だから僕は、ドラゴンボールを使った。   作:亜刀

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ついにサイヤ人との闘いが始まります。
原作とはかなり違う展開になりますがお付き合いいただければ幸いです。
はたして悟飯は誰も死なせずこの苦境を乗り越えることができるのか?


vsナッパ 悟飯の秘策‼︎

 そして、ついにその日がやってくる。

 

「みなさん集まったようですね」

 

 決戦前夜に月を破壊し、そのまま野営していた僕とピッコロさんのもとにクリリンさんとヤムチャさん、天津飯さんと餃子さんが現れた。

 

 全員に僕の素性を伝えてあるので僕は自然体で話すことにする。

 

「これから二人のサイヤ人がやってきてます。大柄で禿頭のほうがナッパ、小柄で髪が逆立っているほうがベジータです」

 

「「「…………」」」

 

 みんなの面持ちがどうも固い気がする。まあ、これから地球の存亡をかけた殺し合いをするんだから当然か。しかも相手は遥か格上。最年少のくせにちっとも怖がる素振りを見せない僕のほうがおかしいのだ。  

 

 自分を卑下するのはさておき、まず各自に注意点を伝えよう。

 

「奴らはサイバイマンという植物人間を従えています。サイバイマンは追い詰められると自爆しますので気をつけてくださいね、ヤムチャさん」

 

「なんで名指しなんだ。しかし、自爆か……恐ろしいな」

 

「そうですね。特にヤムチャさんは〝前〟の世界でサイバイマンの自爆に巻き込まれて命を落としてます。慎重すぎるほど注意してください」

 

「わ、わかった」

 

 ヤムチャさんが青ざめた顔でうなずいた。自爆によって倒れ伏した自分の姿を想像したのだろう。

 

「逆にこちらが自爆攻撃を仕掛けてもサイヤ人たちはびくともしません。超能力も効きませんので餃子さんは気をつけてください」

 

「うぅ……」

 

「大丈夫だ餃子。オレがおまえの分まで闘ってやるさ」

 

 すでに戦力外通告を受けた餃子さんとそれを慰める天津飯さん。罪悪感はあるけど死なれるよりマシだ。

 

「サイバイマンはともかく、サイヤ人相手には決して1対1で闘わないでください。絡め手を使えば勝機はあります。ただし天津飯さんの四身の拳は耐久力まで4分の1になるので使ってはいけません。範囲技で殺されますから」

 

「ちゃんとオレたちの技まで知ってるんだな。わかったぞ、悟飯」

 

 天津飯さんの気功砲は格上相手にも通用する貴重な技だ。何せあのセルでさえ足止めできたくらいだ。ピッコロさんの魔貫光殺砲と合わせて必殺の一撃として機能させたい。

 

「ナッパの相手はピッコロさんがメインでお願いします。正面からぶつかることができるのはピッコロさんをおいて他にはいませんから」

 

「こいつらの手を借りるのは癪だが、まあいいだろう」

 

 この一年でピッコロさんも随分と丸くなったものだ。結局、この人には笑いかけてくれる誰かが必要だったんだなと思う。僕を鍛え、命をかけて守ってくれたピッコロさん。僕はピッコロさんと笑い合える未来を手にしてみせる。

 

「クリリンさんは太陽拳や気円斬で相手の動きを制限してください。気円斬はナッパが避けなくてはならないほどの威力がありますが魔貫光殺砲や気功砲に比べてスピードが足りてません。牽制として撃つのを意識してください」

 

「気円斬のことまで知ってるのか。ちぇっ、いざって時にお披露目しようと思ってたのに……。なぁ、ところで悟空はどうしたんだ?」

 

 クリリンさんがおそるおそる聞いてきた。

 

「お父さんはギリギリまで修業してからくるそうですよ」

 

「なるほど、悟空らしいや」

 

 クリリンさんの疑問に答えたことでなんとなくみんなの緊張が解けた気がする。お父さんがいないことに不安を感じていたらしい。

 

 すごいなぁ、お父さんは。単純な強さだけでなく、きっとなんとかしてくれるという安心感を周りに与えられるからこそお父さんはお父さんなんだろう。

 

 お父さんはみんなの心の支えだ。

 

 お父さんが心臓病で死んだ絶望の未来では僕とトランクスさんを残して戦士たちは全滅してしまった。

 

 僕が油断したせいでセルの自爆に巻き込まれてしまった〝前〟の世界では何よりも戦いを好むサイヤ人の王子であるはずのベジータさんが戦いをやめてしまった。

 

 お父さんなくして希望に溢れた未来はありえないと断言できる。

 

 今回の戦いには、そんなお父さんが最初から参加してくれる。

 

 大丈夫、きっと大丈夫だ。

 

「それでは以上の注意点を踏まえて僕の作戦をお伝えしたいと思います──」

 

 

 

 一時間後。

 

 膨大な気を孕んだまんまるの宇宙ポッドが二つ、雲を突き抜け降ってきた。宇宙ポッドは僕たちの近くに着陸し、土煙をあげ小さなクレーターを作る。

 

