繰り返しの違い   作:もえみ

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『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――』


特異点F
特異点F-1


「オルガ、大丈夫?」

「うるさいわね!アンタはレイシフトの準備をしなさい!」

「もう準備は出来ています」

「ならコフィンへ移動して!」

「貴女の晴れ舞台を見てからです」

 

 

 

今日はいよいよXデー。

カルデアがドカンする日。特異点Fに赴く日。

 

私が出来ることはやったはず。馬鹿みたいにある魔力で後は幸運を祈るしかない。いや、死にたくはないけども現実感が薄い。

 

慌ただしく動き回るオルガの後ろを付いて回る。親鳥に付いて回る雛鳥。ここ、数か月ではみんな見慣れた光景だ。

ただし、ここにレフが加われば話は別。私はあいつが悪いヤツな事だけは覚えてた。ってか、あの声で思い出した。杉田さん(イケボ)ごめんなさい。

 

レフ・ライノール。

 

あいつがここをドカンとする。それは覚えていた。

 

隠れてどうにかするだけの実力もないので、私は貴方が嫌いですと全身で警戒のオーラを醸し出して逃げるだけ。オルガは私よりも前に居る彼に依存しているし、むしろ父親という存在が急に連れてきた養子なんて認めちゃいない。

 

仲良くしたいと思うが、こればっかりは難しい。こちらの感情も同じだ。

 

 

 

ここでAチームと呼ばれるみんなとすれ違った。

 

キリシュタリア・ヴォータイム

デイビット・ゼム・ヴォイド

カドック・ゼムルプス

ベリル・ガット

オフェリア・ファムルソローネ

スカンジナビア・ペペロンチーノ、

芥ヒナコ

 

 

芥さん以外名前を見ながらじゃないとフルネームで言えない。もうちょっと簡単な名前の魔術師は居ないのか・・・。

 

彼らは私と同様、説明会に参加する必要もないので、先にコフィンへ搭乗する。私もそうすべきなのだが、彼女のせっかくの機会だからと駄々をこねた。

ええ、年相応にふるまっていますとも。技術班の人は笑って許してくれた。

 

 

本命の理由は彼女を助けたい、というかレフの思い通りにさせてたまるかという気持ちだけだ。

もちろん、クリプターメンバーも出来る限りとは思ってるけど、ただの一般人にはあまり多くを望まれても困るだけなので無理です。

 

技術班やダ・ヴィンチちゃんと悪ふざけで開発してもらった炎耐性を付けられる装置をコフィンに取り付けたくらいだ。あれがどれくらいの効力を発揮してくれるのか。私はそれまでに彼らを助けられるのか。それは神のみぞ知る、なんてね。

 

私の優先はオルガだ。それを間違えるつもりはない。

 

 

FGOは好きなストーリーだったけど、正直に覚えてない。スマホを持たせてもらえるようになったら絶対にプレイするって決めてたけど、だからこそ覚えてなんかないし、どちらかと言えば家族仲の構築とか勉強とか身体を動かすことに精一杯だったので、逆行前に嗜んでいたサブカルチャーはほとんど手を出してない。

むしろ手を出せなかったことには手を出していった。元々Fate知らない勢から入った。そして、手を出すだけの時間がなかった。

 

 

 

管制室には集められた魔術師と一般枠の方々が全員ではないが集まって、手元のパンフレットを見てこちらを確認している―特によく分かっていない一般枠の方が顕著である。彼女がここの所長であることは理解しただろうが、若さの問題もあって驚愕といった心情だろうと推察―。そんな視線は知ったことかとオルガはカルデアスの前まで歩くので、私はその後ろを付いて回る。

そんな私へここで怒鳴るつもりはないらしく、視線で付いてくるなという言葉を貰った。もちろん知らない。視線のせいでお腹は痛くなるけど。

 

私は彼女の後ろで待機。

彼女は自身の腕時計と着席していない方へ視線を何度も行き交わせた。無言の圧力により着席していく者がほとんどで、真正面の空いた二席が分かりやすく睨まれている。

 

うん、確か主人公。でも二席だっけ?

