Re;Children The Waking 作:change
「・・・・・・はぁ」
『どうしたの溜息付いて?』
蒼崎自室、PC前。黒井と紅輝との電車での出来事から10日が経過し、大学が夏休みに入った。
あの後、蒼崎がどうなったかと言うと・・・・・・。
「いや、この前、『パンドラ』ってカドショで炎帝とやりあったんだけど・・・・・・」
『え、炎帝と!?で!?で!?』
「いや・・・・・・何か、お互い無言でやりあっちゃって・・・・・・」
それでそれで、と、PCの中から話の続きを促す声。その正体は、あの『ボアロ』での店舗大会で蒼崎が打ち負かした、牙帝こと如月 緑月。帰宅後にデッキ相談から自然な雑談へと移行し、お互い、気付けば暇な時に気ままに会話するくらいの仲になっていた。
「最初は僕も少しというか、大分炎帝の威圧感にやられてたんだけど・・・・・・」
「・・・・・・そう構えるな」
「あ、いや、えっと」
「・・・・・・俺は高校生だ。大会ならまだしも、フリーで年上にそうもビクビクされてると、調子が狂う」
「ご、ごめん・・・・・・なさい」
冷房が効いた店内で、パチパチとカードを弾く音が響く。夏の暑さに気が滅入ったのか、蒼崎と紅輝以外には、小学生くらいの子供くらいしか、店内に来ている客は居ない。
蒼崎は取り敢えずと沢山デッキを用意して持ってきたが、どれも紅輝には歯が立たなかった。
蒼崎は、何だか自分が紅輝程の人とフリーで対戦していて良いのだろうか、という感覚と、この弱さじゃ張り合いがなくて退屈凌ぎにもなれないのでは、と焦ってしまっていた。
そんな内心を見抜いたのか、もしくは蒼崎の震える手を見て思ったのか、紅輝は盤面に目を向け、デッキを回しながら声を掛ける。
──な、情けない・・・・・・。
蒼崎は自分より年下の人間に、こうして気に掛けられたのが恥ずかしかった。
「・・・・・・はぁ、それ、お前の中で最強のデッキか?」
「え、いや、変えますか?」
「変える変えないじゃない、聞きたいのはお前の中で誇れる最強のデッキかどうかだ」
今握っているのは、白奈とは違った天門デッキ。
搭載させた大型の連鎖コンボ自体は誇れる。だが、それだけだ。
自分の中で最強と言うには、あまりにもあのデッキの持つ輝きに、届かない。
「・・・・・・いや、違う。けど、普通というか、一般的な部類のコンボデッキだと──」
「そんなものじゃないだろ、漆黒が真に評価したのは。もっと変態的なのがあるんじゃないのか?」
「変態的って・・・・・・いや、まぁ・・・・・・ある、あります、けど・・・・・・」
そう言って渋々と牙帝に勝つことが出来たデッキを取り出す。ちゃっかりあの後も改造された、つい最近まで蒼崎が睨めっこしていたデッキだ。
「それは?」
「《零龍》と《チェンジ・ザ・ワールド》を搭載した、カウンター力を意識した5cのデッキです。・・・・・・一応、分かり易いように、『悠久チェンジ』に因んで、『5c零龍チェンジ』とか、そう呼んでます」
「成る程な・・・・・・」
紅輝はふと、その時デッキに付いているスリーブを見た。少し端の方がすり切れている部分が幾つか見える。新品のスリーブではない事、自然とデッキを見ずに軽くシャッフルしている蒼崎の癖と思える行動から、きっと長い間、ずっと回し続けられたデッキなのだろう、と思った。
「良いな、久々にそういうものを見た」
「・・・・・・?」
「いや、何でも無い。それじゃあ、それでもう一戦だ」
そうして、蒼崎と紅輝は、ただひたすらにデッキを回し続けた。
最初はカード効果の宣言もあった、ただ、それが気付けば減っていき、動作の一つ一つに張り詰めていた意識も、いつの間にやら、あぁ、この後はこう動くんだ、と分かるようになってきて、お互いがお互いのデッキと思考を、深く理解し始めていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
カードを弾く音が響く。冷房の風の音も、小学生くらいの子達の声も、いつしか二人には聞こえなくなっていて、完全に、盤の上の世界に沈み込んでいた。
