プッチ in 亜総義市   作:男漢

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#31 GO! GO! HUNTING!!

 美術館からナユタのアジトまで帰還し、一晩が明けた。

 昨日、最も働いたと言っても過言ではない、と自分の中で思い込んでいる虎太郎は大きなあくびと共に目を覚ます。時計の短針は既に12時を指していた。

 普段ならばもうとっくに起きている時間だが、昨日あれだけ働いたのだ。少しくらい寝過ごしたってバチは当たらないだろう。

 

 寝癖で跳ねるピョコピョコと跳ねる後ろ髪を手で押さえながら、自室の扉を開ける。

 

 扉を開けて真っ先に目に入ったのは、階下で既に揃い踏みしているナユタのメンバー。

 その中に当然と言わんばかりの態度と座り方で、異様な威圧感を放っているプッチ。その男の姿を見て、虎太郎は顔をしかめた。

 

(ザッパもクマも、他の奴らだって考えが甘いぜ。アイツがつえーのは認めるけど、仲間に引き入れるメリットより、何かやらかすかもしれないってデメリットの方が圧倒的にデカイじゃねーか)

 

 あの男のことは気に食わない。気に食わないが、自分以外のメンバーがプッチを仲間に入れることを肯定するなら、虎太郎もそれを認めざると得なかった。

 鉄の階段をカツカツと踏み鳴らしながら降りて行き、プッチから最も離れた場所にある椅子へ座り込む。

 

 

「・・・・・・揃ったか。まぁ急ぎの用でもないんだがな」

 

 と、虎太郎が椅子に座った瞬間、クマが口を開いた。

 

「早朝。と言っても5時ぐらいだが、もう一度昨日の美術館へ行ってきた」

 

「………えぇ!?」

 

 キラキラが驚きの声を上げる。声こそ出さなかったものの、虎太郎とポルノも少しだけ驚いたような表情をしていた。

 ヒトカリを行った場所に、そう時間も空けずもう一度行くなど普通ならありえない行動である。ヒトカリを行った場所には少しの間、シケイが多めに配置される。正に自分から敵地へと突っ込んでいく自殺行為のようなものだ。

 

 だが、ザッパとプッチ、それにメディコはクマの行動の理由を知っているようで、静かに会話の行先を伺っていた。

 

「ザッパと、偶然早起きしていたメディコにも説明はしているが・・・・・・。昨日の一件でどうしても確認したいことがあると、プッチが言ってきたんだ。それを二人で見に行っていた」

 

「……確認したい物って?」

 

「監視カメラだ」

 

 ポルノの問いかけに、プッチが答える。

 

「私のスタンド……超能力が監視カメラに映ったかもしれなくてな。その映像を残しておくのは非常に不味い。よって、それの映像データを抜き取りに行ったのだ」

 

「……まぁ、理屈は分からなくもないけどよ。それを今報告する必要があんのかよ?」

 

 虎太郎が口を尖らせ、プッチに噛み付くように言葉を放った。それに反応するでもなく、つらつらと彼は言葉を続ける。

 

「監視カメラの映像が残されているのは警備員室だ。そこまで入るのは実に容易かった。しかし……警備員室の、監視カメラの映像を記録する機械が、粉々に破壊されていたのだ。明らかに人間技ではない力でな」

 

 タイミングを見計らったように、クマは己のスマホを取り出して、皆の前に置く。

 画面に映っていたのは、鉄球のような物で何十発も叩かれたかのような、見るも無惨な姿になった機械だった。部品や基盤は散らばり、内部の配線はズタズタに千切られ、どんな名エンジニアでも内部のデータを復旧することは叶わないだろう。

 重機でもなければ、鉄の塊である機械をここまで痛めつけることはできない。だがこの写真が撮られたのは明らかに室内、重機が入り込めるような場所でもない。

 

「呂布なら出来るかもしれない。だが呂布はずっと俺達と戦っていたし、こんなことをする理由がない。もっと別の何者かの仕業と考えるのが合理的だ」

 

「だ、第三者って?」

 

「スタンド使いだ。恐らく私達の敵であり、サンホー工業での殺人騒ぎを起こした犯人だろう。ここまでの力を持つスタンド使いはそういないからな」

 

