だから僕は、ドラゴンボールを使った。   作:亜刀

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みなさんこんにちは。
一年ぶりくらいになります。
仕事に勤しんでいたり家族の問題があったりとまあ色々ありまして執筆する余裕がなかったのですが、ドラゴンボール超スーパーヒーローを見てから熱が復活。
どうにか続きを書くことができました。
待っていてくれた人たちには「ありがとう」と「ごめんなさい」を。
それから読んでくれる人たちには「よろしくお願いします」を贈りたいと思います。
孫悟飯ビースト、かっこよかったよねー!!!!


ミスターサタンの頼み事

 武闘家を両親に持つ僕だが、道場というものに関わったのはこれが生まれて初めてだった。

 

 いかにも鍛えてますって見た目の大男たちがビーデルちゃんの後ろを歩く僕をじろりと睨みつけ、すぐに興味をなくして各々のトレーニングに戻っていく。彼らはトレーニング器具を動かすのに合わせてわざとらしく唸ったり、終われば無理して涼しい顔を作ったりと、群れの中で強さを誇示する野生動物がごとき生態を見せる。たぶんこれはお父さんと張り合うベジータさんみたいなもので、自分が一番強いんだ、と周りに証明してやりたいのだろう。

 

 まあ、僕からすれば遊んでいるのと変わらないんだけど。誰も気を使えてないし。

 

「すごいでしょ! ここには強い武闘家がたーくさんいるのよ!」

 

「う、うん。すごいね」

 

 肩越しに振り返ったビーデルちゃんに対し、内心では白けながらも当たり障りのないコメントをする。早いとこオレンジ色の派手な花を見つけなきゃ。

 

「ところであなたはどうしてあんなところに一人でいたの? やっぱり迷子?」

 

「え? あ、えっと……探し物をしてたんだ。オレンジ色の派手な花なんだけど、ビーデルちゃんは心当たりない?」

 

 周囲を見渡しながら歩いていたから少し反応が遅れた。

 

「うーん……」

 

 ビーデルちゃんは人差し指を唇に当てながら上を見る。

 

「あっ、もしかしたらあれかも?」

 

「知ってるの!?」

 

「昨日ね、パパがママにいっぱいの花束を贈ったの。その中に悟飯くんが欲しがってる花、あると思う」

 

「あ……それじゃあ譲ってもらうのも申し訳ないね……」

 

「大丈夫よ! 私がお願いすればパパはなんでも言うこと聞いてくれるんだから!」

 

 娘に甘いんだなぁ……。

 

 しかし、『サタンの城』か。サタンといえば、セルと戦う直前にそんな名前の格闘技世界チャンピオンが現れたっけ。

 

 もしかしたらここの関係者だったりして。

 

 ──そんなふうに考えていた時期が僕にもありました。

 

「パパー!」

 

「ビーデル! パパは大事なトレーニング中だぞ! それなのにいったいどうしたんだ?」

 

 本人だーーーー!?

 

 ま、間違えるはずがない。黒髪パーマに青い瞳。特徴的な声と口髭。どう見ても格闘技世界チャンピオンのミスター・サタンじゃないか!

 

 まさかビーデルちゃんがサタンさんの娘だったなんて。髪と目の色以外全然似てないからわからなかった。

 

 サタンさんは口では叱りながらもすっかりふやけた表情で駆け寄ってきたビーデルちゃんを抱き上げた。

 

「あのね、この子悟飯くんっていうの。オレンジ色の花を探してるんだって! 昨日パパがママにあげた花束に混ざってたでしょ? あれちょうだい」

 

「ああ、あれか。しかしあの花はパパが愛するママに贈ったものだ。子供とはいえ──」

 

 ちらりと僕を見遣る。

 

「どこの馬の骨ともわからんヤツにくれてやる義理はない。ビーデルはその子を休憩室に案内してあげなさい。残りのトレーニングを消化したら東の都まで送り届けよう」

 

「そんなぁ。パパ、どうしてもだめ?」

 

「うぐぅ」

 

 急に胸を押さえて苦しみ出した。禁断の上目遣いで見つめてくる愛娘の可愛さに打ちひしがれたのだろう。僕としては心臓病を患ったときのお父さんを思い出して嫌だけど、今それを顔に出しても仕方ないので無表情を貫く。

