繰り返しの違い   作:もえみ

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『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――』


-4

入った洞窟はとても入り組んでいて、はぐれたら合流を難しくさせるギミックかと思えた。

 

 

 

「天然の洞窟・・のように見えますが、これも元から冬木の街にあったものですか?」

「そうじゃない?これは半分天然、半分人工みたい。魔術師が長い年月をかけて広げた地下工房っぽいよ」

「そういえば、キャスニキ。セイバーのサーヴァントの真名は知っているの?何度か戦っているような口ぶりだったけど」

「なっ!大事な情報じゃない!共有しなさいよ!」

「ああ、知っている。ここに来るまでに伝える余裕もなかったろ?」

 

 

 

伝える余裕がなかったのは主に彼女がピリピリしていて、私が機嫌取り、みんなは作戦会議みたいになってたからだ。その事を思い返したのか、彼女は黙ってしまった。

 

 

 

「今伝えとくよ。ま、ヤツの宝具を食らえば誰だって真名・・その正体に突き当たるからな。他のサーヴァントが倒されたのも、ヤツの宝具があまりにも強力だったからだ」

「強力な宝具・・ですか。それはどういう?」

「王を選定する岩の剣のふた振り目。おまえさんたちの時代においてもっとも有名な聖剣、その名は「危ない!

 

 

 

立夏の声でマシュもクー・フーリンも戦闘態勢をとった。そこまで離れていないところにアーチャーがいた。さっきのやつらと同様でその身体は泥にまみれていた。

ランサーやアサシンのように汚染されているとなると、性能は角落ちしているはず!

 

 

 

「ふっ、気配を悟られるとはね、少年」

「今の、俺じゃ」

「魔術師もそれなりに腕が立つか」

「アーチャーのサーヴァント・・!」

 

「おう、言ってるそばから信奉者の登場だ。相変わらず聖剣使いを護ってんのか、テメエは」

「・・ふん。信奉者になった覚えはないがね。つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

「なるほど、門番にような仕事をしてるわけね」

「何からセイバーを護っておるかは知らねえが、ここらで決着つけようや。永遠に終わらないゲームなんざ退屈だろう?良きにつけ悪しきにつけ、駒を先に進ませないとな?」

「その口ぶりでは事のあらましは理解済みか。対局を知りながらも自らの欲望に熱中する・・。魔術師になってもその性根は変わらんと見える。文字通り、この剣でたたき直してやろう」

「ハ、弓兵がなに言いやがる。ってオイ、なにぼんやりしてんだお嬢ちゃん。相手はアーチャーだ。アンタの盾がなきゃオレはまともに詠唱できねえんだが」

 

「あ・・は、はい!すみません、なぜか気が抜けていました。問題ありません、いけます。ガードならお任せください!」

 

 

 

なんで気が抜けていたかは分からないが、マシュは藤丸姉の指示で特攻、クー・フーリンは藤丸弟の指示の前に詠唱を始めた。私もルーンを刻んだ石を用意し、こっちにくる攻撃に対して投げて、行き先を捻じ曲げる。もちろん一人では捌ききれないので、藤丸弟もだ。最初の一発目以外は藤丸弟がクー・フーリンへ指示を出している。

すげえね。この短期間で成長が目覚ましい。

 

クー・フーリンの宝具をもろに喰らったアーチャーは最期に何かを言い残して消えた。

何に気が付いたんだろうか?消えてしまっては問う事も出来ない。

 

 

 

「おう、未練なく消えろ消えろ。聖剣攻略はオレとお嬢ちゃんでやってやる」

「聖剣攻略とはやはり、」

「さっき途中だったもんね」

「ああ、約束された勝利の剣(エクスカリバー)。騎士の王と誉れの高い、アーサー王の持つ剣で、それがセイバーの正体だ」

「それなら俺でも聞いたことがあるよ」

「クー・フーリンもだけど、アーサー王伝説も有名所だもんね」

「・・・信頼していただけるのはうれしいのですが、わたしに防げるのでしょうか。・・その、音に聞こえたアーサー王の聖剣が。わたしには過ぎた役割のようで、指が震えています」

 

「そこは根性(ガッツ)で乗り切るしかねえわな。だがまあ、オレの見立てじゃ相性は抜群にいい。その盾が壊される事はない。負けるとしたら、盾を支えるお嬢ちゃんがヘマをした場合だろうよ。お嬢ちゃんが盾から手を離せば、その後ろにいるマスターは一瞬で蒸発する。

 

いいか、聖剣に勝つ、なんて考えなくていい。

アンタはアンタのマスターを護ることだけを考えろ。得意だろ、そういうの?

