絶対最強王様系金髪美少女(余命十年)   作:るてにうむ

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 時間が三日ほど飛びます。


四人の会議

「ボスはいつ来るんだ。他の奴等はいつものことだからよいとして――もう一時間は待ったぞ。……ララノア。何か知らんのか」

 

人影が四人、その空間にいた。静謐な空間に一人の声が響く。野太く確かな力強さを滲ませたその声は、瞬く間に部屋一杯に広がった。

声の持ち主はその声に違わず色黒の巨漢。禿頭の頭部に厳つい顔付きは、どうもマフィアにいた方が居心地が良さそうな具合だった。

その目線が向くのは部屋の半分を占めようかというほどの大きさの長机、その右上に位置する場所。

 

短い黒髪をゆらゆらと揺らしながら背凭れに体を預け、足を遊ばせていた女――ララノアは、それを耳に入れパチパチと目を瞬く。そして、何度か左右に顔を振った。

右にいた黒ローブがチッと舌打ちをすると、やっとこさ自分に向けられた言葉だと気が付いたのか体を正す。

 

「……えっ?あたしに言ってるんすか?」

 

それでも信じられなかったのか、空いた左側の席を気にしながら、ララノアは静かに睨んでくる男をまじまじと見つめる。その目は言葉にせずとも、『ありえねーっすアホっすかコイツ』と物語っており――と言うか男はそう取った。

 

「――ほう?死にたい様だな?」

 

「いや死にたくないっす。……え?何であたし当たり前のように自殺願望があるって思われてるっすっか?」

 

更にまじまじと男を見つめるララノア。最早その目は『やっぱりアホっすコイツ……』と諦観すら含んでいる様に――と言うか男はそう取った。

 

「――よし、死ね」

 

「訳わからんっす!!コノちゃん!助けて下さい!!この横暴アホ男人の話聞かないっす!もう脳障害っすよ!」

 

極寒の北極でもここまではないだろう程の冷たさと、マグマのごとき殺意をブレンドさせた目を向けられたララノア。

しぶとさと粘り強さ、更にはうざさには人一倍同僚からの定評がある流石の彼女もクマムシ程ではない。耐えきれないとばかりに立ち上がって己の右上の席へと助けを求めた。

 

「はあ……私ですか?私に振るんですか?そうですかそうですかどうせそういう都合の良い女なのでしょうね私は……はあ……」

 

「違うっす!単にあたしの唯一の友人がコノちゃんだったと言うだけっす!!」

 

それを聴き、少女はやれやれと言うように首を振る。長い蒼色の髪がゆらゆらと揺れ、机へ影を作った。そしてじとっとした目でララノアを見つめる。

 

「そうやってすぐに人に助けを求めるから友人がいなくなるんですよ……はあ……もういいです。

すいません、ガルシアさん。この娘、バカなんです」

 

「知っている」

 

「はあっ?!コノちゃん!いくら親友とは言えその言葉は許容出来な――ぐへっ!」

 

これぞ民意と言わんばかりの勢いのまま抗議の声を上げたララノアは、だが悲しいかな。コノが面倒そうに人差し指を振るったのを合図に、顔を勢い良く突然現れた何か(・・)で殴られた。

その蒼色に染まった『何か』は、ララノアをぶん殴ったことに満足したのか、スッと空間へ滲むように消える。

 

それを殺意マシマシの目で見ていたガルシアは、ため息をつくとゆっくりと目を閉じる。それを面倒そうな目で認めると、コノは一言一言吐き出すように言葉を紡いだ。

 

「……と、言うわけで。ガルシアさん。今回はこれで手打ちと言うことでよろしいでしょうか」

 

「……良いだろう」

 

一先ず一件落着。部屋の間にゆったりとした雰囲気が流れ始めた。それと同時に机に顔を埋めていたララノアがよろよろと立ち直る。

 

「……う、うう……こ、コノちゃん。私達人生で唯一無二の親友だって誓いあったの……忘れたっすか……私は親友からこんな扱いを受けて、とっても悲しいっす」

 

「知らないですね」

 

「ぐはぁ、っす!冷たいコノちゃんの言葉が染みるっす!」

 

明らかな一人芝居を繰り広げるララノア。それを死んだ目で眺めていたコノは、ふと思い出した様に口を開く。

 

「はあ……そう言えば、結局王はどこにいらっしゃるのでしょうか?」

 

「ん、元首様っすか?

