ミストラルはその満面の笑みを浮かべた顔を隠そうともせず後ろを向いた。
「『ララノア・セフォンドーラは私の前に現れない』。うん。リーダーが言うなら、そう。……それで、久しぶり。リーダー」
「ええ、久しぶりね! それで!! 何か言いたいことはあるかしら?!!」
それを聞き、ミストラルは数秒固まった。
「……ある。ありすぎて困るくらい。なんで、私を避けるの? なんで私を見てくれないの? 私は……なにかした?」
それに対する少女の反応はミストラルにとって冷徹なものだった。
「そうね、その質問が来るとは思ってたわ!! けどね! ミストラル! その質問に対して私は、貴女に『無用に動かないで』としか言えないわ!!」
ぐっ、と息を呑む。そしてミストラルは吐き出すように言葉を続けた。
「でも! 私はリーダーに──」
「──ええ!! 分かってるわ!! けどね! そんなことより今はいいたいことがあるの!! ミストラル、分かるかしら?!!」
「……分からない。リーダーが何を考えてるのか。何をしようとしても、私かいた方が上手くいく。私に頼ってくれれば、リーダーに出来ないこともできる……」
俯きながら、呟くように喋る。それを見て、少女は叫んだ。
「多分ね、考えのスタート地点から違うのよ!!
ミストラル!! 貴女、戦闘禁止の令を破ったわね?!」
それを聞き、驚いたように目を見開く。そして、ミストラルはギリッと歯を食いしばった。
「……リーダーは、私のことより……そんなどうでも良いことを気にするの?」
「あのね?!! ミストラル、決まりは重要よ! いくら貴女でもそれを破ることは許容しないわ!!」
ミストラルは再び俯いた。そして、ゆっくと顔を上げる。爛々と燦めくその瞳に宿っていたのは、爆発寸前の感情だった。
「──そう。分かった。リーダーがそう言うなら、私は無理にでもリーダーから話を聞き出す」
「ミストラル!!! 話を聞いていたかしら?!」
「……『止められない剣』『見えない炎』『避けられない槍』──『避けられなく、対象を貫くまで止まることない刃』」
淡々と呟かれた言葉に従って空に浮かぶのは、ありとあらゆる条件が付与された武器の数々。
それを前に、少女は仁王立ちで応じた。
「ミストラル!!! まさかと思うけど、本気かしら?!」
「……本気。リーダーから見捨てられるくらいなら、 私がリーダーを屈服させればいい」
「見捨ててないわよ!! ただ、今は動かないで、って言ってるの!!」
「……私がそう取った──む」
──言葉の応酬の最中、ミストラルの真後ろに影が現れる。それは1人の巨漢──ガルシアだった。
「いくら一位とは言え許されんぞ、ミストラル!!」
そして、無防備なミストラルに拳が触れ──ピタリと止まった。
「なっ……」
あり得ないその光景を前に、ガルシアは目を見開く。
「……私は私に考え得るあらゆる条件を付与している。『私に攻撃の意思を持った者は私を傷付けられない』『リーダー以外が私に触れたらそれは停止する』、とか……あとは、そう……『ある一定以上を基準に受けた衝撃を反射する』とか」
「──ぐっ、ぉおおおおおお!!!」
そして、弾け飛んだ。爆音を撒き散らしながは、真後ろに向けてとんでもない勢いで吹き飛んでゆくガルシア。
小さくなって行くそれを横目に、ミストラルはため息をついた。
「……じゃあ、リーダー。戦闘、再開……『行って』」