私は122回ガチャをしてマンハッタンカフェとおまけでトウカイテイオーとミホノブルボンを当てることができました。前回のエイシンフラッシュみたいに天井行かなくてよかったです。
それと途中から三人称視点に入ります。
イチョウの木が葉を黄色にしてパラパラと落ちて、金木犀の香りが漂う季節になった。秋は残暑も過ぎて体感的にちょうどいい気候で過ごしやすい。
秋と言えばスポーツ、食べ物、読書が代表的なものでトレセン学園では秋の恒例行事として読書週間が行われる。読書が好きな子なら問題はないのだけど、トウカイテイオーやマヤノみたいなタイプにはつらい期間ね。
もちろんアタシは読書が好き、だって色々な筆者が自分の思い描く世界を一冊の本にしてくれる。様々な世界観が展開されていてとても面白い。
「流石は図書委員のロブロイね。こんなに読んでるなんて」
それと読書週間にはどれぐらい本を読んだかランキング付けされるから、どのランキングでも一位になりたいアタシは頑張らないといけない。ちなみに一位との差は五冊、彼女的には別に競い合っているつもりはなさそうだけど一位は獲らせてもらうわ。
「次はどんな本を読もうかしら。うーん、オススメされたものは結構読んじゃったし……」
次はどんな本を読もうか悩みながらトレーナー室に入る。中ではいつもはソファーの上で寝ているトレーナーが珍しく起きていた。ソファーの上でスマホをいじり、頭を掻いていた。
「あら起きてるだなんて珍しいじゃない」
「むっ、ダスカか。別にわしだって毎日寝とるわけじゃないきに」
「だっていっつも寝てんじゃない」
「そんなん知らん」
「ったく、ちゃんとしてよね」
そんなに暇ならトレーニングの研究でもやってほしいわね。けど真面目にやれって口に出したらトレーナーは怒ってどっかに行っちゃうから言わないけど。
にしても机の上が汚いわね、煎餅のカスでいっぱいじゃない。ちゃんと片付けてほしい……あれ、これって。
「ねぇ、どうしたのよこの本」
「あぁ、わしの私物じゃ私物」
「えぇ!?アンタって読書が趣味だったの!?」
「何ぞ問題か」
「いやそういうことじゃないのよ。ただ珍しいなって」
「わしだって本ぐらい読むわ」
そう言ってトレーナーは心外そうにそっぽを向いた。明らかにアタシのせいでへそを曲げてしまったようだ。このままだといつかキレてくるので機嫌を取らないと。
「今のトレセン学園の期間って知ってる?」
「あぁ?読書週間じゃろ、知っとるわ」
「うん。だからアンタがアタシにオススメの本を教えてよ」
「……わしがおまんに?」
「そうよ。読書ランキングで一位を獲りたいの」
「はっ、くだらん。わしには関係ないぜよ」
「お願いよ。アタシはアンタと同じ本を共有したいの!」
ソファーに近づいて覗き込むような形でトレーナーを見る。ちらりとトレーナーはこっちを見るとやれやれといった感じでスマホをしまう。
「……ちっ、しょうがないのう。わかったわかった、紹介すればえいんじゃろ」
「ホント!?ありがとうトレーナー!」
「とっとと図書室行くぜよ。わしもそっから拝借しとる」
「えっ、生徒じゃなくても図書室使えたの」
「当たり前じゃ、立ち入れんのは寮だけじゃ。まっ、生徒に混じって使おうとする
確かに生徒に混じって読書をするトレーナーは見たことなかったわね。てか今更なんだけどどうしてトレーナー寮には生徒が入れるのにその逆はダメなのかしらね。盗撮や盗難防止なのはわかるけど、種族的な面で見ればウマ娘の方が強いから制圧は簡単なのに。
カツカツと夕焼けに染まった廊下を歩いて図書室へと向かう。一応、時間的にまだ開館しているから焦らなくてもいいわね。ゆっくり選んでもらおうっと。