私が居ることで他にお助けキャラ的なの存在してる?特異点攻略がやりやすくなるなら大歓迎!

 

 

数分経ってもその二席が埋まることはなく、オルガが大きなため息をついて、「時間も守れないなんて」と呟いた。

しかし、静かになっていた管制室にはその言葉が響き、彼女のイライラが周囲に伝播してしまった。あー、緊張感走ってるな。

 

そんな時に扉が開き、レフと顔色が白い知らない二人、それにマシュが入室する。

 

タイミング最悪かよ・・・。

 

 

 

「ここが中央管制室です。先輩方の番号は・・・一ケタ台、最前列ですね。一番前の空いているところにどうぞ。所長の真っ正面とは素晴らしい悪運です」

「・・・」

「先輩方?顔の色が優れないようですが?」

 

「・・・ごめん、まだ頭がぼうっとして」

「・・・眠い。すっごく眠い・・・」

 

「シミュレーターの後遺症ですね。すぐに医務室にお連れしたいのですが」

 

「・・・・・」

 

 

ギロリと効果音が付きそうな視線で彼らを見るオルガ。あー、これやっばい。

 

 

「無駄口は避けた方が良さそうだ。これ、もう始まっているようだからね」

 

 

たまにはレフも空気を読む。あいつは嫌いだが、今は彼に賛成だ。正論だしね。

 

二人は赤みがかった茶髪の女の子と溌溂とした印象を受ける黒髪の男の子で、そそくさと席に座った。顔色は変わらない。着席を見て、オルガは重々しく口を開く。

 

 

 

「時間通りとはいきませんでしたが、全員揃ったようですね」

 

 

最後の二人を睨むように言った。

あ、もうこれ駄目だ。彼女ら敵認定されてるわ。

 

 

「特務機関カルデアにようこそ。所長のオルガマリー・アニムスフィアです。あなたたちは各国から選別、あるいは発見された稀有な才能を持つ人間です。才能とは霊子ダイブを可能とする適性のこと。魔術回路を持ち、マスターになる資格を持つ者。想像すらできないでしょうが、これからはその事実を胸に刻むように。あなたたちは今まで前例のない、魔術と科学を融合させた最新の魔術師に生まれ変わるのです」

 

 

私はここしか知らないから分からないが、魔術と科学を融合させるなんてことはほとんどの魔術師がしないそうだ。根源に至る?だっけ?わっかんね。

 

 

「とはいえ、それはあくまで特別な才能であって、あなたたち自身が特別な人間という事ではありません。あなたたちは全員が同じスタート地点に立つ、未熟な新人だと理解なさい。特に協会から派遣されてきた魔術師は学生意識が抜けきっていないようですが、すぐに改めるように。ここカルデアは私の管轄です。外界での家柄、功績は重要視しません。まず覚える事は、わたしの指示は絶対という事。わたしとあなたたちでは立場も視座も違います。意見、反論は認めません。あなたたちは人類史を守るためだけの、道具に過ぎない事を自覚するように」

 

 

彼女の発言に説明を受けていたマスター候補たちはざわついた。一般の出のものはとても少ない。だからここでざわついているのが時計塔とかから来た魔術師だろうことは私でも分かった。

 

ざわつきに顔をしかめるオルガ。舌打ちでもしそうな表情だ。

 

 

「・・・騒がしいですね。意見は認めないと言ったばかりですが?そこの君たち。さっき遅れてきた君たちよ。いま話した心構えについて、何か不満があるのかしら?」

 

「・・・・・」

「・・・・むにゃむにゃ」

 

 

あら?え、嘘だよね?少年?少女?似たような顔して、幸せそうに旅立ってないかい?

