なおタマはまだ土に埋まっている模様。救いはないんですかー?
「やっと着いたわね!遊園地!」
「おう、そうじゃのう……」
地方のレースが終わった翌週にアタシとトレーナーとで遊園地で遊ぶことになった。どうしてそうなったのかというと、ある時にトレーナーがパチンコで期限間近のチケットを獲得したらしく無駄にしないためにアタシにくれた。
いつもなら「友達と行ってこい」とか言うはずなのに今回は珍しく乗り気だった。当然断る理由もないから快諾したんだけど、何か裏がありそうなのよね。まっ、大丈夫だとは思うけど。
「うぅ、頭が痛いぜよ……」
「どうして前日にたくさんお酒飲むのよ」
「昔に頼んじょった酒が届いたきに、飲まんわけにはいかん」
「このアル中、ほらシャキッとしなさい。情けないわよ」
なお二日酔いのままバスに乗って乗り物酔いを起こしたトレーナー、当然の如くグロッキーな状態だった。顔色は真っ青で足取りが覚束なかった。
この調子だと初手から激しめのアトラクションには乗れないわね。まったく、人気があるジェットコースターには混む前に乗りたかったけど仕方がないわね。
「そんなに苦しいなら荷物持ってあげるわよ。普段手ぶらなくせにバッグなんて持っちゃって」
「いいや、これはわしが持つ」
「あっそ。体調が悪化しそうなら言いなさいね」
「おん」
「じゃあゲートに行きましょう。今日は楽しむわよ!」
久しぶりに遊園地で遊ぶとなるとワクワクするわ!最後に行ったのは小学生の頃かしら。ママはいつも忙しいのにこの日のために予定を空けてくれたのよね、懐かしいわ。
ゲートにチケットを通して入場すると、目の前に大きなマスコットのオブジェクトが存在していた。犬なのか猫なのかいまいちわからないモノだけど、記念として撮るには悪くないわね。
「トレーナー、写真撮りましょうよ」
「おうえいぞ。ほれ、スマホを出せ」
「えっ、何言ってるのよ」
「あぁ?じゃからおまんを撮っちゃるからおまんのスマホを」
「そういうことじゃないの。はぁ、アンタって鈍感ね」
「わしをバカにしてんのか。天才のわしが鈍感なわけなかろうて」
「……だからこういうこと!」
意図に気づけないでいるトレーナーに痺れを切らして、アタシは片手にスマホを握りもう片方の手でアイツを引き寄せる。そして密着させた状態でカメラを起動させ、背景にオブジェクトが入るようにした。
呆気にとられるトレーナーを写したままパシャリとシャッターを切った。
「これでわかったかしら」
「……お、おう」
「ならいいわ。じゃあ進みましょう」
アトラクションがある方へ進もうとしたらポツンとトレーナーが立ち尽くして不思議そうに言ってきた。
「おまんはそれでえいがか?」
「何が?」
「わしと写っても恥ずかしくはないんか」
「はあ?インタビューとかで写る機会あったじゃない、今更すぎるわ」
「あれは仕事じゃからのう。けんどわしが言いたいのは、そのなんじゃ……」
「プライベートで撮ること?」
「……わしなんかと撮ってもえいことなんぞない」
「ホントにバカね、アンタ。好きじゃない奴だったらしないでしょ」
カラオケでの一件や映画へ一緒に行ったことを鑑みてもアンタを好いているからこそってわからないのかしら。だから鈍感って言われるのよ。まったく、けどそういうところがトレーナーの愛嬌として受け入れられているのかも。
「……ほうか。ほんならえい」
「それじゃあ行きましょうか!モタモタしていると置いてくから!」
「おい、待てや!」
せっかく楽しむために来たのにもったいないんだから!