 静かに言い放たれた言葉に、ピリッと張り詰めた空気が走る。

 スタンドという物をナユタの面々はよく知らないが、非常に厄介で面倒な物だということは知っている。使いようによっては、そこらの武器よりもよっぽど恐ろしい物であるということも。

 

 敵のスタンド使い、それも人間など軽々と破壊できる力を持ったスタンドが敵だというのだ。怯えて動けなくなることはなくとも、恐れを感じ緊張をしてしまうのは当然のことである。

 

 しかし、あまりに張り詰めすぎた空気を和らげるために、プッチが言葉を放つ。

 

「……まぁ、そこまで身構えなくてもいいだろう。狙われているのは恐らく私だ。それに直接攻めてこないところを見るに、向こうも今はこちらに攻撃する気はないようだからな」

 

「いや、全然安心できないって……」

 

「話はそれだけだ。時間を取ってすまなかった」

 

 プッチがそう締めくくり、唐突に始まった会議は終了を迎えた。

 とりあえず今日すべき用事は終えた、昨日の疲れを癒すために部屋へ戻ろうとするプッチにクマが話しかける。

 

「プッチ。悪いが、ハルウリの準備をしにいって欲しい。ジンザイの様子確認と食事の配膳、あとは備品の欠品がないかどうかを確かめておいてくれ」

 

「……分かった」

 

 彼にとってハルウリとはなるべく関わりたくない物であり、疲弊した今の状態では尚更気の進まない事ではあるが……仕方ない。大人しく彼からハルウリの施設のマスターキーを受け取り、外出の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アジトを出てから20分ほどだろう。

 太陽が真上にある真っ昼間ということもあり、空からの熱気とコンクリートに反射した熱気の両側から体を焼かれ、額には何粒もの汗が噴き出ていた。

 おまけに今日は日曜日と言うこともあり、街の中の人通りが多い。人が多ければ多いほど、スタンド使いが紛れている可能性があり、それが無意識のうちにプッチの精神へと負荷をかけていた。

 

 ため息ばかり漏れる口を抑え、ようやくハルウリの施設へと辿り着いた。ここまで来れば人通りは先程よりも幾分かマシになる。

 マスターキーで玄関口を開け中に入ると、全身がひんやりとした空気に包まれた。外から入ってくる日光を遮断するために窓を防いでいるお陰だろう。

 

 ジンザイの様子確認と備品確認・・・・・・まずはジンザイの様子を確認して、ついでに備品の欠品を確認し、足りない物を後で持って行くとしよう。

 

 コツコツと階段を登り、三階への階段を登らずに右へ曲がり、ジンザイ達のいる部屋へと向かう。

 201は誰もいない。202の扉の前に立つ。

 

 私はハルウリという物自体に深く関わらないようにしていたが、この202にいる人物とだけは、多少話をする仲ではあった。まあこれからやるべき事もあるし、そう長くはできないが、少しくらいなら話をしても問題はないだろう。

 

 

 

 ノックをする。

 返事はない。

 

「入るぞ」と声をかける。

 返事はない。

 

 

 ……寝ているのか?

 昨日は美術館でヒトカリをしていたため、ハルウリは行っていないはずだ。夜遅くまで起きていなければいけない理由はない。

 

 しかし、まあ、正午の時分まで眠る事もあるにはあるだろう。私はしないが。

 

 

 マスターキーを鍵穴に差し込み、ドアノブを回し、扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 扉の隙間から異臭が噴き上がる。

 私が嫌いな、男と女の生々しいぶつかり合いを想起させる生理的な匂いではない。

 

 鼻がひん曲がるような、腐った肉の臭いだ。

 

「――――ッッ!!」

 

 

 途端に嫌な予感が走り、扉を一気に押し開ける。

 全身に覆いかぶさる悪臭。前日の食べ残しがゴミ箱の中で腐っていたというレベルではない。

 

 部屋の中の物をひっくり返すまでもなく、悪臭の原因はプッチの視界に映っていた。

 この部屋の主目的、中央に位置するピンク色のシーツと布団が敷かれたキングサイズのベット。

 

