夕日がビル群の向こう側に沈み始め、辺りが紅く染まり始める時間帯。プッチはいまだに慣れぬ湿気の多い空気に辟易しながらも、ホワイトスネイクで松葉杖の虎太郎を押しつつ、前方を歩くクマの後を付いて行っていた。
人気の多い通りから裏路地に入り、妙に小奇麗な狭い道を三人で進んでいく。
細く複雑な道を歩きなれたように進むクマの後を追いかけて十数分。日を忍ぶように立つ、小汚い四階建てマンションの前で立ち止まる。
そのマンションの中に入って四階まで登り、伸びる廊下の一番奥にピンク色と緑色で『VILE/VAN』と書かれたネオン看板が見えた。
その看板の両隣からは白いミストが噴き出し、この辺り一帯の気温だけが嫌に冷えていて妙なおどろおどろしさを感じさせる。
そのネオン看板に三人で近づき、クマが店の扉を一度開こうとして鍵がかかっているのに気づきノックしているのを横目に、虎太郎に問いかけた。
「そのミストレス……というのは一体どんな人物なんだ?」
「なんだぁ~プッチ~? 聖職者ぶってる癖にやっぱり興味が……」
「…………」
虎太郎の肩をホワイトスネイクで強く握った。
彼が苦痛の表情に顔を歪ませながら、肩の痛みがした部分を手で払う。が、スタンドには生身では触れることができない。たまらず虎太郎が声を上げる。
「いっててて! 悪かったって!」
「……それで?」
プッチがホワイトスネイクの手を離す。
虎太郎が自らの肩を痛そうにさすりながら、話し始めた。
「あー……。ミスさんは抗亜相手に店やってる人で、色々売ってたり道具を改造してたり……。俺も機械とか工作の知識はあって色々出来るけど、ミスさんの方が質は高いって感じだな。クマが金の管理してるからよく知らねーけど、金は結構取られるみたいだぜ」
「……なるほど」
イメージ的には何でも屋と言った感じか? 衣装を作れたり道具を改造出来たり……ますます抗亜相手に店をやっている理由が分からないほどに優秀な人物だ。酔狂な者もいるものなのだな。
「けど正直俺にはそこら辺は関係ねえ。重要なのは……ミスさんがすっげー美人だってことだ!」
虎太郎が突然そんなことを恥もなく言い始めた。もう一度ホワイトスネイクでキツく痛みを与えた方がいいだろうか? プッチがスタンドを出しながらそんな風に考える。
そんな私の殺気を第六感で感知したのか、彼が折れてない方の手を振りながら必死で否定した。
「待て待て待て! お前がどんな人物だ? って聞いたから見た目の情報も言ったんだろ!」
「……確かにそうだな」
プッチがホワイトスネイクを体の中に戻す。
虎太郎は危険が自身から去ったことを察知したのか、ほっと胸をなでおろしながら言葉の続きを紡ぎ始めた。
「俺は年上がタイプでさ。ミスさんは妙齢で不思議な雰囲気を放ってんのにどっか明るい感じの、ザ・大人って風な美人で……。頑張って狙ってるんだから、邪魔すんなよ~?」
彼の話を途中から聞き流し、クマの方に目を向ける。どうやらそのミストレスなる人物が中にいたようで、扉を開けて中に入っていった。かなりこの街の裏に絡んだ場所であるため、多少のセキュリティや客の確認はきちんと行っているのだろう。
虎太郎の首根っこを掴み、捻り上げる。首を母猫に噛まれた子猫の様にきゅっと口を結び、大人しくなった。
「やっほークマく~~ん! ようこそVILE/VANへ♪ 最近ちょっとお騒がせじゃな~い? 大丈夫?」
「問題ない。まだ大丈夫だ」
抗亜の店、その主人『ミストレス』。
金色の髪に、女性にしては長い手足と豊満な胸部。頭にはスチームパンクよろしくの拡大度調節機能が付いたゴーグルと青緑のヘッドホンを付けている。上半身は黒くぴっちりとしたスーツの上にピンク色の襟が高いジャケットを羽織り、下半身には右足が欠けたタイツに黄色いズボンを履き、そのズボンに大小さまざまなサイドバッグがつるされていた。足に紅いハイヒールとブーツが混同した、非常に歩きにくそうなものを履いている。
