降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――』
あ―と思った時には身体が動いていた。
次に感じたのは爆音に合わせたような体に叩きつけてくる強い熱風。重みは腕の中にある。
「・・・!」
自分の小さな体では彼女を守り切れていない。オルガに怪我もあるが息もある。
大丈夫?と声を掛けたつもりだったが、音が聞こえない。
暴れもしない彼女を片手で支えてもう片方の手で喉を抑えて空気の震えは確認できた。ということはダメになったのは鼓膜の方か。
そうだよな、喉がやられてたら息をするたびに痛みが走るはずだもんな。爆破の時、口は閉じてたから助かったのか。
青のイメージが強い管制室の天井を見上げてみるが、スプリンクラーは発動してない。
この真っ赤な炎はどうやったら消せる?なんとか生き残れたわけだが、これからのことを考えてはいなかった。いや、自分にできる事って考えて、ノリのいい技術班と共謀してスプリンクラーの勢いをめっちゃ強くしたので、これでどうにか出来ると思っていたのだ。
「・・・」
炎と瓦礫を避けながらそこまで燃えていないコフィン付近へ来た。
・・・これ、カドックのか?頑張ってこじ開けよう。いっつも難しそうな本を読んで勉強してるからこの状況をどうにかしてくれるかもしれん。
おそらくバキと嫌な音がしたんだろう。目の前でコフィンが壊れた。
強化魔術のせいで力加減を間違えた。オルガがあれだけ言っていたくっそ高いコフィンを壊したが、緊急事態なので許してもらおう。
壊したコフィンの中に居たカドックは血を流し、火傷も酷い。当然ではある。多少抑えられている(たぶんであって抑えられているのかは知らない)とはいえ、燃えているのだから。
コフィン外が燃えてないだけで中は燃えてるってどういうこと!?とは思うがそんな疑問には構ってられないので、急いで他のコフィンも開けて引きずり出していった。
カドック、キリシュタリア、オフェリア、ペペ、デイビッド、ヒナコ、ベリル。
全員怪我はある。カドックはまだ軽傷に見える。
「あ、・・が?」
「・・・・」
燃えるものが少ない管制室なのに、炎の勢いは収まらない。ここも危ないから移動しないと。
時間はどれだけ経ったろう?
まだ分からない。
そんなに経ってないはずなのに痛い。
身体が重い。
熱い。
じんじんと身体にそれらの感覚が広がっていく。
腕を引っ張られ身体をもっていかれた。冷たく細長い骨ばった指が耳に添えられる。ベタベタだけど、気持ちいい。
「何をして・・・?」
「このまま入ってたら死ぬ」
「凍結保存機能があるでしょう。外に出した方がどうなるか分からないわ。この状況、急がないと」
「手当て、すれば」
「貴女の怪我の方が優先でしょう」
「怪我、いや、でも、Aチーム、のほ、が戦力に」
耳も治してくれたんだろう。音がかすれてしか聞こえなかったのが、普通に聞こえる状態になっている。
私は身体を見ない。痛いのは分かってるけど、見たらもっと痛くなるから。
「聞こえてなかったの!?貴女、レイシフトに――」
「レイシフト開始まで あと3 2 1 全工程
私の身体は霊子変換による次元移動を始めた。
目を覚ますと、スケルトンがこっちに向かってきていた。
は!?
周りを確認する前に無理矢理体を起こす。まずは逃げる。それと一緒にここの確認。
「うん、どう見ても特異点Fです。ありがとうございます。久々の冬木だけど、めっちゃ燃えてる」
足も腕も胴体も頭も痛い。
どうしよう。来てしまったのは想定外。コフィンなしでのレイシフトで消えなくてよかった。
待って、残ってしまったオルガたち大丈夫?
あの時コフィンに入ってなかったマシュはどうなった?
あの双子はこっちに来てる?
私はチームリーダーではなかったので、代表に持たされていた通信機器は持ってない。一人しかいない。サーヴァントもない。
さて、どうする?とりあえず治療優先。それから誰か来てないか把握。
その為には霊脈地を探すのが一番だろう。私だけであっても、霊脈地なら通信機器がなくてもあっちから何か言ってくるかもしれない。
カルデア復旧はよ。魔術師は信用しないけどな。
「スケルトン・・・、仮想敵としては何度か倒せてるけど」
それはAチームの助力あってこそ。
おんぶにだっこ、だったんだからしょうがない。でもここには同じような敵がうじゃうじゃいる。
治療が終わったらやるしかないか。
Side 立夏
「キュウ・・キュウ。フォウ・・・フー、フォーウ・・」
「ん、この鳴き声は・・」
「また、頬を舐められたような・・」
我が姉の声に、覚醒した俺は頬を舐められた。姉に、ではない。あの玄関付近で出会ったあの生物、フォウだ。でも目を開けるには至らない。
「先輩方。起きてください、先輩方。・・起きません。ここは正式な敬称で呼びかけるべきでしょうか・・。――マスター。マスター、起きてください、起きないと殺しますよ」
・・・・・、――――。
聞き覚えのある声で(姉ではない)物騒な言葉が聞こえたので急いで目を覚ます。くっそぅ、もっとモフモフを感じていたかった!