最初に目を付けたアトラクションはゴーカートでちょうど並んでいる人も少なかった。速度は出るけど、さほど揺れないから大丈夫よね。
「ゴーカートか。わしはこう見えて普通免許を持っていてな。車の運転はバッチリじゃ」
「それあんまり自慢になってないわよ。ランクは?」
「グリーン」
「そこはゴールドにしなさいよ!」
「ポリ公のネズミ捕りが悪いぜよ。あんなとこに隠れよって……!」
「悪気があってやったわけじゃないんだから」
「そのせいでその日のパチンコ代が消えたんじゃ!」
「まっ、運転を改めなさいってことね」
「ぐぬぬ」
列は進み、アタシたちの番になった。ゴーカートの運転方法って簡単でブレーキとアクセルとハンドルしかない。だからどんな人でも操れるようになっている。
ゴーカートに乗るのは初めてだけどこれなら楽しめそうね。トレーナーはどんな感じなのかしら。
「どういてクラクションが無いんじゃ。どう鳴らせばえい」
「……悪質ドライバーみたいね」
「事故は起こしとらんわ」
「ねぇ、レースをしない?」
「それはえい。運動でウマ娘が人間に負けるはずはないが
「でしょ。アンタとは一度レースをしてみたかったの」
「どうせわしが勝つがな」
「言ったわね。一番はアタシよ!」
前にある信号機が赤に点灯する。従来のカーレースみたいに緑になったらスタートだ。いつでもスタートができるようアクセルに足を乗せて待っていると、ゲートを出る瞬間みたいで緊張してきた。
隣ではトレーナーがアクセルを踏んで吹かしている。
―――――そして赤から緑に変わった。
「おかしいじゃろ!」
「まあ運が悪かったわね」
「どういてこうなるんじゃ!」
不満を漏らすトレーナーをどうどうと嗜める。結果から言うとアタシが勝った。いや、勝たない方がおかしかった。
実はゴール直前のカーブまではお互い接戦を繰り広げていた。抜かれ抜きつつの展開を繰り返しながらカーブへと差し掛かった時だった。どうやらトレーナーが運転するゴーカートのハンドルとブレーキが利かなくなる故障が発生して曲がることができず、防御壁だったスポンジに突っ込んでしまった。幸いにも怪我はなかった。
「けどいいレースだったじゃない」
「じゃから嫌なんじゃ。あと少しでおまんに勝てたのに……ッ!」
「だけど故障してしまったお詫びに次回の来園チケットくれたからその時に再戦しましょう」
「ふん、ちゃんとしたレースならわしが勝つがのう」
「吠え面かかないでよね」
「にしても暑いのう」
「確かに五月とはいえ暑いわね」
「ほんならあそこで涼むか」
そう言ってトレーナーが指を指した。その先には鬱蒼とした不気味な廃病院が存在している。当然、遊園地に病院があるわけないからアトラクションなんだろうけど自ら進んで行きたいとは思えなかった。
てか幽霊とかが苦手なの。
「絶叫廃病院じゃと。面白そうじゃのう」
「はああああ!?なんでお化け屋敷なのよ!」
「おう何じゃ不満か」
「だって涼むからって行く場所じゃないわ!」
「……ほーん、怖いんか」
「なっ!?」
ニタリと悪趣味な笑みを浮かべてきて、癪に障った。誤魔化そうとそっぽを向いて胸を張る。
「べ、別に幽霊とか非現実的なこと信じるわけないじゃない!」
「おう、ほんなら入れるよな」
「……入るわよ」
「聞こえんぞ。はっきり言えや」
「入るって言ってるでしょ!」
「言質は取ったぞ。とっとと行くぜよ」
「くぅ~!!」
ついカッとなってウオッカと張り合うみたいに見栄を張ってしまった。その結果、アタシを怖がらせたいトレーナーの思惑通りの展開になってしまった。とても悔しいわ。
「うぅ、ちょっと離れないでよね」
「離れるも何もわしの腕に掴まりおって」
「これはあれよ、アンタが迷子にならないようにね!」
「抜かせ。本当は怖いんじゃろ」
「こ、怖くないんだから!」
廃病院に入った途端、やけに冷たい室内と不気味な雰囲気が体を冷やしてくる。室内にはライトがあるけど、チカチカ点灯していて不気味さに拍車をかけている。ちょっと進んでみるとフロントがあって、書類やボロボロになったベンチが散乱している。
「な、何も起こらないわね」
「まだ序盤じゃからのう」
「こ、こっちね」
