めぞん一刻 二次小説 時計坂通信   作:今津晶

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第11話  疑惑の連鎖

~八神家にて~

 

「ねぇ、いぶき」

 

「何よ、ママ」

 

「あの時の男の人、本当にいぶきの彼氏か恋人なの?」

 

「本当にって?ママまで私を疑うの?」

 

八神さんの母は、疑っているらしい。

「先様には断るしかなかったけど・・・いぶき、あなた単にこの縁談を断りたかっただけなんじゃないの?」

 

「・・・・・・・」

 

「そりゃあ、ママが突然あんな話を持ち掛けて、勝手にいぶきの結婚を進めようとしたの悪かったと思うわ。けどね、いぶき・・・母親として、心配なのよ」

 

「心配?どうして。私はまだ24よ。まだまだ結婚は早いでしょ!それに・・・」

 

「母さんが心配してるのは結婚のことじゃないの。いぶきも年頃なのに、恋人が全然いないじゃない」

 

「だから、あの人が今の私の恋人なのよ。私は、いま、あの人を・・・」

八神さんの破断させようとしていた考えは、もう母親には筒抜けのようだ。

 

「私は・・・ただ・・・」

上手く言い分けの言葉が続かない八神さん。

 

「五代さん?だったかしら」

突然の母の言葉に、八神さんの表情がきっと険しくなる。

 

「いぶき・・・まだ、五代さんのことを?」

 

「違うわよ。そりゃぁ、しばらくは引きずっていたわよ。でもねママ、今は違うの。もう吹っ切れているのよ」

 

「じゃあ、どうしてああやって無理矢理」

破談に持っていこうとしたの?と続けようとしたのだが、八神さんの目から大粒の涙が。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「いぶき・・・」

自分の娘が、心から一人の男性を愛し、そして今苦しんでいる。

この子は、自分を支えてくれるような男性に会えないと、いつまでも一人で突っ張って生きていってしまう。それだけは、親としてやり切れない。

(何とかしてあげたいわ・・・)

そう思うのでした。

 

 

~一方の一刻館~

 

ここでは、四谷さんの口から、八神さんと二階堂君のキス事件が広まっていた。

 

「あはははは。いや~めでたい!実にめでたい!」

 

「何がです~?」

自分の部屋で宴会が始まってしまい、ムスっとしている二階堂君。

 

「みなさん、二階堂君も明日は仕事なんですから、ほどほどに・・・」

管理人の響子さんが止めても一向に収まる気配が無い。

まぁ、この程度の言葉で収まるようなら、普段も全然苦労はしないのだが。

 

「それにしても二階堂君、ウラ、やましいですな~。八神さんと愛の口付けをするとは!」

 

「何です~?愛のって」

 

「何って・・・ねぇ」

一の瀬さんがニヤニヤしながら二階堂君に迫る。

 

「いつの間にくっついたんだい??やっぱり、この間さ八神さんが一刻館に泊まっていった時からかい?」

 

「そうですなぁ~。わたくしも気付きませんでした。度々5号室の畳の下から覗いてはいたのですが・・・」

 

「ちょっと!四谷さん!覗かないでくださいよ!」

覗く、という言葉に反射的に反応したのは、二階堂君ではなく五代君のほうだった。

 

「五代君・・・君はもう覗いてませんよ~。それとも・・・やっぱり私の覗きがないと落ち着いて寝られませんか?」

 

「四谷さん・・・」

管理人さんがちょっと怖い顔。

流石に四谷さんも真顔で即座に否定をする。自分から追い出される口実をいうことは無いのだ。

 

「まぁ、それはそうとして、二階堂君。いつからなんだい?」

相変わらず人の噂が大好きな一の瀬さんだ。

酒と噂が生き甲斐と、響子さんに言わせたほどなのだから。

 

「いつからも何も」

 

#ゴクッ#

 

みんな一斉に唾を飲み、二階堂君を見詰めている。

 

「・・・・・・・」

何も言えない二階堂君。

 

#ジリリリリーン ジリリリリーン#

 

共用電話が鳴った。小走りに電話へ向かう管理人さん。

「もしもし、こちら一刻館・・・あ、八神さんのお母様」

 

「先日は、うちのいぶきがどうもお世話になりました。すみません、ご主人、いらっしゃいますか?」

 

「え、ええ。少々お待ち下さいいます?」

そう言うと、響子さんは五代君を呼びに行った。

 

(何かしら?)

果たして・・・話とは一体?

