仕事が忙しくて体のあちこちが痛かったり身内の借金が発覚して一悶着あったりしますが、私はなんとか生きてます。まあ些事ですね。些事だといいな。些事だと言えるような人生を歩みたい。た
今回の話から原作に則って「修行」というワードを「修業」に変えてお送りします。
また、ラディッツが超ノリノリでちょっと嫌かなって思う人もいるかもしれませんが、原作で不遇だったキャラを救済できるのが二次創作の素晴らしいところですので、もし合わないなと思ったら「そっとじ」してもらうか、内容丸パクリで構いませんのでどうぞ好きに改造してご自身で続きを書いてくださいませ。
それではどうぞ。
カプセルコーポレーションの地下に作られた半径500メートルほどの空間。その中央には地上へ繋がるエレベーターと重力を変えるためのコントロールパネルが設置されている。
それ以外は特に何もない。重力修業だけを考えた合理的な設計。前の世界のときよりも大規模なものが作られていたことに、僕は息を呑んだ。
「ブリーフ博士とブルマ博士、そしてこのオレの三人で作ったのだ! 共同開発というやつだな」
「おじさんが、作った?」
訝しむ僕に、ラディッツはこほんと咳払いをする。
「……オレも機械いじりは得意なほうだが、あの親子はまさに天才だからな。試運転で活躍したとだけ言っておこう」
「それは共同開発と言えるのか?」
「……細かいことはいいじゃないか! さあ、早速使ってみてくれ!」
清々しいくらい思いっきり誤魔化した!
ラディッツはコントロールパネルを軽快に叩いていく。僕の周りにはこういうことができるのはブルマさんしかいなかったからなんだか新鮮だ。ラディッツが純粋なサイヤ人だからというのもあるだろう。
そうして最後にエンターキーと思しき一番大きいボタンが押された。
『二十秒後、重力が変化します。倍率は5倍です』
というアナウンスが室内に響き渡り、カウントダウンが始まる。
「とりあえず5倍にしたが大丈夫だったか? 今ならまだキャンセルできるが」
「大丈夫です! ね、ピッコロさん!」
「ふん、以前よりパワーは上がってるんだ。それくらいどうってことはない」
「悟飯にはおよそ100キロ程度の、ピッコロにはおよそ500キロ程度の負荷がかかると思う。慣れないうちはかなりキツいがサイヤ人の住む惑星ベジータの重力は地球の10倍だ。少なくとも10倍の重力を克服できなければ話になるまい……ベジータとナッパは俺よりも遥かに強いのだから」
その強さは僕も知っている。はっきり言って今の段階だと絶望的な実力差だ。パワーボールを使って大猿になられたら確実に死人が出るし、お父さんが前の世界の時より早く着いても少しの隙があれば誰かが消し飛ばされる。
だからもっともっと強くならなくては何も守れない。10倍の重力を克服してサイヤ人のステージに立つまでが最低限の目標だ。
せめてナッパくらいはお父さん抜きで倒せるようにならないと……。
「そろそろだ」
僕とピッコロさんは腹の底に力を溜めて身構える。ラディッツだけが自然体だ。
『3……2……1……』
「0!」
空間が赤く染まる。
グンッと計り知れない重力が僕の身を押し潰そうとする。
「ぐ、ぎぎ……!」
筋肉だけじゃない。血管、神経、内臓、骨、体のすべてが未知の負荷に対抗すべく総動員。
これは、キツい、呼吸も、ままならない。
前の世界ではベジータさんと一緒に300倍の重力で修業したが、正直あれよりもキツい!
「くっ……こんなもの……!」
ピッコロさんもしんどそうだ。魔貫光殺砲を撃つときのように額に青筋と脂汗を浮かべている。
「とりあえず立ってはいられるか」
ラディッツだけはやはり涼しげで満足げだ。
そんな余裕綽々の姿が気に入らないのか、ピッコロさんは意地でいつもの腕組みポーズを取った。腕も脚もプルプル震えていた。
「今、相当な負荷がおまえたちにかかっている。だがサイヤ人のレベルで言えばこれでやっと半分だ」
「くそったれ……!」
ピッコロさんの表情がさらに歪む。
「肉体が適応するまでは基本的なトレーニングからやり直したほうがいいだろう。特に成長途中の悟飯は急な重力の変化で将来的に背が伸びなくなるしれん」
「それは、困りま、す……!」
そういうこともありえるのだろう。僕はサイヤ人と地球人のハーフだし、ずっと地球の重力で暮らしてきたのだから。
「二人とも慌てず体を慣らしていけ。くれぐれも無理は禁物だ。オレは上にいるから機械の操作がわからなかったりしたら聞きにこい。それじゃ」
ラディッツはエレベーターに乗って地上へ戻っていった。
息を整える。拳を開閉して感覚を確かめ、その場歩きをしてみる。
依然として苦しいのは変わらないけれど、少し気分が落ち着いてきた。集中を切らさなければ酷い目には遭わなさそうだ。
「ピッコロさん、修業しましょう! あと半年でうんと強くならなきゃ!」