扉を開けて中に入ると出入口付近でロブロイが本の貸出を確認するという図書委員の仕事をしている。アタシらと目が合うとニコリと笑顔で挨拶をしてくれた。
「あっ、こんにちはダイワスカーレットさんとそのトレーナーさん」
「こんにちはロブロイ」
「おい、この本返却じゃ」
「昨日借りてくれたやつですね。返却ありがとうございます」
「ええっ!?もう読んだの!?」
「まっこと面白い本ですぐ読み終えたきに」
「ダイワスカーレットのトレーナーさんは日頃から図書室を使ってくれてるんですよ。この貸出記録とか」
ロブロイはそう言って机の中にあった貸出カードを見せてくれた。貸出カードにはここ一週間に借りた人の名前が連なっていて、その中にぽつぽつとトレーナーの名前があった。
「……本当だ。アタシたちが授業中に借りてるわ」
「はい。主に時代小説や古文書を読んでくださっているんです」
「えっ、アンタって漢文や古典読めんの!?今度教えてちょうだい!」
「ああいうのはセンスじゃ。教えを乞われても教えれん」
「マヤノやテイオーみたいな天才肌の人はこれだから……」
「要はわしが天才すぎるのがいけんがのう!すまんのう、わし天才じゃから!」
「ぐぬぬ、すっごく苛立つわね……!」
「ま、まあ落ち着いてください二人とも。どうぞご自分に合う本を探してください」
「そうするわ。行きましょう、トレーナー」
「そうじゃな」
「ごゆっくりどうぞ」
ペコリとロブロイは会釈した。その言葉には本を今以上に好きになってもらいたいという願いが込められていた。
彼女と別れたアタシたちはトレーナーに連れられるがまま蔵書のコーナーに案内される。トレセン学園の図書室は案外広くて様々な本がある。古典小説や現代小説はもちろん、かつて存在していたレースの記録もある。一応、細かいウマ娘やレースの資料は資料室に保管されているけどトレセンに在籍しているトレーナーしか入れないようになっている。
「このコーナーぜよ」
「時代小説ね、けど今まで読んだことなかったから読みやすいのがいいわ」
「そのつもりじゃ。とりあえず映画化されよったもんを見ればえい」
「『名バ松風と前田慶次』と『オリンピック、ウラヌスの戦い』は見たことあるわね」
「どっちも完成度は高いきに、読んどけ」
「うん、ありがとう」
『名バ松風と前田慶次』は戦国時代に活躍した松風というウマ娘と前田家の嫡男の前田慶次が日本中を旅して悪党を成敗するっていった内容で、『オリンピック、ウラヌスの戦い』はオリンピックの大障害飛越競技で金メダルを獲ったウラヌスとそのトレーナーの西中尉の物語。アタシが生まれる前に作られた作品だけど色褪せない名作で、お母さんと一緒に見たことがあった。
特にウラヌスと西中尉が戦争が激化してまた会いましょうって言うシーンが感動ポイントなのよね。だって西中尉は戦争で命を落としてしまって彼女は意気消沈するけど、戦後の日本を復興させるために頑張るのが健気で立派だったわ。
「それでトレーナーが読んでいたのはどれ?」
「わしのは司馬遼太郎の作品の『人斬り以蔵』じゃ」
「以蔵……?作者は知ってるけど誰の物語なのかしら?」
「幕末に活躍した人斬り岡田以蔵の話じゃ」
「人斬りってなんだか怖い響きね」
「えいように先生から使われて最後に捨てられる奴の物語でのう」
「それはなんとも言えない内容ね……」
「博打と酒が好きで乱暴な以蔵じゃが、どういてかわしに通ずるもんがあって読み進めてしもうた」
「それだけ聞くと似ているわね」
「最後は捕まって牢屋の中でその先生に毒殺されかけるも生きよって、首を刎ねられて処刑された。はっ、ざまあない男ぜよ」
