「なんでっ!どうして
フローラは取り乱す。ルークを守るために本来の神としての力を解放しようとするが先程から何度試しても何も起こらない。
「早くしないと、ルークが殺されちゃうのに何でよ!?、何で解放できないのっ!?」
黒竜が歩く地響きが着実に近づいてくる。
「愛してるのっ。大切なのっ。だからっ……」
私はどうなっても良いから……愛するあの人が無事で済むなら何だって良いから……だから…だから誰か、
「たすけて…」
何もできない愚かな自分を嘆くフローラの肩に誰かが手を置く。
「下がってろ、フローラ……」
ボロボロの姿のルークが立ち上がっていた。
◆◇◆◇
あれ…今どうなってんの…?もしかして死んだ…?思考がポワポワして纏まらねぇ。身体が滅茶苦茶重い。まあ仕方ないないよな。強化に耐えきれず壊れそうな身体を『
でも、それよりもだ。あの糞トカゲはどうなった?地面に叩きつけてやったのは覚えてるけどちゃんと殺れたっけ?気のせいかまだ鬱陶しい鳴き声が聞こえる気がする。
それにフローラも何か叫んでない?あっ、何か身体の感覚が少し戻ってきた。もうちょいで目が開けれそう。
……ああん?何でフローラが泣いてんだ?
見ててくれって言ったのに、まるで俺を庇うために前に出てる様に見える。じゃあ、フローラを泣かした原因は………。
「俺、か…」
◆◇◆◇
「るー、く……?」
「トドメ…刺す、から…もう少し…待ってろ……」
ルークは震える手で回復薬を取り出して次々と摂取する。その量は明らかに過剰で、どれだけ無理して立ち上がったのかを物語る。
「うっぷ、吐きそう……んっ…セーフ」
口から零れた回復薬を服の裾で乱暴に拭う。
「そんな…いやぁ…お願いだから…行っちゃ、いやぁ……」
◆◆◆◆
背中が燃えるように熱い。俺の意志に反応して
何でこんな目に合った?
何でフローラにあんな顔をさせてしまった?
何が悪い?誰が悪い?
俺達の幸せを壊して何が楽しい?
もし誰かが望んだのなら…
もし世界が望んだのなら…
そんなもん、全部ぶっ壊してやる………ッ!!
「見ててくれ。フローラがくれた
頭に自然と言葉が浮かんでくる。
「お前の愛する男が、意地を通すとこを」
フローラは色んな涙を流しながら、色んな感情が入り交じった表情になる。
「なんで…なんでそんなに…かっこいいのよぉ……っ」
ルークは杖を構え、詠唱を始める。
「【安寧の時は終え やがて争いが始まった】
【ただ平穏を望み 愛するものと寄り添い 喜びを分かち合う】
【そんな人生を送っていたのに 世界はそれを許さなかった】
【ああ 平穏を壊せしものよ
【ああ 争いを望む世界よ
【ならば壊そう その全てを ならば掴もう 望む世界を】
【傷みには傷みを 悪意には悪意をもって報いよう】
【我が世界を脅かす全てのものよ 終焉の
【我は破壊をもたらし 終わりを告げるもの】
『【ワールド・ディストラクション】』ッ!!」
黒竜は破壊の奔流に包まれ、ようやく死に絶える。黒竜の胴体部分は消え去り、下半身部分だけ残る。ルークは構えを解いて杖を下げた。
「あ゛あ゛あ゛……ムリ…」
ルークは呟いた瞬間、盛大に血を吐きそのまま倒れた。
「ルーク!!しっかりして、お願いだから死なないでっ!」
限界を何度も超えた跳ね返りがルークに降りかかる。薬の大量摂取により回復薬は意味がない。治療魔法を使おうにも使える本人が意識を失い息も止まりかけているのでできない。
フローラは声の限り、誰か助けてくれと叫び続ける。絶望的な状況で諦めかけたその時、ルークが黒竜を倒したことで本来なら生け贄として死ぬはずだった女性が姿を現す。
「あの、どうなさいましたか?」
◆◇◆◇
女性の名はホルン・コルベス・ストラーチ。運が良いことに彼女は医術知識を豊富に持っていた。診察を終え、状態がわかったホルンは急いで重症箇所から治療術を使っていく。一箇所ずつ丁寧に施すこと三十分。再度の診察で怪我はなくなったことを確認し、ほっと胸を撫で下ろす。
「もう、大丈夫ですよ」
「あ゛り゛か゛と゛う゛っ……」
フローラは涙ながらにで感謝を伝える。
「よかったよぉ…本当に、良かったよぉ」
フローラはルークの胸に蹲り、鼓動の強さを感じて安堵すると瞳からさらに涙が溢れ出してくる。
「るうぅぅくうぅぅ……」
