TSケモミミコミュ障が振りまわされる話。   作:ケモノ好き

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TSケモミミコミュ障が振りまわされる話。

 特に、何かやりたいことがあるわけではなかった。

 

 小学校では100点が当たり前だった。小テストも満点が当たり前で、できて当然だと思ってた。

 中学校ではこんなもんだと思うようになった。小学校みたいに行かなくて、受験なんていうイベントにひーこら言ってた。

 高校ではこれでいいかと思った。親に入れと言われた高校に入って、大学に行きなさいと言われたから大学を目指して、そこそこ友達と遊んでた。

 大学じゃあ現実を知って。ついにイベントもなくなって、ただ漠然と単位を取ることだけを考えていた。

 

 そんなこんなで大学三年生の夏頃。俺はただ就職するんだなーって思いながら、漠然と日々を浪費する生活を送っていた。

 何もやりたいこともなく、何をしたいこともなく、夢もなく。

 ああ卒論やらなきゃな。ああ内定貰わなきゃな、なんてことを考えながら、ありがちな不安を抱えて毎日を過ごしていた。

 

 そんなある日。世界で奇妙な病気が流行り出した。

 

 

 ──獣化症候群(アニマリアシンドローム)

 

 

 身体に動物の耳や尻尾が現れる病、だそうだ。

 原因不明。正体不明の病に、世界はそれはそれは沸いていた。まあ、日本だけはリアルケモミミに興奮してたけど。

 

 世界中が大騒ぎする中、そんな病気もあるんだなぁ、と考えて俺は特に気にもしなかった。自分のことで手一杯で。

 

 ただ流されていけば、幸せになれると思ってた。必要なことだけ考えていれば、それなりにいい人生をおくれると思ってた。

 

 

 俺の髪が、()()()()()()()()()

 

 

 

「────────は?」

 

 

 

 その日、獣化症候群(アニマリアシンドローム)・日本第一号、()()()()が確認された。

 

 

 春一番が吹き込む、二月の頃だった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「──ミナちゃん、ミナちゃーん」

 

 誰かが呼ぶ声がする。シャァーという音と共に、俺の顔に日光が差した。

 どうやら、朝が来たらしい。だけどまだ寝たい。せっかく暖かい毛布に包まれているのに起きなければならないのか。

 

「ほーら、ミナちゃん。起きて! 朝ごはん持ってきたよ〜」

 

「ん、ぅ……まだ、寝させて」

 

「ダメです。ご飯を食べるのも仕事なんですから! ってそんな可愛い仕草してもダメです!」

 

 ぐぅ、仕事と言われれば断りづらい。だけど、眠くて眠くてしょうがない。しかし微睡みも捨てがたく……

 

「ひにゃっ!?」

 

「ミナちゃん、起きました?」

 

「起きましたっ、起きてますっ!」

 

「今日は起きる日ですから、予定も詰まってるんですからね」

 

「わかりましたごめんなさい起きましただから手を放してくださいっ」

 

 彼女の手には()()()()()握られていた。尻尾を握られると力が抜けるから無遠慮に触るのはやめてほしい。……この場合、起きなかった俺が悪いのだけれど。

 

「じゃあ、ご飯持ってくるから待っててね」

 

「…………むぁい」

 

 そうして運ばれてくる朝食。ご飯に魚に味噌汁という、いかにも平凡な朝食だった。

 

「ミナちゃん、今日の予定は……」

 

「ハヅキさん、ミナちゃんやめてくださいって。むずむずします」

 

「かわいいじゃない?」

 

「撫でながら言われるとペットみたいな気分になるんです!」

 

 だから耳をくにくに撫でるのはやめろ。尻尾を右に左にしたんしたんしながら睨みつけてみる。

 だがあまり効果はないようで、「かわいい〜」と一蹴されてしまう。こりゃダメだ。そう判断して、魚を口に運ぶ。うん、美味しい。

 

「それで、今日の予定なんだけど……」

 

「むぐ。バイタルチェックと運動能力ですよね」

 

「そうそう、あとそれと血液検査もあるから」

 

「そうなんですか。わかりました」

 

 極めて事務的に返して、味噌汁を啜る。

 

 

 ここに来て、はや3ヶ月。

 意外と研究対象(モルモット)な生活も悪くなく、悠々自適に暮らしている。毎日の早起きと検査が苦じゃなければ、楽で仕方がない生活だ。お給金も払われるし、就職に悩まなくてもいい。なんて楽な生活だ。まあ、自由度が低いのがたまに傷だけど。

