ハイシン者:碇○○ ~碇シンジが碇レイだったり配信者してたら円環がめっちゃぐちゃりました~   作:高城拓

1 / 5
長野の「先生」のところにいたころの碇シンジ君が、あまりの自己肯定感の低さと承認欲求から女装に目覚めてあまつさえ弾き語り配信なんか始めちゃった円環のお話です。

原案は
https://twitter.com/kyuumaruTK/status/1371820202342576128
原案のほうが正直おもれーのでみんな見ろよ見ろよ~


新性癖女装ゲリオン

父ゲンドウに捨てられ、親戚の「先生」に預けられた碇シンジ。

彼には自己肯定感と承認欲求を埋めてくれる親はいなかった。

その寂しさを埋めるためか、それとも哀れな彼を見かねてか、彼はチェロを教わることになった。

親に認められない鬱屈はありつつも、そこはやはり子供ゆえの素直さか、彼はいくらか躓きつつも比較的順調に音楽の素養を身に着けつつあった。

あるいは彼を捨てた父と同様、音楽によって自分を世界から守ろうとしていたのかも知れない。

父ゲンドウから譲り受けたSDATには、母が好んでいたクラシック音楽が収録されていた。

 

彼がそれに目覚めたのは、彼以外の、というより、男根主義的な精神性を持つものには他愛のない理由だ。

彼はいじめられもしなかった代わりに、他人を遠ざけ、他人から遠ざけられていた。

その孤独から、いつしか彼は変身願望を抱くようになる。

そこまではよくある話だ──誰の身の上にも。

だが、「先生」が「シンジくんはユイさんに本当にそっくりだねぇ」と漏らした時、その言葉はシンジの根底を大きく強く揺さぶることになる。

 

碇シンジは自分を変えたかった。

碇シンジは誰かに認められたかった。

碇シンジは自分を変えたくなかった。

碇シンジは自らをありのままに受け入れてくれる存在を必要としていた。

碇シンジには、母こそが必要だった。

 

碇シンジの母は、そこにいた。

つまり、女装だ。

 

彼は「先生」の家の母屋ではなく、薄汚れた離れに住まわされていた。

世界から隔絶された、彼だけの小さな小さな、安全な世界。

だから最初は離れから出ず、女装した自分を鏡で見るだけだった。

しかし「自分の女装は本当に母に似ているのか」と、「誰かに確認して欲しい」と思うまでは、そう時間はかからなかった。

幸い、離れにもインターネット回線とそこそこのスペックのパソコンはある。

彼は僅かな小遣いで、配信環境を整えた。

チャンネル名は、AYA Symfony Channel、とした。

 

◇

 

碇ゲンドウがそれを見つけたのは偶然である。

特務機関ネルフ日本支部を率いる彼の精神は、激務に晒されても座屈することはなかったが、それでも疲弊はする。

赤木リツコが淹れてくれたコーヒーをすすりつつ、息抜きに独立インターネット回線につないだPCで、動画サイトのクラシック演奏動画を徘徊する。

それが彼なりの、リフレッシュの方法だった。

 

繰り返すが、碇ゲンドウがそれを見つけたのは偶然である。

ある日、動画サイトのレコメンド欄に、それが掲示されたのだ。

 

『AYA Symfony Channel』

 

何気なくそのサムネイルをクリックしたことで、彼の人生は大いに狂ってゆくことになる。

いや、彼は妻ユイを喪ってすでに狂っていたのだから、別のチャネルへと狂い方を変えたと見るのが至当である。

何れにせよ結果は同じであり、だからこそ問題はなかった。

 

彼にとってはそうだった。

 

現実はそうではなかった。

 

◇

 

冬月コウゾウがそれを見つけたのは必然である。

特務機関ネルフ日本支部を率いる碇ゲンドウ。

彼の精神は、激務に晒されても座屈することはなかったが、それでも疲弊はする。

赤木リツコが淹れてくれたコーヒーをすすりつつ、息抜きに独立インターネット回線につないだPCで、動画サイトのクラシック演奏動画を徘徊する。

それが碇ゲンドウなりの、リフレッシュの方法だった。

それを知らない冬月コウゾウではなかった。

 

