石が細かく砕かれ、破片が空へ舞い散る。視界を覆う土埃と化したそれに、第一位──ミストラスは面倒くさそうに目を向けた。
「『風が吹き荒れる』」
ゴウッ、と風が鳴った。室内故にあり得ないそれは、だがミストラルの意に従い視界を開けさせた。
そして、ミストラルの視界に入ったのは意外な光景。
剣が突き刺さった廊下の中心に、無傷で立っているララノアの姿。
「けほっ、けほっ……あぶねーっす! いや、マジで! てか元首様に味方同士での争いは禁止されてるっすよね?!!」
「……知らない。それより、貴女はアレを避けれる実力なんてあった? そんなに貴女は強かった? 運?」
「はは……なんでっすかねー」
適当に笑うララノアを見据え、ミストラルは嘆息した。
「……まあ、いい。次で分かる。『避けられない4つの剣』」
再び現れたのは4つの剣。ミストラルの後ろに滲むように出現し、ふわふわと浮くそれに、ララノアは頬を引き攣らせた。
「じょ、冗談っすよね?」
「冗談じゃない。ああ、でも殺すと流石に怒られるから、追加。……『ララノア・セフォンドーラは命を失うことはない』」
「いや、出来れば傷を負うことはない、くらいにして欲しいすけど……」
冷たい目を向けたミストラルにララノアが怯む。そして、ミストラルがララノアを指さした。
「『行って』」
スッ、と剣は流れるように動きだした。速いが、音速を超えるほどではない。抵抗を受けずに一直線に突き進む剣がララノアに向かう。
本来なら余裕で避けられる速度だが、しかし向かってくるのは避けられないという条件が付与された剣。
それにララノアは諦めて覚悟を決める。全力で応戦する覚悟を。まだ舐められている内に逃走するしか勝ち目がないのだから、ある意味最も合理的とも言えるその選択。
そしてララノアの取った行動は異様なものだった。中指を親指で抑える──いわゆるデコピンの姿勢を作る。
「もう、なんとでもなれっす!!」
そして──弾いた。剣と中指がぶつかり、引き起こされたのはその軽い動作からは考えられないほどの轟音。
瞬時に大気が捲き込まれる。引き起こされる力の圧縮に、そして空気が弾け飛んだ。
バグン、と音が鳴りそして終わる、剣が固い音をたてて地面へ落ちた。
砂埃が巻き上がり、パラパラと破片が落ちる。
「……なるほど」
何度か辺りを見回し、ララノアが完全に消え失せていることを確認したミストラルは軽く笑んだ。それはリーダーが何をしようとしているのかを薄らと理解した故の反応。
だがまだ足りない。理解するには情報が足りない。だから、ミストラルは続けて言葉を紡ごうとする。
「『ララノア・セフォンドーラは私の前に現れ──』」
そして、ミストラルがその言葉を言い切ろうとした瞬間。
「──ないわ! そうでしょう?! ミストラル!!」
ミストラルの真後ろから声が響いた。
幼い色を含んだ、だが威厳を持ったその声が広く辺りを埋め尽くしたのを合図に、ミストラルは──笑った。