一言で言えば奇抜。そしてどこか掴み切れぬ人物であった。
ミストレスが両手をわざとらしくあげながら、店内に入ってきたクマに言う。
「何その冷たい反応~? もっと『心配させて悪かった』とかさー。お姉さん本当に心配してたんだぞ?」
「……今日は珍しく店先の扉が閉まっていたが、どうしたんだ?」
「無視ッ! ……最近ちょーっと、シケイの動きが活発になってるじゃない? それでピリピリしてる抗亜も多くてさ、あんまりにイライラしてるお客さんはしばらくの間断るようにしてるんだよねー」
ミストレスが唇を突き出しながら、ぶーぶーと不満げにそう言った。
シケイが活発になっている原因とはもちろん、萬像の破壊だ。シケイが活発になることにより、抗亜は単純に各施設を攻めにくくなる。よって最近はどこの抗亜も実入りがよくなくストレスが段々と積もり始めている。亜総義市の表と裏が緊張状態になるという、かなり危険な状況だ。
そんな中で抗亜の全グループを相手に店を開けているのだから、店の鍵を閉めて客を確かめるぐらいの用心はしていても不思議ではないだろう。
クマはそんな風に納得しつつ、右ポケットに突っ込んでいた折りたたまれている紙をミストレスに渡した。
彼女がそれを受け取り、丁寧に開く。そして中身を見て、言う。
「これは…………へえ、新しい衣装? 誰か新しい子でも入ったの?」
「ああ。今外にいる」
ミストレスが店先の扉の方を一瞥してから、再び手元の紙の方に目を戻す。
そして顎に手を当てたから、うんうんとうなりながら考え始めた。
「このデザイン的に……若い男の子かな? 白生地に金色の十字架とか好きそうだもんね~男の子って。手袋に仮面ってのも、素性を隠すにしてはちょっとやりすぎだしね。
ちょっと拗らせた年頃の男の子って感じで、どう? 当たってる?」
「…………年頃、か。どうだろうな」
クマがそんな風に呟いたところで、店先の扉がキィッと甲高い音を立てて少しだけ開いた。ミストレスと二人でそちらを眺める。
まず最初に姿が見えたのは、虎太郎。彼がミストレスに向かって良い笑顔で手を振るが、彼女の視線は虎太郎の首根っこを掴む黒い手の方に向けられていた。
その手の方に注意を向けつつも、彼女がいつものように挨拶の言葉を出す。
「いらっしゃーい、ようこッ………………お"ッ"」
ミストレスの口から汚い声が漏れた。
真っ先に見えた黒い手から、何かスポーツを熱心にやっている子なのかな? というのが彼女の認識であった。
虎太郎を店の中に突っ込んだその手の人物が現れるにつれ、ミストレスは驚愕を隠せなくなっていく。プッチの身長は約180センチ、今この店にいるどの人物よりも一回り以上大きく、おまけに黒い肌に白いスキンヘッドとかなり威圧的な見た目をしている。おまけにそのスキンヘッドは彼女の奇抜な服装をかき消すほどの特徴的な形をしているのだ。
ミストレスの脳内に浮かんでいた、ちょっぴり幻想にうつつを抜かす少年のイメージは消える。おまけに入り込んできたのは、黒い肌の大柄な男の姿であった。
「あ、あはは…………。その、クマく~ん?」
「どうした?」
彼女がクマの方に口を寄せ、必死な形相でぼそぼそと話す。
「ナ、ナユタって10代限定クランじゃなかったの?! あの男の人、どうみても20歳どころか私より年上なんだけど……!」
「そんな規定を作った覚えはないが。そして年は俺も知らない」
「そ、そんな怪しげな人物を仲間に入れるほど信頼してるの……?! もしかして私とクマ君の信頼度ってあの男の人よりひく……」
「ミストレスのことはビジネスパートナーとしては信頼している」
「プライベートではそうじゃないって言ってるようなものだよねそれって……!」
クマが近づいたミストレスの肩を掴み、無理やり引き離す。
