めぞん一刻 二次小説 時計坂通信   作:今津晶

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第08話  捻挫と松葉杖

#ガラガラガラ#

 

「あ。あなた、どうだったの?」と響子さん。一刻館に何かあったのかと心配顔だ。

 

そう聞かれると、明日菜さんの方を見て、

(このことは黙っておいた方がいいかな・・・・)

「あ、うん。何でもなかった。大丈夫だよ」

 

「ホントに?一刻館に何もなかったのね?」

 

「うん。ちょっとね・・・・・」と口を濁す五代君。

 

「ちょっと何??」

 

「え・・・。あ、あの、保育園のことだよ・・・・」

 

「ふ~~ん」

 

(話題変えなきゃ・・・)

「それにしても、今日は楽しかったな~~。響子も明日は滑れば?子供たちは、僕が見とくから。一応、本職だし」

 

そこで君田さんが・・・・・・

「明日、お子様たちなら、私が見ておきます」

 

「いいえ。とんでもない・・・・」

 

「いいんです。今日は楽しい思いをたくさんさせて頂きました。だから、明日は夫婦ご一緒に・・・・」

 

「君田さん。いいんですか?犬も子供もじゃ、大変でしょ?」

 

「大丈夫です。何とかなりますから・・・・」

 

「そうですか。それではお言葉に甘えさせて頂きます」

 

「お嬢様もどうぞ、せっかく来たんですから、一度滑って来ては?」

 

「そうですか・・・・・・」

 

「それじゃあ、明日の予定は決まりましたね。五代君、君田さん。風呂入りに行きましょう」と三鷹さん。

 

そして、響子さん。

「明日菜さん。私達も・・・・」

 

「そうですわね」

 

「さあ。めいちゃん、もえちゃんも春香も、お風呂行きましょね」

 

 

そして、どんどん時間が経って、夜が明けた。

「それじゃあ、君田さん、お昼まで宜しくお願いしますね」

 

「はい。楽しんでいらしてください・・・・・」

 

「さあ。春香ちゃんたち。外で雪合戦しましょか?」

 

「うん!」

どうやら、犬達と一緒に雪合戦をするらしい・・・・・。

さすが、明日菜さんを小さい頃から世話をしていただけあって、子供の扱いには慣れているようだ。

 

 

さてさて、五代君夫婦はと言うと・・・・・・・・。

スキー場にてリフト待ちをしているところだ・・・・。

 

「響子。林間コース行こうか?」

 

「ええ。でも、ちゃん滑れるかな・・・・・・・・」

 

「大丈夫だって!何だかんだ言って、響子は運動神経あるんだから」

 

「ありがと。でも、高校の時以来だから・・・・・・」

 

「そう言って、テニスも大丈夫だったんだろ?」

 

「うん、まあね・・・」

 

「あ、次だぞ」

 

#ピン・・・・・・ポーン#

 

リフトに乗った二人・・・・。三人用なのに二人。これはラッキーだった。

 

「うわ~。綺麗ね」

 

「そうだね。まだ、朝で人も少ないし、昨日、結構雪降ったから」

ふと、五代君は前を見た。

 

前のリフトの人も二人だった。

しかも、前の二人は真ん中に肩を寄せて仲良く座ってている。

それを見て・・・・

 

(さり気な~く、さり気なく・・・・・・・・)

五代君は響子さんの肩を抱いた。

 

そして、響子さんは

(うふふ。この人ったら・・・・・・・)

響子さんも体を五代君へとぴったりと寄せた・・・恋人同士どころか・・すでに娘までいる、れっきとした夫婦ですからね。

(ずっと、こうしていたい・・・・・・)

二人とも、リフトを乗っている間、ずっとその状態だった。

しかし、時間とは経つもの、あっという間に上まで来てしまった。

 

「さ、滑ろうか」

 

「ええ」

 

#サーーー#

 

「上手い、上手い」

 

やはり響子さん。口では言ってるわりに、スキーもかなり上手かった。

 

「何となく、勘とかコツを思い出して来たわ」

 

「ふうん流石。それにしても、林間コースって気持ち良いな~」

 

「そうね~。緑がいっぱい」

 

「静かだね・・・・・・・」

(くそ。スキー場じゃなければ・・・・・キスしても・・押し倒しても怒られないのに・・・な)