…………あー、そう言えばちょっと前に、『ララノア!集合場所を変更するわ!!第三区の地区議会会議室よ!伝えてない《上位者》はガルシアとコノ、そして謎の黒ローブよ!言ったわよ!!ちゃんと残りの皆に言っておいてね!――でもなんとなくどうせ言わなそうよね!!貴女!!!』って言われてたっすねぇ……」

 

ポンと手を打つと曇り気のない笑顔で突然驚愕の事実を語り始めたララノア。『はあ……』とコノが天を仰ぎ、目を覆う。

 

そして、どこか懐かしそうな目で語るその姿がガルシアの目に入り――。

 

瞬間、空気が弾けた。加速は無い。短すぎる距離が故に、だがそれは瞬く間の出来事。

空気が高鳴る。業風がそれを追う。一拍遅れたそれらの副次現象は、ガルシアの姿を認識するには遅すぎる媒体だった。

 

「――ッ!」

 

しかし、ララノアも只者ではない。こんな言動だが、かつては中規模の地域一帯を支配したことすらある人間だ。

第六感とすら呼べる超感覚でガルシアの動きを察知する。手が咄嗟に動き、目の前に現れた男の一撃、拳の着弾点に追い縋る。

 

そして、弾ける。

 

瞬間、爆音。生ぬるい自然現象など捩じ伏せてしまうようなその一撃は、ララノアを伴い多すぎる程の並び立った椅子たちを破壊し、だがそれだけではもの足らず。ララノアを、更に壁へと(いざな)った。暴風が無秩序に撒き散らされる。

 

パラパラと舞い散る破片が満ちる。それが晴れたそこにいたのは、ガルシアの一撃を受け右腕を赤く腫らしたララノアの姿。

 

「ッ~~!!痛い!痛いっす!いやちょっと洒落にならないっすよガルシアさ――」

 

その弁明に、だがガルシアは止まりはしない。瞬間の移動でララノアの目の前にガルシアが現れる。

ララノアの目が据わり、コノが右手を揺らす。黒ローブが面白そうにそれを観戦する。

 

驚く事に、この中で正しい行動を取っていたのはコノのみだ。ララノアは煽り、ガルシアはキレ続け、黒ローブは見ていただけ。

本来ならガルシアが言う『ボス』、ララノアが言う『元首様』に止められいる味方内での戦闘行為だが……。

 

まあ、ここまで執拗なのはララノアが悪かったりもする。昔のことと言えばそれまでだが、かつてララノアはガルシアの『触れてはならない所』へ触れた。しかも煽りで。

 

その屈辱がある限り、恐らくララノアを隙有らば殺そうとするガルシアの姿勢は変わりはしないだろう。

 

そして、ガルシアが拳を振り上げ、まさにララノアを殺めようと――。

 

「死ね」

 

振り下ろされた拳が迫る。ララノアがのっぺりと色を失った瞳でそれを見詰める。コノが揺らしてただけの右手を、しっかりと振ろうと振りかぶる。

 

そして、それら全ての行為が――次の瞬間、止められた(・・・・・)

 

 

「――そこまでよ!!!」

 

 

同時、これまでで一番の轟音が鳴り響いた。

 

それを成し遂げた存在はいつの間にかガルシアとララノアの間に存在していた。

 

振り切られたガルシアの拳は、少女の額で停止して。ララノアの左手からいつの間にか放たれていたナイフでの突きは、少女の右足にぶつかり静止する。コノの『蒼』は、その細い右手で塞き止められていた。

 

溢れ出る金色に、この場の『上位者』のほぼ総力が打ち負けた。振り切れられた右手に『蒼』が散り、ナイフは落ちる。拳は力なく地面へ向かって降ろされた。

ただ『立っているだけ』の行為に己の技が完膚なきまでに力負けした光景に――だが、この場の全員は静かな納得を示していた。

 

それは彼女が己の上に立つ者であると、この場の誰もが納得しているから。靡く金色が世界を染め上げる。

 

 

「これ以上の戦闘行為は、この私――そう!貴方達の王様が許さないわよ!!」

 

 

そして少女の力強い声が、部屋に朗々と鳴り響いた。




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