だから僕は、ドラゴンボールを使った。   作:亜刀

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 四歳悟飯→ボク
 未来悟飯→僕

 と、そのときの身の振り方によって一人称を使い分けてみました。

 原作のセリフをちょいちょい忘れているので食い違っていたらごめんなさい。


サイヤ人強襲! 僕は誰も死なせない!
目覚めたのは宇宙ポッドの中


 狭い。窮屈だ。体が思ったように動かない。どうにか目をこじ開けると、僕はどこかに閉じ込められているらしかった。

 

 外に誰かの気を感じる。ほんの少しだけお父さんに似ているが邪悪な気だ。

 

 それで思い出した。ここはサイヤ人の宇宙ポッドの中だ。僕はお父さんの兄を名乗るサイヤ人、ラディッツに攫われているのだ。

 

 なるほど。ひとまずの現状は把握できた。僕の記憶が正しければ、今は僕が四歳の頃の時代。

 

 直近の出来事は、ラディッツとの戦いでお父さんが死に、僕はピッコロさんと修行するようになり、一年後にベジータさんとナッパが地球にやってくる。

 

 なら、まずはこの戦いでお父さんを死なせないようにしなければ。

 

 自分の体に意識を集中し、一瞬だけ気を高めてみる。

 

「む!? ……戦闘力1307!? なんだこのパワーは。カカロットのガキか……?」

 

 おっと、悟られるのはまずい。すかさず気を抑える。

 

「消えた? スカウターの故障か……まあ結構長く使っているしな。あとで調整しておくか」

 

 よし、大丈夫みたいだ。僕が闘えることに気づかれちゃうと不意打ちできなくなるからな。機が熟すまで無力な子供のふりをしないと。

 

 さて、調べた結果、記憶もパワーも無事引き継げているみたいだが、未完成のこの体ではフルパワーに耐えられなさそうだ。当然、超サイヤ人にも変身できない。しばらくは体には合わせたパワーで戦っていくべきだろう。下手をすれば気の暴走で死んでしまう。

 

 遠くから懐かしい気と馴染みある気が近付いてくる。前者はお父さんで、後者はピッコロさんだ。二人の気を足してもラディッツには届きそうにない。つまり、イレギュラー要素である僕の行動が命運を分けるということだ。

 

 あまり時間の猶予はない。うかうかしていると僕の知る歴史に呑み込まれてしまう。

 

 だが、何をどうするべきかはすでに決まっていた。実を言うと、僕はお父さんが死んでからずっと過去に戻った場合の流れを何度もシミュレートしていたのだ。絶対に失敗したくなかったから今まで踏ん切りがつかなかったけれど、悟天のおかげで未来の記憶とパワーを持った僕がここにいる。

 

 下準備はバッチリだ。あとはお父さんとピッコロさんがくるのを待ち、二人の動きに合わせてポッドを突き破ってラディッツに攻撃する。それで充分勝ちは見込めるはずだ。

 

 お父さんとピッコロさんが到着した。

 

「きたか、カカロットよ。仲間になる気になったか?」

 

「オラおめぇの仲間になるつもりなんかさらさらねえぞ! それよりさっきの気は悟飯か? 悟飯に何をした!」

 

 お父さんたちにも気付かれてしまったか。まあ問題ないだろう。

 

「なに? ということは、さっきの戦闘力は本当にカカロットのガキの……」

 

「くだらん御託に付き合っている暇はない! さっさとこのピッコロ大魔王様に殺されてしまえ!」

 

「ふん、死に損ないの分際でよく吠える。いいだろう、そこまで言うなら遊んでやる! 戦闘民族サイヤ人の力、思い知るがいい!」

 

 戦いが始まった。二つの気と一つの気が激しくぶつかり合う。予想通りお父さんたちが劣勢。ラディッツのほうはまだまだ余裕があるようだ。

 

「くそっ……!」

 

 この時代にきて初めて僕は声を出す。仕方ないとはいえ、僕が十全に戦うことができればお父さんを確実に救うことができるのだ。でもこの体で不意打ちの一発を当てることでしか活路を開けない。それがたまらなく悔しい。惨めで、不甲斐なくて、自分の弱さを突きつけられているときが一番腹立たしかった。