 

 

 

「・・えっと、目の錯覚・・それとも疲れ目かしら・・・。立ったまま寝てる・・なんてないわよね、いくらなんでも・・」

 

「どうしてもと言うからこんな山奥までやってきたのに、絶対服従とかバカじゃないんですか!?」

「その通りだ、愚弄するにも限度がある!魔術師にとって血筋は最重視されるものだ、それをないがしろにするなんて!」

 

 

 

旅立ってる彼等をじっくり見る前に他の教会から派遣されてきた魔術師たちが騒ぎ出す。

 

私、ちゃんとした魔術師じゃないから分からんけど、お家のことが誇りとかどんなハリポタスリザリン?って感じ。これ、オルガに言ったらしばかれるだけじゃ済まないから絶対に言わないけど。

 

 

 

「静粛に、私語は控えなさい!それだから学生気分が抜けていない、なんて言われるのよ!わたしは現状を打破する最適解を口にしているだけ、納得がいかないのなら今すぐカルデアを去りなさい!もっとも、あなたたちを送り返す便はないけどね。標高6000メートルの冬山を裸で下りる気概があるのなら、それはそれで評価しましょう」

 

 

 

流石の物言いに反感を口にしたやつらも黙った。正直、騒いでいる彼等の事は見たくない。見捨てる命だ。マスター候補が生き残れる可能性なんてどれだけ考えてもない。

世界中から集めたレイシフト適性を持つ人間。レフが残すもんか。

 

 

 

「結構、脱落者はいないようね。まったく、あの子みたいに軽装備で雪山下りていく度胸もないのならくだらない事に時間を使わせないで。わたしたちの、いえ、人類の置かれた状況がそれぐらい切迫しているものだと理解してほしいものだわ。ほら。そこの二人を見習いなさい。反論も意見もない。従順で結構です」

 

 

 

いや、アレは理解が追いついてない顔だよ?絶対眠くてぼーっとしてて、話が専門的過ぎて付いていけてない顔だよ?

オルガは魔術師としては普通の感性を持ち良い人過ぎるそうだから、一般人の中でもきっと溶け込めるはずだ。後は箱入りだから世間を知るとこからね。

 

 

 

「・・では、話を続けます。いいですか、今日というこの日、我々カルデアは人類史において偉大な功績を残します。

 

学問の成り立ち。

宗教という発明。

航海技術の獲得。

情報伝達技術への着目。

宇宙開発への着手。

 

そんな数多くある『星の開拓』に引けを取らない、いえ、すべての偉業を上回る偉業。文明を発展させる一歩ではなく、文明そのものを守る神の一手。不安定な人類の歴史を安定させ、未来を確固たる決定事項に変革させる。霊長類である人の理――即ち、人理を継続させ、保障すること。それがわたしたちカルデアの、そしてあなたたちの唯一にして絶対の目的です。」

 

 

その為に彼らは集められた。

 

 

「カルデアはこれまで多くの成果を出してきました。

 

過去を観測する電脳魔ラプラスの開発。

地球環境モデルカルデアスの投影。

近未来観測レンズ・シバの完成。

英霊召喚システムフェイトの構築。

そして霊子演算機トリスメギストスの起動。

 

これらの技術をもとに、カルデアは百年先の人類史の観測をしてきました。未来予測ではなく、未来観測です。天体を観るようにカルデアは未来を見守ってきました。その内容がどのようなものであれ、人類史は百年先まで続いている、という保証をし続けてきたのです。

 

頭上を見なさい。これがカルデアが誇る最大の功績―――高度な魔術理論によって作られた地球環境モデル、()()()()カルデアスです」

 

 

彼女は頭上の天体のようなものを指した。

これの説明の際だけ、少し顔が緩んでいる。やはり、これ(カルデアス)は誇らしいのだ。

 

 

「これは惑星に魂があると定義し、その魂を複写して作られた極小の地球です。我々とは異なる位相にあるため、人間の知覚・知識では細かな状況は読み取れません。ですが表層にあるもの、大陸に見られる都市の光だけは専用の観測レンズ・シバによって読み取れます。現在はその状態を百年先に設定しています。このカルデアスは未来の地球と同義なのです。カルデアスに文明の光が灯っている限り人類史は百年先の未来まで約束されています。ですが、―――レフ。レンズ(シバ)の偏光角度を正常に戻して」

 

 

そこには光を失ったカルデアスがあった。

オルガが半年前からこれのせいで酷く非難された。私は私で色々とやばかったので、フォローにも回れない。

まあ、見た目15にも見えない小娘が並居る大人たちに何言ったって聞いてもらえないんだけどね!!腹立つ!!

