贈り物にまつわる、とある重巡洋艦のお話。

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pixivにも投稿したのですが、文字数が予想以上に伸びたのでこちらでも投稿しました。


贈り物

優しくて、暖かい。

 

その人のことを、端的に表すのなら、これがベストだと、私は自信を持って答えます。

 

 

 

 

 

私は、生まれ持ったオッドアイと、艤装の影響により、左目だけ、不自然に光るようになってしまいました。

そのせいで、1部の人からは

「かっこいい!」

と持て囃されましたが、大多数の人は、気味悪がり、この左目はいつしか

「探照灯」

と揶揄されるようになりました。

 

あの大戦で、探照灯を照射しながら、華々しく散っていったその船が、その当時の私は、憎くて憎くてたまりませんでした。

 

私は、目を見られるのが嫌で嫌で仕方なく、前髪が目を隠すくらいに伸ばしていました。眼帯を勧められたりしましたが、距離感が狂うのはどうしても無理だったので、そうするしかありませんでした。

 

 

そんな時、彼と出会うことになりました。

 

私と彼が出会ったのは、深海棲艦との戦争が激しかった頃。私が、重巡洋艦 古鷹 として、海を駆けていた頃でした。

彼は提督として、私はその部下の艦娘として、幾多の海で、数多の敵と、海の平和を取り戻すために、戦い続けました。

そんな中私は、彼に強く惹かれることになったのでした。

 

 

出会って間もない、ある朝の事でした。

 

その日はいつも以上に寝覚めが良く、なんという理由はなしに、鎮守府の周りを散策することにしたのでした。

そのタイミングでばったりと、提督さんと出会いました。

 

「おはよう、古鷹。早起きなんだな。」

 

そう優しくかけてくれた声は、今でも忘れられません。

 

「おはようございます、提督。」

 

そう返答し、その場を離れようと歩き出した時、沖合から、強い風が吹いてきて、提督さんに、私の目を直接見られてしまいました。

気味悪がられてしまう。嫌われてしまう。

そんな考えが頭をよぎった直後、予想もしない反応が帰ってきました。

 

「綺麗だ…。」

 

なんということは無いその一言に、私はそれこそ深海棲艦の攻撃の直撃を受けたような衝撃を感じました。

 

「今……なんと?」

 

「あぁいや、別にやましい気持ちとかそんなのではなくて……単純に、綺麗だなと……。」

 

「この…左目ですか……?」

 

「あぁ、オッドアイで、キラキラと美しく輝く、古鷹の目が。」

 

私はこのやり取りで、完全に彼のことを好きになってしまったようでした。

 

その日から、少しづつ、前髪で隠していた目を、見せるようにしていきました。

幸運なことに、私の配属先になった鎮守府では、誰一人としてこの左目を

「探照灯」

と呼んで気味悪がる人はいませんでした。

 

 

そうしているうちに、私の「改二」改装が決定し、しばらく鎮守府を離れることとなりました。

 

数日の後、鎮守府に帰投した私を待っていたのは、満面の笑みと、小さな紙袋を携えた提督でした。

 

「改二おめでとう、古鷹。」

 

「ありがとうございます、提督。……あの…これは……?」

 

「改装終了記念の……プレゼント…ってことになるのかな。開けてみてくれるかい?」

 

「これは……ヘアピン…ですか?」

 

「そう。すごく悩んだんだけど、これがいいかなって。」

 

「提督……!ありがとうございます…!」

 

嬉しさのあまり、思い切り抱きついてしまったのは、今となってはもう、思い出話です。

艦娘をやめた今も、使い続けている大切なヘアピン。提督さんからの、初めての贈り物でした。

 

 

 

 

 

 

2度目の贈り物は、ケッコン指輪、でした。

夢にまで見たその指輪を、左手の薬指に通して貰った時、年甲斐もなく泣きじゃくってしまいました。

私の反応に、あたふたした様子で、心配してくれた姿は、今でも目に焼き付いています。そしてその後

 

「本物の、結婚指輪も、いつか君に贈る。」

 

そう宣言してくださいました。

 

それから彼は戦争を集結させることに成功。

私は、重巡洋艦としての生涯を終え、彼も提督としての生活に幕を下ろしました。

 

 

そうして宣言通り、私に、特注のプラチナの結婚指輪を贈ってくださいました。

 

左手の薬指にあるこの指輪は、その時のものです。

 

 

 

 

そうして始まった幸せな暮らしは、結局、5年も続くことはありませんでした。

 

車に轢かれそうになった子供の身代わりとして、その身を挺した彼は、そのまま呆気なく、死んでしまいました。

 

最後の最後まで優しくて、お節介焼きで、私の大好きな提督でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓

私とあなたが出会った年から、もう何度目か分からない春が来ました。

私は今、あの戦争で生まれた孤児のための、孤児院を経営しています。

いつか一緒にやろうねと、語り合った夢は、私が、実現させました。

あの事故から10年以上経った今も、命日には必ず皆さんお参りに来てくださいます。

 

あなたが、改二改装記念にと、初めてくれた贈り物は、今も大切に使っています。

2度目の贈り物も、大切に取ってありますし、最大の贈り物も、この左手で、美しい光を放っています。

あなたが美しいと褒めてくださった私の左目は、艤装と離れたことによって、輝くことはもうありませんが、この目で、前を見据えて、頑張っていこうと思います。辛いことがあったとしても、あなたがくれた想いとともに、最後まで、頑張ってみせます。

 

いつの日か、再会出来ることを願って。

              敬具

           重巡洋艦 古鷹


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