口を少しだけ開けながら、蒼崎は兎に角戦い続けた。
こうして、全ての意識がたった一つの盤面に完全に集中していること。
こうして、対戦していく内に、相手を理解していく感覚。
どれもが、後から懐かしいと思えるものだった。
パチリ、と紅輝がカードを置く。《ボルシャック・クロス・NEX》だ。だが、攻撃はしない。見えてるカードからも、動きからも、攻撃してただで済むと思っていないからだった。
そして、その判断を見た蒼崎は、ターンが回って来て早々に除去札を使用し、《クロス・NEX》を場から退場させた。墓地へと送られる《クロス・NEX》に、紅輝は全く動じない。これは最初から分かっていたことだ、と、内心思っているのだろうと蒼崎は思っていた。万が一残ればラッキー、という考えだったのだろうと。
それは正解だ。紅輝は分かっていて、《クロス・NEX》を使った。蒼崎は万が一の可能性が生まれることを嫌うと見抜いて、除去を打たざるを得ないだろうと思い、配置した。そして、その除去を防ぐ手段が無い以上、相手の除去が尽きるまで、厄介な大型クリーチャーを出し続けるしかないと判断した。
そして、そうしたやり取りが続き、何ターン目かを迎えた時に、紅輝は流れを自分に来るよう、カードを動かした。
パチリ、と音が響いた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
置かれたのは、緑月も使っていた《モモキングRX》だった。
その効果で紅輝が出したのは、《ボルシャック・モモキングNEX》という、蒼崎からすれば少し面倒なカード。そして紅輝はその効果でデッキトップから《ボルシャック・NEX》を出そうとするが、蒼崎の《とこしえの超人》の効果でそれはマナに移動する。
しかし、その《とこしえ》も、マッハファイターとなっている《モモキングNEX》には勝てない。攻撃をくらい墓地に置かれる《とこしえ》と、《とこしえ》の置換効果でマナを増やしながら、バトルに勝ってアンタップする《モモキングNEX》。
蒼崎は、それでもまだ、全然焦りもしなかった。ターンが帰って来て、まずは《鬼札王国》を使用し、墓地から《とこしえ》を呼び戻す。復活の儀が果たされが、それだけでターンエンド。ひたすらに紅輝の動きへの受けの姿勢を貫く。
自分のターンにやる事の量の差が、それぞれが1ターン中に使用する時間で表れていた。
それから数十分、蒼崎の山札切れでゲームが終了すると、二人はそのまま喋り出す訳でもなく、あるターンの盤面を並び始め、無言でそのターンにやった動きとは別の動きをする。
二人がしているのは、プレイングミスの確認だった。
「・・・・・・やっぱりそこか」
「腕は良い、それもかなりだ。引退していたとは思えないくらいに、勝負勘と判断力は良い方だと思える。だが、やはり少し変だ」
「変?」
「あぁ、最新のカードも入れて、回して、デッキを改造してを繰り返しているのだろうが、正直に言うと、噛み合っていない。肝心なところでカードの力に少し振り回されているように見える」
蒼崎は考え込む。確かに、多色のカードの強化に合わせて強いカードが増え、デッキは大幅に強化されていたが、自分が思考して行なうデッキの改造速度に、それを完全にゲームで操作出来る程のプレイヤースキルが追いつけていない感覚が所々であった。
それもそうだ、何故なら改造したデッキをぶつける練習相手が居なかったのだから。
「・・・・・・デッキの強さはこれからも上げる。これは絶対だ。だから、今の俺がすべきはこのデッキのプレイングの上達・・・・・・合ってるか?」
「そうだ、俺は少なくともそれで良いと考える。お前の持つカードと動きの知識量と、咄嗟の状況で相手が考えてくるだろう行動の予測力は、世界大会に余裕で参加出来る程にはあるだろう」
