めぞん一刻 二次小説 時計坂通信   作:今津晶

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第10話  縁談での騒動

異色の二人が時計坂商店街で見たのは・・・

 

「あれぇ~。あれって、八神さんですよね??四谷さん」

 

「ほっほう。八神さんのお父さんも一緒ですね・・・何やら、怪しい気配でアデランス」

 

二人が見たのは、着飾った八神さんとスーツ姿の八神さんのお父さんだった。何やら、険悪な雰囲気である。

 

「やがっ」

二階堂君が声を掛けようとするのを四谷さんは制した。

 

「まぁまぁまぁ。ここはひとつ、こっそり様子を覗くことにしましょう」

 

「あのねぇ~。僕は昼ごはんを食べに行くんですよ。勝手にして下さい、僕は行きますからね」

そう言うと、二階堂君は四谷さんを置き去りにして喫茶店へと入って行った。

一方の八神父子はというと、メンフラの前で誰かを待っている様子。

一体誰を待っているのだろうか?平日の昼下がりに、時計坂で。

 

 

~こちらは茶々丸~

 

「最近さぁ、うちの賢太郎がよそよそしいんだよね。何ていうか、隠し事しているようなんだよね。管理人さん、何か聞いてないかい?」

 

「いいえ、私は何も。郁子ちゃんと喧嘩でもしたのかしら?」

 

「何かあったのかね~?きっと、恥ずかしくて言えないようなことじゃなぁ~い」

朱美さんは、賢太郎君と郁子ちゃんとの間に何かがあったと決め付けてる様子。

 

「郁子ちゃんに嫌われたとか・・・?あっはっは。そんなことくらいであんなになるかねぇ~そんな子に育てたつもりはないんだけどねぇ」

一の瀬さんはお気楽な発言を平気でしてしまう。

 

「けど一の瀬さん。あれ位の年頃の男の子にとって、好きな人の一つ一つの行動が気になるものですわ。郁子ちゃんがそれらしいことを言ったりしたりしたんじゃないかしら」

響子さんは相変わらず真面目で真剣な発言をしてくれる。

 

「それらしい事って・・・管理人さん、結婚するまではそういうことば~~~っかりしてたのに。五代君、大変だったろうに・・・」

朱美さんがチクリと的確なツッコミを入れる。

 

全くその通りだ。独身時代、五代君の気持ちを分かっていながら、素直になれずに色々と考えさせてしまった。

しかしそれも楽しい思い出である。

 

「管理人さんに散々ヤキモチ妬かれていびられた五代君を散々見てきたからね~。免疫できてるでしょう。大丈夫なんじゃな~い?」

軽~く言う朱美さん。

 

「そ、そんな!私は!私は!」と響子さんは必死で反論。

 

「まぁまぁ、冗談よ、冗談。管理人さんってば、すぐムキになるんだから」

一の瀬さんがフォローを入れる。この3人の会話は相変わらずだ。

これほどからかわれても離れずにいるのは、本当は心の優しい人たちだと、心の底から思っているからだろう。

 

「それにしても、何だろうね~賢太郎のやつ」

謎は深まる一方だ。勝手に深めているような気もするが。

 

 

~一方の時計坂商店街~

 

八神父子はある人物を待っていた。

 

「お待たせ!ごめんなさい、いぶき。それにお父さんも」

 

「ふん!母さん、昼休みを使って出てきたんだから、時間はしっかり守ってもらわんと!」と八神の父。

 

「はいはい。ごめんなさいね」

 

「それで、話って何?ママ」

 

「まぁ、とにかくお店に入りましょうよ」

そう言うと、先程二階堂君が入ったのと同じ喫茶店に入って行った。「ま・めぞん」である。メンフラではないようだ。

その一部始終を見ていた人物、そう四谷さんだ。

 

#カランカラン#

 

「いらっしゃいませ~3名様ですね、こちらに・・・」

 