 

10分後・・・・・・・

 

「あら、もう着いちゃった」

 

「あっという間だな~。次は、中級コース行こうか?」

 

「ええ。もう大丈夫よ」

そして、またリフトに乗った・・・・。

二人とも、並んでいる間、さっきの事を考えてしまっていた。

 

(また、さっきみたいになるのかな~~)

「あなた。次よ」

 

「あ。うん・・・・・・」

 

#ピン・・・・・・ポーン#

 

しかし、同じことは続かなかった・・・・・。

響子さんと五代君の間に、スノーボードの外国人が・・・・・・

 

(・・・・・・・・・・)

 

(・・・・・・・・・・)

とても気まずい二人・・・・。結局そのまま、上まで、着いてしまった。

 

「それじゃあ、行こうか!響子、先に滑ってよ」

 

「ええ。そえじゃあ・・・・・」

 

#サーーーー#

 

滑っている響子さんを見て、五代君は・・・・・

(本当に、響子って、何でもそつなく出来るんだよな~~感心するよ)

 

(よし。俺も・・・・・)

 

#サーーーーシュッシュッシュ#

 

途中で待っている響子さんは・・・・・・

(え!?あれが、裕作??へ~、ホントに上手いんだ~~)

自分の目を疑うかのように、何回も目を擦っていた・・・・・・。

そのうちに、五代君が着いてしまった。

 

「あなた、すごいのね。びっくりしちゃった」

 

「いや~~~」

五代君は照れて、後ろに体重が行き、バックしてしまった。

 

「あらららららら・・・・・・」

どんどん、バックで加速して行く・・・・。

 

(あれ?大丈夫かしら・・・・・・どんどん早くなっていくけど・・・・)

 

その時、上から、凄いスピードで、滑って来ている人がいた。

よく見ると、さっきの外国人ではないか・・・・・。

ぐんぐん加速していき、その後を目で追う、響子さん・・・・・・。

そして・・・・・

 

「あ!危ない!!」

しかし、そう思ったのも束の間・・・・

 

#ドンッ!!#

 

見事に五代君と外国人が衝突してしまった。

急いで、駆け寄る響子さん・・・・・・。

「あなた!大丈夫!?」

 

「いてててて・・・・・・・・・・・」

外国人は、すぐに板を外し、五代君達の所に走って来た。

 

「ごめん、なさい」

 

(あら?日本語話せるのね)

 

「あなたはだいじょうぶですか?」

「平気、平気・・・・・。ほんとに、ごめん、なさい」

と英語っぽいアクセントながらしっかりとした日本語で気遣ってくれる。

 

それから、ようやく、救急隊が来てくれた。

 

「さあさあ。奥さんも乗って下さい」

 

「あ、はい・・・・・・」

 

そして、医者の結果、少し重い、捻挫であった。

医者は、無理しないで、10日くらい、安静にしておいた方がいいと告げられた。

一応、杖も貸してもらった・・・・・。

 

 

病院から旅館へとタクシーで戻った響子さんと五代君。

二人は部屋へと向かった。

 

「大丈夫?あなた?」

体を引っ付けて、心配そうに五代君の体を支える響子さん。

 

「うん、一回経験してるし、今回の方がマシだから」

杖を上手く使う五代君。

 

器用ということもあるかも知れないが、やはり一回経験しているからでしょう。

しかし、それはまるで、あの時の二人の姿と、とても似ていた・・・。

そう・・相変わらずの派手な痴話喧嘩の果てに五代君が一刻館の2階から転落し片足を骨折して入院していた時・・響子さんが責任を感じてずっと付き添ってくれていたあの日々・・・。

五代君が松葉杖を使って病院の庭を散歩する時も響子さんが優しく支えてくれたのだ・・・・。

しかしながら、もう少しで二人の仲が成就しそうだったのに・・思わぬ邪魔者のせいで阻止されてしまった苦い思い出でもあった。

 

(しかしまあ、でも俺たちはそんな邪魔にも負けずにこうして結婚出来たんだし・・娘も産まれたし・・・その邪魔者の三鷹さんとこうしてスキーに来ているんだから感慨深いな・・)

 

 

#ガラガラガラ#

 

「パパ、ママ、お帰り!」

 

