起きたカーマ様、激おこぷんぷん丸。
でも貴女を布団から蹴り出したのはアヴェンジャーだから文句はそっちに言ってどうぞ。まあ、文句を言っても全然効果無さそうだけど。今でも笑っているもんね、アヴェンジャー。
全員が起きたのを確認して食事、と言っても何があるか分からないので、手元に残していたカロリーメイトで手早く終わらせる。
皆にも渡して。・・・断られた。不味くはないのに。引き出しに仕舞っておこう。
さて、って?みんながこっちを見ていた。
「なんです?」
「えっと、そのですね・・・」
「ご主人、朝食はそれか?」
「うん?」
「貴女、成長期でしょう?ちゃんと食べたら?」
「栄養は取れますよ?」
「お主、質素でない?もっといいものがあるじゃろ?」
「リソースは替えの利かない技術職員やマスター候補生へのモチベーション維持に使うべきです」
さっきまで起きていたがカーマ様はカロリーメイトを受け取らずベッドに陣取って寝直してる。
自分から起きるまでは起こすなとのお話だ。完全にへそを曲げてしまったのはちょっと厄介だけど、後回しでも問題ないだろう。発言からして人理修復には消極的だったし、それならそれで。
「とりあえず皆さんの性能確認はしたいので、レクリエーションルームか修練場が無事ならそこで簡易訓練を行おうと思います」
「おっと、すまぬ。キャットはやることが出来たので今日の所は遠慮するぞ」
「え?あ、何を?」
「ではなご主人!」
「えぇ~、せめて何するかくらい・・・教えて・・・」
「あの、おそらくその、タマモキャット様にはマスターの言葉が聞こえてなかったかと思われます」
「・・・」
「んじゃ、わしとボインとぺったんこで訓練といくか」
「は?」
「え、あの?」
「では行きましょう!!」
部屋から勢いよく飛び出していったバーサーカーの考えることは分からない。
彼女とは意思疎通が出来るだけありがたいと思おう。
それにどちらかと言えば、現状からみてアヴェンジャーの方が地雷だ。朝の挨拶をするような気さくで人にケンカ売りに行ってる。二人はなるべく離しておくべきだろう。メルトリリスの美しいお声の「は?」はとても似合っていたがとても怖かった。
カルデアの廊下を歩いていても所々に爆破の跡があり、すれ違う人間は大概どこかに包帯が巻かれていた。包帯に関しては私も例に漏れないが、魔術的な治療とマスターであることから通常の治療も優先されている。とはいっても、Aチームが重体なのであちらが最優先。最低限動ける程度の回復をしてもらった。
ほんとこういう爪痕が見える中、今後のカルデアどうすんだろ。ゲームでは最初以外表現されなかった爆破だけど、あの威力でよく生き残ったよな。
生きてるって素晴らしい!
幸いと言うべきか、レクリエーションルームも修練場も爆破の影響を受けず無事だった。修練場の方が近かったのでそちらでそれぞれの戦い方を見せてもらう。
もちろんシミュレーターを相手にだ。サーヴァント同士の戦いとか、リソースを無駄に喰らう。私だけで行うでなく、ちゃんとデータが取れる時にやるべきだ。
それぞれの戦いを見せてもらった。
「アヴェンジャーはやはり日本系ですかね。刀に加え拳銃というより火縄銃。時代は戦国から江戸初期までには絞れそうかな?」
「真名は分かった方がいいか?」
「その方が性能向上でアナタには十全に戦ってもらえますし、そしたらアヴェンジャーの怪我も少なく済むだろうし」
「え、わし?」
「ですよ?五騎のサーヴァントも居ますし、私の魔力だけだと回復は心許ないでしょうから」
紫式部は戦闘が得意ではないとのことだ。
本人の申告通りやっぱりと言うか、紫式部は前線で活躍するタイプ―比較対象が悪いのかもしれないが、召喚した方々と比べると俊敏性には欠けている―ではなかったなぁ。
陰陽術が生前よりも使えるってことが判明しただけいいか。これからは運営側のお手伝いの方向でお願いするかもな。キャスターだし。
「メルトリリスは蹴りがメインか。他にはあります?」
「そうね、分かる事だから先に言っておくと私にはドレイン機能もあるから触る時は気をつけて頂戴」
「へぇ。・・・?」
気をつけろと言われた傍から触ってみた。
あれか、エナジードレイン。吸血鬼とかが保有している能力。メルトリリスはもしかして吸血鬼の力も有している?