ホルンも安心したら眠気が襲ってきた。治癒術による体力の消耗もあるが彼女は本来、黒竜の生け贄として今日死ぬはずだったのだ。ここに来るまで恐怖や不安などで睡眠時間が減り食事も喉を通さなかった。
そして近づいてみれば、明らかな戦闘音が聞こえてくる。彼女を籠で運んできた騎士はすでに去っているのでしばらく様子を伺うことにした。
やがて激しい音と光が消えて、何も聞こえなくなり、ホルンは我が物顔で居座っているはずの黒竜の場所までゆっくりと歩みを進めていき、助けを呼ぶ声が聞こえたので走り出す。
現場に辿り着くと前身が無くなっている黒竜らしきモノが横に転がり、血塗れで倒れている男性を抱える女性がいた。
「助けることができて本当に良かったです」
ホルンは治癒術に高い才能を持っており、齢十九にして大陸トップクラスといわれるほどの使い手。だからこそ、生け贄に選ばれた。選ばれた日からずっと諦めていた。そんな彼女をどういった経緯なのか、分からないが救ってくれたのだから助けることなど当然だった。
◆◆◆◆
ルークは自分が花の香りに包まれているのを感じた。もう身体の痛みは無く、むしろ力が内から溢れてくるのを感じる。意識が次第に覚醒していき目を覚ますと、愛する
「……フローラ?」
「ぁっ……ルークっ!」
フローラに強く抱き締められたルークは彼女の髪を解かしながら頭を撫でる。
「心配かけてごめん」
彼女は首を激しく横に降る。
「もう安心してくれ。何故か身体は元気になったから」
彼女はこちらに顔を上げてくれない。
「いつもみたいに花のような笑顔を見せてくれよ。な、フローラ?」
「役立たずでごめんなさい…助けられなくてごめんなさい…ッ」
「そんなことないって。フローラから貰った恩恵が俺を後押ししてくれたんだ。二人であの黒い竜を倒したんだよ。だから役立たずなんて、助けられなくてなんて言わないでくれ」
「う゛わ゛あ゛あ゛ぁぁんっ!!」
「おーよしよし」
ルークはフローラが泣き疲れて眠るまで優しく撫で続けた。
「さて。自己紹介もせずに気づけば全員寝てしまって朝になっちゃったけど、どうしようか」
「はい」
「どうぞ、フローラ」
「旦那様、オラリオに向かいましょう」
「あれ、もしかして気づいてなかった?ここ異世界だぞ?」
「ほへっ?」
「俺達がいた星とは違う星の世界。ニューワールド」
「にゅーわーるど……?」
どうしたフローラ、横文字好きな
「あの、よろしいでしょうか?」
「どうした、命の恩人さん。可愛らしい寝息を立てて、さっき起きたばかりだからまだ眠いのか?」
「ちょっ、それは忘れてください!」
「すまんすまん。それでどうした?」
「…まあ、いいでしょう。よろしければ私に提案があります」
「それが本当ならすっごい助かるんだが、良いのか?」
「生け贄として命を落とす所を救っていただいたのです。これくらい構いません」
「成り行きだけどなぁ…」
「それでも、ですよ。友人のエリスの家に向かおうと思います。あそこなら快く受け入れてくれるので」
「じゃあ他所の家にお邪魔するんなら、何か土産でも持っていくべきだな」
「そうですねぇ。しばらくお世話になりますからぁ、何か素敵な物をご用意しないとですわぁ」
「それなら丁度良いものがあります。あれです」
ホルンが指を指した先には黒竜の遺体だった。
「竜の鱗は滅多に手に入らない高価な材料だし、竜が死んだことの証明にもなるのでいっぱい取りましょう」
「ほほう…。材料、とな?」
確かにそうだ。少し考えればすぐに分かることだったのに指摘されるまで気づかなかったとはなんたる不覚っ!あれだけ生命力高いんだから全身隈無く素材じゃねーか!こうなったら持てるだけ持って行こう。
え、骨はだめなの?ちょっとだけでも?ほんのちょーっとだけでも?マジかぁ………
◆◆◆◆
ルークとフローラはホルンの案内の元、目的地へ向かって歩き続ける。人と神と言えど女性同士なので移動中二人は楽しく会話をしてたまにルークが和に混じったりとして和気藹々としていた。
黒竜の鱗はルークの腰にある神秘のアビリティを用いて作った魔法袋に入っている。まだまだ要改良中なので魔力持ちにしか使えず、容量はかなりあるが時間経過もするので理想とするアイテムバッグには程遠いとルークは考えている。