 

 でも、まだだ。まだ出るべきじゃない。決定的な隙を晒すまで抑えろ。必ずチャンスはくる。それまでいかにお父さんたちが痛めつけられようと耐えるんだ。

 

 そして、そのときはついにきた。ピッコロさんの魔貫光殺砲を当てるためにお父さんがラディッツの尻尾を握ったのだ。

 

 ピッコロさんが気を溜めきるにはもう少しかかる。お父さんはそのあいだ尻尾を握り続けるだけでいいのだが、お父さんは優しいからラディッツの命乞いに揺らいでいるみたいだった。

 

 やるとしたらここしかない。僕は気を開放し、ポッドの中から飛び出した。

 

「うわあああーっ!!」

 

「なっ、悟飯!?」

 

「バカめ!」

 

「ぐあっ!」

 

 驚いた拍子に握力が緩んでしまったのか、力を取り戻したラディッツの裏拳がお父さんを吹っ飛ばす。

 

 だがもう遅い。僕はすでに地面を蹴り出している。怒りの爆発を今か今かと待ち望んでいた僕の体は一気に加速し、大砲の弾のようにラディッツの胸を打ちつけた。

 

「ぐはっ!?」

 

 ラディッツの戦闘ジャケットが割れ、破片が頭上に降り注ぐ。僕はたったの一発で力尽きてそのまま地に倒れ伏すが、ラディッツも胸を押さえて膝を突く。

 

「い、いまだーっ!! やれ、ピッコロー!!」

 

「くらいやがれ!! 魔貫光殺砲!!」

 

 お父さんが叫ぶと同時、ピッコロさんの二指から螺旋状のエネルギー波が放たれ、ラディッツの左肩を抉り穿った。

 

「ば、ばかな……このオレが……こんなゴミどもに……!」

 

「ちっ、仕留め損なったか」

 

 ピッコロさんがラディッツに歩み寄る。トドメを刺すつもりだ。傷つき弱った相手を見逃すような甘さを持った人ではない。ましてやネイルさんや神様と同化していない、純粋な魔族である今のピッコロさんなら尚更だ。

 

「いいザマだな、サイヤ人。あれだけの大口を叩いておきながら所詮貴様はこの程度だったというわけだ」

 

「くっ……ナメック星人ごときが……!」

 

「どうせその傷では長くは保つまい。このオレさまが直々に引導を渡してやる。感謝するんだな」

 

「待て、ピッコロ!」

 

 お父さんがピッコロさんとラディッツのあいだに割り込んだ。

 

「なんだ? まさかこいつを助けたいだなんて言うんじゃないだろうな?」

 

 ピッコロさんは不機嫌そうにお父さんを睨んだ。

 

「……こいつには聞きてえことが山ほどある。だからまだ死なせるわけにはいかねえ」

 

「自分の息子を攫ったのにか?」

 

「…………」

 

 お父さんは眉間の皺を深くして、

 

「それでもだ。おめぇだってほんとは気になってんだろ、ナメック星人ってやつのこと」

 

「…………」

 

 ピッコロさんの表情も険しくなる。

 

「次も勝てるとは限らんぞ」

 

「次はオラ一人だって勝ってみせるさ」

 

 お父さんとピッコロさんの睨み合いは依然として続いた。これで二人が闘い始めたらどうしよう。気の大きさからすると、大技を使った直後のピッコロさんのほうが不利そうだけど、実際のところはわからない。何せこの場には僕がいる。ピッコロさんが僕を人質に取ったらお父さんはもう何もできないだろう。

 

「く、くく……はっはっは……くだらん小競り合いだ……」

 

 そんな二人を見て、ラディッツが血を吐きながら笑った。

 

「一年後……一年後だ……オレよりも遥かに強い二人のサイヤ人がこの地球にやってくる……そうすれば貴様らなど一巻の終わりだ……!」

 

 ベジータさんとナッパのことだ。確かに今の僕たちでは手も足も出ない強敵と言える。

 

 でも、みんなで協力すればきっと──。

 

「お、おとうさん……」

 

 僕は渾身の力を振り絞り、肩で息をしつつもなんとか立ち上がった。

 