ふとトレーナーの方を見ると目元に影を落として瞳には生気がなかった。多分だけど境遇が自分と以蔵は同じだって見てしまったのね。自分を嘲笑している様は哀愁が漂っていて見ているこっちがつらかった。何かできないかって必死に模索する。
「トレーナーはその以蔵となんて似ていないわよ」
「……どういてそんなことを言える」
「だってアタシはアンタのことを見捨てないし裏切らないんだから」
「っ!」
アタシはトレーナーの腕に抱きついた。絶対に裏切らないし離れないという意味合いも込めてギュッと強く抱きしめてあげた。トレーナーは驚いた様子でこっちを見つめたけど、どこか安心した顔に戻ってくれた。
「……あぁ、わしにはおまんが居たぜよ」
「そうでしょ。だから安心してアタシをサポートしなさい」
「そうするか、ありがとうなスカーレット」
「何よムズムズする言い方ね。当然のことだって受け止めなさい」
「ふんっ、抜かせ。図に乗りおって」
「ちょっとやめなさいって!もー、髪がボサボサになるじゃない!」
トレーナーはガジガシとアタシの頭を揉みくちゃに撫でてくる。毎日時間をかけてセットしている髪型だから抵抗するけど、不思議と嫌な気分にはならなかった。むしろもっとしてほしかった。
「あの、此処は図書館ですよ」
「ひっ!?」
「うおっ!?」
こんなやり取りを続けていると突然部屋の片隅から声が聞こえた。トーンが低くてどこか冷たさを有する声はアタシたちを驚かせるには十分だった。声の出所に視線を移すと夕焼けで影が濃くなっているところに薄っすらと人影が浮かんでいた。
「お、お化け!?」
「じ、実在しとったか!」
「いや違いますよ。私です」
そう言って声の主は光の方に歩みだした。そしてお化けだとアタシたちが誤認していた正体はタキオンさんと仲が良いマンハッタンカフェ先輩だった。
カフェ先輩の黒くて色白な肌は生気がなくて一見幽霊にも見える。
「お、驚かせよって」
「ご、ごめんなさいカフェ先輩。迷惑をかけてしまいまして……」
「いいえ、別に慣れっこなので」
「今日はタキオンと一緒じゃないのか」
「何も常にあの人といるわけじゃありませんよ。てか、あちらから絡んでくるんです」
「あー、厄介じゃしな。金目当てで治験にゃあ参加しとったが、それ以外は関わりとうない」
「わかります。私はタキオンさんのお目付け役として任されましたから付き合わざるをえないんですが」
「だけどタキオンさんは良い人ですよ。この間は紅茶分けてくれましたし!」
「何故かおまんにだけ態度が違うのが不思議ぜよ」
「同感です。全員等しく被検体として見るくせにスカーレットさんだけは例外なんですよね」
うーん、どうしてアタシが持ってるタキオンさんの印象と全員が持っている印象が違うのかしら。会うたびに紅茶やお菓子を分けてくれたり、勉強も教えてくれたりするのに……。
「で、カフェは何の本を借りるんじゃ」
「私はこれです」
「『恐怖の館』ってホラー小説か」
「そうですね。ある日主人公の家に招待状が届いてこの館に行き怪奇現象に巻き込まれるという内容です」
「な、なんか怖そうですね」
「最近は本を読んでいませんでしたから良い機会だと思いまして。オカルトは面白いので」
「ふん、幽霊か。わしはそんな子供騙し信じとらんがな」
「ちょっとトレーナー!」
トレーナーが幽霊の存在を小馬鹿にすると、カフェ先輩は顔を顰める。思わず肘で小突いてトレーナーを謝らせようとするも、気づいていない様子だった。
「幽霊なんぞ死ねばなれるのなら、原始人の幽霊だっているはずじゃ。そうなりゃ街中幽霊で溢れかえっとるわ」