 

#ガチャッ#

 

「あなた、電話よ」

 

「電話?誰から?」

 

響子さんは二号室に戻って、あぐらの上に春香ちゃんを乗せてあやしている五代君に声を掛けた。

 

「それが・・・ちょっと」

手招きして廊下に呼んでいる。

それもそうだ。八神さんの母親からだ、何て言ったら、全員ついて来かねないのだから。

それを察して、五代君は何も言わずに電話へと向かった。

 

「はい、お電話代わりました。五代です」

 

「あの、八神いぶきの母でございます」

 

「!?」

 

響子さんは、みんなに怪しまれないように二号室に戻っているようだ。

 

「先日は、いぶきがお世話になりました。無理やり置いてもらったようで」

 

「いえいえ、一刻館のことは響子に、あ、家内に任せてあるので、私は」

 

「そんなことありませんわ。それで・・・」

八神さんの母親は、意を決して五代君に伝えた。

 

「いぶきに、一度会って頂けませんか?」

 

「え?それは、どういう・・・」

 

「実は・・・」

そう切り出すと、ま・めぞんでのキス事件のこと、昨夜の娘の涙のこと、色々と伝えたのだった。

 

「けど・・・オレが、いえ、僕が会ったところで、どうにも出来ないんじゃないでしょうか?・・・・・・」

 

「いえ。話を聞いてやって欲しいんです。そして、言ってあげて欲しいんです。女性として、充分魅力的なのだから、早く誰か良い人を見付けるようにと。でないと・・・あの子が不憫で」

 

「けど・・・オレじゃ・・・」

 

「ご迷惑なのは重々承知しております。けど、これで終わりですから。いぶきも、五代さんを諦めて、他の男性に目が行くと思うんです」

 

その時・・・

 

「ご・だ・い・く~ん」

 

「うわぁ!よ、よ、四谷さん!いつのまに!」

 

「いけませんな~、八神さんのお母上の願い、聞いてあげなさい」

 

「四谷さんには関係ないでしょ」

 

「そういうわけには行きません。何しろ、キス、シーンを見たのですから。というわけで、明日の午後8時にま・めぞんで」

 

 

#ガチャン#

 

何と、勝手に四谷さんが約束を取り決めてしまった。

いつの間にか、全員に取り囲まれていた。

 

「ちょ、ちょっと~。困りますよ、四谷さん。そんな勝手に」

 

「そうです。都合というのもがあるんですから!」

五代君も響子さんも、怒っているというか、困っているというか。

 

「まぁまぁまぁ、私に任せてください」

 

(四谷さんに任せられるわけないよ~)と五代君。響子さんも同意見だ。

 

「ご安心を。二階堂君に行ってもらいますから」

 

「ええっ!?」「え~~」

 

 

~次の日の夕方~

 

「何かしら、ママ。こんなところに呼び出して・・・」

八神さんは、母親に呼び出されていた。ま・めぞんに。

 

五代君と会って話しをする、何て言うと来なくなってしまうだろうから、

だます形ではあるが、こうやってま・めぞんに行かせることにした。

(話くらい、家ですればいいのに・・・)

 

一方・・・

 

「何ですか四谷さん。僕は仕事が終わって疲れてるんですよ!全くもう!どこに行こうっていうんです?」

 

「まぁまぁまぁ二階堂君、ここです。」

そういって連れて来られたのは“ま・めぞん”

二階堂君のほうは、半ば一方的に四谷さんが連れて来たのだ。

これで役者は揃った。

 

 

「全くホントにもう、四谷さんてば、強引なんだから・・・」

ぶつぶつ文句を言いながらま・めぞんに入る。

 

(あれっ?八神さんかな)

一方の八神さんはまだ気付いていないようだ。

 

「八神さん?」

 

「えっ?あ・・・二階堂さん」

そう言うと、昨日のことが頭をよぎり、カァ~っと顔が赤くなった。

 

二階堂君もそれなりに意識している様子。流石に心の底では、「キス」に参っていたのだった。

何となく八神さんの向かい側に座った二階堂君。

なかなか会話が進まないようだ。

 

 

~こちらは賢太郎君~

 

「お早うございま~す!」

夕刊の配達のバイトのため、新聞を取りに来た賢太郎君。

 

先輩バイトの人が声を掛けた。

「なぁ、一の瀬。お前、この後、居酒屋でもバイトしてるんだってな?そんなにお金が必要なのか?」

 

「えっ?う、うん。ちょっと、色々ありまして」

 

「うむ、そうか・・・まぁ、詮索しないけど、無理はよせよ。結構、キツイ仕事だからな~。あんまり舐めない方がいいぞ」

そう言われてみると、確かに最近キツイ。

(けど、もうちょっと必要なんだ・・・頑張らなきゃ)

 

どうやら、賢太郎君はまとまったお金が必要な様子。だが一体、何に使うというのだろうか・・・?

