手紙をカバンに入れて、走って行く八神さん。
それは自分の家へと向かう足であった。
家に着いた八神さん。
(久し振りだな~。お父さん、居るかな)
そっとドアを開けた・・・・。
#ガチャ#
「ただいま~~」
台所から、急いで母親が出て来た。
#バタバタバタバタ#
「お帰り、いぶき!どうしたの、突然・・・・」
「ちょ、ちょっとね。あ、あのさ。パパいる?」
「珍しいわね~。あんたから、お父さんに会いたいって言うのは」
「どうでもいいでしょ。で、どこ?」
「今、出掛けてるわよ。ちょっと待っておきなさい」
「分かった・・・・」
そう言い残すと、八神さんの母は台所へ、八神さんは自分の部屋へと・・・・。
八神さんの母は台所に着くと、の洗い物の続きを始めた。
「ふふふふ・・・・・」
一方、八神さんは・・・・。
#ガチャ#
「うわあ、久し振りだな~。あれ、以来だもんナ~」
「疲れたな~。少し、寝よ」
そして、夕方の5時・・・・・・。
「・・・・・・・うん?」
時計を見る八神さん。
「え!もうこんな時間!」
慌てて、一階へ向った。
「ママ、パパはまだ帰ってないの?」
「え、え~。まだ、みたいよ」
「そ、そう・・・。せっかく帰って来たっていうのに・・・・」
「そうね~」
「それじゃあ、また来る」
「え!ちょっと、待ちなさいよ!いぶき」
「私にもいろいろ都合があるから・・・・・」
そう言って、靴を履いた。
「それじゃあね」
「う、うん」
#ガチャ#
「!!!!!!!」
「!!!!!!!」
何と、八神さんの父が帰って来た。
「お帰り!パパ。ずっと待ってたのよ」
「・・・・・・・・・・・」
しかし、父の様子がおかしい・・・・・。
「どうしたの?」
「・・・・・・・いぶき!!今日はお前に特別、仕事を与えただろ!!」
「そのことなんだけね。パパ・・・・・」
「何だ?・・・・・・・・ま、まさか。あの男とデートで、会社に来れなかっただと!」
「何言ってるの。会社に行ったわよ」
「来て、何もせずに帰ったのか!!このバカモノ!」
「何ですって~~!!手紙読んだら、反省してると思ったら、これですって!!」
「何だ?その手紙って?」
「え?・・・・・あの、私の机に置いてあった手紙よ!」
「知らんな。そんな物・・・」
「はあ???じゃあ、一体だれが手紙を・・・・・」
静まり返ったその時・・・・・
「私よ!」
意外や意外。何と、その人物は八神さんの母親だった。
「え!ママなの?何でまた・・・・」
「どうしても、二人を会わせたかったのよ!こうでもしなくちゃ、いぶきは帰って来ないと思って・・・・」
「で、またどうしてだい!母さん?」
「あのね、二人とも、今日ははっきり言うわよ」
「な、なによ。改まっちゃって・・・」
「あなた達、・・・・・・・・・・・・・・・・・・いい加減にしなさい!!こんな事が許されると思ってるの!!」
「か、母さん・・・・・・」
「いぶきも、いぶき。あなたもあなたよ!どうしてこうなるわけ!?」
「・・・・・・・・・・・・」
「だって・・・・・」
辺りがまた静かになった・・・・・。
「とにかく、二人とも、リビングにいらっしゃい。一緒に話し合いましょ」
こんなお母さんは見たこと無い。
二人とも、そんな事を思いながら、リビングへ重い足を運んでいった・・・・・・。
