TSケモミミコミュ障が振りまわされる話。   作:ケモノ好き

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※三話を5月から6月に修正してます。


第5話

 

「ミナちゃん、お昼ご飯の時間ですよー」

 

「……はぁい」

 

 

 トーリさんと動画を撮ってから、一週間が経った。俺が出た(尻尾だけ)動画は、そこそこ見られたらしい。コメントは『尻尾だけは草』とか『生殺しやんけ』というコメントが大半だったらしい。

 なぜ“らしい”なのかというと、トーリさんとハヅキさんからの情報しか聞いていないからだ。

 だって、恥ずかしい。コメントを見ないにしても、尻尾しか出ていないとはいえ、自分がでている動画なんてどう見ればいいのだ。

 というか、こんな情報を得られているのも、いつのまにか入れられていたSNSアプリのせいだ。帰ってきてゲームをしていると、いきなりトーリさんから連絡が来て飛び上がってしまった。

 それからまあ、それなりに連絡はとっている。なぜか、スイーツの写真ばっかり送られてきて、羨まし──うっとおしいと思うけど。一体、いつ入れたんだろう……

 

「それにしても、よく動画に出たわね。ミナちゃん、あんなに嫌がってたのに。なにか心変わりでもしたの?」

 

「いや、なし崩し的に……」

 

「そうなの? それにしては楽しそうにしてたじゃない。紙の玉投げて。もしかして、ノリノリだった──痛い!?」

 

 うっさい。余計なことを言うハヅキさんには、尻尾で叩いておく。

 

 ノリノリだなんて、あるわけもない。

 俺はいかにして動画に映らないかだけを考えて行動していたのだ。そんなことを考えている余裕なんてなかった。

 あるとすれば……トーリさんに、乗せられただけだ。それしか、考え、られない……

 

 

『……ありがとう。動画に出てくれて。おがげでとっても楽しかった』

 

「……っ!」

 

 昼ご飯のカレーをかき込んで、水を流し込んだ。

 

「ミナちゃん?」

 

「は、はい!? 何ですか!?」

 

「大丈夫? 尻尾がめちゃくちゃだよ?」

 

「大丈夫です!」

 

 ああもう、変なことを考えてしまった。トーリさんが来てから、調子が狂うばかりだ。

 別に変なことはじゃない。ただ、お礼を言われただけだ。それがただ、なぜか妙に恥ずかしかっただけだ。何故かわからないけど!

 

「……ごちそうさまでした。ハヅキさん、今日ってあと何かありましっけ」

 

「うん、ないよ? ……あ」

 

「へ、何かあるんですか? なら早くしないと……」

 

 

 そう言った、時だった。

 

 

「ミナセちゃん! 来たよ〜っ!」

 

 

 聞いたことのある声。他でもない、そんな言葉とともに現れたのは、他でもない、トーリさんだった。

 

「な、なんでトーリさんが!?」

 

「迎えに来たよ〜、じゃ、行こっか!」

 

「どこにですか!?」

 

 いきなり現れてなんだこの人! ええい、説明もなしにどこかへ連れて行こうとしないで!

 

「そうそう、トーリちゃんが来るって伝えるの忘れてたのよ」

 

「今言いますか!?」

 

「じゃ、早速着替えてきましょうか。トーリちゃん、ちょっと待っててね!」

 

「はーい!」

 

「俺の意見無視ですか!?」

 

 

 なんかデジャヴ!

 

 結局、徹底的に囲いにかかる二人に敵うはずもなく……また俺は綺麗に磨かれてトーリさんに投げ渡されることになった。

 アニマリアの研究はいいのだろうか。たしかに、暇だったけれども……!

 

 

 


 

 

 

「それで、なんで俺を連れ出したんですか」

 

 

 俺とトーリさんは今、またあの道を歩いていた。今日は平日だからか、人の姿はまばらだ。その分、多少歩きやすくて助かった。

 

「また遊ぼうって言ったでしょ?」

 

「言ってましたけど……」

 

 何か、社交辞令的なものだと……

 

 まさか本当にまた遊ぶ……遊ぶ? ことになるとは思わなかった。なんだか、また振り回されることになる気がするけど。

 

「そういえば、私の動画見てくれた?」

 

「いえ、まったく……」

 

「えー、ミナセちゃんの動画とか評判良かったんだけどなー」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 そう答えたきり、無言で歩き続ける俺とトーリさん……

 

 か、会話が続かないっ……!

 

 二人で歩いているのに会話が続かないのはいただけないのでは? ど、どうすれば……

 

「そ、そういえばトーリさん」

 

「うん、どうしたの?」

 

「なんで、トーリさんは動画投稿を始めたんですか?」

 

 とりあえず、何も不思議じゃない程度に会話をしてみようと、前から気になってたことを聞いてみる。

 一体、何を思って動画なんて始めたのか。それだけは、ちょっとだけ、聞いてみたかった。

 

「うーん、そうだなぁ」

 

 俺の問いを聞いたトーリさんは、考える素振りを見せて、「うん」と頷いた。

 

「やってみたかったからかな!」

 

「えっ……」

 

 “やってみたかった。だからやった”といつ極めてシンプルな、予想してなかった答えに思わず声が漏れる。

 

「ほら、今流行ってるじゃない? そういうの。レビューとかバーチャルとか、だからいつかやってみたいなーって思ってて。アニマリアになったから、ちょうどいいって思ったんだ〜!」

 

「え、あの……それ以外の理由って」

 

「無いね!」

 

 おう、ばっさり。

 

 なんというか、すごいな。

 

 そう楽しそうに語るトーリさんを見つめながら、思う。

 

 怖くは、なかったんだろうか。

 

 まだアニマリアが現れて、一年も経っていない。前例はあったとしても、まだアニマリアへの偏見は根強い。それなのに、何でただ“やりたい”だけで、こんなに行動できるんだろう。

 

「なんでそんな簡単に、やろうって思えるんですか?」

 

 思えば、口から勝手に、そんな言葉が出ていた。

 

 すると、トーリさんはきょとんとした顔を浮かべて、足を止める。

 

 まずい、地雷に触れた……!?