どの程度なのか、彼女の手からは僅かに感じる熱だけで何かを吸われている感じはない。
首を傾げていると頭に衝撃が走った。
「いっだ!!!!」
「人の話を聞いていなかったのかしら?どこまでも理解力のない人ね」
「ぐぅ~~・・・」
目がチカチカと光っている。トゲが当たらないように器用に蹴られたようだ。衝撃と痛みからメルトリリスの手を離し、頭を抱えて跨っていると上からは怒りの声が。脳が揺れているからはっきりと聞き取れないがメルトリリスが怒っている。怒っていても綺麗なお顔。さっきの「は?」ほど怖くない。
地雷でも踏んだか?もう一度手を掴む。やはり何もない。
「まったく、どうしても虐められたいようね?私、自分でもどうかと思うほど加虐体質なの。貴女のご期待には添えるわよ?」
「貴女がそれを望むなら。サーヴァントとマスターの関係ってよく分かりませんし、召喚に応じてくれたのだから出来る限りの希望は叶えたいと考えていますので。でも死ぬのは勘弁で」
「・・・生きていれば安いという考えは改めなさい?」
とは言え売られて此処に居るので、生き延びられればある程度のことはいいかなって。
生きてもう一度家族に会って、けじめをつけたらオルガマリーと家族をやっていける気がする。
まあ、人理焼却を阻止しないと始められないってのが先の長い話だけど。
「他に何かあります?」
「言う気も失せたわ」
「じゃあ言いたくなったらで」
アヴェンジャーはけらけらと笑い、メルトリリスは呆れたように息を吐いた。
「見つけたぞご主人!!」
「っ!?」
突然開いた修練場の扉と彼女の声にめちゃくちゃビックリして飛びあがってしまった。びびりだから許して欲しい。気を抜いている時急に声掛けられても、大した反応は出来ない。
振り向くと、用事があると言っていたキャットの姿が。用事が終わってこちらに合流してくれたのだろうか?
何かな?と問う前に私の身体は宙に浮いた。
確かに今の私は小さいが、抱え方というものもあるだろう。小さな米俵じゃないんだよ。昨日のダ・ヴィンチちゃんのがまだ優しい抱え方をしてくれたぞ。
アヴェンジャーは指をさして爆笑。ずっと笑ってないこの人。対照的に紫式部はオロオロ。昨日からずっとオロオロしてんな彼女。メルトリリスは助けるつもりもないらしく小さく笑って送り出してくれた。
私がサーヴァントに抵抗できるわけもなく、米俵の抱え方で連れて来られたのは食堂。とても食欲をそそる匂いがした。
「朝食がまだだったな!さあ、食すが良いぞ」
「え?」
「キャットは料理も出来るサーヴァント。さあ、食べろ、今すぐに。もちろんお残しは許さない。そんなことになればKILL!KILL!KILL!」
急かしてくる彼女の肉球が示すはおにぎりとお味噌汁と卵焼き。
急いで作ってくれたのであろう簡易的なもの。
和食。まごうことなき和食。匂いから美味しいと分かる。あ、やべ涎が出た。
ここ半年は忙しくて席についてゆっくり食事することもなく、朝起きて食べたカロリーメイトで済ましていた。(満足感は全然ないが栄養は十分にとれる)
震える手でおにぎりをとった。
「いただきます」
自然と出てきた日本語。久々に呟いた気がする。口に広がったのは温かさ。出来たてだ。
「しゃけ?」
「他にもあるぞ?うめぼし、こんぶ、おかか。ツナマヨや高菜は時間と材料の都合により次回だな。リクエストがあれば今の内に聞いておこう!ご主人は何が好きなのだ?」
彼女の質問には答えず、もうそこからは勢いだけで食べ続けた。時に喉をつまらせ、お味噌汁をすすり、またおにぎりを含み、緑茶で一息。タマモキャットはとても満足そうだ。
「美味しい!!!」
「当たり前なのだな」
匂いに寄せられて他の職員も食堂に来ていた。リソースがどうなるのか分からないのにこんな贅沢をしてしまうなんて、という当たり前のことが頭で分かっていても食べる手は止まらない。
ああ、くそっくそっくそっくそっ!!