付近は燃えている街だった。
ここは管制室ではないよね?いやいやそれよりも!
「良かった。目が覚めましたね先輩。無事で何よりです」
「マシュ、そっちこそ無事なのか!?」
「今、殺しますよ、とか言わなかった!?」
「・・・・私の安否については後ほど説明します。殺すではなく、正しくは殺されますよ、でした。・・その、想定外のことばかりで混乱しています。落ち着きたいところですが、今は周りをご覧ください」
彼女が言う通りに周りを見渡す。
燃える街、
大きな盾を持つマシュ、
相変わらず可愛いフォウ、
寝起きがすこぶる悪く機嫌の悪さが一目瞭然な姉、
骨骨として血がべっとりとついた剣を持つ存在X。
・・・?
もう一度。
見覚えはないが風景を見るに日本だと思われる燃える街、
管制室では持っていなかった大きな盾を持つ可愛い眼鏡をしていないマシュ、
こちらにすり寄りあざとく相変わらずモフモフなフォウ、
寝起きがすこぶる悪くまだ覚醒していない事がよく分かる大きなあくびをした姉、
骨骨として血がべっとりとついた剣を振り上げた存在X。
それは言葉らしい言葉を発していない。喉の筋肉、骨には無さそうだし。
「Gi――――GAAAAAAAAAAAA!」
「――言語による意思の疎通は不可能。――敵性生物と判断します。マスター、指示を。わたしと先輩方の三人で、この事態を切り抜けます!」
マシュは大きな盾を振るい、俺は存在Xが動かなくなるまで滅多打ちを指示した。姉はようやく覚醒し、びっくりした目で慌てて好き勝手に動き回るフォウを回収していた。
存在Xは二体いたが、マシュの活躍によりすぐに動かなくなった。
な、なんだったんだ?
「――不安でしたが、なんとかなりました。お怪我はありませんか先輩。お腹が痛かったり、腹部が重かったりしませんか?」
「今のは何だったの・・!?」
「マシュ、あんなに強かったのか!?」
「・・分かりません。この時代はおろか、わたしたちの時代にも存在しないものでした。あれが特異点の原因・・のようなもの、と言っても差し違えないような、あるような。加えて、戦闘訓練はいつも居残りでした。逆上がりも出来ない研究員。それがわたしです。わたしが今、あのように戦えたのは――」
ここから通信が入り、ロマニや所長も参戦し、まずなんで俺らがマスター?ってのになっているのかと問われたが、そもそも意味が分かってないので、返答も出来なかった。
なんでこんなところにいるのかとか、管制室はどうなっているのかとか、マシュの状態がデミ・サーヴァント化だとか、聞いても分からないことはいっぱいだった。
わかったのは
こっちに俺ら以外にもう一人来ているって話と、
それは怪我人で一人きりの可能性が高いということと、
カルデアが壊滅的でこの特異点の発生原因を突き止められるのは俺らしかいないこと。
(今回の不始末の責任としてカルデア没収の可能性と次のチームの選抜にもどれだけの時間がかかるか分からないので時計塔?の魔術師を黙らせる成果がどうしても必要なのだ)
そもそもなんでこっちに来ているのが限定されてる?って話には所長がすぐに答えてくれた。
コフィンに入っていないレイシフト適性者で意識があった―Aチームはコフィンから出ていたが全員いまだ意識はなく、所長はレイシフトの適性がなく出来ない―だからプログラムの再設定に俺らとマシュ、そしてまだ見ぬユキさん?が選ばれたのだ。
「まずはユキ、さんと合流を優先すべきじゃない?」
「いえ、ユキも魔術師。貴方達一般人と違って、自衛の手段は持っているわ。レイシフト前に出来る限りの治療も施せました。通信の安定を優先して霊脈地へ」
「霊脈地?」
「後でキリエライトから説明しなさい。ああ、もう!こんな時にレフが居てくれたら!」
「所長も休んでください。助けられたとはいえ、無傷ではないのですから」
「分かっているわよ!40人近くの命なんてどうすればいいのよ!」
所長はほぼ独り言のように、ぶつぶつと恨み言を吐いていた。
ロマニも怪我人の手当てがあって常に通信をとれるわけでないそうで、基本的に判断を下すことが出来る所長が俺らに指示をしてくれるそうだ。
今、ロマニは俺らの無事を確かめたので、そのままAチームの人たちの治療に向かってしまって、知っている人たちがいなくなってしまった(元々少ないというか、ほとんど居ないけど。知っているレフ教授もあの場には居ないようだ)。
