傲慢な天才トレーナーと一番星のアタシ   作:渡邊ユンカース

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更新遅れました申し訳ございません。
てか見てくださいよFGOの岡田以蔵のスーツ姿を!!メチャクチャにカッコよくてマジで良いですよね!あー、もうマジでカッコいい(語彙喪失)
まあ私はFGOイベントに参加できないので衣装はゲットできませんがね。


一番のアタシはパーティーに行く

 十二月を迎えて冬が本格的に到来した頃、アタシとトレーナーは理事長室に呼ばれていた。一応、廊下に暖房が設置されているから多少は暖かかったけど室内に入るだけでかなり楽になる。

 ちなみにだけどアタシたちが使っているトレーナー室にはわざわざコタツが置かれていて、大抵そこで作戦の話やトレーニング内容の確認を行っている。契約一年目だった頃はダラダラとしているトレーナーに渇を入れていたのだけど、今となっては一緒になってぬくぬくしてるわね。他の子に見られないようにしなくちゃ。

 

「うむ、よくぞ来てくれたな」

「なんぞわしらを呼んだ。とやかくつけて経費で物を買おうとしとらん」

「あら、以前買っていた無関係な雑誌は経費で落ちませんからね」

「それは初耳だぞ!」

「ちっ、バレとったか」

「何してんのよ……」

「ま、まあ今は不問にしよう。ごほん、君たちが有馬記念に出場することが今日決まった」

「えっ!?アタシ、有馬に出れるんですか!?」

 

 有馬記念、それはクラシックやシニア戦線で活躍したウマ娘が観客からの投票によって出走できるレースのこと。多くのレースで勝てば有馬記念に出れる率は上がるけど、中には確かな戦績を残したけど投票数で出れない子もいる。

 そして何よりもこのレースは強豪ぞろいで、今までにないレースになるのは目に見えていた。

 

「左様ッ!おめでとう!」

「おめでとうございます」

「つ、ついにアタシ有馬に出れるのね!」

「ふん、当たり前じゃ」

「反応が薄いな。もっと喜んでもいいんだぞ」

「わしが専門で担当したウマ娘じゃし、そんくらいいってもらわんと困るわ」

 

 当然だと言うようにトレーナーは腕を組んでそっぽを向いた。

 以前、トレーナーが寝ている際にクシャクシャに丸められた書類を見つけた。そこにはクラシックの時に有馬を出走させる予定が書かれていた。けどアタシたちは有馬に出ることができなかった。自分の担当ウマ娘を晴れ舞台に送ることができなかった無念と悔しさからクシャクシャにしたんだって察しがついた。

 けれどようやく出走(願い)が叶った。口ではああ言っているつもりだけど、内心ではウキウキなんでしょうね。独りになったら歓喜のあまり叫びだしそう。

 

「それで君たちには明後日開催されるパーティーに出席してもらうが大丈夫か?」

「はい!もちろんです!」

「酒をただで飲めるっちゅうのはえいのう」

「ちなみにインタビューも行われますので準備もお願いしますね」

「ふふん、ドレスって着てもいいんですか!」

「当然ッ!どうせならこちらで出費してあげよう!」

「いいえ、母親が見繕ってくれたものを着るので大丈夫です」

「そうか。良い母親を持ったのだな」

「えへへ……」

「……おい、どういてもスーツじゃなきゃあかんか?」

「そうだ。記事にもなるからな、身なりを正してもらわないと困る」

「わし、スーツ持っとらんぞ」

 

―――――ピキッ

 あんなに和やかだった空間が一瞬で凍り付いた。

 

「えええええ!?」

「そ、そんなことが!?」

「驚愕ッ!?どうして持っていないんだ!君だって社会人なんだし、赴任した際には着てたじゃないか!」

「とうに質屋に納めたわ。もともと中古だったきに、二束三文だったがのう」

「な、何のために使ったんだー!?」

「ま、まさか……」

「ギャンブルのためにとか……」

「正解じゃ。もっとも結局は負けてしもうたが」

 

 トレーナーの答えに一同は頭を抱える。そんなこと気に留めていないトレーナーは呑気に頭を掻いた。

 