「な、なんだ?苦手なものでもあったか?」
「う、」
「う?梅干しか?梅干しなのか?!」
「うわーん!!」
「そんなに嫌いだったのか!?」
出てきた涙は止まらない。ご飯って美味しい。美味しい。すごく美味しい!
当たり前の感情だ。なのに忘れていた。今朝がたサーヴァントのみんなに心配されるわけだ。私はきっと自分を守るために空っぽだった。満たされる気持ち。心が満たされて行くのを感じて、思い出すのは死んだ人達。
助けられなくてごめんなさい。
美味しいと思ってごめんなさい。
アナタたちにない時を謳歌してごめんなさい。
生きてて嬉しいと思ってごめんなさい。
私は泣きながらぼやいた。ひとしきり泣くと、瞼が重くて身体がだるくて眠気が来た。
そら、お腹いっぱいになって、心もリラックスして、・・・次は睡眠欲求が来るわ。許せ、まだ14なんだわ、私。
起きたら残してしまったおにぎりと卵焼きを絶対に食べる。絶対に。せっかくキャットが作ってくれたものだ。大切にめいっぱい食べよう。
うんうん唸って目が覚めたら、見覚えのある天井、隣に幼女。視界も頭も晴れやかだ。
うん、私の部屋で幼女はカーマ様だ。ってことは誰かがここまで運んでくれたのか。感謝しないと。身体を起こすと、布団を引っ張られた。
「ちょっと寒いんですけど」
「あ、すみません」
起き上ったことでカーマ様に掛かっていた布団も引っ張られたようで、それを取り返そうとしている。起こすなって言われてたのに起こしちゃった。
「ほんと、ぶっさいくな顔してますね」
「元が元なので」
「・・・貶し甲斐の無い人ですね。もっとまともに反応したらどうですか?」
「自分の容姿に自信は持ってないし、そんな綺麗な人に言われても・・・」
ご褒美ですか?オタクの思考が戻っている。
加えて、SAN値チェックに成功したので、メンタルも回復。死んだ人ら思い出すとまた泣きそうだけど。それはおいといて、思考がクリアになった分、もっと色々考えられそうだ。泣いたおかげで頭もスッキリしているしね。首をぐるっと回して、手を組んで上にググっと伸ばす。
まだまだ小さい体だが出来る事。もっと考えて行こう。これ以上知っている人達を失わないように。力を込めて笑った。ま、双子がいるし、人理修復はどうにかなるでしょ。気長に構えとこ。大丈夫大丈夫。
さて、今何時だ?
いつもの定位置に時計がない。そういえば今朝もなかったな。どこいった?誰かに蹴飛ばされたかな。英霊ってのは案外寝相が悪いのかもしれない。
「どーん」
「へ?」
「なんかやる気を出しているところがうざかったのでお布団に戻しただけですよ?」
「・・・えっと?」
「なんです?」
「なんで居てくれるのかなと思って」
「契約なのでココに居ます。それだけですよ」
「あいた!?」
起き上っていたのに布団に戻されさらにデコピン!?
なぜ??滅茶苦茶楽しそうな顔??ちょっとその笑顔歪んでません?
もうこの神よく分かんない。いや、神様理解するって言うのが無理な話だけど。愛の神ってこんなだったっけ?いつ出てきたんだっけ?全く覚えがないわけじゃないからイベント時空だと思うんだけど、本編にもちょっと掛かってきてた話だったと思うんだよね。
うーん、とお布団の中でこれ以上デコピンされないように額をさっと隠した。
「何をかんがえているんですか?」
「カーマ様のことですけど?」
「・・・ほんっと、天然ですか?」
「なんで!?」
ま、考えても思い出せないなら仕方ないか。デコピンしようとするのに飽きたのか、手をあの特有の形からほどき、人の腹の上に乗った。重くないが多少の苦しさはある。表情は楽しそうだからいいか。
オルガマリーにもこういう余裕が必要なんだよな。キャットの肉球でアニマルセラピーの効果を発揮してくれないかな?