所長の反対はあったものの、その場に残っていた方々とロマニの発言で正式な調査員として登録され、マシュのマスターとしても認められた(マスターとは・・・)。
「・・あの、話についていけないんですが・・」
「うん、当惑するのも無理はない。キミらにはマスターとサーヴァントの説明さえしていなかったし。いい機会だ、詳しく説明しよう。今回のミッションには二つの新たな試みがあって」
「通信が乱れています。通信途絶まで、あと30秒」
「もうっ!役に立たないわね!」
「予備電源に替えたばかりでシバの出力が安定していないようです。仕方ない、説明は後ほど。二人とも、そこから2キロほど移動した先に霊脈の強いポイントがあるのでそこまで辿り着いてほしい。そうすればこちらからの通信も安定するし。ドクター、いうことはあるかい?」
「あ、うん。いいかな、三人とも。くれぐれも無茶な行動は控えるように。こっちも出来る限り早く電力を―――」
通信は切れてしまい、俺らは三人で沈黙していた。笑顔を絶やさない姉が最初に口を開く。
「うん、分かんない事ばっかだけど、とりあえず出来る事をやっていこうか!」
「はい、先輩!」
「マシュ、立夏とかぶるし、名前で呼んで?ほらほら夏海さんを呼んでみなさい?」
「あ、夏海先輩?」
「はいはい夏海さんですよー。後は立夏ね」
「あ、よろしくねマシュ」
本当にこういう時の姉はすごい。人のことは言えないが楽天家だ。
後は考えても仕方ないしまずは行動をするってタイプ。このカルデアに来たのもそれがスタートだった。
ある日、母さんに頼まれ買い物の最中、誘われた献血に行ったら二人でなんかスカウトを受けて、君らにしかできない!って力説されたのもあって俺らにしかできないならって引き受けたらその日のうちに飛行機に乗っていた。
ほとんど荷物は持ってこれなかったけど、学校とかの手続きは業者の人がやってくれるって話と母さんがこんな子らでいいならって心地良く送り出してくれたおかげで何か不安ってわけはない。
ここで送り出してくれた母さんに恥じないように、姉に負けないように置いていかれないように頑張るだけだ。
急に存在感を出してきたフォウも含めて、敵に気を付けながら俺らは霊脈地に向かう。その道中でサーヴァントやカルデアについてマシュから教わった。
―サーヴァントというのは魔術世界における最上級の使い魔で人類史に残った様々な英雄。偉業。概念。そういったものを霊体として召喚したもの。実在した英雄であれ、実在しなかった英雄であれ、彼等が地球で発生した情報であることは同じなのだ。
所長なら「英霊召喚とは、この星に蓄えられた情報を人類の利益となるカタチに変換すること。過去の遺産を現代の人間が使うのは当然の権利であり、遺産を使って未来を残すのが生き物の義務でもある。分かる?キミが契約したモノはそういう、人間以上の存在であるけれど人間に仕える道具なの。だからその呼称をサーヴァントという。たとえ神の一因であろうとマスターに従うものにすぎない」というだろうがそれは極端な考えだと―
―人理保障機関カルデア。正しくは人理継続保障機関フィニス・カルデア。人類史を長く、何より強く存続させるため、魔術・科学の区別なく研究者が集まった研究所にして観測所。
魔術だけでは見えない世界、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な
所長は悪党ではありませんが、悪人です。気に入らないスタッフは平気でクビを切ります。あ、いや、どうでしょう。性格が悪い人、を悪人と言っていいのでしょうか。
すみません。先輩方を励ましたいのですが、オシャレな台詞回しとか、ちょっと慣れていないので―
この慣れていない励ましには笑ってしまった。夏海はマシュの頭を撫でまわしてこの感情を発散させている
次の通信では、もう少し落ち着いたスタッフさん方の顔が見られるといいな。
Side ユキ
与えられた状況で最善を尽くすのがアニムスフィア家の誇り、とはいえ、これは無理ゲー。
命を繋ぐことは出来ている。でもそれだけだ。現地のサーヴァントとかいないし、息を殺してなるべく敵に見つからないようにやり過ごす。
はっ、主人公じゃないので、これ以上頑張れると思ってないのだ。よくやった方じゃない?少なくとも私は生きているのだ。
もういいじゃないかという気持ちを抱えながら大橋付近でずっとあの子を探している。
マシュ。