リビングで話し合う八神一家・・・・・・。
しかし、誰の口も開かない。
その中、お母さんが口を動かし始めた。
「あなた。そろそろ、いぶきの年齢を考えていったらどうなの?」
「そうよ。パパ、私、もう20代なのよ!」
「・・・・・・・・・・・・」
一方的にお父さんを責める・・・・・。
「いぶき。あなたもあなたよ。急に男の人を連れてくるなんて、言い訳ないでしょ!」
「だって・・・・・・」
八神さんとお父さんは下を向いた・・・・・・。
「はあぁ・・・・・」
お母さんは、溜め息を一つ・・・・。
その時、口を一つも開かなかったお父さんが、
「・・・・・・・わかった。もう、好きにしろ」
「パパ。そんな言い方しないでよ」
お父さんはお茶を一口・・・・・・。
「小さい頃は、可愛かった・・・・」
「何を言い出すのよ?」
「娘というのは、大きくなるにつれて、親の気持ちも分からなくなるようだな」
「そ、そんな事、無いわよ。でも、娘の気持ちもパパは分かってないでしょ!」
「ああ、分かってないんだろうな。娘の気持ちなんて。・・・・・・・・・・もう、どうしたらいいか分からん・・・・・・」
遂に泣き出してしまったお父さん、それを見て八神さんは
「ちょっと、パパ。そんな・・・・・・・パパが、泣いたら、わたしも・・・・・・・・」
八神さんも泣き出して、二人で話し合うのは、ここまでだと、確信したお母さん。
「いぶき。あなたは、もう20代。一人で生きていきなさい。」
「それから、あなた。何も、いぶきがいなくなる訳じゃないんだから、会社でも会えるでしょ?」
しかし、泣いている二人に何も言っても返事が言えない。
「じゃあ、いぶき。今日は泊まって行きなさい。一刻館には電話しとくから」
こうして、暗い、暗い夜が終わった・・・・・。
そして、一刻館での次の日の朝・・・・・・・・。
管理人室で五代家一家が朝食を食べていた。
「ほ~ら、春香。お茶碗は手で持たないと」と響子さんが嗜める。
「いいじゃないか。響子。まだ春香は小さいんだし・・・・」
「あなたは本当に優しいのね。でも、こういうことは、早目からしておかなくちゃ。ね?」
「そうかもな」
流石は響子さん。躾はとても上手・・・・。(春香ちゃんだけでなく、五代君にも)
「で、八神はどうしたんだ?」
「え~。何でも、家に戻っているとか。昨日、仕事行ってからそれっきり」
「昨日は日曜日だろ?」と意外そうな五代君。
「特別に仕事だったみたいよ」
「何か、あったんだろうな~」
「うん・・・・・」
どことなく暗くなっていく。
「それじゃあ、行って来るよ」
「ええ、はい。いってらっしゃい」
響子さんは台所から弁当を取った。
「はい!頑張ってね」
「うん。じゃあ、行ってくるね、春香~」
しかし、食事に夢中なのか、一生懸命食べていて、パパのお出掛けに気付かない。
「ははは・・・・」
「いってらっしゃ~い」
今日は庭や玄関じゃなくて、管理人室からお見送り・・・・・。
でもそのお蔭で、響子さんからお出掛けの・・頑張って下さいねの、外ではちょっとどころか絶対に出来ないくらいの甘いディープキスをして貰い、有頂天で五代君はご出勤。
響子さんも春香ちゃんの躾や、いろいろあって、管理人の仕事もだいぶ少なくなってきた。
しかし、それで普通くらいなんだろう・・・・・。
(さあ。今日一日頑張らなくちゃ!)
