あの後、色々とありはしたが無事現世へと行けることとなった俺。総隊長に三番隊隊長になれと言われたときは、本当にどうしよ。とは思ったが、そこに喜助が登場し、何とか事なきを得ることができた。
そしてそんな俺は今、とても困っている。その原因とも言うべき存在。砕蜂が俺に泣きついているのだ。これには本当に困ったものだ。
俺は背中に顔を埋めてしがみつく砕蜂を無理矢理にでも離そうとするが、できない。俺の斬魄刀にも頼んでるのだが『主人様の浮気者。』って言って、使い物にならない始末。
「な、なぁ砕蜂。そろそろ離れてくれないか?」
「(ブンブンブンッ」
「‥‥はぁ。」
「砕蜂サン、そろそろ定国サンから離れていただきt「死ね。」‥‥これは困りましたね。夜一さん、何とかなりませんか?」
「こうなったときの砕蜂は儂でもどうにもできん。無理じゃ、諦めろ。」
喜助でも無理で、ってそもそも砕蜂は喜助の事嫌いらしいから論外。夜一さんにも無理って、はっきり言って無理じゃないか?
「‥‥なぁ、砕蜂は俺にどうして欲しんだよ?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥さい。」
「何、何て言ったの?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥でください。」
「ちょっと待って、上手く聞こえなかった。もう一回いってくれない?」
「私を、置いて行かないでください。」
三度目にして漸く聞こえた砕蜂の本音。
それはまるで、親に置いていかれる子供のようだった。俺は目をパチクリとさせる。まさか、そんな事だとは思いもしていなかった。双極の丘で見た砕蜂は、もう俺や夜一が側にいなくても良いくらいに成長してるなとか思っていた。だからこそ、砕蜂の本音を聞いて、俺はこいつの本姓を垣間見た。
きっと砕蜂は、俺や夜一のような存在に裏切られるのが嫌なのだろう。まるで親に置いていかれる子供のようとは言ったが、あながち間違いではないのかもしれない。
砕蜂は昔から本質は何も変わっていない。俺や夜一が親なのだとすると、こいつは子供だ。親である俺達の後を、子供であるコイツはついてくる。しかもそんな状態だった砕蜂が俺達のいない間にもっと狂ってしまった。俺達という親から、砕蜂という子供は親離れできなくなってしまった。‥‥これは、俺のせいでもあるか。
「なぁ砕蜂。俺はお前の事を置いていったりなんかしねぇよ。だから総隊長に伝えろ。やっぱり俺、三番隊隊長になるよ、って。」
「!?それは本当、なのですか?」
「本当だよ、だから伝えてこい。」
「分かりました!!!」
笑顔の砕蜂は瞬歩にてこの場から姿を消した。そして砕蜂がいなくなったと同時に流れるなんとも言えない微妙な空気感。そりゃ当然か。現世に行こう!って言ってたくせに、急に行かないとか言い出すとかな。
俺自身そんなことするつもりはなかったんだけど、あの砕蜂を見ていたら居ても立っても居られなくなったのだ。そんな事のために約束を裏切ってしまうなど、本当に申し訳ない。
「‥‥すまんな、喜助、夜一。」
「ボクは全然構わないッスよ。それに、あの方法を取るしか砕蜂サンをどうにかする手だてはなかった。」
「儂も喜助と同意見じゃ。なぁに、またべつの機会があればその時に来ればよい。現世なぞ、お主も来ようと思えばすぐ来れるじゃろしな。」
「まぁ、そうだな。‥‥‥‥‥‥あ、そうだ。伝え忘れてたけど、俺が三番隊隊長になるのはあくまで一時的。つまり代理ってことだ。」
まぁなるとは言ったけど、正式な三番隊隊長になるとは一言もいっていない。それに、何より藍染達の裏切りにより三つの隊の隊長が不在だしな。それらの理由から喜助達には本当に申し訳ないが、俺は残ることにした。まぁ、これに関しては砕蜂のついでだがな。
「‥‥あまりそのことは、砕蜂に伝えない方が宜しいかと。」
「?あぁ、わかった。」
「はぁ~、儂はお主がいつぼろを出してしまうか心配じゃ。」
「そんな心配しなくてもいい!!って、今はそんなことどうでもよくて!!‥‥えーっと、まぁとにかく、現世で先に待っててくれ!」
「了解ッス。‥‥それじゃあ」
「また現世で会おう、定国。」
「おう!じゃあな!!」
喜助達は穿界門をくぐり、現世へと向かっていった。
喜助達と別れてから約二日が経った。
あの後総隊長に、俺はあくまでも一時的に隊長になる。次の人が見つかったらその人で。という事を伝えた。総隊長としてはずっと続けて欲しいらしいのだが、流石にそれは無理だ。俺が罪人であったという事実は変りないし、何より俺が隊長になるべき存在ではないからだ。
まぁそれから何時間か話し、無事総隊長は了承してくれたので良かった。
それで少し話が変わるのだが、俺は今三番隊の書類仕事を行っている。何でも前の隊長である市丸ギンって尸魂界を裏切った奴が、いつも全てこなしていたらしい。だからそいつがいなくなった途端、三番隊は機能を停止したらしい。特に書類仕事。んで、俺はそんな三番隊の隊長に一時的にではあるがなった。まぁつまり、わかるな?
「それじゃあ、この書類もお願いします。」
「そこに置いておいてくれ、やっておくから。」
「分かりました。」
「‥‥はぁ~、市丸ってやつ。これだけの量の書類とか含めたその他もろもろ全部こなしてたのか。いや、本当にどんなバケモンだよ。」
目に見るだけで百以上はあるだろう書類の山を見れば、ため息ばかり出る。
「‥‥手伝いましょうか?」
「‥‥‥‥助かる。」
それから、俺と吉良副隊長の二人がかりで何とか書類を片付けることに成功した。一時はどうなるかと思ったが、案外どうにかなるものなのだな。まぁ、吉良副隊長の力あってやっとだったけどな。
そして俺は書類が片付いたことで、漸く一休憩。といったときだ。誰かが今俺と吉良副隊長のいる三番隊の執務室にぶつかったのだ。一体なんなんだと思い、霊圧のする方へと向かってみる。するとそこにいたのは、片目に眼帯をつけた厳つい人。しかも、さっきちらりと見えたが十一という隊長羽織。そこで、俺は昨日白哉から話された事を思い出す。何でも、十一番隊の更木隊長には気を付けろとのこと。基本的に十一番隊は血の気の多い人達が多いらしいのだが、特に今代の剣八はその中でも一番ヤバイらしい。
「俺と戦えぇ!!!!」
「あ(察し
え、えーっと‥‥‥‥‥‥さようなら!!!!」
兎に角、俺は後で吉良副隊長に謝らないとな。という事を頭の隅に置きつつ、今はこの更木隊長から逃げる事にした。因みに逃げ延びられたかどうかについては、皆さんのご想像にお任せしよう。
次回から日常篇なるものを書いていきます。って、宣言しときます。(俺にそれができるほどの文才があるか知らないが。