 そのベッドの上で仰向けに寝転がる部屋の主の女性。

 

 

 彼女の頭部は、グチャグチャに掻き回された赤黒いゼリーのようになっていた。

 

 

 どんな表情をしていたのかすらも全く読み取れない。

 さんさんと降り注ぐ日光が窓から入ってきている。エアコンも何も点けていない室内の温度は30℃近い。

 うだるような暑さで肉はただれ、腐り、黒い汁が床のカーペットをじわじわと汚していっていた。

 

「こ、これは……スタンド能力かッ!! ホワイトスネイクッ!!」

 

 冷や汗を垂らしつつ、プッチはそう叫んだ。

 一般人であるならば突然の腐乱死体と悪臭を前に、嘔吐をしてもおかしくはない。プッチが嘔吐もせず、取り乱したりもしないのは、それをしても仕方がないと言うことを嫌と言うほど知っているからだ。

 

 

 ホワイトスネイクを顕現させ、周囲の警戒をしつつ、女性に近づく。

 彼女の手首をそっと掴む。

 高い気温のせいか体温は僅かながらあるものの脈はない。分かってはいたが、既に死んでいるようだ。

 

「……やはり死んでいる、か。しかし、これは……見たことがないスタンド能力だ。この街に来てからも……」

 

 彼が元の世界で出会ったスタンド使い、この街に散見するスタンド使いの痕跡。

 だが、そのどれらとも異なる異質なスタンド能力。

 人を溶かしゼリー状にするスタンド能力など聞いたこと…………は…………。

 

 

「違う、このスタンド能力はッ! 承太郎の記憶で見たぞッ!!」

 

 

 プッチは、承太郎の記憶ディスクを覗いた時のことを思い出した。

 

 天国へ到達するための言葉を探すため、承太郎の記憶をざっくばらんに探りまわっていた時のことだ。

 ハンバーグ頭の青年と二人で、丘のような場所で戦っていた記憶だ。承太郎は右半身をドロドロに溶かされ、行動不能になっていた。いい気味だったのを覚えている。

 

 

 このスタンド使いの正体は確か、ドブネズミ。

 体躯の小ささには承太郎たちも苦労していた。ある程度視界が開けた丘、でさえだ。

 

 

 亜総義市。

 狭い土地に限界まで栄えたこの街は、地下に蔓延る下水道の数も半端ではない。

 下水道とはネズミの温床。程よい熱と暗さはネズミが繁殖するにはこれ以上ない環境!

 

 

「まずいぞ! もし承太郎の記憶通り、ドブネズミがスタンド使いだったとしたら……!

 

 スタンド使いのドブネズミが無数に増え、亜総義市は滅亡するッ!!

 

 部屋の中から勢いよく飛び出した。

 正直な話、プッチにとってこの街の人間が何人、何十人死のうがどうってことはない。

 

 だが、プッチが天国に到達できないのは非常にまずい。

 プッチが天国に到達することで、全世界の人々が救われる。そして天国に到達するためには、きっと、この街で何かをやり遂げることが必要なのだ。

 

 彼は懐から携帯電話を取り出し、不慣れな手つきで素早く操作を行い、クマに電話を掛ける。

 プルルル、プルルル、プルルル――3コールでクマは電話に出た。

 

 

『――どうした』

 

『ハルウリの営業場所がスタンド使いに襲撃されたッ! まだ確認はしていないが、この分だと全員殺されている!』

 

『……何ッ!? どういう事ッ………今すぐそっちに向かう!』

 

『逆だ、アジトから出るなッ! 誰も出すんじゃあないッ!! 全ての窓と扉を塞いでおけッ!』

 

 

 クマの戸惑う声が微かに聞こえたが、これ以上話す時間はない。

 プッ、と電話を切る。

 

 ここからが本番だ。

 記憶通りならネズミは非常に小さく、すばしっこく、ずる賢い。コンクリートジャングルたる亜総義市では明らかに地理の面で相手に軍配が上がる。

 それにスタンドで攻撃を受けただけでもアウトの厄介なスタンド能力だ。油断はできない。

 

「……ッ」

 