 

 

 

「現状は見ての通りです。半年前からカルデアスは変色し、未来の観測は困難になりました。今までの観測の寄る辺になっていた文明の明かり。その大部分が不可視状態になってしまったのです」

 

 

またざわつくマスター候補。事の重大さは伝わったようだ。

 

 

「ふん、いい反応ね。少しは頭の回る子がいて助かるわ。そう。明かりがないということは文明が途絶えたという事よ。これは極秘事項として秘されていた事ですが、あなたたちには知る権利があります。観測結果、地球に人類の明かりが確認できるのは2016年まで―――」

 

 

つまり、後1年と少し。猶予はない。

 

 

「言うまでもなく、こんな未来はあり得ません。あってはならないものだし、物理的に不可能です。経済崩壊でも地殻変動でもない。ある日突然、人類史が途絶えるなんて説明がつきません。わたしたちはこの半年間、この異常現象――未来消失の原因を究明しました。現在に理由がないのなら、その原因は過去にある。

我々はラプラスとトリスメギストスを用い、過去2000年まで情報を洗い出しました。今までの歴史になかったもの。今までの地球に存在したなった異物を発見する試みです。

 

その結果、ついに我々は新たな異変を観測しました。

 

それがここ―――空間特異点F。西暦2004年、日本のある()()()()です。

ここに2015年までの歴史には存在しなかった、観測出来ない領域が発見されたのです。カルデアはこれを人類絶滅の原因と仮定し、霊子転移(レイシフト)実験を国連に提案、承認されました。霊子転移とは人間を霊子化させて過去に送りこみ、事象に介入する行為です。端的に言えば過去への時間旅行ですが、これは誰にでも可能の事ではありません。優れた魔術回路を持ち、マスター適性のある人間にしかできない旅路です」

 

 

私には馴染みの深い土地。

隣街で暮らしてたからね、私。

 

 

「さて、ここまで説明すればわかるでしょう。あなたたちの役割はこの特異点Fの調査。今から12年前の過去の日本に転移し、未来消失の原因を究明、これを破壊する。この作戦はこれまで例のないものです。何が待っているかは予測できません。

ですが、世界各国から選抜されたあなたたちなら十分に可能だろう、と多大な期待が寄せられています。上層部は一刻も早い原因究明を求めています。無駄に使う時間はありません」

 

 

だからこそ、此処までの予算をつぎ込み、オルガへの催促を再々言い渡したのだ。

ほんと、あいつらこそ潰されればいいのに。

 

 

「これより一時間後、初のレイシフト実験を行います。仮想訓練はもう十分でしょう。第一段階として成績上位者8名をAチームとし、特異点Fに送りこみます」

 

 

すでにコフィンへ乗り込んでいるみんなを指した。

きっと大丈夫。彼らは助かる。助かって、私の心の安寧の為にも。お願いします。

 

 

 

「後発組には伝えてありませんが、彼等はカルデアから選抜されたマスター適性者です。Aチームは一か月前からチームとして機能しています。一人前の兵士、と言ってもいいでしょう。彼等Aチームが先行し、特異点Fにてベースキャンプを築き、後に続くあなたたちの安全を保証する。Bチーム以下は彼等の状況をモニターし、第二実験以降の出番に備えなさい。

 

では人間を霊子変換し過去に転写する量子の筐・・クラインコフィンの個人登録に移ります。あれは一人一基ですから換えはききません。各自、慎重に、丁寧に扱うように。BからDチームは登録が済み次第、コフィン内で待機。Aチームに問題が発生した場合に備えます」

 

 

 

ちなみに私はDチーム。そして登録は終わっているので問題なし。コフィンに入る気がないから、どうやって愚図ろうかだけを考えている。

 

あのコフィンを壊すことは出来ない。オルガも言っていたが、あれめちゃ高いし、ちゃんと修理できる人間が限られている。もし、この後の事で生き残ってくれなかったら私、レイシフト出来ない。

 

・・・あれ?出来なくても良くね?オルガ助けたら後はAチームと藤丸兄弟(?)で頑張ってくれたらいいし。

 

 

 

「―――何をしているの。やるべき事は説明したでしょう。マスター適性者として招集に応じた以上、あなたたちはもう軍人のようなものなのよ。命令には従う。どんな時でも戦いに順応する。いちいち言わせないで、こんなこと」

 

 

カルデアの規律は軍人染みているけど、いきなり来た人らにそれを期待するのは無理じゃない?