「悟飯!? 大丈夫か!?」

 

「うん、平気。それよりもラディッツと……おじさんと少し話がしたいんだ」

 

「お、おじ……!?」

 

「おとうさんのおにいちゃんなんでしょ? だったらボクにとっては伯父さんだよ」

 

「そ、それはそうだが……っ、ぐぅっ……!!」

 

 ラディッツは痛みに悶えながら左肩に指を食い込ませた。砕けた戦闘ジャケットからは大量の血がこぼれている。彼が地球人ならすでに死に至っているだろう。限界は近いようだ。

 

「このままだとおじさんは死ぬよ。だから取引しよう。もし応じてくれるなら、まずはスカウターの電源を切ってほしい」

 

「……ちっ!」

 

 ラディッツは忌々しげにスカウターを指で叩いた。

 

「こ、これでいいんだろ……!」

 

「ありがとう」

 

 よかった。これで殺さずに済む。できることなら悪い人でも殺したくないもんね。

 

「おとうさん、ピッコロさん、この人はもう抵抗しないよ。だから助けてあげて」

 

「悟飯……」

 

「くだらんことを抜かすな。そんな保証がどこにある?」

 

 ですよね。ピッコロさんならそう言うに決まっている。ラディッツは倒したし、無力な子供のふりははもうやめだ。これからピッコロさんを説き伏せにかかろう。

 

「保証はないけど、もうボクたちと争う理由もないんです。スカウターを切った時点で降伏したことは仲間のサイヤ人に伝わっているでしょうし、サイヤ人は敵に屈した者をわざわざ救いにくるような種族じゃありませんから」

 

「おめぇほんとに悟飯か……? なんかいつもと全然様子が違うぞ」

 

「そのことはあとで詳しく話します。今は早くおじさんを治療しないと」

 

「待て、勝手に話を進めるなクソガキ。殺されたいのか」

 

「今のピッコロさんとお父さんならお父さんの気のほうが大きいです。全力を出せないのにまたお父さんに負けるのはピッコロさんとしても不本意なのでは?」

 

「……おい孫悟空。なんなんだこのガキは。口が達者すぎて気味が悪いぜ」

 

 うっ、そういうこと言われるとさすがに傷つく。

 

「気味が悪ぃってことに関してならおめぇ人のこと言えねえぞ」

 

「黙れ! 茶化すな!」

 

 こんなときでもお父さんはマイペース。さすがだ……。

 

「ちっ! わかった。今日のところは見逃しといてやる」

 

 ピッコロさんは拗ねたように腕を組んだ。

 

「ただし条件がある。ガキ、一年後のサイヤ人襲来に備えて貴様にはオレさまのもとで修行してもらう。まだ不安定だが貴様のパワーは役に立つだろう」

 

「い、いいんですか?」

 

「なんで嬉しそうなんだ貴様」

 

 ちょっと引き気味のピッコロさん。大魔王時代にこの表情は珍しい。

 

「とにかくそのサイヤ人を見逃すかわりに孫悟空のガキはもらっていく! それで構わんな!」

 

「あっ、こら待てよ! そんなことしたらオラがチチに殺されちまうじゃねえか!」

 

「貴様の夫婦仲など知ったことか!」

 

「せめて一ヶ月に一回くらいは帰らせてくんねぇか!?」

 

「くどい!!」

 

「お、おまえたち……助けるなら早くしてくれ……そろそろ意識が……」

 

 なんかドタバタ騒ぎになっちゃったけど、ひとまずなんとかなりそうだ。

 

 ラディッツという予想外の戦力も手に入れられたし、僕が思っていたよりも簡単に歴史は変えられるのかもしれない。

 

 でも、それは裏を返せば本来の歴史にあったはずの良い出来事もなくなってしまう可能性があるということだ。

 

 未来に関する情報の開示は慎重におこなうべきだろう。

 

 ……とりあえず、今は束の間の平和を味わおう。

 

 お母さんの説得だけは難儀だけど……。




「消えた? スカウターの故障か……まあ結構長く使っているしな」

「消えた? スカウターの故障か……まあ結構長く使っているしな。あとで調整しておくか」

一部セリフを追加しました。
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