〝前〟は着陸地点だった街を丸ごと消し飛ばされている。今回はそうならないように直接ここに降りるようスカウターの信号を使うことで細工した。上手くいってくれて一安心。率先してやってくれたラディッツには感謝しなきゃな。

 

 さて、着陸した二つの宇宙ポットの中からそれぞれ人影が立ち上がる。

 

「ほう、ここが地球か。なかなかいい星じゃないか」

 

「お出迎えもあるようだぜ、ベジータ」

 

 プロテクターのような戦闘服に腰に巻かれたサイヤ人の尻尾。左耳から左目を覆うように装着されたスカウター。漏れ出る殺気はこの地球のどんな生物より強く、この肉体では初めて経験する圧倒的なパワーを無遠慮に遊ばせている。

 

「裏切り者の弱虫ラディッツはどこだ?」とナッパ。

 

「あんなヤツはどうでもいい。元々いてもいなくても変わらないような戦闘力しかなかったからな」とベジータさん。

 

 ちなみに会話から扱いの悪さが窺えるラディッツははカプセルコーポレーションで待機している。今の彼は地球で最も強い研究者であり、地球を守るための戦士ではないし、もし大猿化して敵に回るようなことがあったら面倒なので僕のほうからそうするよう勧めた。サイバイマンなら倒せると思うから本当は戦力に入れたかったけど。

 

「ところでそこの紫色の服を着たチビ、おまえがカカロットの息子か?」

 

 ベジータさんが話しかけてきた。僕の尻尾を見てそう判断したのだろう。二人からの干渉に僕を除く全員が身構えた。

 

「そうです。僕は孫悟飯。あなたがカカロットと呼ぶ地球育ちのサイヤ人、孫悟空の息子です」

 

「飛ばし子になるしかなかった最下級戦士の血統のわりには大したパワーを持ってるようじゃないか」

 

「いえ、あなたには敵いませんよベジータ王子」

 

「ほう」

 

 ベジータさんが嬉しそうに口角を歪める。

 

 僕はベジータさんと交渉するつもりだ。ゆえに彼を侵略者ではなく惑星ベジータの王子として扱う。

 

 戦わずに済めば何よりだし、仲間になってくれたらなおさら良い。このタイミングで引き込んでおくことができれば、より安全にフリーザを倒せる。ナメック星に住むデンデや最長老様を救うためには少しでも多くの戦力を集めておきたい。

 

「カカロットのガキにしては教育が行き届いているようだな。ラディッツから聞いたのか?」

 

「いいえ、僕が未来を知っているからです」

 

「なに?」

 

「どういうことだ?」

 

 ベジータさんが顔をしかめ、ナッパがそれに続いた。

 

 出し惜しみはしない。ベジータさんは挑発に乗りやすいが王族だけあって頭がキレる。ベジータさんの頭脳を僕は信じる。

 

「僕はドラゴンボールを使って記憶だけですが未来からやってきました。この戦いの結末も、あなたたちがフリーザ軍に属していることも、いつかフリーザを倒してやろうとしていることも、僕はすべて知ってます。──フリーザの秘密や超サイヤ人についてもね」

 

「フリーザの秘密……? いや、それよりも超サイヤ人だと?」

 

「惑星ベジータに伝わる伝説の戦士。1000年に一度現れどんな壁も乗り越えてしまうというサイヤ人を超えたサイヤ人。その超サイヤ人のことです」

 

「超サイヤ人は実在するというのか?」

 

「ええ。超サイヤ人とはサイヤ人の血を引く者がある条件を満たすことで到達できる変身形態です。超サイヤ人になれればフリーザをも凌ぐことができるでしょう」

 

「ふん……」

 

 ベジータさんは僕をじっと見つめてきた。殺気以上に興味を抱いてくれたらしい。

 

「ベジータ、こんな与太話を信じるのか?」

 

 ナッパは訝しげだ。というより、早く僕たちを蹂躙したくてうずうずしているように見える。僕以外の地球の戦士たちが一気に警戒度を引き上げていた。

 

「殺すのは情報を吐かせてからでも遅くはない。ドラゴンボールの力が本物であればオレたちは未来の記憶とやらを知りつつ不老不死を手に入れられるんだからな」

 

 ──どうせ自分たちの勝ちは確定している。それならば地球のゴミどもの遊びに付き合ってやるのもやぶさかではない。

 

 薄ら笑いを浮かべるベジータさんからはそんな余裕がありありと見て取れた。こうしてプライドの高さに付け込むのも作戦のうちだ。

 

「し、しかし……!」

 

「ナッパ。オレの言うことが聞けないのか?」

 

「……すみません」

 

 ひと睨みで今にも暴れだしそうなナッパを鎮圧するベジータさん。

 

「そういえばカカロットはきてないのか?」

 

「今向かってきてますよ。スカウターで調べてみてください」

 