 

夕刊の配達が終わった足で、そのまま居酒屋へ向かう。途中、公衆電話に寄った。

 

#トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・#

#ガチャッ#

 

「はい、音無です」

 

「あ、もしもし。郁子ちゃん?オレ、賢太郎だけど」

 

「賢ちゃん・・・」

 

・・・・・・・・・・・

 

「そう・・分かった。もうちょっと待つわ」

 

「うん、ゴメンね。もう少しだからさ。そしたら・・・」

 

「うん。分かってる。信じてるから、私」

 

「それじゃ・・・」

 

#ガチャン#

 

(はぁ・・・何て言えばいいんだろう。誰かに聞きたいよなぁ~・・・・管理人さん・・・お兄ちゃん・・・)

こう言う時、流石にあの母親の顔は浮かんで来ない。

自然と五代夫妻の顔が浮かぶ。

(思い切って、相談してみよう!)

そう決心すると、いつものように居酒屋へを向かって行った。

 

 

~こちらは茶々丸~

 

「朱美ちゃ~ん、タバコはダメだよ~。響子ちゃんも言ってたじゃない?」

マスターの気苦労は絶えない。

 

「わ~ってるって。火ィ、点けてないから。咥えてるだけよ・・・」

 

#カランカラン#

 

「あ、いらっしゃ~い」

 

「こん、ばんは~」

四谷さんが登場した。この人の言葉遣いは相変わらずだ。

 

「どうしたの~?四谷さん。おごらないわよ~」

 

「いやいやいや。実はですね・・・」

と、二階堂君と八神さんの件を話した。

 

「えぇ~。それはまずいんじゃない?あの二人、水と油みたいな感じだし」

マスターが心配する。

 

「けど~、大丈夫じゃな~い?あの二人じゃ、どうしたってどうにもなんないわよ~」

 

「ふふふふふ」

「何よ?四谷さん。不気味ね~、いつもだけど。何か考えでもあるの?」

 

「さぁ?どうでしょう・・・わったしのみっみは~♪ろ~ばのみみ~♪」

何か考え(=陰謀)があるのだろうか。

 

 

~音無家~

 

「郁子・・・最近変よ。どうしたの?」

 

母親の言葉に、郁子ちゃんは何事もないように振舞った。

「ううん。何でもないわよ。どうしたの、お母さん」

 

「いえね・・・なんだか最近、気になってね。何かあるなら話してね、郁子」

 

「うん・・・お母さん」

 

そこへ

「郁子」

 

「あ、おじいちゃん。大丈夫、寝てなくて?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。それよりも、郁子。何かあるなら話しなさい。お母さんも私も、郁子のことが心配なんだから」

どうやら、音無老人は寝込んでいるようだ。

郁子ちゃんも母親も心配が絶えない様子。

 

「おじいちゃん、私は大丈夫よ。それよりも、ほら。ちゃんと横になってないと」

郁子ちゃんは心優しい娘だ。音無老人を布団に寝かせる手伝いをした。

 

「なぁ郁子。お前ももう年頃だ。色んな不安や心配があるだろうなぁ」

 

「う・・・うん。おじいちゃん」

 

「かといって、母親にも話しにくいこともあろう。郁子、もしも心に詰まっているものがあるなら響子さんに相談してごらんなさい。きっと、力になってくれるから」

 

「けど・・・おばさまはもう、音無家とは・・・」

 

「郁子。響子さんはそんな人じゃないよ。それはお前もよく分かっているはずだろう?」

 

「うん・・・」

 

「今は五代響子だけど、お前の叔母ではなくなったけれど、それは書類上だけじゃろう。間違い無くお前の信頼できる女性なんだからね」

「変に遠慮しちゃいけない。年齢もそれなりに近いんだから、親戚ではないが赤の他人なんかじゃないんだから信じて付き合っていきなさい」

 

「おじいちゃん・・・分かった。ありがとう」

その晩、郁子ちゃんは一刻館に電話した。

 

賢太郎君と、そして響子さんに。

 

 

 

以下、次回

 

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