「ど、どうして貴方はそういうことを……」

「あ、唖然ッ!徹底的なダメ人間!」

「このおたんこにんじん!」

「おう何じゃ、好き勝手言いよるからに!えいじゃろうが、わしが何しようが!」

「どうしましょうか理事長」

「う、うむ。こうなったら仕方がない、レンタルで済ませるしかない」

「そ、そうですね」

「それは経費で落ちるんか?金ないぜよ」

「経費で落ちるんで今すぐレンタルしてくださいね!」

「おう、そうか。ほんなら金を倍にして返してやるきに、期待しとれよ」

「バカ!経費でギャンブルしようとしないで!」

「……私が同伴します。監視と彼に合うスーツを探してきます」

「頼むぞたづな」

「ご、ごめんなさいたづなさん。面倒かけちゃって」

「大丈夫ですよスカーレットさん。それに彼をかっこよく仕上げてあげますからね」

 

 そう小声で言うと、たづなさんはアタシにウインクをする。たづなさんみたいにしっかり者で服のセンスも良さそうな女性なら大丈夫ね。

 たづなさんにズルズルと引きずられて退室するトレーナーを眺めながらアタシは明後日のパーティーに期待した。

 

 

 そしてパーティー当日、アタシとトレーナーはたづなさんの以降により現地で集合することになっていた。パーティーの会場は言わずと知れた一等地で、よくテレビで映されていた高層ビル。暗闇の中でキラキラと光る様子は美しかった。

 アタシは受付を済ませて中に入ってからエントランスでトレーナーを待つ。一時間前にたづなさんがトレーナーをタクシーで送ったと連絡があったから、遅刻したり欠席することはないはず。……いやでも途中下車してるかもしれないわね。

 

「うぅ、二重の意味で緊張するわ」

 

 トレーナーが遅れずに来ることとパーティー初参加による緊張で気持ちが落ち着かない。あっちこっち動いたりソファーでスマホをいじって気を紛らわせているけど。

 そんな感じで待っていると出入口の自動ドアが開き、そっちに視線を向けた。

 

「おう、ダスカ」

「ちょっと遅いじゃない……ふぇっ!?」

「あぁ!?なんぞ固まりよる」

 

 登場してきたトレーナーを見て、つい固まってしまった。怪訝そうにトレーナーは首を傾げる。

 

「な、何よその恰好!!」

「たづなに買ってもろうたきに、どうじゃ似合うじゃろ」

 

 トレーナーはにししと満足げに笑いながら胸を張る。

 トレーナーの格好は当然礼服姿で、灰色のワイシャツの上にベストを羽織って上着であるスーツを右手に持っている。堅苦しい格好は好きじゃないのかネクタイを外して首元のボタンを外して胸元を開けていて、袖をまくっていた。

 

 正直に言うとバカみたいにカッコいい!なによその胸元は!筋肉質な胸筋がすっごくセクシーじゃない!しかも筋肉質な腕がスーツと合ってカッコいいわね!

 

「結構良い感じじゃない!」

「ぬはは、そうじゃろうそうじゃろう」

「何処で買ったのかしら?」

「銀座の一番えいとこじゃ。こんだけで三百万も消えたわ、服の価値なんぞようわからん」

「さ、三百万もしたの!?」

「あぁ、まあたづなが無理にでも経費で落とすと豪語したんじゃから気にしないぜよ」

「あ、ありがとうたづなさん……!」

「そんでどうじゃ、えろうイケちょるやろ」

「……えぇ、ちょっとエロいね」

「ん、なんか言ったかの?」

「いいや言ってないわよ!でさ、どうアタシのその、ドレスは」

 

 アタシは自分が着てきたドレスをくるりと回転して見せつける。勝負服の色と同じ青を基調としたドレスで優雅さを出すために両肩を出している。流石はママだわ、こんなに綺麗なドレスを見繕ってくれたなんて。本当にアタシは幸せ者だわ。

 

「まあえいんじゃないかのう」

「何よ素っ気ないわね。そこは褒めるのが常識でしょ」

「……一番のスカーレットの姿は着飾ることじゃのうて笑う姿じゃき。じゃが今のおまんの姿もその、なんというか綺麗ぜよ」

「ふふん!そうやって褒めればいいのよ!素直になってね」

「おまんがそれを言うがか」

「それとそんな風に褒めるのはアタシだけにしてよね。……アタシ以外にされると、その妬いちゃうから」

「ふん、抜かせ。わしが他の女子を褒めるのは滅多におらんきに。心配はいらん」

「や、やめなふぁいよ。メイクが崩れちゃうでひょ」

 

 トレーナーは笑いながらグニグニとアタシの両頬を引っ張ってきた。せっかくメイクもして髪の毛を整えて来たんだから本当はやめてほしいけど、やっぱりやめてほしくない。その手を振りほどくことなく満足がいくまで触らせてあげた。