まあなんだ。セイバーを仕留めるのはオレに任せて、やりたい事をやれって話さ」

 

「はい。そのアドバイスは、たいへん力になるようです」

 

 

 

不安げな顔だったマシュの目には力が戻っていた。マシュは大切な人のために戦える子になってくれればそれでいいの。でもできれば早めに強くなってもらえるとこちらがとても助かります。心だけでその言葉を留め、もう少し進んだら一休みすることを提案した。

 

そこまでの苦戦を強いられずにアーチャーに勝てたのは僥倖だ。その様子もバッチリとオルガは見ていた。藤丸姉弟の活躍は十二分な働きに該当する。

 

普通の魔術師でも、現場で会った野良サーヴァントを行使するなんて真似、上手くいかないものだ。

まあ、普通なんて知らんけど、キリシュタリアが言ってた。あと、デイビッド。

 

オフェリアとカドックは相性によっては上手くやるだろうけど、ヒナコとベリルは相手を選ぶだろうって。ペペ?コミュニケーションお化けだから相当なゲスイサーヴァント以外は大丈夫じゃない?

 

私が意図的に殿を務めている間も前衛の二人がマシュとクー・フーリンをうまく活用して、竜牙兵をどんどん倒していった。マシュの戦闘技術も藤丸姉弟の戦闘指示もこの程度のレベルなら問題もなくなってきたようだ。これは決戦前に一安心できたぞ。生存率アップ。

むしろ私が無駄に手を出していたから二人が遠慮してたかもしれない件についてオルガから抗議が入るかもしれないと思ったレベル。

 

―まあ、聞いてみたら私にもマシュにも負けてられないとの精神だったから逆に発破にはなれたようで溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

そこそこ戦闘もあり、みんなへ声を掛けて、最後の休憩に入ることにした。そこらにある石を蹴散らして、座る場所を確保した。

どれくらい進んだのか?洞窟は距離感が分からない。

 

 

 

「そろそろ大聖杯だ。ここが最後の一休みになるが、やり残しはないな?」

「もちろん、準備万端だ」

「そりゃ頼もしい。ここ一番で(はら)を決めるマスターは嫌いじゃない。まだまだ新米だが、おまえには航海者に一番必要なものが備わっている。運命を掴む天運と、それを前にした時の決断力だ。その向こう見ずさを忘れるなよ?そういうヤツにこそ、星の加護ってヤツが与えられる」

「えー、いったんベースに戻ってもいい?よくよく考えたら私の装備、ちゃんと揃ってない」

「おう、不安材料があるなら戻れ戻れ。穴熊攻めだ、物資はたっぷり仕入れねえとな、と言いたいところだが、手前(テメエ)にはルーンがある」

 

 

 

大丈夫だろ、と投げやりに言ってくる。

大英雄様は言う事が違うねえ。

 

なあ、藤丸弟よ。こいつ座に還そうぜ?召喚し直したら別の日本の英霊が出てくれるかもしれないじゃん?