扉の近くでプッチは掴んでいた虎太郎を放し、店の中を見渡した。抗亜専用の店だというものだからもっと世を忍ぶような暗い雰囲気が漂っている店なのかと思っていたが、一部の棚に陳列されている物体を除けばそこらの通りにあってもおかしくないような内装と雰囲気であった。
カウンターの裏にあるショーウィンドウに飾られた実銃から目を逸らしつつ、店内を見て回りながらクマとミストレスなる人物の方へと近づく。
「ミ、ミスさん! ご無沙汰っす!」
突然、プッチの脇の下から腕を押しのけて這い出るように虎太郎が現れる。プッチは少しだけ顔をしかめつつも、足が折れて松葉杖を突いている以上狭い店内でぶつかるぐらいは仕方ないかと思考を切り替えた。
彼の快活な笑顔に、ミストレスは顔を逸らしながら淡白な口調で答える。
「…………え、えーと、豹太郎君? いらっしゃい」
「いや……オレは……」
「あっ……! あ、あはは、冗談冗談! もちろん分かってるって像太郎君!」
「虎っす……虎太郎っす……」
明らかに落ち込んだ様子で虎太郎が肩を落とす。
プッチも彼のあんまりな扱いに少しだけ同情したのか、ホワイトスネイクで軽く彼の体を支える。虎太郎は身に感じる見えない力にハッと顔を上げ、涙ぐんだ顔を自らの服の裾でぐしぐしと荒くぬぐった。
「……プッチ、サンキュー……」
「私はそう言ったことに疎く助言はできないが……笑いはしない」
「おう…………」
地の底まで沈んだ彼を店の壁際に寄せつつ、プッチはミストレスの方へと近づく。
クマが横に迫ってきた彼の方に一度目配せをし、彼女に向けて言葉を発した。
「こっちがナユタの新しいメンバーで、衣装の依頼人だ」
「エンリコ・プッチです。初めまして、よろしくお願いします……」
「えっ!? あー……ご、ご丁寧にどうも……。店主のミストレスと申します……」
威圧的な外見に並々ならぬ雰囲気、歩き方からにじみ出るような誇りと芯の強さ。服装に大きな十字架が入って神に敬意を払っていることを表してはいるものの、てっきり粗暴なふるまいをする人物かと思っていたミストレスは、滑らかな動きで頭を下げたプッチの姿に驚愕の声が漏れた。
彼女が手を差し出すと、プッチも右手を出して軽く握手をする。アメリカ式のビジネスマナーだ。
「……もしかして、聖職者の方? 亜総義市にわざわざやって来るなんて珍しいけど」
「はい。アメリカの刑務所で教誨師を……」
「へ、へぇ~……。クマ君、こんな人よく見つけてきたね? お姉さん、ここまでシャープな雰囲気の人は見たことないな~」
「別にこちらからスカウトしたわけじゃないが」
「そうなんだ…………」
ミストレスは脳内の、第六感のような物でプッチの潜在的な危険性を感じ取る。
抗亜を日ごろから相手にしていて鍛え上げられた勘だ。彼女はそれを頼りにしすぎるということはないが、思考のパーツの一つとしては重要視している。理性で見れば品行方正で清廉潔癖、聖職者として神にその御身を捧げることを選択した立派な人物で、なぜ抗亜の一員に加わっているのかが分からないほどに
だが彼女の本能が訴える。プッチという男の表面に関わりこそすれど、決して彼の奥深くにまで踏み込んではいけないと。彼の闇を知ろうとすれば最後、大口を開けた蛇が自身を飲み込もうと待ち構えていて……。
ハッと息を漏らし、思考の波から戻ってくる。今はお客を前にしている時だ、これ以上考え込んでいてはいけない。内心に冷や汗を垂らしつつ、再び二人の方へ顔を向けた。
「ごめんごめん~。それで、衣装の仕立てだったっけ? 寸法だけ測らせてもらってもいいかな?」
「わかりました」
プッチが手を上げると、ミストレスがカウンターの裏からメジャーを持って出てきてテキパキと測っていく。身長179センチ、服のたるみでわかりにくいがカッチリと鍛えられた体をしており、胸囲は同年齢の平均よりも少しばかり大きい。ウエストはよく絞られて小さく締まっている。プッチが体験した元の世界での徐倫含むスタンド使い達との戦闘、そして元々少しばかりではあるが鍛えていたことによる賜物だ。