 

「メイクは崩れてないわね。それじゃあ行きましょうか」

「おん」

「あれ、そういやいつも身に着けている首巻はどうしたのよ」

「あぁ、あれか」

 

 そう、今日のトレーナーは自分のトレードマークであり宝物であった首巻をしていない。きっと並々ならぬ理由があるのね。

 

「ホンマはつけるつもりじゃったき」

「そうなの」

「けんど昼寝しとったら夢で先生に会うたんじゃ」

「アンタの恩師が夢に」

「そいてな、先生は『お前はお前だ。もう何事にも縛られずに生きてくれ』と言いよったがよ」

 

 トレーナーが大事に持っていた思い出の首巻は生き方と自分を禁じる首輪で、先生が善意でくれた贈り物がいつしか愛情と敬意と懐古で繋がれてしまった。それは今後を捕縛してしまう。

 だけどトレーナーは首巻を付けなかったことで介入はあれど自らの決断で取った。どれほどの想いで取ったのかは想像し難くない。

 

「頑張ったのね。トレーナー」

「少し寂しいが肩が軽くなったきに。もう先生とは会えん気がするけんど、わしにゃあもうあん思い出だけで十分じゃ」

 

 屈託のない笑顔を浮かべたトレーナー、表情には後悔や悲しみといったものがなく満足した様子だった。

 

「ほれ、とく行くぜよ。飯と酒がわしらを待ってるき」

「はいはい、アンタはそんな感じに生きなさいね」

 

 相変わらずの態度にくすりと笑ってしまった。それでいい、傲慢に笑い奔放に振る舞うのがアンタなんだから。

 大広間に続く通路を歩いて、部屋を繋ぐ大きなドアに手を掛けて開いた。

 

「ほにほに、どれも美味そうじゃ」

「そうね。それと節度を弁えた行動をしなさいよね」

「散々たづなに言われたわ。やき平気じゃ平気」

「ったくもう、本当にわかっているのかしら」

「すまんが一つ貰うぜよ」

「かしこまりました。どうぞ」

「あぁ、シャンパンは美味いのう!もう一杯!」

 

 入室以降、真っ先に手を付けたのはお酒。ウェイターから一つグラスを貰って一気に飲み干した。土佐の人だからお酒の耐性はあるはずなんだけどへべれけにならないかが心配だわ。いつも飲んでいるお酒よりも断然高級だからタガが外れなきゃいいんだけど……。

 

「おおっ、ダイワスカーレットさん。お待ちしておりましたよ」

「えっと貴方は」

「これは失礼、私はこういうものです」

 

 大人げなくシャンパンを飲んでいくトレーナーを後ろから見ていると、突然声を掛けられた。後ろを振り向くと紺色のスーツを着て眼鏡を掛けた男性がいた。その人は名刺入れから名刺を取り出して渡してきた。

 

「記者の方ですか」

「はい。少しばかしインタビューをしてもよろしいでしょうか」

「えぇ、まあ」

「ありがとうございます。では、有馬記念を出走することが決まった時はどのような心境でしたか?」

「一昨日決まったことなのと長年の夢を叶えることができたので未だに信じられないでいます。ですが、嬉しさが胸を込み上げました」

「なるほど。やはり一着を狙うつもりで」

「そうです。自分が皆さまの人気を得たからこそ出走することができました。皆さんの想いに応えられるレースをしたいです」

「新規に開催されるURAも期待されていますが、やはり花形ともいえる有馬ですからね」

「もちろんURAも優勝して初代URAチャンピオンになりたいです」

「当然ですがウオッカさんも台頭することは間違いなしですよね」

「ライバルとしてまた激戦を繰り広げられることができて良かったです」

 

 今回の有馬記念は出走距離が長距離、だからマイルと中距離に適性があるウオッカは出場ができなかった。けど新しく開催されるURAのおかげでまた戦うことができる。悪いけど勝ち続けさせてもらうわ。

 

「良い意気込みをありがとうございます」

「おっ、何じゃ取材か」

「トレーナー。……それ何杯目?」

「四杯目」

「飛ばしてるわね……」

「ちょうどよかった。トレーナーさんにも取材をしたかったんですよ」

「えいぞ、どんときぃや」

「ダイワスカーレットさんのトレーニングでは何を重視しました?」

「速さとパワーじゃ。こいつのえいところはスタミナと根性じゃし、もえい。やき実践とレース鑑賞で技を学ばせるは楽だったぜよ」

「なるほど。確かに位置取り争いでは優位に立っている時が多いですもんね」

「けんどこいつは気性が……あー、過度な頑張り屋じゃから負担をかけ過ぎのうよう気ぃつけてたわ」

「トレーナー……」

「よく見ているのですね」

「当たり前じゃ、担当ウマ娘を把握するがは。もっともわしは天才トレーナーじゃからなぁ!」

「……トレーナー」

 

