(……コノちゃんがあんなにいうなんて……いや、今は考えてる場合じゃねーっすね)
あの宣言の後、コノとララノアは真逆の入り口へすぐさま駆け出した。コノがそうした理由は不明だが、ララノアは明確な理由があった。
早く家へ戻り、《アレ》を回収しなければララノア本来の力が出せない。いや、やろうと思えば
そして、ここまでララノアが急ぐのも理由があった。コノの力は規格外だ。ララノアが無理に力を使っても、素で乗り越えてくるだろう。少なくとも今日中には感覚を取り戻さなければ、コノに勝つなど夢のまた夢。
そこまで考え、ララノアは足早に──
「こんにちは」
──止まった。
後ろから響いたのは、細く儚い声。だが、酷く恐ろしいトラウマを刺激するものだった。
「はは……どーしたんすか? 第一位サマがあーしなんか底辺に声かけて……」
「別に。私はただリーダーが何を考えてるかを教えて欲しいだけ」
豪奢な飾り付けのされた廊下で、錆びた機械のように体を動かし反転させる。
目に入ったのは少女だった。小柄で、そして触れたら消えてしまいそうな彼女。
だが、その見た目の貧弱さなんてなんの安心にもならない。だって彼女は第一位なのだから。
「……え、えー? あーしなんかに元首様がそんな重要な情報漏らすと思います?」
「思う。というよりも、私はリーダーに意図的に避けられている。その理由を知りたい。教えて。言って。話して。早く。
そろそろ我慢の限界。さもないと──何をするか分からない」
「え、ええ……いや、元首様が伝えないようにしてるんなら、あーしが伝えちゃなおさらダメなんじゃ……」
──ギロリと目を向けられた。
ひっ、とララノアが体を震わす。何度か口を動かそうとし、止め。そして勝ったのは忠誠だった。
「……い、いやダメっす。元首様が止めてるなら、やっぱあーしが言える理由が無いっすよ」
「…………そう」
俯くように瞳を下げる。そして、ため息を付くと次いで、第一位はララノアを真っ直ぐ見遣った。
「なら、いい。リーダーの意思を無視するなんて、本来なら重罪も重罪。もし吐いてたらこの場で殺してた」
ほっ、と胸をなで下ろしたララノアに、だが彼女は淡々と続けた。
「でも、知りたいのは事実。避けられてるのも事実。だから──力尽くで聞き出す」
「は、はは……意味分かんないっすよぉ……なんであーしがぁ……」
パチパチと目を瞬く。そのまま彼女は手を掲げた。
「……なんで? 強いて言えば……たまたま──『降り注ぐ100の刃』」
そして、半泣きのララノアの頭上に刃の群れがズッ、と現れ──落ちた。