 

「……君は悟飯くんと言ったか」

 

「あっ、はい」

 

 ぺこりとお辞儀する。

 

「礼儀正しい子だな。私はこの道場で最も強い格闘家のマークというものだ。そしていずれ世界チャンピオンになる男でもある。ふっふっふ、今のうちにサインをあげようか。ファンサービスはチャンピオンの基本だからな」

 

 何も言ってないのにファンにされた。この頃からこんな調子だったのか、サタンさん。じゃなくてマークさん。たぶんこっちが本名なんだろう。

 

「い、いえ、それよりもオレンジの花が欲しくて……」

 

「む、私のサインよりも花のほうがいいというのかね?」

 

「訳ありなんです。どうか譲ってもらえませんか?」

 

「むぅ……」

 

 真剣に頼み込む僕を見て、マークさんが唸った。

 

「──よし、わかった。私の頼み事を聞いてくれたらオレンジの花を譲ろう」

 

「本当ですか!?」

 

「やったぁ! パパ大好き!」

 

 ビーデルちゃんが抱きつき、マークさんの表情が気持ち悪いほど蕩けた。いわゆる親馬鹿だ。僕も子供ができたらあんなふうになるのかな? まあその前にベジータさん、フリーザ、人造人間をどうにかしなきゃだが。

 

「それでマークさん、頼み事というのは?」

 

「う、うむ」

 

 マークさんが厳格な表情を作った。

 

「妻に贈るアクセサリーの材料となる宝石が欲しい。場所の目処はついているがそこが小さな洞窟でな……大人の私では入れそうにないのだ」

 

「なるほど、そこで僕の出番と」

 

「私が連れて行くので猛獣に襲われる心配はいらない。ちょっと暗くて狭いところに潜り込んで綺麗な石を拾ってくるだけだ。やってくれるかね?」

 

「もちろんです!」

 

 仮に猛獣が襲ってこようが洞窟が探索中に崩れようが今の僕には関係ない。断る理由はなかった。

 

 

 

 僕、マークさん、ビーデルちゃんの三人で道場を出て、件の洞窟があるところまで移動した。周りは鬱蒼とした森が生い茂っていて見通しが非常に悪い。これといって危険な気配はないが、やはり不気味なのかマークさんはビーデルちゃんにバレないように震えていた。

 

 さて入口だが、なるほど確かに小さい。これは大人では入れないだろう。

 

「じゃあ、行ってきます!」

 

「頼んだぞ、悟飯くん!」

 

「気をつけてね!」

 

 僕は親子に見送られ、マークさんから貸し与えられたヘッドライトを点けて中に入っていった。

 

 暗く狭い石の道を中腰の状態で進んでいく。ジメジメしているし薄ら寒いし閉塞感が半端ない。普通の子供なら泣き喚いてしまいそうな空間だ。いくら強くてもこういう不快感は消せないな。

 

「まあこれも仙豆を確保するためだ。頑張らないと!」

 

 小さな身体を活かしてスルスルと奥へ入っていく。壺に収まりたがるタコの気分だ。

 

 やがて、空間が一気に広がった。天井からわずかに陽光が射し込んでおり、壁のところどころにそれを反射する希少な鉱石の輝きが見えた。僕が通ってきた暗く狭い石の通路はこの大きな鉱床に繋がっていたようだ。

 

 目的のモノは探せばすぐに見つかった。持ち運ぶ用に腰に提げた袋が重くなる。

 

「……そうだ、もう一個持ち帰ってお母さんにあげたら喜んでくれるかな」

 

 ちょうど手で掴めるサイズの原石をさらに拾い、僕は来た道を戻っていった。

 

 時間にして一時間足らずの探索だっただろうか。もはや外の空気が恋しい。リターンを考えれば重力制御室のほうがマシと言える環境だった。

 

 しかし、思ったより早く済んで助かったな。ブルマさんの開発はそんなに時間がかからないだろうし、今日中に仙豆の確保は完了しそうだ。

 

 暗闇の奥から溢れる外界の光。近づくごとに強烈に強くなるそれに目を細めつつ、僕は地上へと帰還を果たした。

 

 血まみれのマークさんが倒れ、ビーデルちゃんがその傍らで泣いていた。

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