実力至上主義の教室で神になることは間違っているだろうか? 作:ちあさ
3年最後の進路指導、そこで諦観の滲む暗い顔をした先生と私は対面している。
「何度も確認して悪いが…やはりお前の考えは変わらないのか?」
「ええ、先生。私はこの為だけに日々努力をしてきましたので」
「はぁ…お前はどこの進路だろうが行けるというのに、なんでここまで頑ななんだ」
「先生方の期待や心配はありがたいと思っています。ですが、私の夢はこれでしか叶わないのです」
私の揺るがぬ意志を感じ取った先生は深くため息をついて諦めたような顔をする。この3年間熱心な指導をしてくれた先生方には感謝している。だがその思いを踏みにじることになろうと、私の決意は揺るがない。なので私は改めて宣言する。
「先生、私の進路は―――高度育成高等学校に入学することです」
4月、桜の季節。
私は晴れてこの学園の門をくぐることができた。
高度育成高等学校。その学校は真の実力者を作り上げるために国によって設立された学校である。生徒は全寮制となっており、この門をくぐると卒業まで外部への接触はできなくなる。だが敷地内にはショッピングモールをはじめ、ありとあらゆる娯楽施設や医療機関などが完備されており、一つの街としてなんら生活に支障がないようになっている。
そしてこの高校の卒業者は希望の進路や就職を100%保証してくれるという夢のような制度がある。
その高校に私は無事入学を果たしたのだ。
私はクラス割を確認し、当然のようにAクラスの扉を開き、自分の席へと座り入学式を待つ。
「おい…あいつ…」
「ねぇ…なんなの?もしかしてあの人も同級生?」
「いやいやねーだろう、何かのドッキリとか?」
同じ教室にいる同級生は私を不審者でも見るような目で見ながら小声で話し合っている。だがこんなことは入学するたびに何度も同じような事にあっているのでもう慣れている。確かに何も知らない者から見れば私は不審者極まりないだろう。だが、私は確かに実力を示し、この学校のAクラスへと配属されたのだ。何も恥ずかしく思う必要もない。ただ、堂々と胸を張れば良いのだ。
そして先生がやってきて学校の説明などを終わらせ、禿げた生徒の提案により自己紹介の時間が設けられた。順にそれぞれ前に出て自己紹介していく。そして私の番が来た。私は背筋を伸ばし、前に出て、教卓へと手を付きゆっくりとクラスメイトを見回す。
やはりAクラスというべきか、騒ぎ立てたりせずに真面目な様子で私の事を見ている生徒が多い。ただ、やはりその目には訝しげな色が見える。さて、それでは私のことを皆に紹介しようか。
「私は山田隆夫。45歳になる。見ての通りおっさんだ」
私の歳を聞いて生徒の戸惑いが強くなる。
「そして私は正確には31年生になる。今年でこの学校に10回目の入学になる」
その言葉に皆は驚きの声を上げる。禿げた生徒に至っては思考回路が焼き付いたのか呆然と口を開けて固まっている。
「この高度育成高等学校では卒業時に希望の進路を保証される制度がある。私は今までAクラスとして卒業して、その制度を使いこの学校に入学することを希望してきたのだ」
「なぜなら、私の夢は、一生働かないで暮らすことなのだから」
そう、俺はこの実力至上主義の教室でニートの神になるのだ。
【高度育成高等学校学生データベース】
山田隆夫
1年A組
学生番号S01T004421
【評価】
学力 A+
知性 A+
判断力 A+
身体能力 C+
協調性 A
【面接官からのコメント】
前回と同じく学力や知性、判断力などは非常に優秀。身体能力については年齢に伴い低下傾向だが、ジムに通うなど積極的に運動能力維持や健康面に気を使っているため十分に許容範囲。協調性もよく、Aクラスを維持するために同じクラスだけでなく他クラスや他学年にも交流を持ち独自の人脈を築いている。ただし、卒業後の進路については理事会からも既に諦めの色が濃くなってきている。彼はその有り余る才能を『働かない』という夢に全力で投入しており、Aクラスとして卒業するためにありとあらゆる手段を講じてきている為である。去年の3年Aクラスは彼以外の人材が薄く、Bクラス以下との差は少なかった。なので当時2年の堀北現生徒会会長と当時1年の南雲現生徒会副会長に理事会から秘密裏に特別報酬をだして複数の臨時試験を行い、全学年全クラスから彼の所属する3年Aクラスを集中攻撃させ卒業間近だというのにAクラスから17人もの退学者を出す悲惨な事態にまでさせてDクラスへ脱落させたが、彼は卓越した手腕と策謀で2000万ポイントを集め新Aクラスへの離脱に成功している。故に、堀北生徒会長と南雲生徒会副会長が卒業した後、彼と坂柳有栖がいるAクラスを脱落させることはほぼ不可能と判断されている。Aクラス担任には彼をなんとしても当校以外の進路へと進ませることを強く期待する。
【担任メモ】
無茶言わないでください。
「ところで山田先輩、学費ってどうしてるんですか?」
「もちろん払ってるぞ。卒業間近に余剰ポイントで現金を買ってそれで払っているな。卒業時にポイントを現金化できないという先生の説明は、ポイントと現金を”交換”はできないということだ。だが現金をポイントで”買う”ことはできるからな」
一発ネタです。
100%進路を保証してくれるなら高度育成高等学校に進学?することも保証してくれるよね?という屁理屈をこねてみました。
きっと担任の先生は主人公の元後輩だったこともあり非常にやりづらい事この上ないでしょう。
pixivでも投稿しています。