「そっちはルート外じゃ。何処へ行く」
「知ってたわよ!」
ルート通りに進んで行くと診察室に出た、どうしても出口に行くためには此処を抜けないといけない。震える足をなんとか前に出していくと、ベッドの上にシーツを被ったまま横たわった人が居た。お約束の展開だけどそれがとても怖かった。
「あ、あれ絶対動くわよ……!」
「ほうかのう」
「と、とぼけたフリ下手くそね!さっさとこんなところ出ましょう!」
「あっ、動いた」
「ひいっ!?」
「はっ、冗談ぜよ」
「~ッ!!」
「わしの足を踏みつけるな!痛いきに!」
ホントにこういうところでバカをするんだから!このオタンコニンジン!で、でもシーツの人を横切ったけど何もなかったから安心――――
「ウガアアアアア!!」
「ぎゃあああああ!?」
「ま、待てダスカ!わしを引きずるなあああああッ!!」
安心したのもつかの間、後ろに置かれていたロッカーが突然開いて医者の姿をしたお化けが驚かしてきた。意地を張るのも忘れて叫びながら出口に向けて走る。
やっと出口を出たらトレーナーがアタシの腕にしがみ付いていた。やっぱりトレーナーも怖かったのね。
「ふ、ふざけんなやダスカァ!どういてわしの腕を離さんのじゃ!」
「え?アンタがアタシの腕を掴んでいたのよ」
「逆じゃ逆!おまんが走るからわしも引きずられるんじゃ!」
「……あー、そういうわけね」
「おかげでウマ娘のスピードを再確認したぜよ……」
「これでトレーニングに活かせる、はず!」
「なわけあるかァ!!」
……流石に今回ばかりはアタシに非があるわ。今度は気を付けないと。
そんなこんなで軽く昼食を食べてから向かったのは遊園地の目玉アトラクションであるジェットコースターで、近づくにつれて乗っている人の悲鳴が聞こえてきた。
「まっことデカいぜよ……」
「富士山の某遊園地と同じよ。すごいわね」
「にしてもげにカップルが多いのお」
「そうね」
確かに周りにいる人たちは友達と来た人よりもカップルが多い。結構この遊園地はデートスポットとして人気でメディアからの取材をよく受けていた。そのおかげでジェットコースターも改造に改造を重ねて今に至った。
「それがどうかしたの?」
「いや、なんちゅうか……」
「居づらいのね」
「まあそうなるきに」
「別にいいじゃない。教え子と一緒に遊園地だなんてカップルそのものよ」
「……それってトレーナーとウマ娘の関係的にええんかのう」
「今更すぎるわね。てかトレーナーとウマ娘が結婚することもあるのよ」
実際、ミホノブルボン先輩のお父さんもトレーナーでお母さんが当時担当していたウマ娘なのよね。とあるトレセン学園の二つ名では婚活会場とか言われてたわね。まあそれほどトレーナーと関係を持つのが多いってことか。
「……結婚か」
「あら。トレーナーって意外と興味あるの?」
「そうわけじゃないきに。ただのう……」
「ただ?」
「わしには結婚なんてできんと思ちょってな」
トレーナーは目元を暗くして悲しそうに言う。トレーナーは先生という人からしか愛情を貰わなかったから結婚した自分や家庭がわからないでいる。それと自分が脆いことを勘づいていたからそれを隠すように才能を誇示していた。それらが相まって結婚、いやそれどころか交際という未来が見えずにいる。
環境が悪かったと言えばそれだけだけど、それではあまりに救われないと思った。
「だったらアタシが教えてあげるわよ」
「あぁ?」
咄嗟に出てしまった一言だった。虚を突かれてあどけない顔になるトレーナー、そしてアタシは今自分がなんて言ってしまったかを思い出し全身の血液が沸騰した。顔が一気に熱くなって恥ずかしさが込み上げてきた。
「い、いやその……他意はないのよ!えぇうん、そのね!」
「おまんがわしに色恋をじゃと?」
「は、はあ!?そ、そこまでは言ってないんですけど!」
「くははははは!!」
「笑わないでちょうだい!」
「おまんみたいな生娘が教えよると思うとげに腹が
「もー!心配して損した!」
腹を抑えてゲラ笑いをするトレーナーにそっぽを向く。
いっつもからかってきてホントに嫌になるわ!アタシが失言したのが発端とはいえそこまで笑わなくたっていいじゃない!