でも会うのが怖い。私は見捨てたし、あの子に会えばカルデアに連絡もつく。自分がやったことの結果が出てしまっている。
わかってしまう。助かったのか、そうじゃないのか。
胃の中には何もないはずなのに、酸っぱいものがこみあげてきた。気の持ちようだ。
「決メルゾ、ランサー。ドコノ英霊カ知ラヌガ、
「―――ハ。ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「急ぎなさい!足を止めないで!」
「・・・!」
声が聞こえる。サーヴァントにオルガだ。安堵と不安が押しよせる。あっちの方にいるんだ。
足を動かして、見た光景はマシュが頭から血を流している姿だった。
「だりゃあ!」
「「!?」」
「ユキ、さん?」
「英霊の残り滓が粋がってんなや!」
「止めてください!勝ち目はありません!」
「んなもん知ってらあ。上等負け戦!戦っても死ぬ!戦わなくても死ぬ!なら、やれるだけやったらあ!」
「突然乱入してきた今まで怯えていただけの小娘かと思えばそれなりに
マシュの事になるとすぐに行動してしまう。短慮ではあることだが、好転したらしい。
助力してくれたキャスターが居る。新人二人に手負いのマシュ、私。うん、絶望的!!
相手はシャドウサーヴァントのアサシンとランサー。
ほんと、これどうするよ?
キャスターがあいつらと問答している最中にマシュの手当てを行う。瞼の上が切れて頭から血を流しているように見えただけだったようだ。
酷くないことにちょっと安心。
「ユキさんご無事だったんですね」
「この状況を無事と呼べる豪胆さがすごい」
「君がユキ?」
「話は後。デミ・サーヴァントなら戦ってもらわないといけない。さすがにサーヴァントにはサーヴァントをぶつけるしかない」
「そら、構えなそこのお嬢ちゃん。腕前じゃあアンタはヤツに負けてねえ。気を張れば番狂わせもあるかもだ。手当は終わっただろう?」
「は・・はい、頑張ります!」
「手当ても完全じゃないからね!」
「お嬢ちゃんがマスターかい?」
違うわい!!
ちゃんと訂正してあっちの二人を指差す。残念ながら私にサーヴァントはいない。
霊脈地なら召喚も可能かと思って探したが、大橋から離れるのは危険だと思ったし。
「なら指示はアンタらに任せようか。オレはキャスターのサーヴァント。故あってヤツラとは敵対中でね。敵の敵は味方ってワケじゃないが、今は信頼してもらっていい。ひとりで健気に戦ったあのお嬢ちゃんに免じて、仮契約だがアンタのサーヴァントになってやるよ!」
戦闘に対して、魔術的フォローできるのは私だけ。二人はそれぞれに指示を出すだけである。
もちろん魔術を知らずそれしか出来ないのだからそれ以上はしない。出来る事を最大限にやろうとしている姿勢にはとても好感を覚えた。
危なげなく戦闘は終了。
「あ、あの・・ありがとう、ございます。危ないところを助けていただいて・・」
「おう、おつかれさん。この程度貸しにもならねえ、気にすんな。それより自分の身体の心配だな。ケツのあたり、アサシンのヤロウにしつこく狙われてただろう?」
「ひゃん・・!」
「おう、なよっとしてるようでいい体してるじゃねえか!役得役得っと。何のクラスだかまったくわからねえが、その頑丈さはセイバーか?いや、剣は持ってねえけどよ」
「・・・ちょっと、お二人。アレ、どう思う?」
「まごう事なきセクハラオヤジだ」
「・・味方、かな・・?」
あいつはマシュのお尻を触りやがった。
あと私は胸派なのであいつとは対立せざる得ない。
「とりあえず事情を聞きましょう。どうやら彼はまともな英霊のようね」
「おっ、話の早いヤツがいるじゃねえか。なんだオタク?そいつは魔術による連絡手段か?」
「あ、カルデア大丈夫?」
「あの爆発の中で大丈夫なわけないでしょう!貴女も報告しなさい!」
キャスターへの説明と私の報告はそれぞれロマニへ、オルガへ行われた。
その方が効率的だと言うが、私現状把握したいんですが。合流するまで本気でずっと吐きそうなぐらい考えていたのに、実際に知る機会を得たらなんとも簡単なことだった。
私はこちらに来てから自分の手当てをしつつ、他に生存者やレイシフト者がいないか(Aチームのメンツを主に探していたわけだが)確認・移動をしてきた。怪しそうな場所は見つけたけど(嘘っぱちである。でも冬木って言えばあのお寺だ)戦力がないから保留。
合流と連絡をとることをメインに動いていたことを報告し、お咎めなし。
やったぜ!