え、ダメ?そう。残念。

 

冗談なのに杖でひとの頭をぐりぐりしてくるクー・フーリンはもうちょっと女性の扱いを学んだ方がいい。セクハラ行為も含めて、貴方の師匠(スカサハ)に罰されてこい。

 

 

 

「何を言っているんだか。進むにしろ戻るにしろ、その前に休憩が必要でしょう。なんでユキが休息を提案したと思っているの?こちらも順に休憩なさい」

 

 

 

手持ちの石(ルーン刻み済みのもの)がなくなったのと私が休みたかったからです、とは言わない。空気は読める方だ。

ここで怒らせれば、向こうの休憩時間がなくなるだろう。

 

 

 

「ドクター、きちんとバイタルのチェックはしているの?藤丸たちの顔色、通常より良くないわよ」

「え!?あ・・うん、これはちょっとまずいね。突然のサーヴァント契約だったからなあ・・。使われていなかった魔術回路(神経)がフル稼働して、脳に負担をかけている。マシュ、ユキちゃん、キャンプの用意を。温かくて蜂蜜たっぷり入ったお茶の出番だ」

「既に準備は整っていますドクター。ティータイムにはわたしも大賛成ですから」

「お、決戦前の腹ごしらえかい?んじゃオレはイノシシでも狩ってくるか」

「いないでしょ、そんな生き物。そもそも肉はやめて肉は。どうせなら果物にしてよね。ユキ、出していいわよ」

 

 

 

出していいとは、おそらく、私が持たされていたドライフルーツのことだろう。

彼女は頭痛に効くと、柑橘系の果物を好んで食していた。私が初めて戦闘訓練をした後にはペペに私へ渡すようにと、オレンジやレモンを与えていたのだ。

 

もちろん、お節介なペペはバラしているのだが、彼女は私がそれを知っていると知らないため、それに関しての感謝は伝えていない。彼女は不器用だし、私たちの関係は簡単ではない。

今回のドライフルーツもロマニをレフに呼ぶように指示した後、渡して来たものだ。

 

受け取ってポケットへ入れた後はあの爆破だったので、ぶっちゃけ、礼装はダメなのに無事なドライフルーツに驚きしかない。この袋に強化魔術でも掛けられているのだろうか?その魔術も戻ったら教えてもらおう。

 

みんなが満足のいくティータイムになり、私も少しリラックスできた。

 

 

 

「・・満足です。ユキさんがドライフルーツを隠し持っているなんて、改めてその周到さに舌を巻きました」

「うん!ありがと!」

「私じゃない」

「私が渡したものよ。それより―――」

 

 

オルガは言いよどんだ。通信越しなので、細かい表情や顔色までは分からないが、少し照れているようだ。ツンデレだからなあ、うちの所長。自然とニコニコしてしまう。

 

 

 

「・・あの、なんですか所長?」

「・・おかわりですか、所長?」

 

「こちらは一杯で十分よ!それと、わたしは紅茶より珈琲派だと覚えておきなさい!い、いえ、そうじゃなくて。そういうコトじゃなくて・・ああもう!」

 

「あ、そっちも休憩中です?」

「まあ、ずっと張り詰めていてもいざって時にフォロー出来ないからね」

「フォローありがとうございます」

 

 

 

たぶん、これは二重の意味が含まれている。オルガと私たちだ。

カルデアスタッフも強かなので、安心してそっちは任せられる。でもどうしようもないならこっちに投げてね。これでもロマニに簡単なカウンセリング的なこと仕込まれてるし、彼女の受け答えはある程度誘導できるくらいには会話スキルあるから!

逆行する前はそっちの方面を勉強してたし。

 

 

 

 

「こ、ここまでの働きは及第点です。カルデアの所長として、あなたたちの功績を認めます。・・ふん。何よその顔。どうせまぐれだろうけど、今は貴方たちしかいないのよ。その調子でうまくやれば褒めてあげてもいいってコト。三流でも一人前の仕事はできるって分かったし」

「なんと。夏海ちゃんと立夏君を一人前と認めてくれるなんて、何か甘いものでも食べました?」

「ロマニ。無駄口を叩く余裕があるなら、ユキに補給物資の一つでも送りなさい。あの装備はないわ。それに本人たちが頑張ってるのに、装備不足で失敗するなんて可哀想じゃない」

「おや。可哀想、とはお優しい。これはもしや、所長にもようやく心の雪解けが?」

「バ・・!あ、哀れでみじめって意味よ!そんなコトも分からないの!?」

 

 

 