「……」
「よしなさいってトレーナー!」
「まあわしにかかれば幽霊なんぞ相手にならんぜよ!」
「あのー」
トレーナーが幽霊なんて相手にならないと豪語したらカフェ先輩が気まずそうに何かを告げようとした。その瞬間、ガタンと近くの本棚から一冊本が落ちる。誰かが取り損ねたのだろうと振り返るとそこには誰もいなかった。
「あぁ?なんぞいきなり」
「け、気配がなかったのに本が……!」
「たまたまじゃろ。気にするこたぁ―――」
「あっ」
ドサドサとその棚にあった本が床に落ちる。確かに誰もいないのにも関わらず不自然に落ちていく光景を見てしまったアタシとトレーナーは騒然とした面持ちで固まってしまった。
何かマズいものを刺激してしまったのではないかと冷や汗が止まらなくて鳥肌が立ってきた。
「えっ、今のは何なのよ……」
「た、立て付けじゃ。棚の留め具が外れただけじゃ!」
「けどそれなら棚ごと落ちるはずじゃ……」
「たまたまじゃ!」
「あのー、それ以上すると……」
「ぐおっ!?」
「トレーナー!?」
怪奇現象を偶然だと言い張るトレーナー、けどいきなり仰け反ってそのまま尻もちをつく。ゴホゴホと咳き込みながら首巻を緩めていた。
「い、今誰かが首巻を引っ張りおった!」
「当たり前のこと言いますけどカフェ先輩はやってませんよね!」
「流石にやりませんよ。それとそろそろ此処を立ち去った方がいいかと」
「どういうことじゃ!」
「……私のお友達以外の子が集まってきています」
「ひっ!?」
「し、知らん。わしは知らんぞッ」
周りに幽霊がたくさん来ていることに狼狽しながらトレーナーは立ち上がり棚に手を付く。するとトレーナーの頭上にあった棚から辞書が一冊落ちた。ゴツンと頭をぶつけたトレーナーは呻き声を漏らしながら蹲る。落ちてきた辞書はページが開かれていて、「存在」という単語があった。
「な、なんじゃあああああ!?」
「ちょっとトレーナー!」
「認めん!わしは認めんぞおおおお!!」
「スカーレットさんのトレーナーさん!走らないでくださーい!」
「ごめんなさいカフェ先輩!あとで謝らせますから!」
トレーナーは大声を出して図書室から逃げ出してしまった。
あー、もう!どうしてアタシのトレーナーはこうもうるさいのよ!変なことばっか起こすんだからー!
「トレーナー!待ちなさーい!」
私は急いでトレーナーを捕まえに行く。本当は廊下を走っちゃいけないけどこれ以上逃げられてしまうと被害が拡大するのは目に見えているから急いで捕まえないと!
私は夕焼けで赤くなった廊下でトレーナーを追いかける。レッドカーペットが敷かれているようで綺麗だった。
「やれやれ、片付ける側にもなってほしいですよ。まったく、皆は騒いだらすぐにどこかに行ってしまうんだから」
「……」
「おや、貴方はここら辺で見ない方ですね」
「……」
「なるほど。教え子の成長を見に来たんですか」
「……」
「うまくやっているとは思いますよ。仲も良好でしたし、その担当の成績も良いですから」
「……」
「そんなに見守ってあげなくてもきっと大丈夫ですよ。だってあの人はもう独りじゃないんですから」
「……」
「そろそろ会ってあげては?夢や鏡などを使えば短時間だけ再会できますよ」
「……」
「あっ、消えてしまいました。まったく、師弟関係というのは難しいものですね」
今月はハロウィンイベントとカフェ実装があったのでややホラーチックな展開にしました。
ちなみにこのトレーナーは勉強をしなくても古典や現代文などの点が高いタイプです。もっともセンスで解いているので数学や化学や歴史が苦手な人間です。