「ただいま、春香。いい子にしてたか~」とパパの五代君。

 

「うん。楽しかったよ」

 

「そうか、そうか」

 

「あれ?どうしたの、五代君?その足・・・・」

三鷹さんが心配がてら少し面白がって尋ねる。

 

「いやあ。ちょっと、人とぶつかちゃって・・・・・。ははは」

 

「骨折じゃなさそうだね。それじゃあ、帰るか」

 

「え!?」

五代君は部屋を見渡せば、すっかり片付いていた。

 

「五代君達が遅いから、みんな心配してたんだよ」

 

「それは、すいませんでした・・・」

 

「いいよ、いいよ。まだ2時だし、いまから出発すれば十分だ」

 

「そうですか。・・・・・あの~。ちょっと、いいですか?三鷹さん?」

 

「何だい?言ってみたまえ」

 

「ここ新潟ですよね。だから、その・・・・」

 

「あ~。君の実家か」と思い出したように呟く三鷹さん。

 

「だから、こっから僕はタクシーで行きますから・・・・。」

 

それを聞いて響子さんは・・・・

「あなた、明日から仕事でしょ?」

 

「いいよ、いいよ。怪我の理由で何とかなるから・・・・」

「それに、去年の正月は新潟に来てもらったし、今年は響子の家で新年迎えようと思うから。明日一日家にいて、正月は行かないことにする」

 

「・・・・・・・・いいの?それで?」と心配顔の響子さん。

 

「うん。新潟まで東京からも遠いしね」

 

「そう・・・・・・。じゃあ、あたしも行くわ」

響子さんは夫の五代君と実家まで帰る決意をする。

 

「春香も~~~!!」と可愛く叫ぶ春香ちゃん。

 

「分かってる、分かってる」

 

「どうやら、話がまとまったみたいだね?」

 

「ええ。色々と迷惑を掛けてしまって、三鷹さん、すいません。本当にごめんなさい」

 

「そんなのいいんだよ。それより、しっかし親孝行してくるんだよ」

 

「はい」

 

その話を、聞いていた君田さんは・・・・・・・

「私がお送りさせて頂きます」

 

「え!?とんでもない。結構ですよ。そんな・・・・・」

 

「いいえ。五代さんには色々と、お世話になりましたし、何かしたいんですよ」

 

「そんな~。僕、何もしてないけど・・・・・。それに、逆に春香も随分とずいぶんお世話になったことですし」

 

「いいえ、いいんです。私もお子さん達と遊べて楽しかったものですから」

 

「それじゃあ・・・・・・・宜しくお願いします」と五代君と響子さんは君田さんに頭を下げる。

 

「ええ。お気になさらず、お任せ下さい」

 

そして、みんなは、駐車場へと・・・・・・・

 

「それじゃあ、またどこか行きましょう」

 

「はい。三鷹さんも元気で・・・・」

 

「今度、僕の家に来てよ。考えてみればまだ、一回も来てないだろ?」

 

「ええ。それじゃあ、いつか、行かせてもらいます」と五代君は返答する。

 

響子さんたちは・・・・・・

「明日菜さん。どうかお元気で。それに、サラダちゃん達も・・・・・」

 

「あら、犬の名前覚えててくださったのですか。ありがとうございます。惣一郎さんもどうか、お元気で」

 

「ほら、春香。めいちゃん達にお別れは・・・」

 

「うん、めいちゃん。もえちゃん。ばいば~い・・・・・」

 

「春香ちゃん、ばいば~い」

 

「ばいば~い」

 

「それでは、五代さん。参りましょうか」

 

「ええ。宜しくお願いします」

 

 

#ブゥ~~ン#

 

君田さんの運転する車(九条家のポルシェ)は五代君の実家に向けて出発した。

 

「君田さん、本当にすみません」

 

「お世話になります・・・」

五代君と響子さんは改めて君田さんにお礼を言った。

 

「いいんですよ、本当に」

相変わらず温厚な君田さんの対応。あれからも、変わらず明日菜さんを見守って来たのだろう。

人柄が本当に似ている、五代君も響子さんもそう思っていた。

 

 

~一方の三鷹夫婦はというと・・・~

 

「おい、明日菜。こんなに犬をみんな乗せて、大丈夫なのか?」

 

「はい・・・みんな・・・いい子たちですから・・・」

 