ロマニとオルガが言い合いしている間にスタッフの方々で吟味してもらいこちらに新たな魔術礼装を送ってもらった。現在私が着用しているものは爆破によってほとんど機能していない。実質ただの洋服となっており、自分の魔術のみで戦っていた。

 

 

 

「いやあ、いつ見てもいいものですね、少年少女の交流というものは。少女というには所長はちょっとアレですが」

「そうでしょうか。所長は確かに年上ですが、ユキさんのおかげでしょうか?趣味嗜好はたいへん近しいものを感じます、親愛を覚えます」

「なに言ってるのアンタ!?アンタたちなんてわたしの道具だって言ってるでしょう!?」

 

 

 

そこで私を引っ張り出すな、とマシュには物申したいがその前に戦闘だ。騒いでしまったこともあり、竜牙兵が数体、こちらへ寄って来ていた。

 

魔術協会の礼装でクー・フーリンへ魔力譲渡。クー・フーリンはすぐさまルーンを撃った。

その音でマシュは盾をとり、藤丸姉弟はその後ろに待機。うん、二人の動きが格段に良くなっている。ラスボス前にいい傾向かな。

 

っと。人に気を取られてる場合じゃない。

 

 

クー・フーリンの方へ6体。私の方へ3体。せめて数はもっと少なめでお願いしたいところだな!

ルーンを刻んだ石を投げて、体力を削る。今の私に出来る事はそれくらいしかないか。結局のところ、私独りで完全にどうにかする事は出来ないので、どうにかマシュの方へ合流することで、マシュに前衛を任せ、私が投擲で牽制し、クー・フーリンが魔術を使用し、藤丸姉弟の指示でそれらを一掃するサイクルとなった。

 

これ、ラスボスに通じるか?マシュの戦いは指南したクー・フーリンのおかげなのか、指示をしている藤丸姉弟のおかげなのか、Aチームで居る時とは比べ物にならないほど、良くなっている。

 

 

 

「マシュっ!」

「はい!」

「キャスター、トドメお願い!」

「おうさ!」

 

 

 

こちらに損害もなく戦闘が終わり、休憩により緩んでいた雰囲気も締まる。各自最終確認も済ませたので私たちはこの魔力に満ち死を感じさせる洞窟の奥へと進んでいくこととした。

 

 

 

 

 

しばらく歩いてようやく、開けたところに出た。ああ、嫌な感じだ。

 

 

 

「これが大聖杯・・超抜級の魔術炉心じゃない・・。なんで極東の島国にこんなものがあるのよ・・」

「資料によると、制作はアインツベルンという錬金術の大家だそうです。魔術協会に属さない、人造人間(ホムンクルス)だけで構成された一族のようですが」

「悪いな、お喋りはそこまでだ。(やっこ)さんに気付かれたぜ」

 

 

 

丘のようなところに立っていたのはすさまじい魔力を放つ騎士王。それも反転した姿。

 

アルトリア・オルタがそこにいた。

 

こちらを一瞥するその視線だけでこちらを潰せそうだ。通信越しのオルガも息を呑んでいるのが聞こえた。彼女のもこの重圧を感じているのだろう。

 

 

 

「・・なんて魔力放出・・。あれば、本当にアーサー王なのですか・・?」

「間違いない。何か変質しているようだけど、彼女はブリテンの王、聖剣の担い手アーサーさ。伝説とは性別が違うけど、何か事情があってキャメロットでは男装をしていたんだろう。ほら、男子じゃないと王座につけないだろ?お家事情で男のフリをさせられてたんだよ、きっと。宮廷魔術師の悪知恵だろうね。伝承にもあるけど、マーリンはほんと趣味が悪い」

「マーリン?」

 

 

 

知らない単語に藤丸姉弟が首を傾げる。この重圧の中、まったく変わらずに居られるのは本当にすごいと思うよ。

その図太さを分けて欲しいくらいだ。こっちは心臓の音がうるさいくらいなのに。情けない。

 

 

 