だって、あの二人とかまだ?マークがいっぱいだよ。

 

 

「それとも、まだ質問があるの?ほら、そこの君たち!君たちよ、遅刻した君たち!特別に質問を許してあげます。首を傾げているけど、何が不満なの?」

 

「え、だってタイムスリップなんて可能なんだ・・?」

「あー、だよね。立香も思うか。出来たとして過去を変革して問題はないのか・・?」

 

 

 

一般人からしたら当然の疑問。

私も半年前は同じこと思った。

 

特異点なんて探しても過去の事だから何が変化してタイムパラドックスが発生したら目も当てられない。

 

って言ったら怒られました。今まで教わったことを何だと思ってるんだって。

いや、覚えてないし。

 

 

 

「・・・あなたたちね。特異点、ときいて分からないの?今回発見された特異点はこれまでの観測記録にはなかったものなの。ようは突然現れた穴と同じってコト。穴自体が正常な時間軸から切り離されているのよ。2004年の特異点は過去と未来から独立している。前後の辻褄を合わせる必要はないの。通常の時間旅行より安定してシフトできるし、どのように改変を行っても時間の復元力で影響はないわ。

 

この特異点Fは人類史というドレスに染みついた、小さな汚れのようなものよ。あるだけで美しさを損なう毒。あなたたちはこの毒を摘出するだけでいいの。それで人類史はもとの以前から観測されていた正しいカタチに戻るんだから。

・・・まったく。こんな初歩の時空論も知らない人間をよこすなんて、教会は何を考えているのかしら」

 

 

何も考えてないんだと思うよ。

まだ?マークを浮かべている彼らにオルガは苛立ちを隠さず、癇癪の一歩手前だった。

 

 

 

「この作戦は冠位指定、魔術世界において最大級の義務と同じなんだって進言したのに・・・。まあいいわ。キミらはどこのチーム・・・ちょっと。ID見せて。なにこれ、」

 

 

彼らのIDを確認すると、彼女は声を震わせた。

あー、もう癇癪抑えきれてないや。

 

 

 

「配属が違うじゃない!一般協力者のしかも実戦経験も仮想訓練もなし!?わたしのカルデアを馬鹿にしないで!あなたみたいな素人を入れる枠なんてどこにもないわ!レフ!レフ・ライノール!

 

「ここにいますよ所長。どうしました、そんな声高に。何か問題でも?」

 

「問題だらけよ、いつも!いいからこの新人を一秒でも早くわたしの前から叩き出して!」

「あー・・そういうコトですか。ですが所長、彼らも選ばれたマスター候補です。確かに他に比べて経験はないでしょうけど、そこまで邪険に扱うこと自体が問題というか」

「何の経験もない素人を投入するコト自体が問題よ!わたしのカルデアスに何かあったらどうするの!?いいからロマニにでも預けてきて!せめて最低限の訓練を済ませてきなさい!」

 

「・・むう。これは嫌われたものだね。仕方ない、とりあえず命令には従うか。マシュ、藤丸君たちを個室に案内してあげてくれ」

 

「了解です。お話は聞いていました。先輩を個室までご案内すればいいのですね?」

「すまないね。私はレイシフトの準備があって同行できないんだ。なに、今回の実験は二時間ほどで終わる。その後に部屋を訪ねさせてもらうよ」

 

「ありがとうございます」

「・・・・・・・」

 

 

 

おお、少年の方は黙ってるな。・・・少女の身を案じてか?あれがレフを警戒してならいいんだけど、主人公は大らかな感じが前面に出てたイメージが残ってるから違うだろう。

 