 202から移動し、203の扉を開ける。

 中は似たようなものだった。悪臭が広がり、頭を崩された死体が転がっている。頭の他に胸部も溶かされていた。

 だが、202よりも遺体の腐乱度は低い。

 

 204の扉を開ける。

 ベッドの上に死体がある。頭部、胸部に続き、両足までもグズグズに溶かされていた。

 そして、203よりも遺体の腐乱度は下がっていた。殆ど腐っていないと言ってもいい。

 

(……部屋を進むごとに死体の損壊度が増え、腐乱度が減っている。この死体に限っては、まだ死んでからそう時間も経っていない……)

 

 

 次の部屋の番号は205。

 この階の最後の部屋だ。恐らくネズミがまだいるとしたら、この部屋。

 

 承太郎たちが持っていたような遠距離武器はない。

 だがここが都市部である以上、40mも50mも離れられることはそうないだろう。

 

 問題は、()()()()()()()()()()()()()

 ホワイトスネイクではネズミが通る排気口などの小さい通路は到底追い切れない。

 狭いところに入られれば負け、入る前に仕留めればこちらの勝ち。簡単な話だ。

 

 

 205のドアノブに手を掛ける。

 自然と息が深くなる。自身の姿と重ね合わせるようにホワイトスネイクを顕現させる。

 

 扉を数センチ開け、向こうの景色を少し伺ってから、一気に開け放った。

 

 ぐあっとプッチの視界が広がる。

 ベッドの上に広がるのはグズグズの死体。全身が煮凝りのように固まっており、もはや人としての形を保っている部位はない。

 

 悪臭の中、鼻を抑えることもせず、目だけをギョロギョロと動かして部屋中に敵がいないかを確認した。

 

 ベッドの上には居ない。

 

 シャワー室の中にも居ない。

 

 服を入れておくためのタンスの側にも居ない。

 

 ここに敵は見当たらな―――――

 

 

 

「……―――ホワイトスネイクッ!!」

 

 

 脳裏に走る直観。プッチは迷わずそれに従った。

 スタンドの力を足に合わせ、3mはある天井に背中が着くほど高く飛び上がる。

 

 

 瞬間。

 先ほどまでプッチの右足があった場所に突き刺さった一発の凶弾。

 

 ベッドの側面を蹴り、壁際まで吹き飛ばす。

 

 黒い血と肉片が花びらのように舞い散る中。

 ベッドの下に隠れていた『()()』が姿を現した。

 

 

 

「フシ”ャァァ―――――ッ!!!」

 

「やはり、スタンド使いの正体はネズミか……ッ!」

 

 

 ベッドの下に潜み、プッチを襲撃したスタンド使いの正体は――やはり『()()()()()』だった。

 亜総義市という都会で育っているからか、承太郎の記憶で見たネズミよりも少しふくよかな体形をしている。

 そして、奴の耳に、虫に食われた跡のような小さな欠けはない。

 

 奴のスタンドは、正に機械仕掛けの砲台。

 中央にスコープがついており、前方に一回転することで、裏に隠れていた砲身が現れる仕組みだ。

 砲台からはスタンドすらも溶かす『毒』の弾が発射される。

 シンプルながらも殺傷力の高い厄介なスタンドである。

 

 

 承太郎とハンバーグ頭の青年の言葉を引用し、『虫食い』と『虫食いでない』から――――『()()()()()()』と呼称すべきだろう。

 

 

 プッチが着地と同時にホワイトスネイクでネズミを踏みつける。

 が、ネズミは素早い横っ飛びで足を回避し、彼にスタンドの筒先を向けた。

 

 咄嗟に身をかがめ、頭部に向けて発射された弾を回避する。

 避けられないほどの速度じゃあない。ホワイトスネイクの力を借りればギリギリ回避できる。

 

 この分なら、すぐにでも仕留められる……そう思ったところで、プッチは自身の思い違いに気づいた。

 

 

(―――待て。()()()()()()()だと!?)

