だから僕は、ドラゴンボールを使った。   作:亜刀

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戦闘力の調整って難しいですよね。
いろんなSSを読んでもそこが一番の難所であり醍醐味であると感じています。
ウチの悟飯ちゃんにもしっかり強くなってもらわないと!



下準備はバッチリ

 すぐさま状況を把握する。

 

 充満する血の匂い。マークさんの気は依然として感じられる。出血は多いが命に別状はないようだ。このまま放置でもしない限り死ぬことはないだろう。さすがセルに吹っ飛ばされても普通に生きてただけある。

 

 気配を辿ると茂みの中に二匹の動物を見つけた。巧妙に潜んでいたのはこの辺りに生息する狼。もし立ち上がったなら成人男性の身長をゆうに超える大型種だ。親子か、兄弟か、はたまた夫婦か。彼らあるいは彼女らはサタンさんにとどめを刺す直前、僕の接近に気づいて一旦退いたようだった。

 

 なるほど、それだけの警戒心があるなら少し脅すだけで済みそうだ。

 

「はぁっ!」

 

 気を開放。軽い気合砲を茂みに撃ち込む。

 

「キャゥン!」

 

 短い悲鳴があがり、狼の気配が慌ただしく遠ざかっていった。その後数秒間さらに探ってみたが、完全に撤退したことが確認できた。

 

 生きるための狩りを邪魔してごめんね。でも僕だって目の前で人が死ぬのはもういやなんだ。

 

「パパ……パパぁ!」

 

 倒れ伏した父に縋りつくビーデルちゃん。ラディッツとの戦いでお父さんを亡くしたときの僕にそっくりだった。トラウマを刺激されて吐き家を覚えたがどうにか堪えた。

 

 今はビーデルちゃんへのフォローが優先だ。

 

「ビーデルちゃん、大丈夫だよ。マークさんは生きてるよ」

 

「ぐすっ……本当なの? 悟飯くん」

 

「うん。その証拠にほら、ちゃんと息をしてるでしょ? 気絶してるだけなんだよ」

 

「!! ほ、ほんとだ……パパ! うわーん!」

 

 ──再度、泣くことしかできなかったかつての自分を幻視する。頭が痛い。奥歯を噛み締めすぎて首から上が全部緊張しているらしい。

 

「まずは落ち着こう。泣いてもどうにもならないから。他の動物がくる前にマークさんを道場まで運ばなきゃ」

 

 自分への戒めの言葉をそのままビーデルちゃんへと流用する。

 

 彼女は鼻を啜りながら必死に泣き声を抑え、最後にぐしぐしと腕で顔を拭うと強気な表情を取り戻す。

 

「そうね。わたしたちがパパを守らなくちゃ!」

 

「それじゃあ僕がおんぶするからビーデルちゃんは脚を持ってよ」

 

「わかったわ!」

 

 上半身を僕が、下半身をビーデルちゃんが担当。僕は動物が襲ってこないようかすかに気を放ちながらマークさんの体重のほとんど受け持ち、道場までの帰り道を歩いていった。

 

*****

 

「いやー、助かったよ悟飯くん! 君には親子共に命を救われたな!」

 

 道場から帰った途端に目を覚ましたマークさんに事の経緯を説明した僕は、そんな言葉と共に手を掴まれ上下にぶんぶん振られた。

 

「マークさんが身を挺してビーデルちゃんを守ったからですよ。たぶんあの動物もマークさんの迫力に負けて逃げたんだと思います」

 

 こう言っておけば煽てられるだろう──嫌な子供だな、僕。

 

「パパ、かっこよかったよ!」

 

 ビーデルちゃんがアシストしてくれる。ナイスだ。マークさんはにっこりとご満悦である。

 

「それでは早速オレンジ色の花を持ってこよう。すぐ戻ってくるから待ってなさーい!」

 

 マークさんは僕から道場の中へ入っていった。

 

「あ、あの、悟飯くん」

 

「うん?」

 

 ビーデルちゃんが胸の前で指を組んでもじもじしていた。ほんのりと肌が赤いのは結構歩いたからだろうか。

 

「今日ね、わたし楽しかった。悟飯くんと会えてよかった。また遊びにきてくれる?」

 

 なるほど、友達が欲しかったのか! 確かにこんなところに住んでいたら同世代の友達なんてできっこないよね。パオズ山で生まれ育った僕とサタンの城で暮らすビーデルちゃんは似た者同士というわけだ。断る理由はない。

 

「うん、いいよ」

 

 ただし、生きていれば、だけど。

 

「ほんと!? わたし嬉しい! 絶対、絶対だよ!」

 

「じゃあ……そうだ、約束の印にこれあげる。さっき洞窟の中で拾ってきたんだ」

 

 お母さんに贈るつもりだった原石をビーデルちゃんにプレゼントする。

 

「石?」

 

「これを加工すると綺麗な宝石になると思う」

 

「え……そ、それってつまり……」

 

「そういうこと」

 

 僕から君へ、友情の証だ。皆まで言うのは無粋だろう。

 