ミストレスが測った数字をカリカリとメモ帳に書き込む。そして書き終わった紙をべりっと勢いよくはがし、近くにあったホワイトボードに磁石で貼り付けた。
「……はい、オッケー。作った衣装は明日の昼頃には完成させておくから取りに来てくれるかな?」
「随分と早いな。そこまで急ぎの用でもないんだが」
「まぁまぁ、そこはお姉さんの腕の見せ所ってやつ? ……っていうのは半分冗談で、デザインがシンプルだからそこまで時間かからないんだよね~。それに、少しだけ
「……耳寄りな情報?」
口をとがらせて茶化しながら話すミストレスの言葉に、クマがチラッとマフラーの中から口を出して反応する。
彼女がクマの珍しく興味を持った風の反応に喜色をあらわにし、さらにいたずらっぽく両手を肩のあたりですくめるようにしながら言った。
「最近、仕山医院でこっぴどくやられたんでしょ~? そんな時に、武器の火力が足りない~なんて思わなかった?」
「……火力云々じゃなく数の問題だった気がするが、確かにもっと火力があれば今より怪我も少なく乗り切れたかもしれない」
「だから、これからのためにも武器の
「…………セールスか」
クマが下がったマフラーを右の手で元の位置に戻す。
ミストレスが近くにあったガスボンベに体重を寄せかけながら、少しだけ声のトーンを落として心配そうに言った。
「心配もしてるのよ~? これはホント。最近亜総義市の全域が前と比較にならないほど物騒になってきちゃってるしね……」
「顧客が減っても困るだろうしな。素材の場所は?」
「も~、ひねくれちゃって」
そんな風に言いつつ、彼女は近くの棚にあった紙を取り出し、カウンターの上にバッと広げた。
プッチがクマの頭の上からのぞくと、それは亜総義市内の全域を表した地図であった。ところどころに赤いマーカーペンで丸や矢印が引かれているのも見える。
彼女がその地図の中心にある巨大な亜総義重工本社の左上付近、北西の海から少し離れた工業地帯を指さした。
「今のところ、他の場所より比較的安全に素材が取れるのはここかな」
「……『
クマが腕を組みながら、地図を見てそう呟いた。
亜総義市に来たばかりで、もちろんこの街のことを知らないプッチは、クマに問いかける。
「サンホー工業とは一体どんな場所なのだ?」
「亜総義グループの末端会社の一つだ。細かな機械部品を作っている。この街では亜総義の影響で大事にはならないが……毎年労災として提出される数だけで数十人は死傷者が出ていたはずだ」
「……壊れた場所だな」
プッチは吐き捨てるようにそう言った。
彼もまたこの街の闇に触れるにつれ、亜総義の異常性を理解し始めている。自らの悪性には目を向けずに。
ミストレスがクマの説明に付け加えるように、低い声で彼らを注意した。
「ただ、亜総義の警備が厳しくなって、素材が取れる場所が本当に限られてるのよね。他のクランと取り合いになるかもだけど、今はどこも殺気立ってるから注意した方がいいわよ」
他の抗亜クラン、か。
確か……
そんなプッチの考えを横に、クマは腕を組みながらきっぱりと言い張った。
「問題ない。」
「……ホントに大丈夫? 私の方から、他の抗亜と出会わないように情報を流すことだって――」
「ミストレスが抗亜間の中立の立場を乱せば本当に終わる。今回ナユタに加担してくれても、次にどこの抗亜に加担するか分からない。情報漏洩を危惧してこの店も利用できなくなる」
クマの指摘に、彼女が少しだけ声を乱す。
「わ、私はそんなことッ――――」
「ビジネスパートナーとして信用しているからこそだ。この店を利用し続けるために、ミストレスには中立の立場でいてほしい。それが一番合理的だからだ」
そんな彼の言葉に、ミストレスが一度目を閉じ。