「当たり前だ。こうなったら界王とかいう奴のところにいった孫悟空よりも遥かに強くなってやる!」
僕とピッコロさんは、手始めに重力修業室でのランニングに勤しむことにした。
*****
この体では初めての重力修業を終え、時間にして六時間が経過した。
僕もピッコロさんも疲労困憊で生まれながらに親しんできた地球の重力に喜ぶ余裕もない。こんなに弱っているピッコロさんを見られるなんてなんかラッキーだな、と思えるくらいの元気はあったけど。
全身が痛みに苛まれているのを耐えながら、僕たちはエレベーターの前で待っていたラディッツに案内されて休憩室へと向かう。
休憩室には簡易ベッドが二つ、大型の冷蔵庫が一つ、長方形のテーブルが一つ、背もたれのある椅子が二つ置いてあった。空調が効いていて過ごしやすい室温だ。
僕たちは促されるままに椅子へと座る。
「お疲れさん。その様子だとかなりのトレーニングになったみたいだな」
ラディッツは冷蔵庫から半透明ドリンクが入ったボトルを取り出し、満面の笑みで僕たちに差し出してきた。
「こっちは正真正銘オレが手がけた特製ドリンクだ。栄養価、飲みやすさ、味、どれも妥協せず作った自信作だぞ! まだ試作品で商品化してないからレビューがてら飲んでみてくれ」
えぇ……大丈夫なの、これ? そこはかとなく不安……。
「おいおいそんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃないか。ピッコロも、ほら」
「オレは水しか飲まん」
「えっ」
うわぁ、すごい悲しそうな顔。
「ピ、ピッコロさんはナメック星人だから水しか飲めないんですよ」
思わずフォローしちゃったよ……。
「そうなのか? それはすまないことをした。こっちのミネラルウォーターならいいか?」
冷蔵庫から普通のペットボトルを取り出して言う。
「ああ、そっちのほうがありがたい」
ピッコロさんは静かに水分補給をし始めた。
じゃあ僕も飲んでみようかな……。
あ、意外と悪くない。っていうか普通に美味しい。少しとろみがあってほどよい甘酸っぱさが疲れ切った体に染み渡る!
「ふふ、美味いか。美味いんだな? 美味いと言え。さあ、言え!」
アッハイ。
「美味い、です」
「そうだろうそうだろう! 地球の食べ物はどれも美味いからなぁ、遜色のない味付けにするのには随分と苦労したよ。ま、この感じだと大ヒット商品間違いなしだな! はっはっは! 昔から考えていたモノが形になる……なんと素晴らしいことか! うぅ……惑星ベジータやフリーザ軍ではずっと下っ端だったオレが……オレやっと居場所を見つけたよ、親父、お袋……!」
ラディッツの目の端に涙が浮かぶ。この人ほんと別人みたいにテンション高くて怖い。よっぽどここでの生活が楽しいんだろうな。
そのとき、突然休憩室のドアが開いた。
「ラディッツー、いるー?」
ブルマさんだ。ラディッツ同様、白衣を着ている。
「あ、やっぱりここにいたんだ。悟飯くんもピッコロもやっほー」
どうも、と頭を下げておく。ピッコロさんは一瞬目配せをしただけだ。
「どうしたんですか、ブルマ博士?」
敬語のラディッツ。違和感がすごい。ブルマさんは慣れているみたいだけど。
「博士はやめてって言ってるでしょ、もう。頼まれていたデータの検証が終わったからあなたのパソコンに送っといたわ。あとクリリンくんたちから連絡がきたんだけど、もう少し神様のところで修業するって」
「データの検証もクリリンからの連絡もありがとうございます。彼らにも重力制御室を使ってもらいたかったんですが、仕方ないですね」
「悟飯くんとピッコロが独占できると考えたら悪くないんじゃない? 区画ごとに分割して重力を変えるシステムは完成がまだ当分先だしさ」
「ですね」
それからブルマさんはわずかばかりの雑談を交わしたのち、仕事に戻っていった。
「本当にいい職場だよ……働きやすいし上司は美人だし……うぐっ……」
「どんだけ泣くんですか」
さすがにツッコミを入れてしまった。
「すまんすまん」
ラディッツは涙を手の甲で拭い、
「悟飯よ、環境で人というのは変わる。悟飯も将来はいい企業に就職するんだぞ。絶対に下っ端を使い潰しにするようなブラック企業に入るんじゃないぞ」
そう言って肩を叩いてきた。今までで一番真剣なカオしないでくださいよ。
そんなこんなでラディッツ監修のもと、重力修業の日々が始まった。
戦闘力は順調に上がっていき、3ヶ月後には僕が2500、ピッコロさんが2600と大きくパワーアップした。
この調子で行けばなんとかなるかもしれないと、希望が見えてきたことで修業にさらなる熱が入った。
が、何かを忘れている気がする。
それはすごく大事なことだった気がする。
胸にモヤモヤを抱えたまま数日を過ごし、夕食に豆のスープを飲んでいるとき、そして僕はそれを思い出した。
──仙豆!!
やばい、ヤジロベーさんに食い尽くされる前に押さえないと!!