「マーリンはアーサー王の宮廷魔術師。女性で国を治めた王になるなんて激強確定かよ」

「え・・?あ、ホントです。女性なんですね、あの方。男性かと思いました」

「見た目は華奢だね」

「だが甘く見るなよ。アレは筋肉じゃなく魔力放出でカッ飛ぶ化け物だからな。一撃一撃がバカみてぇに重い。気を抜くと上半身ごとぶっ飛ばされるぞ」

「ロケットの擬人化のようなものですね。・・理解しました。全力で応戦します」

「サーヴァントが相手だ。テメエは坊主どもと一緒に下がってろ」

「当たり前でしょう。絶対に前へなんて出ない」

 

 

 

あんなのを相手になんて出来るわけがない。竜牙兵やスケルトンだけでもいっぱいいっぱいになってしまうのだ。あんな相手に生き残れるイメージも湧かない。

 

 

 

「おう、それでいい。ヤツを倒せばこの街の異変は消える。いいか、それはオレもヤツも例外じゃない。その後はおまえさんたちの仕事だ。何が起こるかわからんが、できる範囲でしっかりやんな」

「―――――ほう。面白いサーヴァントがいるな」

「なぬ!?テメエ、喋れたのか!?今までだんまり決め込んでやがったのか!?」

「ああ。何を語っても見られている。故に案山子に徹していた。だが―――面白い。その宝具は面白い。構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」

「来ます―――マスター!」

 

 

 

たぶん、アーサー王はマシュの中のサーヴァントが誰なのか見抜いている。

 

そう、そうだ。

 

盾を使って、そして円卓の騎士だったはずだ。だから彼女はマシュのことを面白いと言った。

一度思考は捨てる。この世界にイベント戦闘なんて概念はない。負け=死を意味する。目の前の敵から視線を逸らす余裕はないだろう。最良のセイバーに対して勝てるのか?

 

 

 

「ああ、一緒に戦おう!」

「負けるものか!」

 

「はい!マシュ・キリエライト、出撃します!」

 

 

 

ああ、もうカッコよく決めてくれやがって!!表情は変わらない。

 

走ってくるアーサー王はその勢いだけで圧迫してくる。マシュに恐怖は残っていても戦う気概は失っていなかった。

盾で魔力を纏った剣を受け止めて、クー・フーリンがルーン魔術をぶつけていく。

 

私も魔力を回すことで応戦するが、双子の傍を離れるわけにもいかない。

ど素人の二人は目の前で始まった戦いのレベルの高さに目を白黒させている。

 

 

 

 

「こっちに瓦礫とか飛ばさないで!」

「ああ、任せとけ!燃えろっ!」

 

「あ、マシュ、スキル使おう!」

「今は脆き雪花の壁ね!」

 

「ステータスアップ、頑張ります・・・!やああっ!」

 

「ふん、小癪な。誉れにするがいい。卑王鉄槌、極光は反転する」

 

「マシュ!宝具!相手がぶっ放してくるぞ」

「真名、偽装登録――宝具展開します・・!『ロード・カルデアス』!」

「光を飲め!約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)!」

 

「キャスター!魔力を回します!」

「俺の分も!宝具で決めちゃって!」

 

「任せな!」

 

「ガンド!!」

 

 

 

アーサー王の宝具をマシュが受け切り、双子が魔力を回している間に近くまで移動し、ガンドを決める。

一瞬うごきを止めるに過ぎなかったが、そのおかげでクー・フーリンの宝具がもろに入った。彼の王は現界し続けられなくなったのか、光の粒子となり退去を開始していた。

 

 

 

「――フ。知らず、私も力が緩んでいたらしい。最後の最後で手を止めるとはな。聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に傾いたあげく敗北してしまった。結局、どう運命が変わろうと、私ひとりでは同じ末路を迎えるという事か」

「あ?どういう意味だそりゃあ。テメエ、何を知っていやがる?」

 

「いずれ貴方も知る、アイルランドの光の御子よ。そして、抜け目のない小娘。グランドオーダー――聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだという事をな」

 

 

 