……まっ、やっぱトレーナーに暗い顔は似合わないからいいけど。
「……きついGと浮遊感だったぜよ」
「……うん。一日一回だけでいいわ」
結構な時間並んだ末にようやくジェットコースターに乗れたアタシたち。たかがジェットコースターだと高を括っていたけど、実際はかなり激しいもので大変だった。まずは体を潰してくるGに耐えると、次に体がフワッとするあの不快感が襲ってきた。左右にも揺らされるのでバーが外れてしまわないか心配でたまらなかった。
ようやくスピードが落ちたと思えば一日に三回しかない逆走が起きてもみくちゃにされて、戻ってきた時には二人ともグロッキー状態だった。友達の誰かが行くってなったらこのこと注意しなきゃ……。
「どういて逆走するんじゃ」
「それがこのアトラクションの目玉だからよ……。ゆったりとしたものに乗りたいわ」
「もう夕暮れか。となると乗れる乗り物もアレしかないのお」
「どれ?」
「アレじゃ」
そう言われてトレーナーが指差した方へ向く。目線の先には大きな輪を持つ観覧車があって、輪の端々にはゴンドラがぶら下がっている。ちょうどオレンジ色の夕焼けが観覧車を照らして赤く見える。
「別にいいわよ。最後の締めにはピッタリね」
「ならえい。ほれ、乗れんくなる前に乗るぞ」
「……なんか乗り気ね」
「そんなこたぁない」
「だってさっきのアンタと違うし」
「そんなんえいから。乗るぜよ」
強引に手を引かれて観覧車へ向かった。やっぱりアタシたちと同様に最後の締めは観覧車だと考える人が多くて、結構な時間並ぶハメになった。その間トレーナーはずっとソワソワしていて落ち着かない様子で、話しかけてもトンチンカンな返事をすることがあった。
違和感に気づきながらもそれを指摘したら激情することを知っていたアタシは気づいていないフリを続ける。一応、長年の付き合いだしある程度のことはわかる。
「ふぅ、立ちっぱなしは疲れるわね」
「やっと乗れたな」
「ホントね。やっぱり人気あるわね、観覧車って」
「そうじゃのう」
ようやく乗れるようになったのは三十分後だった。夕日はもう沈みかけていて辺りが暗くなり始めている。ゆっくりとゴンドラが上昇して遊園地の全貌が丸見えになる。もう時間帯も時間帯だから運行を停止しているアトラクションがほとんどだった。
ちらりとトレーナーを見るとバッグを膝に置いた状態で貧乏ゆすりをしている。高所恐怖症なのかって思ったけど自分から観覧車に乗ろうと提案したしジェットコースターにも乗ったからその線は薄いはず。ならどうしてかしら?
「……おい、スカーレット」
「な、何よ」
黙りっぱなしだったトレーナーがついに口を開いた。ちょうどその頃になるとゴンドラは頂点へと至っていて、市街の様子が確認できた。ぽつぽつと家庭の明かりが灯されていくのがわかる。
にしてもトレーナーは意を決した様子でこっちを見てくるわね。何をしでかすのかわからないからすごく緊張するわ……。
「これをおまんに」
「えっ。何よこれ」
「えいから。さっさと開けてみいや」
トレーナーはバッグからひとつの紙の包装がされた小包を渡してきた。オシャレなデザインでなおかつ丁寧に包装がされていてからお店でやってもらったものだとわかる。テープを剥して綺麗に包装を解いていくと、中には赤色の木綿でできた首巻があった。
「これって……」
「おまんの誕生日プレゼントだと思えばえい」
「けどアタシの誕生日は明日なんだけど」
「知っとるわ」
「じゃあなんで」
「……プレゼントを連続で貰えたら嬉しいじゃろ」
「あら、別にそんなのしなくても喜ぶわよ」
「ほうか。ならえいわ」
「にしても首巻だなんてオシャレね。どうして選んだの?」
「おまんがわしと同じもんが欲しいとねだっとったじゃろ」
「……あっ」
指摘されて思い返してみると確かにそんなことを子供になった時に言っていたわね。うぅ、いくら子供になったからとはいえ一緒にお風呂に入ったのが忘れられないわ……!完全に黒歴史!
けどよく考えてみるとトレーナーと同じものなのよね、これ。わざわざ自分が大事にしている物と似たものをくれたと考えるとすっごく感慨深いわ。アタシを想ってくれてるのが伝わってくる。
「ふん、わしは服にゃあ興味がないきに。おまんが着けんのも勝手じゃ、気に食わんかったら捨ててもええぞ」
「せっかくのプレゼントよ。大事にするわ」
「……ほうか」
トレーナーは柔らかい笑みを零した。普段はゲラゲラと笑うけど、今回の笑顔は安堵と喜びが一緒になったからだと一目でわかる。
アクセサリーのプレゼントを貰ったらすることはひとつしかない。アタシは赤い首巻を巻く。木綿の肌触りが心地がいい。席から立って夕日を背にした状態で見せつける。トレーナーの目が赤色に染まる。
「どうよトレーナー、似合ってるかしら」
「あぁ、まっこと似合ってるぜよ」
「当然ね。だってアタシたちは一番のパートナーなんだから」
えっ?なんかトレーナーの方がヒロインをしているだって?
そりゃあダスカだしねぇ……。(説明不足)
あとエイシンフラッシュを引くためにたくさんガチャを回した結果、ナリタタイシン、ウェディングマヤノトップガン、ゴールドシチーが出ました。
二回の理事長演出が来たからエイシンフラッシュかと期待したら必ずナリタタイシンが竹藪からやってきました。おかしいですねぇ……。
ちなみに無償石でガチャを天井まで回してエイシンフラッシュを出しました。ごめん、タマ……。(タマモ貯金散財)