 

「じゃ、おめかししましょっか」

 

「あの、二十歳(はたち)の元男に言うの恥ずかしくない?」

 

「今は女の子でしょ?」

 

「……まあ、そうですけど」

 

 そうしてなされるがまま、俺は部屋に備え付けられた洗面台に連行され、鏡の前に座らされる。そうして目に入るのは、今の俺の姿だ。

 

 銀と黒の中間のような灰色の長髪に、鳶色の瞳。揺れる尻尾と時折動く耳がついた、現実離れした少女がそこに立っていた。

 髪を長くしているのは、研究の一環だ。本当はばっさりと切りたいが、髪も研究材料の一つらしい。というわけで、髪を短くするのは自粛させてもらっている。長いと蒸れて面倒なのだけれど仕方がない。

 

「さて、しっかり決めますよ〜!」

 

「……ほどほどによろしく」

 

 「任せて!」とハヅキさんは言うと、さっそく櫛やらヘアゴムやらを持ち俺の髪をまとめにかかる。ハヅキさんは弟妹が多いらしく、やってあげることが多かったからか、子どもの世話は大の得意らしい。……俺は子どもではないけれど。

 

「そういてばミナちゃん。一ヶ月前、新しいアニマリアの子、増えたじゃない?」

 

「え、そうでしたっけ?」

 

 アニマリア──症候群に疾患した人たちの略称だ。それはそれとして、一ヶ月前?

 

「もう、世情に疎いわよ?」

 

「なんですその言い回し……いえ、別に。気にする必要はないと思いまして」

 

「あらそうなの? で、その子はまぁ問題児だったんだけど……動画投稿やってて、最近登録者50万人超えたらしいわよ?」

 

「…………はい!?」

 

 登録者50万人……は置いといて、動画投稿!?

 

「え、あ、あの。動画投稿、ですか!?」

 

「そうそう。あの子検査断っていろんなところ行って、遊んでたから健康診断も大変で。動画を見る限り元気そうでよかったわ」

 

 髪を梳くハヅキさんをよそに、俺はそれどころじゃなく。それ以上、ハヅキさんの話は聞く気にはなれなかった。

 

 

 

 


 

 

 

「はぁ〜、終わったぁ……」

 

 そして夕方。検査(しごと)が全て終わり、やっと安住の住処(ベッド)に帰ってこられた。ぽすんっとベッドに身体を投げ出して、枕を抱きしめた。

 そのままスマホを手に取って、ゲームを開く。それが仕事終わりの日課だった。だけど今日は指が止まる。

 

「アニマリアが動画投稿、ねぇ……」

 

 思わず、そう呟いた。ハヅキさんが言っていたことが、妙に頭にこびりついていた。好奇心もあるが、それ以上に怖くもある。だけど……

 うんうんうなって結局、その人の動画だけ見てみよう。そう思って、久しく開いていなかった動画アプリを開いた。オススメに出てくる動画を見ないように、予測変換も見ないように動画を検索する。すると、案外簡単に投稿主を見つけることができた。少しだけ躊躇って、動画を再生する。

 

 

『こんにちはー! トーリです!』

 

 

「にゃっ!?」

 

 いきなりの絶叫に、変な声が出た。久しぶりにアプリを開いたせいで、ボリュームを大きくしていたらしい。慌てて音を下げて、こほん、と息を取り直して再生する。

 

『皆さんこんにちは! 今日はですね〜……』

 

 見る限り、犬のアニマリアだろうか? どこか人懐っこい顔は、なるほど、確かに人気が出そうだ。

 こうして始まったのは質問コーナー。コメントやSNSに書き込まれていた質問に答えていく、というありふれたものだった。

 

『【耳は本物ですか?】 本物だよ〜。ふりふり…………って言っても動画だから証拠もないけどね!』

 

『【何のアニマリアなの?】 犬! らしいよ? 何で判断してるかは知らないんだけどね』

 

『【ちぃちゃんいつ来るの?】 気分だよ!』

 

『【尻尾でドミノ倒しして】 よし、完成! 行きます! …………はい! なんだこれ』

 

 ……まあ、本当にありふれたものだった。

 次々と質問に答えて、意味のわからないリクエストにも丁寧に答えていく。特に意味のわからないのは【尻尾洗うときに使う洗剤はどれくらい美味しいですか】だ。なぜそれを選んだのだろう。