 図に乗らずにはいられないのがダメなところなのよ、まったくもう。けど選抜レースでアタシの本性や適性を見抜いていた実力は確かだから言葉通りなのよね。

 

「あの伝説のウマ娘も貴方が担当していたらケガで引退はなかったのに……」

「ッ!?」

 

 やれやれと呆れていると、記者から衝撃の言葉が漏れてギョッとなった。

 伝説のウマ娘はきっとトキノミノルを指す言葉でそのトレーナーは例の恩師にあたる人だ。以前もカラオケ店内で自分の恩師をバカにされたトレーナーは激怒して殺そうとしていた。つまりこの発言はトレーナーにとっての逆鱗、暴力を振るおうとした瞬間に取り押さえられるよう身構えた。

 けど沈黙があるだけで暴力を振るう兆しがなかった。それどころか敵意や怒気を感じず、トレーナーの方へ振り向く。トレーナーは悠然とグラスを傾けていた。

 

「……トレーナー?」

「わしにゃああんときの状況がようわからん。けんどケガをきっかけに二度と立てんウマ娘になるがは幾分かマシぜよ」

 

 ウマ娘は時速六十キロの速度で走ることができる。それ故に負担が大きく足が耐えられないケースがあって事故が起きる。運が悪くて転倒時に死亡してしまったというケースも存在したし、二度と治らないケガに絶望して自殺するケースもある。

 それほどまでにウマ娘のレースには危険が伴っていた。

 

「最後のレースもトレーナーに骨折を隠して走りよった。幸いにゃあ一着じゃが、下手を打てばえろうことになっとったがよ」

「なるほど。当然の帰結ということですな」

「おまんらのような人気者ばかり追いかけとる記者にゃあわからんが、年頃の時代を使うて走ることに打ち込む女子の生きがいが突然奪われるちゅうことをわしは見てきたがきに。やきトレーナーは担当を悲しませんためにケガと健康に気ぃ付こうとる」

 

 トレーナーはいつもアタシが予定されていた練習以外をこなそうとすると激怒していた。何度か歯向かってみるとさらに激怒して怒鳴りつけていた。自分が思い通りにコントロールして自分の経歴のために優勝させようとしているって考えていた時期があったけど、いつしか信頼が生まれて全てを信じられるようになった。

 元々アタシを大事にしてくれていることはわかっていたけど、その根拠を提示されるとこの人はウマ娘が大好きなんだなっていうのがよくわかった。

 

「おまん、今から言うこれを絶対に記事に載せろや」

「な、何でしょうか」

「トレーナーとして責務を全うできん奴はわしが直々に殴りに行くとな」

「わ、わかりました。では私はこれで……」

 

 ギロリと睨むようにトレーナーは記者に向けて圧を掛ける。圧に気圧されたトレーナーはズズズっと後退してそそくさと何処かへ行ってしまった。トレーナーはその情けない後ろ姿を見て鼻を鳴らす。

 

「……ふん、三流が。好きでウマ娘を引退させているわけがないやろが」

「ト、トレーナー」

「なんじゃ」

「その、いつもありがとうね。見守ってくれて」

「今更か。まあ、感謝されるがは悪うない。ダスカ、有馬で優勝を獲るぜよ」

「そうね。ああも啖呵を切っちゃったんだからしないとね」

「あぁ、ほんなら明日からまたトレーニングぜよ。じゃけど、そん前にすることがある」

「それって何よ」

「今日を楽しめ。ただそれだけじゃ」

 

 近くのテーブルに置かれていた料理を取ってこちらに渡してきた。

 

「そうね、存分に楽しみましょう!」

 

 差し出された料理を手に取ってアタシは笑い、トレーナーも笑う。

 この会場から見える街の夜景は宝石箱のようで綺麗で、一生忘れられない思い出になるのは確かだった。




ちなみにあと一話ぐらいで完結です。
元々二十話程度の物語を展開しようとしてたんで当然ですね。

https://twitter.com/watanabeJu87
それと私は絵を描き始めたんでよかったらフォローお願いします。まだ上手くはないけど頑張ってるんで……!
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