「まぁ、一応特定のカードに備えて、全カードの収録弾を記憶してある。ある程度のカードのイラストレーターも覚えてるけど、まぁ、数も多いし、ちゃんと覚えているかはゲーム中だと記憶でしか確認する手段がないから、実際に活用する際には少し自信無いけど」
蒼崎の衝撃発言に、そうか・・・・・・と少しドン引きしている紅輝だが、内心で蒼崎に対して、畏怖のようなものを感じていた。
──コイツ、本気で言ってるのか・・・・・・もし引退しても忘れずにいるのなら化け物だぞ・・・・・・成る程、これにあのデュエマの腕なら、漆黒も可能性を感じるか。
「・・・・・・いや、これは俺も見習うべきだったな。余裕そうに評価している場合じゃないか」
「・・・・・・?」
「ってことがあって、気付いたら意気投合・・・・・・とは少し違うかもだけど、何か打ち解けてたというか・・・・・・」
『おおー、凄いね。紅輝って威圧感凄すぎて友達全然出来ないのに、やっぱりデュエマが出来る人同士は仲良くなり易いのかもね?お兄さんはどう?紅輝とやりあってみて?楽しかった?』
「お兄さん呼びはやめろって。まぁ、そうだな・・・・・・不思議な感じだった、かな?」
『不思議?』
「上手く説明し難いんだけど、何かこう、途中でお互いが溶け合うというか、混ざり合うような感覚というか・・・・・・以心伝心出来てるような感じに陥った」
そう蒼崎が言うと、画面の先の緑月はふぅん、と反応を示しながら、コップに入っているアイスコーヒーを飲む。氷がグラスにぶつかる音が心地良く、その音を聞いた蒼崎は、少しこの真夏の暑さが和らいだような気がした。
『そうだ。それでお兄さん、新しいカードとかその話し合いとかで、デッキは改造したの?』
「一応は。ただ、《ガイアール・ブランド》は強いな。あれの突破力は破格過ぎるから、どれだけ固くデッキを組んでも、全然その場凌ぎにしかならなくて駄目だ。今までの除去性能を中心として受けとは別に、除去せずタップせずに止める手段を検討するべきかもしれない」
除去せずタップせずに止める。つまり、《勝利プリン》のようなクリーチャーを攻撃不可にする効果や、プレイヤーに攻撃制限を掛ける《調和と繁栄の罠》のようなカードが、今後必要になるかもしれない、と蒼崎は考えていた。
バグみたいに自分のお気に入りのデッキで世界大会を優勝したりしている者が居るが、そういった例外とも呼べる、強さのレベルが違う人物達は気にしても仕方がない為、こういった所謂環境と呼ぶようなものを使う相手をまずは警戒しておいた方が良いのだ。
「除去もまぁ出来なくはないけど、パワーマイナス系でもないと厳しいだろうなぁ」
『そうだねぇ。んー、封印とかは?』
「S・トリガーが理想だし、もしそうでも赤の単色入れられる枠は無いしなぁ・・・・・・とはいえ、マナ加速さえ間に合えば、《バジリスク》も検討出来るんだけど」
悩ましい、そう考えていた時だった。
──ピンポーン
「・・・・・・ん、誰だ?すまん」
『良いよー、いってらー』
蒼崎はエアコンの効いた自室を出て、早歩きで玄関の扉の前まで来る。特に配達なんかを頼んだ覚えは無い筈なのだが、と疑問に思いながら、扉を開けると、そこに居たのは・・・・・・。
「・・・・・・驚いた」
「プレゼント・・・・・・入れて・・・・・・暑いんですけど・・・・・・死ぬ・・・・・・」
汗を流しながら、ラフな服装の白奈がそこに居た。蒼崎はどうして、という気持ちよりも先に、この暑い中良く来る気になったな、という呆れと驚きが湧いた。
「お前が死ぬとか言うと本当に怖いから止めてくれ。・・・・・・まぁ良いよ。エアコン効いてるのは自室くらいだけど、野郎の部屋でも良いなら」
「あ、じゃあお邪魔します・・・・・・やっと着いたぁ」
そうして蒼崎は白奈を迎え入れ、汗を拭う為の少し冷水で濡らしたタオルを貸した後に自室に戻る。
「悪い、白奈が来たから今日は一旦お開きな。また空いてる時間にでも構築に付き合う」
『ん、了解。それにしてもお兄さん、あの聖灰の皇女とそういう関係なんだねぇ~』
「お前が想像してるものかは知らんがな」