迎え入れたウエイトレスを制して八神さんのお母さんが

「いえ、待ち合わせしていますので・・・え~っと、あぁ、あそこです。こっちよ、あなた!いぶき!」

そういうと、待ち合わせ相手のテーブルへと向かった。

 

 

~一方の四谷さん~

 

ウエイトレスが寄って来る。

 

「ご注文は?」

 

「え~っと、スペシャルランチにBランチ。スープは・・・っと、コンソメでお願いします」

 

「はい、かしこまりました」

 

注文し過ぎだ・・・。

 

「四谷さん・・・お金、持ってるんでしょうね??」

 

「あれ~、二階堂君。奇遇ですね~こんな所でお会いするなんて。いや~すみませんねぇ~お昼、奢ってもらっちゃって」

 

「あのねぇ・・・さっきまで一緒にいたでしょう!それに、いきなりやって来るなり何ですか!色々注文して。おごりませんよ!」

 

「う~~ん、飲み物を注文するのを忘れてました。そうですねぇ・・・せっかく奢ってもらうのにあんまり高いのを注文すると悪いので、ストリベリーシェイクとフルーツパフェにしておきます」

 

十分高いだろっ!と大声を出そうとする二階堂君を四谷さんは抑えた。

「まぁまぁまぁ、いいじゃないですか。お給料も入ったばかりでしょうし」

 

「給料日はまだ先ですよ」

 

「まぁまぁまぁ、あちらには八神さんの家族もいらっしゃるようですし」

 

「何がまぁまぁまぁですか・・・えっ?本当だ~何してるんでしょうね?声掛けてきましょうか?いや~それにしても、家族そろって何してるんでしょうね?平日の昼下がりに」

二階堂君の切れ目のないしゃべりには四谷さんも圧倒されがちだ。

 

「お待たせしました~。スペシャルランチにAランチ、こちらがBランチになります」

どうやらウエイトレスのお姉さんは、四谷さんが二階堂君の連れだと思い込んでいる様子。Aランチは二階堂君が注文したものだ。

 

「おねぇさ~ん、ストリベリーシェイクとフルーツパフェを食後にお願いしますね」

と、ちゃっかり注文する四谷さん。この人のたかり術(強引なだけかもしれないが)には敵わない。

もう諦めたのだろうか?二階堂君は四谷さんを気にせず、Aランチに手を付け始めた。

(やれやれ・・・)

 

 

~ま・めぞん内にて・・・~

 

「こちらが、娘のいぶきでございます。この度は、わざわざすみません」

 

「いえいえ八神さん、こちらこそ。それにしても綺麗な方ですな~。家の息子もほれ、この通り嬉しそう・・・」

 

どうやら、八神さんはお見合いをしている様子。それにしても、ま・めぞんなんかで見合いをするとは、その辺もカジュアルな時代になったものだ。

 

「あら、そうですの。T大卒で・・・」

 

「ええ。この通り、それしか能のない息子ですけど、いぶきさんのような女性をお嫁にもらったら、きっといい夫になりますよ。おい、お前も何か言ったらどうなんだ」

相手の方も、親が一方的に話を進めている。

不満気なのは、八神さんと、八神さんのお父さんくらいだろうか。八神家側は、お母さんばかりが話をしている。

 

(ったく、こんな勉強しか能のないやつに、うちのいぶきはやれん!)