 ベジータさんが左耳に手をやりスカウターを操作した。ピピッと電子音が鳴り、ベジータさんが驚いたように目を剥く。

 

「この戦闘力は……!」

 

「ベ、ベジータ?」

 

「なるほどな。地球の連中はスカウターなしでも戦闘力を感じ取ることができるようだぜ、ナッパ。あと10秒ほどでおまえ以上の戦闘力を持った奴が到着する。──そら、きたぞ」

 

 烈風と共に、山吹色が降り立った。

 

 全員がそちらを見て、地球陣営は安堵の笑みを浮かべ、サイヤ人陣営は顔をしかめる。

 

 界王星での修業を終えたお父さんが凛とした立ち姿を披露していた。

 

「みんな、遅くなってすまなかった」

 

「悟空! 早くきてくれないかとヒヤヒヤしてたぜ!」

 

 クリリンさんが皆を代表して喜んだ。

 

「……これはどういう状況だ? そっちの二人はサイヤ人だろ?」

 

 お父さんがベジータさんとナッパに目をやり言った。戦闘が始まってないことに疑問を抱いたようだ。

 

「お父さん、今は僕が時間をもらってあちらと交渉しているところです。闘うのはもう少し待っていてください」

 

「悟飯がそう言うなら構わねぇけど……」

 

 お父さんが好戦的な視線をベジータさんに向けた。

 

「せっかく修業したんだから思いっきり闘ってみてぇなぁ」

 

「ふん、落ちこぼれが舐めた口を。貴様のような最下級戦士が超エリートであるこのオレの相手になるはずがないだろう。ナッパとはいい勝負になるかもしれないがな」

 

「カ、カカロットといい勝負だとぉ……! そいつぁみくびりすぎだぜベジータ!」

 

 青筋を立ててお父さんを睨むナッパ。やはりサイヤ人同士だ。闘いは避けられそうにないな。

 

「そう思うならおまえだけでこいつらの相手をしてみろ」

 

「当たり前だっ!! こんなクズどもなんざすぐにぶち殺してやる!!」

 

 いきなりナッパか。しかし、これはラッキーな展開だ。サイバイマンが出てこないならヤムチャさんの死亡率が下がるし、僕の作戦もやりやすくなる。

 

「その意気だ。おっと、ただしナメック星人とカカロットのガキは殺すなよ。その二人には利用価値がある」

 

 いきりたつナッパを前に皆が一斉に警戒度を最大にした。しかし、僕とお父さんは未だに相手を見つめるだけに留めていた。

 

「おめぇは闘わないんか?」

 

「ナッパに勝てたら遊んでやろう」

 

 いいぞ、お父さんとベジータさんで闘う流れも出来てきている。このまま仕掛けて事を上手く運ぶとしよう。

 

「じゃあ、僕たちが勝ったらフリーザを倒すのに協力してくださいね」

 

「抜かせクソガキ! てめぇごときがフリーザを倒すなどと……って、あぁん?」

 

 ナッパが呆気に取られていた。

 

 その理由は、僕だけがナッパの前に立ち塞がったからだ。

 

「何の真似だ? まさかてめぇ一人で闘うってのか?」

 

「そうです」

 

 言い切る。

 

 ちなみにこれも作戦のうちだ。

 

 だけど。

 

 だけど、それ以上に。

 

「──おまえなんか僕一人で十分だ」

 

 こいつには〝前〟の世界でピッコロさんたちを殺されている。

 

 だから、今度は僕がこいつを倒す。

 

「はぁぁぁああああ!!」

 

 気を開放する。重力制御室での修業をこなしてきた肉体はより大きなパワーに耐えられるようになった。互角とまではいかないだろうが、それなりに善戦することは可能なはずだ。

 

「死ぬなよ、悟飯」

 

 お父さんが僕の意を汲んでくれたらしくクリリンさんの隣まで下がった。ありがとうございます。ベジータさんとの闘いまで力を温存していてください。

 

 僕はナッパを睨みつける。怒りによるパワーの開放はすでにコントロール済みだ。リーチやスタミナ面では圧倒的に不利だけど目にもの見せてやる!

 

「戦闘力3500……! あんなガキがここまでの戦闘力を持っているだと……!」

 

 ナッパの後ろでベジータさんが表情を険しくした。僕がナッパとの一騎打ちによって力を証明すれば未来からきたという言葉の信憑性を高められるだろう。サイヤ人相手には何をするにしても戦闘を介するのが一番手っ取り早い。

 

「こい、ナッパ!」

 

「どいつもこいつもこのナッパ様を舐めやがって……!!」

 

 ナッパも同様に戦闘態勢となった。僕たちのあいだで気がぶつかり合いバチバチと音を立てる。

 

「てめぇもカカロットもオレに敵うはずがねぇんだよ! サイヤ人のエリートのパワー、思い知らせてやる!」

 

 そして、僕の仲間を最も多く殺した強敵との闘いがついに始まった。




戦闘力
悟飯 3500(怒りパワー常時開放)
ピッコロ 3200
→魔貫光殺砲 4200
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