すっと彼女はこちらを一瞥した。

最初にこちらを見たような睨むような目つきは柔らかくはなっていたが、めっちゃビビった。

相手は歴戦の王様だ。バレてない訳ないと思ってたからお互い様だ。―だからってビビらない訳ではない―私は彼女が私のルーン(最後のダメ押し)によって消失した後に聖杯を回収した。そのまま急いでマシュたちの方へ。

 

 

 

「オイ待て、お前本当に抜け目ねえなって―――おぉお!?やべえ、ここで強制送還かよ!?チッ、納得はいかねえがしょうがねえ!お嬢ちゃん、あとは任せたぜ!お前らは次があるんなら、そん時はランサーとして喚んでくれ!」

「あ、クー・フーリン!!」

「助けてくれてありがとう!!」

 

「スタッフ、彼女の持っていた聖杯と思われる水晶体を回収した!キャスターも消失し、戦力ダウン。何が起こるか分からないので急いでレイシフトの準備をしてください」

 

「任せろ!」

 

 

 

通信の向こうでオルガが呆けているので、こちらから指示を出す。そしてこちらでも話をしておかないといけない。意味消失にどうやって耐えるかなんて私も知らないのだ。

 

私たち以外に居なかったはずのその場に知らない足音が響いた。ああ、お出ましだ。

 

 

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適性者。まったく見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」

「・・・」

「ああ、爆破した後でも魂のみでレイシフトした君を褒めるべきかな?」

 

 

 

厭らしい笑みを浮かべるレフが先ほどまでセイバーがいた場所に立っていた。うん、私が爆破で死んだと勘違いしているらしい。

ハッ、笑えるわ。こちとら生きてんだよ。バーカ!

 

 

 

「レフ教授!?」

「あの人もレイシフトしてたんだ!」

「レフ―――!?レフ教授だって!?彼がそこにいるのか!?」

 

「うん?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。

 

まったく―――どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」

 

「――!マスター、下がって・・下がってください!あの人は危険です・・あれは、わたしたちの知っているレフ教授ではありません!」

「レフ・・ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ!良かった、あなたがいなくなったらわたし、この先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」

 

 

 

オルガの声が聞こえてさらに顔を歪ませるレフ。ドヤ顔してやろうかな?

嫌いなヤツの顔が歪むとざまぁ!って気分になる。相手がレフだから申し訳ない気持ちはまるでない。

 

 

 

「本当に予想外のことばかりで頭にくる。もっとも予想外だ。オルガ、爆弾はキミの足下に設置したのに、まさか生きているなんて、一体どういうことだ?」

「助けたから」

「なるほど、つまり君も死んでいないんだな、ユキ」

「誰が死人だなんて言いました?」

 

 

 

通信の向こうでオルガが混乱しているが、こちらは油断できない。

マシュもしっかりと盾を構えていつでも戦闘に入れる態勢だ。それは後ろに隠れている私たちも同じだ。

 

 

 

「・・・本当に面倒な小娘だ。マリスビリーの入れ知恵か?私をいつも警戒していたね」

「あの人はどうだったかなんて知りません。あんたが嫌いだっただけです。薄気味悪い笑みで誤魔化して、私たちを見る目は本当にイヤなものを見る目だった。そんな人が良い人な訳ない」

 

 

 

大嘘ぶっこいているけどね!!

未来を少しばかり知ってましたとか電波だから!

ってか、私がいる時点でそんな未来も不確定ですけどね!!!

変えたくてやったから後悔してないけども!!!!

 

 

 

「ふむ、純粋に魔術回路が優秀なだけのただの子供だったからな。そういう視線は子供の方が敏感だろう」

「挑発には乗りません。ここで出てきたってことは、目的はカルデアの破壊?」

「ふん、そんな矮小なことを目的とするものか」

矮小?あの爆発で何人が死んだと思って」

「ダメです、いけませんユキさん・・!あの男に近づけば殺されます!」

 

「ほう。さすがはデミ・サーヴァント。私が根本的に違う生き物だと感じ取っているな。

 

改めて自己紹介しようか。私はレフ・ライノール・フラウロス。

 

貴様たち人類を処理するために遣わされた2015年担当者だ。

聞いているなオルガマリー・アニムスフィア、ドクター・ロマニ?