 

(はぁ~。こんなガリベン君となんて嫌だわ。もっといい人を自分で見付けるんだから!五代先生みたいな・・・五代先生本人なら・・一番いいんだけどな・・)

二人とも、心此処に在らずだが、微妙に思考回路が同じだ。流石に中身が完全に似た者親子。

 

この様子を遠巻きに観察している人物がいた・・・四谷さんである。

覗きと盗み聞きに関しては天下一品。

 

「二階堂君、どうやら八神さん、お見合いしているようですよ」

 

「へぇ~、ようやく五代さんを諦めたみたいですね。ま、そうですよね~。何しろ春香ちゃんもいるし、二人目も出来そうなんでしょ」

「あの二人、呆れるくらいにすっごく仲いいですもんね~。それにしても、八神さんほどの女性が見合いなんかで相手を決めちゃうの、勿体無いですね~」

いつも以上にまくしたてる二階堂君。次から次へと思っていることをどんどん言っていく。

その上、四谷さんのせいで、響子さんが二人目の子供を妊娠していると勘違いしたままでいる。

 

「それがですね・・・ゴニョゴニョ・・・」

 

「ええ~。八神さん、あの人に決めちゃったんですか~。へぇ~なんか、あっさりしちゃってるんですね」

そう言って、Aランチを平らげた。

 

#ガタッ#

 

「ど・ち・ら・へ~?」

 

「ええ。せっかくですから、お祝いの言葉でも言ってこようかと思いまして。四谷さんも行きませんか?」と、とんでもないことを二階堂君は言い始める始末。

 

「私は結構です。何しろ、ストロベリーシェイクとフルーツパフェが来ますから・・・あ、ほら」

 

「お待たせしました。ストロベリーシェイクとフルーツパフェになります」

そういうと、またガツガツ食べ始めた。

 

「じゃあ、ちょっと声掛けて来ますね」

そう言うと、二階堂君はお見合いしている席のほうへ向かった。

 

 

~~一方、噂の賢太郎君~~(彼の通う大学のキャンパスにて)

 

「おい、賢太郎、どうだ?今夜、コンパに行かない?」

 

「い・か・な・い!」

 

「ちぇっ、今日はS女大とだぜ。カワイイ子を見つけてさぁ・・・」

 

「い、いいよ、オレは」

 

「分かったよ。そうだよな~、お前には、と~っても可愛い小学校の先生がついてるもんな~」

と、羨望の言葉を捨てゼリフに友人は去っていった。

 

(オレだって・・・オレだって・・・)

と思う賢太郎君。

 

その賢太郎君が向かった先は・・・なんと、新聞配達のアルバイト。

毎日、学校が終わると夕刊の配達をしていたのだ。

 

その後は大学近くの居酒屋でアルバイト。

“あの”母親が来られないように、ということを気にかけ、大学の近くを選んだ。

電車がもうなくなっている時間にバイトが終わるが、幸いなことに店長に気に入られたらしく、時計坂駅前まで車で送って貰っている。

一刻館前に送ってもらうと、母親にばれる恐れがあるので、駅前にしてもらっているのだ。

一刻館に帰るのは、もう夜中の3時をまわっているのもザラだ。

 

こんな生活を続けているものだから、一の瀬さんの目に怪しく映るのも仕方がない。

宴会が続いている時に帰って来ることもある。もちろん、気付かれないことが多いが。

 

管理人さんには、大学の研究が忙しくて帰りが遅くなることが増える、と言って、入り口の合い鍵を借りている。

響子さんは、それをそのまま受け入れているので、様子がおかしいとは感じていないようだ。

果たして、賢太郎君は何をするつもりなのだろうか?

 

 

~ま・めぞん~

 

「こんにちは、八神さん」

 

「あっ!」

二階堂君の突然の乱入に驚く八神さん達。

 

「ど、どうしたの?こんなところに・・・」

突然のことに頭が混乱気味の八神さん。

一刻館に住んでいる二階堂君がここにいても全然不思議じゃないのに。

 

「どうした?って。いやだなぁ、八神さん。今、僕、一刻館に住んでるんですよ~」

「ほら、ついこの間まで“一緒に住んでた”じゃないですか~結婚すんですって~。おめでとうございます」

 

「!?!?!?!?」

 