 

 

「なに、礼には及ばないさ。君は本当に運がいいからね」

「レフ教授にしては気が利くのですね。もしや、レフ教授も先輩を先輩と?」

「いやいや、たまたまさ。運命の出会いとか宿命のライバルとか、そういう数奇を重要視しているんだ」

「それでは先輩方、こちらへ。先輩用の先輩ルームにそれぞれご案内しますので」

 

 

 

彼らはファーストオーダーからの除外を申し付けられ、マシュに連れられて退室する。

 

姿が見えなくなるように出ていってから私はオルガにフォローを入れる。彼女もかっかとしていたらこの後の作戦にも差し支えてしまう。ほら、リラックス。にっこり笑おう。

 

 

 

「落ち着いてください。ほら、私の時もあったでしょう?」

「ええ!貴女は初対面で寝こけていたわね!最悪よ!

「しまった、藪蛇だ!で、でもシミュレーターの霊子ダイブに慣れてないと脳に来るって技術班の人も言ってました!」

「そんな素人が来たって言うの!?」

 

 

 

これ、私が話したら火に油を注ぐだけでは!?

 

結構思い切りオルガに叱られたにも関わらず、さっきの二人はまだ少しボケっとした印象を受けた。

あれは完全覚醒にもう少しかかるな。だって、私もそうだったもん。

 

仲間だね、やったね。嬉しくないけど爆破後、お互い生きていたらついでにオルガに嫌われている同盟でも組むか。生きるから組むけど。

 

 

私は間に入ったせいでオルガからもの凄く睨まれている。その様子にレフが微笑んでいるのが腹立つ。オルガに一声かけてからやつは管制室の上に上がっていった。

 

なら、もうすぐかもしれない。あいつだって、爆破には巻き込まれたくないと思うだろうから、ここにいないに時間を狙うと思う。

だから、強化魔術で肉体を強化。何度も何重にもして自分にかける。

 

まあ、オルガには何をしていると余計に睨まれるが、この後が不安だからと言えば申し訳なさそうな表情をする。・・・この人も私を完全に嫌っている訳でない。

ただ父親とのこととか私の事情とか彼女の事情が複雑すぎて、それをうまく解決するよりも私を嫌ってしまうのが楽なんだろう。仕方ない。忙しすぎる。

 

特にこの半年。

 

 

こちらを見るのを止めた彼女がレフにロマニを呼ぶように指示をした。

 

 

 

「ちょっと、レフ、聞こえるかしら?」

「はいはい、聞こえてますよ」

「ロマニを呼んで頂戴。初めての試みで体調を崩すものが出ないとも限らないわ」

 

 

 

ほら優しい。

 

ロマニとは医療部門のトップなんだけど、性格や見た目がゆるふわ系の人だからよくピリピリしたオルガからお叱りを受けてる。

 

この人もキーパーソンだったと思う。ってか、鈴村健一ボイスが使い捨てなわけがあるか。―ちなみに初対面の挨拶で何度も声を聴かせてほしいと頼んでしまった。いやあ、とっても流暢な英語だから鈴村さんの声って気づくのに時間が掛かったんだけど、最初に声を発した時に聞いたことある!ってなっちゃって。ただの変人になっていた―でもどういう配役かは思い出せない。味方だった気はする。

 

深呼吸して、オルガの手を取った。

彼女は私の行動に驚いた顔をしているが、私の手の震えは伝わっていた。下手くそな笑い方だ。

 

 

あーあ、くそ。

 

 

結局のところどう足掻いても凡人でしかない。だからカッコ良く何かを決められると思ってはいない。それでもこの手を離すことだけはしないと、この人を失いたくないと決めた。家族を失いたくない。

 

 

コフィンへの登録がほぼほぼ完了し、ほとんどのマスター候補たちが搭乗した。マシュも戻って来ている。

 

そろそろオルガに本気で怒られるので握った手の温もりの余韻をもって、最後に睨み付けてやろうと思って管制室の上に顔を上げて、厭らしく笑うレフの顔を見た。

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