そして再び開いた時には、先ほど一瞬声を乱したのがウソのように、普段通りのひょうひょうとした態度に戻っていた。
「……なら、本当に気を付けてね。帰ってきたらぎゅーしてあげちゃおっかな♪」
「必要ない。」
「もー、いけずなんだから~」
その後、クマが店の中の棚からいくつかハルウリに必要な物資を購入し、ナユタのアジトへと帰還することにした。
プッチが店の隅で、ミストレスとクマの仲良さげな会話を聞いて未だグロッキーになっていた虎太郎を立ち上がらせ、松葉杖と共に無理やり店の外へつまみ出した。放り出した虎太郎とすでに外にいるクマを追いかけようと、プッチも扉に近づいた瞬間。
「ねえ」
背後のカウンターから、ミストレスが声をかけてきた。
プッチは体を動かさずに、首だけを回して左肩から顔をのぞかせる。視界の先には、やたらと神妙な顔つきをして冷や汗を垂らしながらこちらを見つめる彼女の姿があった。
「……
店の中の空気が一瞬、氷点下まで落ちたように固まった。
萬像の破壊がバレること自体は、プッチにとって問題ではない。が、そこから逆説的にたどっていき、銅像を破壊した方法に行きつかれると不味いのだ。
つまり、プッチが
(…………私の記憶だけ抜くか?)
そう考えたが、頭を振って思考を切る。
プッチの記憶だけ引き抜くこともできるが、彼女が一体どの程度、自分のことを他の記憶と紐づけしているのかが分からない。大して気にも留めておらず今のこの質問が一種の気の迷いのようなものであるならば、記憶を抜いても勝手に補完されるだろう。ただ、非常に重要な記憶と紐づけされていたりした場合は、人間の脳内で補完できるレベルを超えてしまうのだ。
その場合、その人物の記憶には重大な『
ミストレスを記憶喪失で廃人同然にしようとも記憶を消す、という道もあるが。
ナユタ……特にクマが関わっているのが非常に厄介だ。彼奴なら彼女の状態から、その仕業の犯人を私だと見抜いてくる可能性がある。それどころか、我がホワイトスネイクの能力を看破し、攻撃を仕掛けてくる可能性だってある。
その場合、ナユタとの関係性は絶望的なものになり破綻してしまう。亜総義重工本社に入るという目的も、彼らの協力がない限り不可能なので、自動的に『天国への到達』は諦めることになってしまう。
だが、人々を天国に到達させるこの目的は決して諦めていいものではない。何をもってしても優先するべきことなのだ。
よって。
ほぼ確実に私を銅像破壊の犯人だと疑っているミストレスを、見逃すことにした。たとえスタンド使いだということが周囲にバレる可能性があってでも、だ。
その思考、時間にして約三秒。
プッチはミストレスから視線を外して正面を向く。
そして静かに、重いトーンで振り返らずに言葉を発した。
「知らないな。……クマにでも聞いてみたらどうだ」
扉を開けて店の外へ出ていくプッチ。
壁の向こうから、カツカツと三人の足音が去っていくのが聞こえる。そうして三人の足音が完全に聞こえなくなった時、ミストレスは額に流れていた冷や汗を手に付けている緑色の手袋を外してから、ゆっくりと拭った。
誰もいない静寂の店内で一人、ふーっと深く息を吐きながら天井を見上げる。
そして静かに呟いた。
「……ホント、損な役回り…………」
その声は、誰にも聞こえることはなかった。
プッチとかクマとかミストレスとかカタカナが多すぎて大変なことになってきております。あと虎太郎の扱い雑すぎ。
プッチさんの大犯罪(萬像破壊)が勘づかれ始めていますが、そりゃまあ、一時期犯人と疑われてた抗亜クランに、いきなり謎の新メンバー入ったら仕方ないですよね。
そして次はお待ちかねのヒトカリ:サンホー工業ですね。
作者がドーナドーナ内で二番目に大好きなキャラが登場する(予定です)ので少し高ぶってます。
気合入れて書かせていただきます。
なお次回のサンホー工業編に虎太郎は登場しません。骨折してるし仕方ないね。