「高校の頃も一時的に住んでましたよね~。いや~懐かしいな~、“一緒に住んでた”頃が」

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

「いや~、それにしても“一緒に住んでた”八神さんがお見合いだなんて信じられないな~。やっぱり、そういう年頃なんですね~」

 

「ちょ、ちょっと!“一緒に住んでた”ってどういうことですか!しかもつい最近も、って!」

二階堂君の言葉に、動揺を隠せない相手方の両親とその息子。

 

「そ、それは・・・何と言いますか」

八神さんの母親も上手く言葉が出て来ない。

 

その時・・・

 

「“一緒に住んでた”って、そのままの意味です」

突然、八神さんが強気に話し出した。

 

「い、いぶき!」

元々このお見合いに八神さんは乗り気でなかった。全然、100%、完璧に乗り気ではなかった。

 

どうせ、後から断りの電話を入れるって決めていたし、ここでメチャクチャになってそのまま破談になるのも、大して変わりない。

確実に先方の人に諦めてもらおう。そう考えた八神さんは・・・

 

「待ってたの、二階堂君!」

そう言って、二階堂君に抱き付いた。

 

「この人、私の恋人です!!」

そう言うと、何と何と二階堂君にキスしてしまった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

二階堂君はもちろんのこと、八神さんの両親も、見合い相手の男性、そしてその両親。

みんなが絶句した。

 

「隠しててごめんなさい。でも今、私はこの人を愛しているんです。ですから、この話、なかったことに!」

そう力強く宣言すると、二階堂君を連れて出て行ってしまった。

 

「な・・・な・・・何ということだ」

八神さんの父は、違った意味で愕然としていた。

 

「いぶきに・・・いぶきにあんな男がいたなんて・・・」

やれやれ・・・進歩の全く無い父親である。しかし、これが娘を持つ父親の姿とも言えるが。

 

この様子を四谷さんが見ていない訳が無い。

「お二人がああいう関係だったとは・・・八神さんと二階堂君が!む~ぎば~たけ~♪」

この話は、まず間違いなく今日中には一刻館中に広まることでしょう。

 

 

~こちらは八神さんと二階堂君~

 

「ごめんなさい、いきなり恋人役をしてもらって・・・」

そう言って、ジュースを飲む八神さん。どうやら、別の喫茶店に入ったようだ。

 

「え」

 

「あの・・・迷惑だったんじゃ・・・?」

 

「えっ」

“あの”二階堂君が、まだ呆けている。

無理もない。いきなりキスされたのだから。

 

「あの・・・二階堂さん?」

 

「え。あ、はい。何でしょう?」

 

「このこと、五代先生とかには内緒に・・・」

 

「え、ええ。けど多分、四谷さんが見てたと思うんで・・・」

 

「ええ~、ヘビおじさんも~。どうしよう・・・」

すっかり落ち込んでしまう八神さん。

 

「それにしても、どうしてお見合いなんてしたんですか~?もともと断るつもりだったみたいだし」

「八神さんみたいな素敵な女性だったら、男が放っておかないんじゃないんですか~?」

「それとも、まだ五代さんが忘れられないとか?まさかそんなことはないですよね~」

「だってもう何年も経ってるし、五代さんと管理人さん夫婦って、今でも無茶苦茶にラブラブで仲良しだし、もうすぐ二人目が生まれるらしいし・・・」

いつもの二階堂君の復活だ。かなりの勢いでまくしたてている。

 

#ガタタッ#

 

突然、八神さんが席を立った。

「悪かったわね!諦めが悪くて!」

そう言って八神さんは出て行った。

 

「あら・・・ま、いいか」

(でへへ)

キスされたことを思い出してニヤける二階堂君。

その後、何事もなかったかのように一刻館へと帰っていった。

 

それにしても、五代君に「歩く無神経」と言わせるだけのことはある・・・案の定、このことは一夜にして一刻館・茶々丸関係者に広まった。

しかし、それだけで収まるだろうか?

 

 

 

以下、次回

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