・・・とりあえず今何時?あれからどれくらい経った?上に乗っている神のおかげで動けないので聞いてみる。
「他の方々は?」
「なんで私が教えないといけないんですかぁ?」
「えー」
何が楽しいのかこの神、声が弾んでいた。顔は先ほどから変わらない少し歪んで見える笑顔。
私の顔が面白いのか?乗っかっている彼女と見つめ合っていた。
そうすると、上からではなく、横から聞こえた声が疑問に答えてくれた。
「うむ、メルトリリスのやつは軽薄なドクターのとこで昨日聞かれとったデータ取りで応対しておる。紫式部はそれの付き添いじゃ。タマモキャットは勝手に飯を作って怒りん坊に怒られとったが、職員らが熱望して今は少し早めの夕食を作っとる」
「へ?」
「え?」
「んで、わしは暇になったんでお主らが寝ている間に戻ってきた!」
「ななななな!」
「ああ、霊体化されてたんです?なるべくしないでって言ったけど」
「面白いことが起きそうだった故な、許せ!」
少しばかり非難するような口調で言うも楽しそうに赦せという。
別にそこまで怒ってないからいいんだけどさ。そもそも怒る事でもないし。アヴェンジャーはめっちゃニヤニヤしながらこっちを見ている。何か変だろうか?面白そうなことが起きるって、私は寝ているだけだったし、カーマ様もそうだろう。神=自分勝手なもんだと思っているから、別に彼女の気まぐれも当然だと思うし、それって面白いの?
カーマ様はまだフリーズしているが、そろそろ爆発するやつ。オルガ見てるから分かる。これはもう止まらないだろうから、爆発前に霧散させたい。具体的には驚かすとかで他の感情でいっぱいいっぱいにする。
「お楽しみじゃったのぅ」
「はあ!?何をどう見たらそうなるんですか!?」
「いやな、わし、さっきはああ言ったが、
「は、・・・はあ!?」
私が寝ている間に何があったかは知らないがアヴェンジャーはカーマ様を煽りよる。そろそろ収拾がつかなくなりそうなので、カーマ様を抱えて起き上った。お腹の上から膝上に移動してもらっている。私と同じくらいだけど、体重も軽いので彼女を落とさないように起き上るのは問題ない。馬乗りだったのが向かい合う形になっただけだ。
「アヴェンジャー、私が寝てからどれくらい経ちました?」
「三時間と少しといったところかの。気持ちの良い眠りっぷりじゃった」
「久々にゆっくり寝た気がします」
「良い枕じゃったし?」
枕は変わらんが。背中にあった枕に目を向ける。
聞いたら目の前のカーマ様が爆発しそうだったので、爆発を止めるのは諦めてダ・ヴィンチちゃんのところへ行くことにした。
カーマ様?ひとしきり騒いだ後はふて寝だって。朝からずっとじゃん。めっちゃ寝るなぁ。神霊ってのはよほど魔力を使うのかもしれない。そうなると、現状では実務は難しいかな。
アヴェンジャーは私に付いてくるらしい。彼女が言う面白いのは終わったそうだ。満足そうで何よりです。
廊下を歩いていると、満足げな職員たちとすれ違った。何人かからは感謝された。
おそらく、キャットの食事にありつけたんだろう。私も用が済んだらご飯食べよう。結構食べたくせにもうお腹空いた。あの満足感は何度あってもいいものだ。オルガマリーにも持っていこう。
「やあ、泣き虫娘!」
「止めてください」
「まだまだ子どもなんだから溜めすぎるなよ」
「・・・」
ダ・ヴィンチちゃんの工房に入ると、楽しそうにこちらをからかってきた。私は楽しくない。
「で、用件は?昨日も探してたってロマニから聞いたけど」
「あ、はい。サーヴァントについて相談したくて」
「わしら?」
「ええ。寝る場所の確保が出来なくて昨日はベッドと布団で分けたんですけど、これからも英霊召喚を行うって聞いたからどうしたらいいかなって」
ダ・ヴィンチちゃんはそれを聞くと珍しく、本当に珍しく首を傾げた。そして私ではなく、アヴェンジャーを見る。
「英霊に食事や睡眠は必要ないし、どちらかと言えば嗜好だけど、君らはそういう感じかい?」
「ん?必要ない?」
「まあ、他の奴らは知らんが、わしはじゃんけんで勝ったらベッドで寝ていいと言われたから遠慮なく使わせてもらっただけじゃ」
「・・・」
はい、言いました。
昨日は疲れてたのですぐ寝れるように有無は言わせなかった。はい、私が原因です。
「まあ、マスターがうんうんうるさく魘されとったから布団に移ってお主にくっついておったカーマごと押しつぶしたがな!」
「イミワカンナイ!」
朝起きた時にカーマ様がはみ出してこっちに来ていたのはそれか!