 

「ご、ごめんなさい。無遠慮な質問してすいません!」

 

 思いもしなかったトーリさんの反応に、反射的に謝罪する。ああ、失敗した……!

 

「──後悔したくないから」

 

「……へ?」

 

「後悔したくないから、だよ」

 

 そう言うトーリさんは、先ほどまでの顔をくるりと変えて、ニヤッとした笑顔を浮かべて、続けた。

 

「やりたいことをやらないなら、“後悔”しか残らないからね! だからやりたいことは我慢しないようにしてるの」

 

 さも当然のように語るトーリさんは、すごく眩しくて。まるで純粋な子どものように笑うトーリさんを、直視できなかった。

 

「だから、ミナセちゃんを誘ったわけだしね!」

 

「え、そこからどうしてそこにつながるんですか」

 

「あ、着いた着いた! いらっしゃ〜い!」

 

「話聞いてます!? って……」

 

 いつのまにか、トーリさんの家に着いていた。まさかとは思ったが、もう一度この家に来ることになるとは思っていなかった。

 

「ただいま〜!」

 

 そう言って家に入っていくトーリさんをみて、思う。

 

「すごいなぁ……」

 

 俺には、無理だ。

 やりたいからやる。それは、きっと言葉にするより難しいことで。それをしようと思えるだけ、きっとすごいことなんだろうな、と思う。少しだけ、羨ましいかもしれない。

 

「ミナセちゃん、早く〜!」

 

「は、はい! お邪魔します!」

 

 トーリさんに呼ばれたから、急いで家の門を潜る。それにしても、ここで一体何をするつもりなんだろう。動画撮影だったら逃げ……られる気がしない。

 家に入った俺は、すぐさまリビングに通された。トーリさんは奥からお茶とコップを持って、俺に渡してくれた。

 

「いらっしゃい、ミナセちゃん」

 

「は、はい。どうも……それで、今日はなんで連れてきたんですか?」

 

「あれ、さっき遊ぼうって言ってなかったっけ?」

 

「……へ?」

 

「一緒に遊ぼうと思って、いろいろ用意したんだ〜」

 

「……あの、動画の撮影、とかではなく?」

 

「へ、撮りたいの?」

 

「ち、違います!」

 

 まさか、本当に遊ぶだけとは。

 

 内心でほっと一息。また動画に参加させられるかと思った。俺なんて参加しても、ろくなことにならなさそうだし、今日に至ってはただ遊びたいというのなら、まあよかった。

 

「じゃあ、ちょっと持ってくるね!」

 

「え、何をですか!?」

 

「秘密〜」

 

 えへへ、と笑ってその場を後にするトーリさん。それも、なぜか尻尾を振って。とんっ、とんっと軽い足取りでどこかへ向かっていく。

 

 なんだか、嫌な予感がする。

 

 今まで見たこともないトーリさんに、俺のナニカがそう告げていた。だけど、何をするかも想像がつかない。冷や汗を流しつつ、トーリさんを待つしかなかった。

 

 

 


 

 

 

「……さすがに、遅くない?」

 

 ──あれから、十分経ってもトーリさんは戻ってこなかった。

 

 一体、何があったのだろう。ミミをすましてみても、ゴソゴソという音がするくらいで、ほとんど物音がしない。それに、何か歩いている、という感じでもない。

 

 ……まさか、何があったのだろうか。

 

 ちょっとだけ、心配になってきた。

 下敷きになってもがいてるとかじゃないよね……?

 

 探しに、行こうか。

 

 人様の家を勝手に散策するのは気がひけるが、何か大ごとになるよりはマシかもしれない。でも、やっぱり人の家を勝手に……

 

「……ん?」

 

 そう思っていた時、足音が聞こえてきた。どうやら、杞憂だったらしい。何事もなかったようでよかった。少しだけ安心した気持ちでお茶を口に含む。

 

 トタ、トタっ、という音は、規則正しくリビングに向かっていた。そしてそれが、不意に止まって、リビングの扉が開かれた。なんの気無しに、トーリさんに目を向ける──が、止まる。

 

「……はい?」

 

 そんな声が、自分の口から漏れた。いや、だって仕方がない。

 

 だって、入ってきた人は()()()()()()()()()()()()()。むしろ、見たこともない、知らない人で。いうなれば、()()()()()で……!

 

 そんな彼女は、薄い黄色の尻尾を揺らし、同じ色のミミをピンっと立たせ、驚いたように震わせていて──

 

 

「…………誰?」

 

 

 やっと口を開いた彼女は、ここにいて当然、というように話しかけてきた。

 

 

「……そっちこそ、誰ですか!?」

 

 

 あまりにも不審者すぎる不審者に、俺も思わずそう叫んでいた。

 

 

 




 
 
 新アニマリア登場! 実は名前だけ出してたりします。彼女は誰なのか……? と。
 
 コミュ障は、二人で歩いていると話したくはなくとも、何か話さなければ失礼なのでは……? という観念に囚われたりする生き物です。
 

 感想とお気に入りを多くいただいて、戦々恐々しながら投稿しております。TSケモミミ百合ってすごいなぁと。鈍足ですが、お読みいただきありがとうございます……!

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