こういう手合いとは真面に受け答えしていると話術で絡め取られて玩具にされる、ということを蒼崎は高校で知っていた。とはいえ、緑月も冗談で言っただけであり、余計なことは言わずにすぐにビデオ通話を切る。蒼崎もそれを確認すると、丁度白奈がノックして部屋に入って来たところだった。
「お前、ノックしても返事聞かずに入って来たら意味無いだろ」
「まぁプレゼントですし、良いかなって。・・・・・・あ」
白奈はパソコンの隣に置いてある、少し散らばったデッキとスリーブに入っていない何枚かのカードを見て、一瞬目を見開いた後に驚きのあまり声を漏らした。
「で、何で今日来たんだ?というか黒井と良い、事前連絡というものをだな・・・・・・」
「プレゼント、それ・・・・・・もしかして」
「スルーか・・・・・・ん、まぁそうだな、デッキ改造。お前と漆黒との3人チームでの大会に出る、その準備だよ」
蒼崎がそう言ったのを聞くと、白奈は少し硬直した後、バッグから力強くデッキケースを取り出す。何となく次に白奈が言いそうな事を蒼崎はその時点で予想出来た為、ひとまず新しく環境用に新調したデッキを手に持つ。
メインデッキとその他、合計65枚の束は中々分厚い。
「プレゼント、しましょう」
「まーそう言うと思った。改造途中ではあるけど、戦えないって訳でもない」
そうして白奈は少し・・・・・・いや、かなり嬉しそうに蒼崎とのデュエルをし始める。蒼崎もチーム戦までには経験を積んで置かなければ全敗の足手纏いになり兼ねないと焦りもあった為、割とこうして強い相手とデュエル出来るのは有り難かった。
まぁ、純粋にデュエマを楽しんでいる、という訳でも無いが。まだ蒼崎は昔のように、本心からデュエマを楽しむことは出来ていない。
「《ドラゴンズ・サイン》で《ヘブンズ・ロージア》をバトルゾーンに。超次元ゾーンから《レッドゥル》をバトルゾーンに出して、《ヘブンズ・ロージア》をスピードアタッカーに。そのまま攻撃して革命チェンジ、《未来の法皇 ミラダンテSF》。ファイナル革命の効果で《ヘブンズ・ゲート》を唱え、手札から《時の秘術師 ミラクルスター》と《エメラルーダ》をバトルゾーンに」(マナ5)
「展開してきたか・・・・・・まぁロックされないだけマシか」
「2体の効果で、墓地から《ドラゴンズ・サイン》と《ヘブンズ・ゲート》を回収し、シールド1枚を入れ替えっと・・・・・・では3枚、そことそことそこで」
「ん・・・・・・取り敢えず《ドンドン火噴くナウ》。《S・S・S》を落として《ミラクルスター》を破壊だ。そんで《鬼札王国》で墓地から《ザーディクリカ》を蘇生。EXライフで盾を増やし、復活の儀で2枚肥やして、《ザーディクリカ》の効果で《鬼札王国》。そのまま《SF》を破壊だ」(盾3)(マナ6)
蒼崎のカウンターが機能するが、白奈は笑顔のままターン終了を宣言する。まぁそんな事にも気付かず、蒼崎はドローして動き始めるのだが。
「《とこしえ》をマナに、7マナで《最終モルト》召喚。超次元ゾーンから《ガイオウバーン》を装備し、《エメラルーダ》とバトルして破壊。終了」(マナ7)
「面倒ですね・・・・・・ドロー、《アルカディア・スパーク》をマナに。5マナで《ドラゴンズ・サイン》を唱え、《ヘブンズ・ロージア》をバトルゾーンに。今度は《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》を場に。エンド時に《ホーリーエンド》をバトルゾーンに出し、効果で1ドロー。ターンエンド」(マナ6)
「《最終モルト》に《獄龍刃 ディアボロス》を装備し、墓地から《デドダム》を回収しドロー。そのまま《デドダム》をマナに、ターンエンド」(マナ8)
「うっわ」
「うっわって何だよ、何もせずに終わりだっつの」
何もせず終わり。白奈はそれを聞いてとても嫌そうな顔をする。何故なら蒼崎のデッキはカウンター性質が高い為、基本的には除去カードが多く積まれているのだが、つまりは手札が除去札だらけの時は動く必要が無い、動けない、といったことが起きる。普通なら相手が動いてこない、ラッキー、と思えるものなのだが、どれだけ並べても除去られると思うと結構面倒臭いと思うものである。