 

 

 承太郎の記憶では。

 時間を止めなければ、奴のスタンド『スタープラチナ』でさえ回避するのが難しいほどの弾速だったはずだ。

 

 スタープラチナは非常に腹立たしいことに、全スタンドの中でも『最速』と言っていいほどの速さである。……メイドインヘヴンを除いてだが。

 

 そんな最速のスタンドを持つ承太郎でさえ回避できない。

 しかし、こいつの弾は『弱ったホワイトスネイク』の本体である私でも回避できる。

 

 辻褄が合わない。

 何かヤバい。

 

 

(何かがヤバいッ!!)

 

 

 『こいつ』は、『()()()()()()()()()()()()』じゃあないッッッ!!

 

 『()()()()()()()()()()()』んだッッッ!!

 

 

 

 ――――ガコンッ!!

 

 

 ネズミのスタンドが再び回転する。

 一息つく間もなく次弾が発射され、プッチは思考の海から強制的に現実へ引き戻された。

 

 左側へ転がるように回避。

 そしてホワイトスネイクでネズミの居た場所にラッシュを仕掛ける。

 しかしそこには既に虫食いもどきの姿はない。

 

 

 咄嗟に顔を上げる。

 ネズミの尻尾がエアコン用の排気口へ揺れながら入っていくのが見えた。掴もうとするが、指が届く前にネズミの姿が完全に壁の向こうに消える。

 

「逃がすわけにはいかない! 貴様が繁殖すればこの亜総義市は終わる! 今、この日、この時に確実に始末するッ!!」

 

 ホワイトスネイクと共に窓をぶち破る。

 ジンザイが脱出するのを防ぐために鉄格子が付いていたが、関係なくぶち破った。

 

 建物の外壁には何本ものパイプが張り巡っている。どれが排気口からつながるパイプかは分からない。

 

「チッ!」

 

 先ほどぶち破った鉄格子をスタンドで掴み、横薙ぎに振り払った。

 全てのパイプが横一文字に引き裂かれ、中の様子が丸見えになる。ネズミの姿はない。

 

 落下しながらもやたらめったらに鉄格子を振り回し、パイプをズタズタに裂いていく。

 

 地面から3メートル辺りの高さにあるパイプを引き裂いたところで、ようやく虫食いもどきが姿を現した。

 バッとパイプの中から身を翻し、少し離れたパイプの取っ掛かりに足を引っかける。

 

「逃がさんッ!」

 

 鉄格子を虫食いもどきに投げつける。

 ネズミは少し下りることで鉄格子を回避し、目標をそれた格子はパイプに突き刺さる。パシュッ!!と水が噴き出した。

 

 どうやら奴の乗ったパイプは水道管だったようだ。

 プッチの方向に勢いよく吹き出してくる水。

 勢いは強いもののただの水、腕で払いのけようとしたところで、虫食いもどきのスタンドがいつの間にか姿を出しているのに気が付いた。

 

 壁を蹴り、身をよじらせ、水流を無理やり回避する。

 顔の前を勢いよく飛んでいく真水には、先ほどから幾度も見ている毒の弾が何発も泳いでいた。

 

 

(こいつ……水に弾を流して私に当てるつもりだったのか! 今腕で水を受けていれば確実に殺られていたッ!!)

 

 

 ドブネズミにあるまじき知能。厄介なスタンド毒。そして、未だ不明なスタンドの詳細。

 

 虫食いもどきはプッチより先に地面に着地し、人通りの多い大通りへと駆けていく。

 

 あんな生物を生かしていてはこの街は本当に滅んでしまう。

 虫食いもどきが走り際に放っていた弾を避けつつ、プッチは大通りの方へとネズミを追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 




いつかの後書きで、オリジナルスタンドは出さないと言っていました……

ですが今回、ドブネズミのスタンド使い戦を書く際に、私が初めから終わりまでの大まかなストーリーを書いたプロット表を見た所、

「何かかっこいいスタンドバトル!」

とだけ書かれていました。



    (゜д゜)



ということで急遽、一から十までスタンドバトルの設定を練り上げたのですが。

本家虫食いのスタンドをそのまま使っての戦いは、作者の頭では書けませんでした。(展開が難しすぎる……)


よってスタンド「ラット」の一部を、本編オリジナルの物に変更しております。


一度オリジナルスタンドは出さないと言ったのに、此度の話でその言葉を違えてしまったことについて、深くお詫び申し上げます。
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