その時、一通の電話が・・・・。
#ちりちりち~~ん#
「はいはい!!」
桃色電話へ小走りで行く響子さん。
「はい。もしもし一刻館です」
「あ、八神です」
「あら、八神さん。どうしたの?」
「え~と、やっぱり、うちが一番だと思い、家に戻ることにしました。あ、一刻館がイヤなわけじゃないですよ」
「そんな。気にしないでいいんですよ」
「ということで、荷物は近いうち取りに行きますから」と殊勝な口調の八神さん。
「はい。分かりました。また、一刻館に寄って来て下さいね」
「はい。それでは・・・・」
「はい」
#ガチャン#
(八神さん、偉いわね~。私ならきっと・・・・)
そんな事を考えながら、管理人室に戻った。
「あ!」
「へへへへへ・・・・」
「もう。春香ったら」
コップに入った、お茶をこぼしていた・・。
(でも、これが悪いことだと分かってるのね~。こうやって、成長していくのかな~)
とにかく、こうして、八神いぶきは一刻館から退室したのでした。
八神さんの事件も一件落着し、一刻館は、和やかな日々を毎日が過ぎていった・・・・。
そして、時計坂にも、そろそろ秋が近付いてきた・・・・。
そう。秋といえば・・・・・・・・
響子さんは夕飯を作り終わり、春香と一緒にご飯を食べている・・・・・。
春香ちゃんもかなりお行儀良くなってきた。
しかし・・・・
「パパ、遅いね」
「そうね」
(最近、あの人帰りが遅いわ・・・・・。何してるのかしら・・・・。)
どうやら、五代君はこの一週間帰りが遅いらしい。
「もう、とっくに保育園の仕事は終わってるはずなのに・・・・」
響子さんは、心配でご飯も喉を通らない。
そして、夜11時過ぎ。ようやく、五代君が帰って来た。
#ガチャン#
「お帰りなさい・・・・あなた、最近遅いけど、一体どうしたの??」と少し心配そうな響子さん。
「えっ、え?な、何でも無いよ」
「ホントに??」
「ほ、ほんとさ。運動会の取り組みとかで・・・・。ははは・・・・」
「そうなの」
「う、うん。あ~、お腹空いたな」と五代君。
「はい。今日はエビフライ。でも、もう冷めちゃったわよ」
「うん・・・・・・。ごめんな」
五代君が何かを隠しているのは響子さんが見ても、分かった。
しかし、しばらく様子を見ようと思ったのだった・・・・。
そして、次の日の夜・・・・・。
春香ちゃんはもう寝ている。
時計を2分置きに見ている響子さん・・・。
「もう。ホントに何してるのかしら?」
「ま、まさか・・・・」
五代君は浮気しているのではないかと、ふと思った。
その時、やっと五代君が帰ってきた。
時刻は11時10分・・・・・・・。
「ただいま」
「お帰り。ねえ。ホントに仕事なの?」
「う、うん・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「あ~あ。今日は疲れたな~。もう寝よ」
「ご飯は?」
「あ!ごめん。忘れてた・・・・」
「無理しなくていいのよ。どうせ、食べてきたんでしょ?」
「い、いや!そんな事ないよ。あ~、お腹空いた」
こうして、今日も一日が終わっていった・・・・。
次の日・・・・・。
響子さんは、自分から一の瀬さんを管理人室に呼んだ。
そして、最近の五代君の様子を全て話した。
「・・・・・・・・て、事なんですけど」
「そうかい。あいつ、何してんのかね~~」
「はあ・・・・・」
「まさか、あいつ。また、ごずえちゃんと・・・・」
「ま、まさか」
「でもな~~。最近、あんたに、何か、こそこそしてるし・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「まあ、今日、遅かったら、一回怒ってやんな!」と一の瀬さんがアドバイスしてくれる。
そして、夜が来た・・・・・。
やはり、いつも通り、帰ってこない・・・・。
あっという間に11時30分。
(まだ、帰って来ないわ!もう・・・・)
そして、時間は12時を過ぎて・・・・・
#ガチャン#
玄関の扉が開く音がした。
響子さんは玄関の方へと走って行った。
やはり、帰ってきたのは五代君であった・・・。
「どうしたの?響子・・・・」
「・・・・・・・・しらばくれて。もう。いいわ!」
それだけ、言うと響子さんは管理人室へと閉じこもってしまった。
(まあ、しょうがないな。毎日がこれじゃあ、怒られても)
そう思いながら、五号室に入る五代君。
(今日はここで、寝るか。でも、明日は・・・・・・)
不思議と五代君には余裕というものがあった。
その、理由とは・・・・・
以下、次回