「うーん、ドローします。《ケンザン・チャージャー》をマナに、7マナで《提督の精霊龍 ボンソワール》を召喚。効果で3枚捲り、《ボンソワール》と《エメラルーダ》を手札に。エンド時に《ボンソワール》を出し、3枚捲って《ホーリーエンド》を手札に。ターンエンド」
「さて、んじゃ《最終モルト》に《百獣槍 ジャベレオン》を装備させ、ドロー。《ジョ喰ンマ》をマナに」(マナ9)
蒼崎は漸くか、と呟きながら、マナを全てタップして1枚のカードを手札から切る。
「9マナ・・・・・・初陣だな、《禁時混成王 ドキンダンテXXⅡ》を召喚。EXライフで盾を増やし、効果で次の俺のターンまで、お前の場のクリーチャーの効果を全て無視する。ブロッカー効果もな」
「そんな方法で《ヘブンズ・ヘブン》の龍解を防いで来たの、貴方が初めてですよ・・・・・・」
「そりゃ良かったな、こういうこともあるって覚えとけば?終わり」
白奈は微妙な顔をしながらカードを引く。龍解が出来なかったのが少しキツかったのもあるが、何よりも《禁時混成王》の効果が蒼崎のデッキにおいてどれ程面倒極まりないか、という事を考えていた。
同時に、蒼崎も《禁時混成王》を出せたは良いが、それでも少し焦りが見える。何しろ相手のデッキには《ジャミング・チャフ》のような呪文を封じるカードが入っている筈だからである。それを打たれれば、折角の《禁時混成王》もただのデカい案山子となってしまう。
「・・・・・・ノーチャージ、《ナウ・オア・ネバー》を唱え、《ヘブンズ・ロージア》をバトルゾーンに出し、手札に戻す。そして《ヘブンズ・ロージア》の効果で《真聖教会 エンドレス・へブン》を出します」
「《禁時混成王》の効果でカードを1枚引き、《S・S・S》を唱える」
「む・・・・・・《ヘブンズ・ロージア》を破壊し、《ホーリーエンド》を手札に。そして全タップ・・・・・・ですが、《エンドレス・ヘブン》の効果で1枚シールドを増やし、エンド時に《エメラルーダ》を出して盾を入れ替えます。終わりです」(盾6)
相手の行動を見てから後出しで除去札を使用する。それが《禁時混成王》のこのデッキにおいての強さなのだが、コストが9というのが蒼崎は辛かった。高速環境になれば別のカードを入れた方が良いかもしれない、と検討しながら《最終モルト》の効果を処理する。
「《最終モルト》の効果で《邪帝斧 ボアロアックス》を装備させ、マナから《デドダム》をバトルゾーンに。効果で3枚捲り、《フェアリー・ミラクル》をマナと墓地に。そしてドロー。ノーチャージ、大罪2の効果で5マナで《轢罪 エクスマ疫ナ》を使用。《御嶺》をGR召喚。《エクスマ疫ナ》の効果で相手に全体パワーマイナス2000し、1マナで《とこしえ》を召喚。《最終モルト》で《ボンソワール》を攻撃」
「通します、シールド1枚追加」(盾7)
「《禁時混成王》で《ボンソワール》を攻撃」
「通しますよ、シールド追加」(盾8)
「じゃ、ターンの終わりに《不滅槍 パーフェクト》が《天命王 エバーラスト》に龍解し、大罪コストは《御嶺》で帳消し。《ボアロアックス》も《ボアロパゴス》に龍解してターンエンド」
流れるような動きだった。効果処理の多さはかなりのものの筈だが、1分もせずに白奈のターンになる。
蒼崎は一通りの処理をし終えて白奈を見ると、どこか雰囲気が変わっているように見えた。
「・・・・・・私のターンですね、ドロー」
「どうかした?」
「いえ・・・・・・この思考の海に沈んで行く感覚、黒井さんとのデュエマ以来だな、と」
「・・・・・・ふぅん」
蒼崎は一瞬何か言おうとして、止めた。
白奈の顔があまりに真剣で、深く考え込んでいるように見えたから。
だから、少し適当に見える態度をするのも、此処からは無しにしよう。白奈がドローしたカードをジッと見ているのを見ながら、蒼崎はそう決めた。
「行きますよ、プレゼント」