 

『よし、じゃあ今日はこれまで! じゃあね〜!』

 

 そう言って、彼女の動画は終わる。

 最後まで笑顔で、ほんのちょっと前に動画投稿を始めたなんて思えないくらい、上手に。それでいて、作りものとは思えないくらい、心から本当に楽しそうに笑っていて。

 

「……自分には、無理だなぁ」

 

 頭から布団をかぶり、そう呟いた。

 

 きっと、彼女は思ったこともないのだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 脳裏に思い浮かぶのは、アニマリアになったばかりの周りの人の顔。

 

 ──その顔はどれも、遠回しに責めているようで……

 

「……っ!」

 

 モヤモヤした気分を払うように、枕に顔を押し付けた。だけど、一向に気分は晴れなくて。鬱屈した気分に、泣きたくなった。

 

 

 

 ────、

 

 ──、

 

 ……、

 

 

 

「──て、起きて!」

 

「……ん、あ?」

 

 誰かの大声で目が覚めた。薄らと開けた目を動かせば、カーテンの隙間からは日光が差し込んでいた。……って何で朝に。どうやら、寝てしまっていたらしい。ハヅキさん、起こしてくれてもよかったのに……

 

「ハヅキさぁん……何で起こしてくれなかったんですか……」

 

 慣れない寝方をしてしまったせいか痛む関節を伸ばし、恨みがましげにハヅキさんがいるであろう場所に目を向ける。夕飯だって仕事の一種だろうに、なぜ起こしてくれなかったのか。お腹が減った──

 

「かわいい〜っ!!」

 

「わぷっ!?」

 

 いきなり、ハヅキさんに抱きつかれた。なぜだ。ハヅキさんいつもそんなことしてこなかったくせに! 流石に距離が近すぎっ……

 

「な、何してるんですかっ、ハヅキさ──」

 

 ──その言葉は、続かなかった。

 

 だって、ハヅキさんだと思っていた人は、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「おはよう!」

 

 

 そう言って元気に挨拶をしたその人。

 快活そうな笑顔を引っ提げて、雰囲気にバッチリあったケモノの耳。そして嬉しそうに振られる尻尾……

 

「…………なんで?」

 

 信じられないという俺に、彼女は笑う。

 

 

「初めまして、アニマリアのトーリです! 会いにきちゃいました!」

 

 

 昨日見た、まさかの人物。

 動画で見たよりも映える、人懐っこそうに、ぺかーっと輝く笑顔を振りまく彼女。明らかに自分と違う世界の住人に、俺は──

 

 

「……とりあえず、お帰りいただいていいですか?」

 

「何で!?」

 

 

 

 

 

 

 

 




 



 コミュ障が喋りすぎだって? さてはコミュ障エアプだな? コミュ障は「こいつなら素出していい」って判断した相手ならペラペラ喋るしふざけ出すよ。

 研究棟については無知なのでふわふわに。
 性転換は百合に含めていいのか微妙ですが……
 あと、アニマリアに関してはキ○ミンずぅは関係ありません。

・ミナセ/ミナちゃん
ミナちゃん言われている元大学生。
猫。コミュ障。

・トーリ
You○uber的な珍生物。
犬。陽キャ。やりたいことは我慢しないタチ。
実は一週間前にアポ取ってた。

・ハヅキさん
ミナセの看護師的な人。普通の人間。
実は伝えてなかった。戦犯。


 布教は禁止されてないようなのでぇ……

 ケモミミが好き、百合が好きなら猫娘症候○見て……見て……
 ケモミミ(猫)と百合が合わさって最強に見えるから。完結してるけど今なら一話ずつ更新されるし(8月まで)、後書きイラストも可愛いから……
 GANM○!でチェックだ!
 ついでに作者様はスペ○ズの2ページ漫画を描いてたもよう。

 ケモノ成分が足りない?
 ならケモノギ○見てぇ……8割人外だから。しかもケモノだから。今なら全話無料。スペコンとかいいのしかない上に特に21話は人外のえっなのが一部書かれてるから。第二部連載中だよ! サイコ○でチェック!(8月20日現在、終了してました)
 作者様は蹄鉄フェチらしい。ツイッタ○にいろいろ上がってるぞ!

 え、エグさが足りない……?

 っ[メイドインアビ○]
 

 次回更新はあるかどうかわかりません。
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