共に魔道を研究した学友として、最後の忠告をしてやろう。カルデアは用済みになった。おまえたち人類は、この時点で滅んでいる」

 

「・・レフ教授。いや、レフ・ライノール。それはどういう意味ですか。2017年が見えないことに関係があると?」

 

 

 

関係があるわけではないのだ。もう終わってしまった事実で、未来が消失ではなく、焼却されただけということを示している。

カルデアはカルデアスの磁場で守られているが、他の場所は冬木のように焼却された。だから外部と連絡が取れない、ではなく、取る相手がいない状態だ。

 

オルガはヒステリックに嘘だと、わたしのカルデアスに何をしたと騒いでいるため、スタッフたちで一度通信機の傍から離された。爆破という混乱、人の死という責任、信じていた人に裏切られた落胆から正常な会話はしばらく望めないだろう。

 

でも、生きていればいいじゃないか。わたしは少なくともそう思った。

だから他の誰を犠牲にしても彼女を守るつもりでいたのだ。結果としては守りきれたと思えないが。背負うべき重荷がある。

 

藤丸姉弟もマシュもレフから目を離さない。睨み付けている。

しかし、レフは私たちではなく、通信先のロマニを見ている。アレからすれば私らに価値もないらしい。

 

 

 

「ふん、やはり貴様は(さか)しいな。真っ先に殺しておかなかったのは悔やまれるよ。

 

だがそれも虚しい抵抗だ。カルデア内の時間が2016年を過ぎれば、そこもこの宇宙から消滅する。もはや誰にもこの結末は変えられない。

 

なぜならこれは人類史による人類の否定だからだ。おまえたちは進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのではない。

 

自らの無意味さに!

自らの無能さ故に!

我らが王の寵愛を失ったが故に!

 

何の価値もない紙くずのように、跡形もなく燃え尽きるのさ!

 

 

 

それを言い終えたところであれはようやくこちらを見た。正確には私の持つ聖杯だ。

 

 

 

「さて、それを返してもらおうか。貴様のような子供が持っていても意味の無いものだ」

「やなこった」

 

「・・・ふむ、実力行使もいいが、この特異点も限界だろう」

 

 

 

レフがそういうと空間が揺れ始めた。まじかよ。こいつがいる間は崩れないと勝手に思っていた。

いくらこいつでも特異点が崩壊したら生きていられないんじゃないの?

 

 

 

「死にゆく君では使いようもないな。

 

では、さらばだロマニ、オルガマリー。そしてマシュ、最後の素人の適性者たち。こう見えても私には次の仕事があるのでね。君たちの末路を愉しむのはここまでにしておこう。このまま時空の歪みに呑み込まれるがいい。

 

私も鬼じゃない。最後の祈りぐらいは許容しよう」

 

 

 

レフは聖杯を回収せずに消えた。絶対に取りに来ると思ったのに・・・。

これってあいつらにとってはあんまり重要じゃない?

 

ゲームではたしかレベルMAXのサーヴァントたちをさらにパワーアップさせるために霊基拡張みたいなことをするためのリソースだったけど。ここではどうやって使う事が出来るんだろう?とりあえず絶対に離さない。

 

 

 

「地下空洞が崩れます・・!いえ、それ以前に空間が安定していません!ドクター!至急レイシフトを実行してください!このままではわたしはともかく、先輩たちまで・・!」

「わかってる、もう実行しているとも!すぐにこちらへ戻ってくるさ」

 

 

 

ロマニの言葉を最後に、私たちの体は霊子変換が開始された。私はどこかに行ってしまいそうなフォウと聖杯をぎゅっと抱きしめて目を強く瞑った。

 

三人は三人でどうにかして。

 

私にそんな余裕はない。大丈夫、主人公補正だ。きっと助かる。心配はこっち。頭の中でごちゃごちゃ考えている間に意識は刈り取られ、真っ白な世界へと旅立った。

 

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