嫌な夢は見たけどさ!地下に移した
気持ち悪かった。
「ま、癖のありそうなメンツで仲良くやれているのはいいことだよ。キリシュタリアのところみたく、いきなり戦闘を始めるなんてことにならなくて良かった」
初聞きなんじゃが?
おっと、アヴェンジャーの口調がうつった。
あのなんでも卒なくこなしそうなキリシュタリアがサーヴァントとうまく行ってなかったの?コミュニケーション能力に問題あった?あれ?そんな感じだったっけ?
私がカルデアで見たことあるのは相棒っぽい二人だから全然覚えてない。どんなサーヴァントともつつがなくうまくやりそうなのに。
なんでも召喚してすぐにキリシュタリアの方から喧嘩を吹っ掛けたらしい。
文化が違う・・・。イギリス人ってそんなに喧嘩っ早かった?サーヴァントを従わせるためにやったとは言うが、もうちょっとやりようはあっただろうに。
なんで仲良くなるためにサーヴァントと喧嘩しようってなるの?男の子なの?思春期なの?
「彼の英霊にはそれがとてもいいコミュニケーションだったことは事実だ」
「うちのサーヴァントたちが穏やかな人たちで良かった・・・。そんな事やろうものなら死にますよ」
「人間がサーヴァントと戦うっていうのがねぇ。キミの場合、人数が多い分互いを知るのが大変そうだけどね」
それは私が頑張ればいいだけなので問題はない。双子より少ないし。
「本題に戻るけど、これから寝たいサーヴァントたちが出たらどうするの?」
「仮眠室を解放するかな。君の部屋を改築するのは今のとこ資材とかの関係で出来ないし」
「現実問題としてはそれが適正か」
「君が寂しくてたまらないっていうなら話は別だ。ま、そう思ってベッドはダブルサイズを発注しておいたぜ」
「待って!?」
「小柄なユキならサーヴァントも二人は抱き込めるだろ。いやむしろ挟まれる方か」
「ニヤニヤすんな!身長は伸びるもん!!」
「希望的観測は嫌いじゃないぜ?ならキングサイズか。技術班に頼んでおこう」
「違う!そうじゃない!!」
寂しくてたまらないなんて話はしてない!!
「いいんでない?お主、細かいことも気になるんじゃろ。気にせんでいい事は最小限に抑えたらいいじゃろう」
「細かいですか!?」
「英霊の寝る場所なんかどうでもいいじゃろ、普通。ちゅーか、他がどうしているかなんて気にするな。貴様は貴様のやりたいようにやればよかろう」
・・・はあ。気にしても仕方ないか。言い返せないし、彼女の言い分はもっともである。この英霊、声もいいが、顔もいい。訳の分からない部分が多過ぎて気にしてなかったな。気にはなるけど頑張って気にしない方向で。気にするべき本人から言われたんだから、うん。
「ふふ、他には何かあるかいユキ?」
「昨日、探しても居なかったですが地下片付けてたんですか?」
「・・・ああ」
「燃やす方向?」
「可愛げがないな。嘘を言っても仕方ないから言うが、そうだとも」
「まあ、感覚は鈍ってると思います。人間ってあっけないですね」
「まったく・・・」
私は鈍いし、空気読めないし、阿保だけど、人に遣われている気に気が付かない訳ではなかった。
ロマニがダ・ヴィンチちゃんに用があると言った際に慌てて今日は止めておけと言ったのはそういうことだ。疲れ切っていた私にこれ以上のことを考えさせないようにした。
昨日、ダ・ヴィンチちゃんは地下の死体をどうするか、もしくは魔術的な処置を施して腐りにくくしていた、そんなところだろう。
魔術だって万能じゃない。時間を完全に止められるなんてことはない。このままにしていても他の問題も起きることは確実。どうするかな。
「ああ、地下の死体か」