40枚ほど袋に収めるが本当は全て剥ぎ取りたかった。だが黒竜を倒したのが誰なのかバレるとのことで泣く泣く半分以上を残すことにした。その代わりではないが残っている竜の血と肉を採取して専用の容器に詰め込んで持ち帰ることにした。
夜になり、ルークは焚き火の前で夜番をしている。フローラとホルンはルークが職人と一緒に作った快適なテントで睡眠を取っている。
「やっぱ力が漲り過ぎてる。何でだ?」
ルークは周囲を警戒しながら自身の体調を確認するために瞑想をする。
「魔力が倍くらい上がってるし、プレート状に保管してるミスリル板を綺麗に畳めたから腕力も上がってることも分かった」
いつから野菜人になったんだよ。スキルか?血筋か?後者ならマジでドン引きなんだが。
「どうかしましたぁ?」
後ろからフローラが声をかけてきた。ルークは自分が口を手で覆って考えていたことに気づく。フローラに『問題ない』と言葉を返すと『それなら良かったですわぁ』とフローラは言い、ルークの隣に座った。
「朝までまだ時間あるけど、寝てなくて大丈夫か?」
「なんだかぁ、目が覚めちゃいましてぇ。それに旦那様にお願い事がありますのぉ」
「お願い事?」
立ち上がりルークの正面に移動した。すると左右のスカートの端を指で摘まみ、淫靡な雰囲気を醸し出しながら捲り上げる。その表情は月夜の間だけに咲く月下美人の儚い美しさも加わっているようだった。
「抱いて」
端的にルークに伝える。
「貴方を刻み込んで。それだけで安心するの」
いつもの口調でなく、真剣な表情で話す。
「わかった」
ルークはフローラとの距離を零にすると最後に一言告げる。
「荒っぽくなるぞ」
「いいわ、きて…」
フローラに渦巻く様々な気持ちがルークによって溶かされていく。ルークの存在を、元気に生きているのだと身体の奥で感じたかった故の行動。
普段であれば他人が近くにいれば自重する分別を持つ。そんなフローラがホルンが近くにいるにもかかわらず情事に誘うのは、よほど精神が不安定なのだろう。それに気づいたルークは痛みが感じるくらい荒っぽくして他のことを考えさせないように抱く。フローラはその痛みさえ快感になって妖しく乱れる。声が枯れるくらい何度もルークの名前を叫ぶ。お互いに何度も高まりを弾けさせるが構わず続ける。
さて、ここでルークは初歩的なミスを犯していたことに気づいていなかった。室内だけでなく、外でも致す時も念のため魔法で遮音を施している。しかし今回は色々あったせいで、そっちに気を回せなかった。
つまり、情事の声がただ漏れなわけで。寝ていたホルンも何事かと目を覚ましている。
「まあ…うわぁ…すごい……うそ、あんな所にだなんて……」
テントの入り口の布を少し捲り、隙間からそっと覗いている。昼間、仲良く会話をしていた二人の夜の姿に釘付けになり、終わるまでその様子を眺めていた。
翌朝。三人で朝食をとっているとホルンは眠気に誘われアクビをする。
「大丈夫か、ホルン。旅の疲れが出てるならもう少しゆっくりしてから出発して構わないが?」
「ッ!いえ、大丈夫ですよ!今日中に着きますし元気よく行きましょう!」
「あらあら。ホルンさんたら、お友達に会えるのがとても楽しみなのねぇ」
「徹夜明けのテンションにしか見えんが?まぁ、ホルンが問題ないと言うなら構わないけど」
何で貴方達は眠くないのですか…!ルークさん。貴方、何でそんなに普通なんですか!もう少し気まずげな空気を出したりしないんですか!
フローラさん。肌の艶と表情が昨日までと違いすぎますよ!綺麗過ぎます、女神ですか!
「……はぁ。私もルークさんみたいに命懸けで守ってくれて愛してくれる人いないかなぁ」
ホルンはルークのフローラに対する愛情の深さに、お互いに想い合ってる絆が羨ましかった。
「そろそろ行くか。二人とも準備はいいか?」
「バッチリですわぁ」
「あ、はい。いつでも行けます」
3人はホルンの友人、エリスの家に向かう。
◼️何で竜の骨を採取したら駄目な理由
・竜の骨置いてけドラゴンが現れるからです。ちょっとでも取られても気づきます。回収するために容赦なくドラゴンブレス放ちます。
・※原作設定です。
◼️フローラがアルカナム使えなかった理由(設定)
・扉(天界)を開けて力を解放するにも異世界(鍵穴違う扉)なら開くことは無理だよねって理由。