「ママ~、せまいよ~」

 

「せまい~」

 

三鷹さんだけでなく、めいちゃんももえちゃんも不満気だ。明日菜さんと犬たちを除いては・・・

 

 

~さて、こちらは五代一家と惣一郎さんを乗せた君田さんの車~

 

「ああ、そこの定食屋です」

 

「ここですね・・・はい、着きました。お疲れ様でした」

 

「そんな・・・君田さんこそ、本当にありがとうございました。」

 

「是非、上がって休んでいってください。お茶でも出しますから」

五代君が松葉杖を突きながら、車窓越しに君田さんをお茶に誘ったのだが・・・

 

「いえ。わたくしは明日菜お嬢様が気懸かりですから。このまま東京へ向かうことにします」

 

「そうですか・・・心から明日菜さんを慕ってるんですね」と感心する五代君であった。

 

「ええ、何しろ明日菜お嬢様が生まれてからというもの、ずっと見守って参りましたから」

「こんなこと言うとだんな様のお叱りを受けてしまいますけど、自分の本当の娘だと思っていますから・・・それではみなさん、ゆっくりしてきて下さい」

そう言うと、君田さんは東京へ向けて発進して行った。

ああいう幸せもあるんだな~しみじみと思う、五代君と響子さん。

 

が、魔の手(?)はさりげなく伸びてきた。

「ゆぅ~~~さくっ!」

 

「わっ!ばっばっばっ・・・」

 

「ば~~~とはなんじゃい!全く、急に来るなんて言うから何事かと思えば、骨折なんてしおって~」

 

「おばあちゃん、こんにちは。あの・・・骨折じゃなくて捻挫なんですよ」

と、響子さんが間に入る。

この構図は結婚前から全然変わってないようだ。

 

「ひいばぁちゃん!」

 

「おんやまぁ、春香ちゃん。こんにちは。ひいばあちゃんのこと覚えててくれたのかえ?」

 

「うん!」

 

そう言われて、凄く嬉しそうに“ひ孫”を抱くゆかりばあちゃん。

「惣一郎、おめぇも来い」

 

「バウ!バァ~ゥ!?」

 

「ばぁ~ちゃん!惣一郎は食い物に目が無いんだからだめだよ!」

 

「そうですわね、飲食店ですし・・仕方ありませんわ。ここに繋いでおきましょう」

そう言うと、響子さんは手際よく店の前の電柱に縛り止めた。

 

「ま、とにかく入らっせ」

そう言われ、店のドアを見ると・・・「営業中」・・・

 

(やっぱり・・・急だったから仕方がないか)

溜め息を吐く五代君。

 

#ガラガラガラ#

 

「いらっしゃいませ~」「いらっしゃいませ~」

両親の声が時間差で店内に響き渡る。

五代君が声を発する前に両親の先制攻撃。

 

「あれ~~春香ちゃん。おばぁちゃんですよ~こんにちは~」

五代君のお母さんに続いて、お父さんも、

「春香ちゃん、じいちゃんのこと、おぼえてっか?」

 

「おぼえてっか?」

新潟の方言での連続攻撃に戸惑いを隠せない春香ちゃん。

 

すかさず響子さんが挨拶する。

「どうも、こんにちは。ご無沙汰してます」

 

「いやぁ、どうもどうも」

両親は響子さんをえらく気に入っているようだ。最初に会ったときから全然変わってない。

そして、もはや両親と妻と子の前では、亭主の居場所なんてなかった・・・。

(はぁ~~俺、けが人なんだけどなぁ・・・もう少しこう・・・)

 

「な~に不貞腐れてんだ、裕作」

 

「べつに。何でもねえよ、ばあちゃん」

 

「え~でねっか~。初孫は、誰だって嬉しいもんだ~」

 

「ばぁちゃんも、そうだったか?」

 

「ああ~。おかげで世話ば~っか掛けてたら、こんなんになっちまったけんどな~」

 

「こんなんで悪かったな・・・」

 

「いじけるでね~。今夜はぱ~っとやるべぇ。援軍も呼んでおいたけんなぁ~」

 

「え、援軍って・・・」

 

「まさか・・・」

そう言って顔を見合わせる五代君と響子さん。

やはり援軍とは・・・

 

 

 

以下、次回

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