キャスターの申し出はこの聖杯戦争を終わらせるために手伝えとのこと。悪い話ではないのだ。どうせこの街に敵は多すぎるのだから味方になれる人材は活用すべき。
それを助長させるように、話している間にもスケルトンは何度も湧いてきた。
「ふぅ・・やっと落ち着きました。確かに、これでは満足に話も出来ません」
「わりぃな。オレがランサーとして召喚されていれば、セイバーなんざ一刺しで仕留めていたんだがね。いやあ、やっぱキャスターなんてやってらんねえっての」
「ランサーだったら・・?」
「キャスターは無理ゲー・・?」
「そういうコトもあるんですよ、先輩。英霊の中には複数のクラス特性を持つものがいます。この人は槍の使い手でありながら、魔術師の側面も持つ、高レベルの英霊と思われます。・・憶測にすぎませんが、きっとトップサーヴァントの一人です。
「そういうこった。アンタらはカルデアって組織のマスターだって言ったが・・まあ、そのあたりはいいか。サーヴァントの鉄則でな、自分の時代以外の事情には深く関わらない。あくまで兵器として協力するだけだ。アンタらの目的はこの異常の調査。オレの目的は聖杯戦争の幕引き。利害は一致しているんだ。お互い、陽気に手を組まないか?」
「それが合理的な判断だけど。その場合、貴方のマスターは誰になるの?」
「そりゃあそこのお嬢ちゃんのどっちかか坊主だろ。画面越しのアンタにマスター適性はないしな。いや、ホント珍しいな。魔術回路の量も質も一流なのにマスター適性だけ無いなんて。何かの呪いか?」
「うるさいわね、どうでもいいでしょうそんなコト!ユキ、そいつは貴女に任せるわ。せいぜいうまく使いなさい」
本当はそうしたいけども、そうはいかない。イヤだけど、仕方ない。提案するか。
「私じゃなくて二人のどっちかでしょ」
「は?一般人にサーヴァントが使いこなせるわけがないでしょう?」
「生存率の問題。カルデアが壊滅的ならこのミッションは私たちだけで行わないといけない」
「だからこそ貴女の生存率を」
「マシュが死んだらどうするの?」
オルガは黙り込んだ。
そうだろう、そうだろう。彼女の元になった英霊の性質が鍵なんだから、彼女を手放すor見殺すなんてすることそのものが私たちの生存率を0にする行為だ。
ならば、彼女のマスターになっている二人の生存率をあげないといけない。最悪、私は逃げ足だけは持っているし、魔術がちょろっと使えるので、頭を使ってどうにかする。
「決まりだな。この街限定の契約だが、よろしく頼むぜ坊主。」
「うん、よろしくね」
「となれば、あとは目的の確認だな。アンタらが探しているのは間違いなく大聖杯だ」
「大聖杯・・?聞いた事がないけど、それは?」
「この土地の本当の心臓だ。特異点とやらがあるとしたらそこ以外ありえない。たぶんさっきNが言っていた怪しい場所だろう。だがまあ、大聖杯にはセイバーのヤロウが居座っている。ヤツに汚染された残りのサーヴァントもな」
突っ込まなくて正解だよ、と笑われたが元々一人で行く気なんてさらさらなかったのでお構いなく。
ああ、やだやだやだやだ。大聖杯になんて行きたくない。
「残っているのはバーサーカーとアーチャー?どうなの、その二体は。強いの?」
「アーチャーのヤロウはまあ、オレがいればなんとかなる。問題はバーサーカーだな。アレはセイバーでも手を焼く怪物だ。近寄らなけりゃ襲ってこねえから無視するのも手だな」
「じゃあ無視で、案内は頼めますか?」
「ああ、道筋は教える、いつ突入するかはお嬢ちゃん次第だ」
「では探索を再開しましょうか。やり切りなさいよ、四人とも」
私たちは自己紹介をしてから歩き出した。
お二人は双子らしい。これ、どうなるん。
その思考は捨て置いた。戻れば治療のよっていくらか回復したAチームもいるはずなんだ。
原作崩壊なんて今更過ぎる話だ。
覚えていない原作を気にしても仕方ない。