繰り返すが、冬月コウゾウがそれを見つけたのは必然である。

珍しくもないことだが、その日、執務室で寝落ちした碇ゲンドウは、冬月コウゾウが入室しても目を覚まさなかった。

やれやれとひとりごちた冬月コウゾウは、碇ゲンドウの私用PCの画面に釘付けにされた。

その動画のタイトルを自分の私用PCで検索したことから、彼の人生は大いに狂ってゆくことになる。

いや、彼は教え子であり碇ゲンドウの妻であった綾波ユイを喪ってすでに狂っていたのだから、別のチャネルへと狂い方を変えたと見るのが至当である。

何れにせよ結果は同じであり、だからこそ問題はなかった。

 

現実はそうではなかった。

 

◇

 

式波・アスカ・ラングレーにとって、世界こそは敵だった。

彼女はユーロネルフによって量産された式波タイプの最後の一人だったが、そうなるまでに、彼女は彼女たち自身のために、きょうだいたちを全て蹴落としていた。

父もなく母もなく、きょうだいたちはもういない。

一人ぼっちで生きる彼女に、世界はあまりにも辛すぎた。

彼女の精神が座屈しなかったのは、最後の一人になるまでのたたかいで培われた、不屈の精神によるところが大きい。

 

それでも疲弊しないわけではない。

幸いユーロネルフのリリンたちもそれはよくわかっていた。

あるいはあまりに人間然とした彼女に同情しただけかも知れない。

厳重かつ緻密なアクセスプロテクトを施した上で、ユーロネルフは彼女に一台のPCを与えた。

ブラウザを起動すると、動画サイトが固定表示されている。

まず目に飛び込んできたのは『AYA Symfony Channel』

最近人気のクラシック動画チャンネル、らしい。

 

何気なくそのサムネイルをクリックしたことで、彼女の人生は大いに狂ってゆく。

いや、彼女はデザインドチャイルドだったのだから、そもそも狂っていたのかも知れない。

何れにせよ結果は同じであり、だからこそ問題はなかった。

 

◇

 

こんばんわ。

AYA Symfony Channelへようこそ。

皆さん元気にしていましたか?

今日は一週間ぶりのライブ配信です。

えっと、いつもどおりにね、ライブ演奏とトークをしていきたいなって、僕は思ってるんですけど。

えへへ。やっぱり、照れくさいですね。もう慣れなきゃいけないのに。

あ、らんぐれーさんスパチャありがとうございます。そうですね。しっかりします。ありがと!

で、今日はゼルダの伝説のゼルダ姫のドレスです。64版。僕、胸がないから似合わないですけど。

京月さんゴンドウさんスパチャいつもありがとうございます。そんなことないって? えへへ。うれしい、ですね。

んっン!それじゃ始めようと思います。

あ、京月さんダメですよ、そんなにスパチャ入れたら、ご家族心配しますよ。

では。

今日はバッハの、無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007 『プレリュード』。

はじめます。

 

◇

 

ゲンドウの右手は濡れていた。

冬月はネルフの資金を操作していた。

アスカは涙をこらえていた。

 

ナゼ自分はこうなのだと誰もが己に問うていた。

ソウでないのはシンジだけ。

彼はすでに満たされつつあった。

その器は歪んでいた。

生まれたときからそうだったのかも知れない。

だが、もはや。

 

碇シンジは、人類を補完する救世の鍵たる存在は、自らを補完する必要性を感じてはいなかった。

 

◆

 

残念だね、シンジくん。

この世界じゃ、君を幸せにすることはできない。

君はいずれ破滅してしまう。

その前に使徒に蹂躙され、人類補完計画はゲンドウくん自らの手で成され、君たちは意味を喪失してしまう。

まぁいい。

この円環では僕たちは出会えなかったけど、次の円環ではきっと君を助けるよ。

 

[新性癖女装ゲリオン 終劇][エヴァンゲリオン ハイシン者:碇レイへ続く]

[EOF]

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。