「おーい悟飯くん! 持ってきたぞー!」

 

 オレンジ色の花束を抱えたマークさんが道場から飛び出してきた。結構な量がある。全部持ってきてくれたようだ。ありがたい。

 

「ありがとうございます!」

 

「いやいや、礼を言うのはこちらのほうだよ。ミゲルには……妻には子供になんてことさせるんだと怒られてしまったがな」

 

「あはは」

 

 どの家庭でもお父さんはお母さんには敵わないんだな。

 

「麓まで送っていこう」

 

「あ、いえ、大丈夫です。僕けっこう足が速いので」

 

「しかし、まだ猛獣がうろついてる危険性が」

 

「えーっと、実は僕しか通れない抜け道があるんですよ。そこを通れば安全なのでほんとに大丈夫です」

 

「そうか? まあ賢い君のことだ。帰りは十分気をつけるんだぞ」

 

 苦しい言い訳になってしまったけどどうにか誤魔化せたようだ。

 

「それじゃ、さよなら!」

 

 早く行こう。ブルマさんに花を渡し、OICキャンディをヤジロベーさんに渡し、仙豆を確保したらまた修行しないと。

 

「またね、悟飯くん!」

 

「また遊びにこいよー!」

 

 僕は親子に手を振り、二人の姿が見えなくなるところまで離れてから一気に空へと飛翔した。

 

 マークさんとビーデルちゃんのためにも生き残らなくちゃ。全員を生かした上で。

 

*****

 

「遅いぞ悟飯! 何やってたんだ!」

 

 諸々の所要を済ませてカプセルコーポレーション+ラディッツが作った重力制御室に戻ると僕を待ちあぐねていたピッコロさんに一喝された。僕は怒られていることよりも名前を呼んでくれたことが嬉しくてつい笑ってしまう。

 

「な、なんで笑うんだ。変なヤツだな……」

 

「いやぁ、それほどでも」

 

 やっぱりピッコロさんはピッコロさんなんだなぁ。

 

「ふん、まあいい。あと3ヶ月もすればサイヤ人がやってくる。わかってるな?」

 

「はい! 修業も大詰めですね!」

 

「おまえの計算だと今のオレたちでどの程度苦戦する?」

 

 あくまで苦戦と言い切るか。勝利を前提とした問いもこの頃のピッコロさんらしい。神様と合体したピッコロさんなら素直に勝率を聞いてきただろう。

 

「そうですね……おそらく僕とピッコロさんの戦闘力は3000を余裕で超えたくらいになると思います。他のみんなは神様の神殿で修業してて〝前〟と変わらないから大体1500と少し」

 

 ただし餃子さんは600程度。軽い被弾が命取りになる。単純な数値で言えば強さは天津飯さん、クリリンさん、ヤムチャさん、餃子さんの順番だったはずた。

 

「対して向こうの戦力は1200のサイバイマンが6体。4000のナッパと18000のベジータさん」

 

「ベジータとかいうヤツだけ桁が違うな……」

 

「ここにサイヤ人の肉体強度が入ってきますので界王拳を使ったお父さんでも倒しきれない可能性が高いです。はっきり言ってお父さんとベジータさんの戦いに僕たちは足手まといになります。隙を見てお父さんに仙豆を補給するくらいですかね、できそうなのは」

 

「ちっ、気に入らんな、サイヤ人というのは」

 

 僕も半分サイヤ人なんですけどね。

 

「満月やパワーボールで大猿になられるとさらに厄介です。サイヤ人は大猿化すると戦闘力が10倍になります。大猿化は尻尾を切ることで抑えられますが、正面からの攻略は不可能でしょう。一応僕も尻尾を残してますけど理性を抑えられるかどうか」

 

 そう、今回の僕は迂闊に満月を見なかったため尻尾が残っている。〝前〟の世界で超サイヤ人に慣れる修業をしたから大丈夫とは思うけど正直大猿化しても平気かは未知数だ。

 

「月は破壊しておくべきか」

 

「そうですね。直前になったら壊しておきましょう」

 

 本当は地上の生物たちにも影響が出るから嫌なんだけどドラゴンボールが復活する一年後までは辛抱してもらおう。

 

 僕はピッコロさんに人差し指と中指を立てて見せる。

 

「〝前〟と比べてパワーアップしてる僕たちと仙豆を使うタイミング。この2点によって戦況は大きく変わります。作戦が上手くいけば少なくともナッパは誰も欠けることなく突破できるでしょう」

 

「作戦?」

 

「ええ、いろいろ考えてあるんです。みんなと合流したときまとめてお伝えしますね」

 

 重力制御室を作ってもらった。

 

 仙豆を確保した。

 

 神様経由でお父さんの到着が遅れないようにと連絡してもらった。

 

 月はこれから破壊する。

 

 根回しは十分だ。

 

「誰も死なない未来のために僕は戦います。ピッコロさんもよろしくお願いします」

 

 深々と頭を下げる。

 

 サイヤ人強襲まで、あと3ヶ月。

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