「放置すると感染症とか余計な問題が起きるからね」
「わし、燃やそうか?」
「「は?」」
部屋ごとでよければ火力は抜群じゃと笑うアヴェンジャー。
情緒がないとか気にしても仕方ないのでそれはいいと声色だけは楽しそうにするダ・ヴィンチちゃんと一緒にオルガに報告してやってもらうことになった。
サーヴァントの火力に部屋は耐えられないだろうから紫式部を呼んできて一緒に結界を貼ってもらった。肉の焼ける嫌な臭いも残さず、一瞬で焼き切ったアヴェンジャーは一体誰なんだろうか。
わし、天才とピースを向けてくる姿は無邪気で大変可愛らしい。
人間を焼き切った現実は見ない。あの爆発を思い出すような熱さだった。少し思い出してしまったあの日を脳内から振り払うように別の話題を紫式部に振った。
「紫式部はメルトリリスとメルトリリスの性能試験だったの?」
「ええ。私の陰陽術が役立つこともあるかもしれませんでしたから」
「分かった事ってあります?」
「三騎士に対しては攻撃が通りづらく、四騎士に対しては弱点をつけるようですね」
「アルターエゴってやっぱりサーヴァントのクラスの中でも特殊な位置付けっぽいですね。でも三騎士?」
「ちょうどドクターのところへ来られた藤丸様方の英霊にご協力いただきました」
「ああ、双子はドクターのとこですか」
ならマシュもあちらだろう。
性能試験は紫式部の他にもキャスターがおり、私からの要請で抜けてきたんだと。メルトリリスは大丈夫だろうか。
私以外に当たりがきついように感じたからドクターはともかく、双子に何かしらのアクションしていなきゃいいけど。マシュはともかく・・・。一般人の心的ストレスの緩和ケアは。
考え込む前にふと、アヴェンジャー視線が気になった。呆れたような表情だ。
「アヴェンジャー?」
「もはや病気じゃな。付き合え、ユキ。お主も来るか?」
「?」
「は、はあ。いえ、そうですね」
「では供をせよ」
翻したマントと共に見えた背はとてもカッコ良かった。さすが英雄。
魅せられた私と困惑しながらも付いていく紫式部を連れてアヴェンジャーが来たのは管制室だった。
職員もいる中、私たちを見物しているのも多い。出来れば私もそっち行きたい。
「ここを見よ」
「あ、はい」
「職員の顔を見よ」
「え?」
「上を見んかい」
「え?え?」
「貴様の悪ふざけが何人を救った?」
「・・・あれは」
「話は聞いておる。地下の事ばかり考えるな」
―お主はこれから世界を救うのだぞ!前を見よ!
―戦とは戦う前に決しておるものじゃ。勝った、ではない。勝つべくして勝つ。心得たか?
「はい」
「ならば良し!勝つべくして勝った結果がある。これからも励め」
心臓がうるさい。
私はこれから、世界を救わないといけないのだ。Aチームと藤丸がいるから大丈夫だと思ってたけど、英霊召喚をしたんだから、私ももちろん戦力だ。今のAチームは怪我人だ。怪我の完治は一年内くらいか?もっとかかるかもしれない。
・・・励まなければならない。勝つべくして勝つために。誰も死なない完全勝利を掴むために。
アニムスフィアとしてではなく、一人のマスターとして。
ユキ・アニムスフィア
身長/体重:145cm・40kg
地域:日本(関西圏)
属性:善性・秩序 性別:女性
一般家庭で育ったが、マリスビリーに目を付けられてアニムスフィアに引き取られる。魔力が膨大らしい。
マスター候補の一人でDチームのリーダー予定だった。藤丸姉弟の所属予定もDチーム。
好きなもの
・可愛いもの
・甘いもの
・いい声
・自身に優しくしてくれるサーヴァント
嫌いなもの
・レフ・ライノール
・苦いもの
・寒さ
・〇〇〇・〇〇〇