストレスさんのところに行くんだろ? 俺もついて行くぜ」

 

 虎太郎の言葉に、クマが彼の方を見ながら言葉を発する。

 

「足が折れてるだろ。……今は安静にしとくべきじゃないのか?」

「お前らがミストレスさん相手に抜け駆けしないか見張る方がよっぽど重要だっつーの」

「……私を含めるな」

 

 プッチが虎太郎の言葉に少しだけ怒気をはらみつつ返しながら、ホワイトスネイクで彼の体を椅子から立ち上がらせる。実はまだ、以前虎太郎に天国を小ばかにされた時のことを根に持っていたのだ。松葉杖を無理やりわきの下に挟ませ、彼の歩行を補助するように背後から少しだけ体を持ち上げる。

 

 

「おっ……すげー、なんか本当に超能力って感じだな。サンキュー、プッチ」

「歩行が遅い者がいるとこちらにも影響が出る。それにスタンドで少し持ち上げるぐらいなら、対した労力じゃあないからな」

「……もういいか二人共。 行くぞ」

 

 

 三人がそろって、ミストレスの店を目指してアジトの外へと出て行った。

 がらんと静まり返り、誰もいないところを冷やし続ける扇風機の音だけがアジトの大部屋に鳴り響く。そんな静寂の中に一人だけ、パイプ椅子に座りながら静かに呼吸をしつつ、黒いペンを口元に当てながら何かをぼそぼそと呟く人物がいた。 

 

「……手足がスラッとしてて長いから、黒スーツ何かも似合って…………

 ………………あれ?」

 

 呟いていた人物が顔を上げる。

 キョロキョロと辺りを見回しながら、現状を飲み込めていない呆けた表情で声を出した。

 

「…………みなさーん? すみませーん、どこに行ったんですかー?…………」

 

 

 大相寺皆子。

 ナユタのメンバーどころか、心身ともに疲弊したプッチにすら忘れ去られた少女であった。

 

 

 

 

 

 




投稿が遅れて申し訳ありません。

おかしなテンションではじまりを書き始めたので後半の部分で筆が止まってしまいなかなか進まず、おまけに作者がリアルで事故りました。

怪我はしてないんですけど、色々な手続きでテンションだだ下がりの中これの後半部分を書いたので若干出来も微妙です……すみません。

次回はなるべく早く投稿できるようにします!
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